トマス・ピンチョン

トマス・ピンチョン Thomas Pynchon
水兵すいへい時代じだいの写真しゃしん（1955年ねん）
誕生たんじょう	(1937-05-08) 1937年ねん5月8日にち（87歳さい） アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく ニューヨーク州しゅう ロングアイランド
職業しょくぎょう	小説しょうせつ家か
国籍こくせき	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
活動かつどう期間きかん	1960年ねん -
ジャンル	ポストモダン文学ぶんがく
代表だいひょう作さく	『V.』(1963年ねん) 『重力じゅうりょくの虹にじ』(1973年ねん) 『LAヴァイス』(2009年ねん)
主おもな受賞じゅしょう歴れき	全米ぜんべい図書としょ賞しょう (1974年ねん『重力じゅうりょくの虹にじ』)
デビュー作さく	『V.』(1963年ねん)
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トマス・ラッグルス・ピンチョン・ジュニア（英語えいご:Thomas Ruggles Pynchon Jr.、1937年ねん5月8日にち - ）は、アメリカの小説しょうせつ家か。現代げんだいのアメリカ文学ぶんがくを代表だいひょうする小説しょうせつ家かのひとりであり、1990年代ねんだい以降いこう定期ていき的てきにノーベル文学ぶんがく賞しょう候補こうほに挙あげられている。公おおやけの場ばに一切いっさい姿すがたを見みせない覆面ふくめん作家さっかとして知しられる。

作品さくひんは長大ちょうだいで難解なんかいとされるものが多おおく、SFや科学かがく、TVや音楽おんがくなどのポップカルチャーから歴史れきしまで極きわめて幅広はばひろい要素ようそが含ふくまれた総合そうごう的てきなポストモダン文学ぶんがくである。

略歴りゃくれき

1937年ねん、ニューヨーク州しゅうロングアイランド、グレンコーブに測量そくりょう技師ぎしトマス・ラグルズ・ピンチョン・シニアとキャサリン・フランセス・ベネット・ピンチョンの間あいだに長男ちょうなんとして生うまれる。妹いもうとと弟おとうとがいる。

父ちちはプロテスタントで母はははアイルランド系けいのカトリック。16歳さいでオイスター・ベイ高校こうこうを最優秀さいゆうしゅう学生がくせいとして卒業そつぎょうした。コーネル大学だいがくから奨学しょうがく金きんを得えて、同年どうねん秋あきに工学部こうがくぶ応用おうよう物理ぶつり工学科こうがっかに入学にゅうがく。2年ねん後ごには大学だいがくを一時いちじ離はなれ、海軍かいぐんに2年間ねんかん所属しょぞくした。

1957年ねんにはコーネル大学だいがくに戻もどり英文えいぶん科かに入学にゅうがく。当時とうじの創作そうさく科かの講師こうしにウラジミール・ナボコフがおり、ピンチョンはその講義こうぎを受うけていたと言いわれている（レポートの採点さいてんをまかされていたナボコフの妻つまはピンチョンの独特どくとくな手書てがき文字もじを覚おぼえていると証言しょうげんしている）。大学だいがく3年ねんと4年ねんの時ときに学内がくないで発行はっこうされる文芸ぶんげい雑誌ざっし『コーネル・ライター』の編集へんしゅうに携たずさわり、1959年ねん5月同誌どうしに「スモール・レイン」を発表はっぴょう。

1959年ねん、大学だいがくを最さい優ゆうの成績せいせきで卒業そつぎょうしたピンチョンは、複数ふくすうの大学院だいがくいんからの奨学しょうがく金きんを断ことわり、マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジのアパートメントでボヘミアン生活せいかつを送おくりながら小説しょうせつ『V.』を執筆しっぴつしはじめる 1960年ねん2月がつから1962年ねん9月がつまでの間あいだ、シアトルのボーイング航空機こうくうき会社かいしゃに就職しゅうしょくして米べい軍ぐんの地ち対空たいくうミサイルボマークのテクニカルライターとして働はたらいている。その間あいだ、3編へんの短編たんぺん（「ロウ・ランド」「エントロピー」「アンダー・ザ・ローズ」）を文芸ぶんげい誌しに掲載けいさい。退職たいしょく後ごはカリフォルニアやメキシコに移うつり住すんだとされている。

1962年ねん、メキシコで長編ちょうへん第だい1作さく『V.』を完成かんせい。1963年ねんに出版しゅっぱんされ、同どう年度ねんどの最優秀さいゆうしゅう処女しょじょ小説しょうせつに与あたえられるフォークナー賞しょうを受うけた。

1966年ねん、長編ちょうへん第だい2作さく『競売きょうばいナンバー49の叫さけび』を発表はっぴょう。ローゼンタール基金ききん賞しょうを受賞じゅしょう。1967年ねんから1972年ねんまではおそらくメキシコとカリフォルニアで生活せいかつしていたと思おもわれる。

1973年ねん、長編ちょうへん第だい3作さく目めにして代表だいひょう作さく『重力じゅうりょくの虹にじ』を発表はっぴょう。1974年ねん度どの全米ぜんべい図書としょ賞しょうを受賞じゅしょうする。同年どうねん、ピューリッツァー賞しょうフィクション部門ぶもんに諮問しもん委員いいん会かいが全員ぜんいん一致いっちで推薦すいせんしたが、理事りじ会かいは「読よみにくく卑猥ひわいである」としてこれを退しりぞけ同どう部門ぶもんは該当がいとう作さく無なしとなった）。以後いご、約やく16年ねんにわたり新作しんさくを発表はっぴょうしなかった。

1975年ねん、米べい文芸ぶんげいアカデミーより5年ねんに1度ど優秀ゆうしゅうな小説しょうせつに与あたえられるハウエルズ賞しょうに選えらばれたが、「いらないものはいらない」と受賞じゅしょうを辞退じたい。

1984年ねん、初期しょき短編たんぺんを集あつめた『スロー・ラーナー』発表はっぴょう。序文じょぶんを書かき下おろす。同年どうねん10月28日にち、ニューヨーク・タイムズにエッセイ「ラッダイトをやってもいいのか？（Is It O.K. to Be a Luddite?）」を掲載けいさい（日本語にほんご訳やくは『夜よる想そう』25号ごう（1989年ねん））。1988年ねん、マッカーサー奨励しょうれい金きん（MacArthur Foundation Genius Grant）として31万まんドルを受うける。

1990年ねん、16年ねんぶりの長編ちょうへん第だい4作さく『ヴァインランド』発表はっぴょう。それ以前いぜんに取材しゅざいを兼かねて2度ど来日らいにちしたとも噂うわさされる。90年代ねんだい半なかば、出版しゅっぱんエージェントのメラニー・ジャクソンと結婚けっこん、長男ちょうなんジャクソン・ピンチョンが生うまれる。

1997年ねん、長編ちょうへん第だい5作さく『メイスン&ディクスン』発表はっぴょう。2003年ねん、ジョージ・オーウェル著ちょ『1984年ねん』の新版しんぱんに序文じょぶんを寄稿きこう。

2006年ねん、長編ちょうへん第だい6作さく『逆光ぎゃっこう』を出版しゅっぱん。オンライン書店しょてんAmazon.comに、ピンチョン本人ほんにんと思おもわれる人物じんぶつによって宣伝せんでん文ぶんが掲載けいさいされる。

2009年ねん、長編ちょうへん第だい7作さく『LAヴァイス』発表はっぴょう。

2014年ねん、長編ちょうへん第だい8作さく『ブリーディング・エッジ』発表はっぴょう。初はつの映画えいが化かとなる『インヒアレント・ヴァイス』が北米ほくべいで公開こうかい。

作品さくひん

• 「エントロピー」Entropy（1960年ねん） - 短編たんぺん
  • 短たん編集へんしゅう『スロー・ラーナー』所収しょしゅう。他たに「現代げんだいアメリカ短編たんぺん選集せんしゅう第だい3」（井上いのうえ謙治けんじ訳わけ、白水しろみず社しゃ、1970年ねん / 新装しんそう版ばん「アメリカ幻想げんそう小説しょうせつ傑作けっさく集しゅう」白水しろみずUブックス、1985年ねん）にも収録しゅうろく
• 『V.』V.（1963年ねん）
  • 三宅みやけ卓雄たくお・伊藤いとう貞基さだとも・中川なかがわゆきこ・広瀬ひろせ英一ひでかず・中村なかむら紘一こういち訳わけ、国書刊行会こくしょかんこうかい、1979年ねん
  • 小山こやま太一たいち・佐藤さとう良明よしあき訳わけ、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2011年ねん
• 『競売きょうばいナンバー49の叫さけび』The Crying of Lot 49（1966年ねん）
  • 志村しむら正雄まさお訳わけ、サンリオ文庫ぶんこ、1985年ねん / 筑摩書房ちくましょぼう、1992年ねん / ちくま文庫ぶんこ、2010年ねん
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2011年ねん
• 『重力じゅうりょくの虹にじ』Gravity's Rainbow（1973年ねん）
  • 越川こしかわ芳明よしあき・佐伯さえき泰樹やすき・植野うえの達郎たつお・幡山はたやま秀明ひであき訳わけ、国書刊行会こくしょかんこうかい、1993年ねん
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2014年ねん
• 『スロー・ラーナー』Slow Learner-Early Stories（1984年ねん） - 短たん編集へんしゅう
  • 志村しむら正雄まさお訳やく、筑摩書房ちくましょぼう、1988年ねん / ちくま文庫ぶんこ、1994年ねん / 新装しんそう版ばん、2008年ねん
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2010年ねん
• 『ヴァインランド』Vineland （1990年ねん）
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく、新潮社しんちょうしゃ、1998年ねん
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく（改訳かいやく）、河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ「池澤いけざわ夏樹なつき=個人こじん編集へんしゅう 世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう」、2009年ねん
  • 佐藤さとう良明よしあき訳やく（改訳かいやく）、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」 2011年ねん
• 『メイスン&ディクスン』Mason & Dixon（1997年ねん)
  • 柴田しばた元幸もとゆき訳わけ、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2010年ねん
• 『逆光ぎゃっこう』Against the Day（2006年ねん)
  • 木原きはら善彦よしひこ訳わけ、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2010年ねん
• 『LAヴァイス』Inherent Vice（2009年ねん)
  • 栩木玲子れいこ・佐藤さとう良明よしあき訳やく、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2012年ねん
• 『ブリーディング・エッジ』Bleeding Edge（2013年ねん）
  • 佐藤さとう良明よしあき・栩木玲子れいこ訳やく、新潮社しんちょうしゃ「トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ」、2021年ねん

トマス・ピンチョン 全ぜん小説しょうせつ

全集ぜんしゅう。新潮社しんちょうしゃが2010年ねん6月がつから刊行かんこう、2021年ねん5月がつに最新さいしん作さく『ブリーディング・エッジ』が刊行かんこうされ、ピンチョンの既すんで発表はっぴょう作さくすべてを網羅もうらした。

備考びこう

• 覆面ふくめん作家さっかとして著名ちょめいであり、顔写真かおじゃしんも学生がくせい時代じだいと軍隊ぐんたい時代じだいのものが2点てん知しられているのみである。『V.』のフォークナー賞しょう授賞じゅしょう式しき以降いこうは公おおやけの場ばに一切いっさい姿すがたを見みせず、顔かおを出ださない形かたちでのインタビューなども受うけていない。作品さくひんの難解なんかいさと寡作かさくさも相あいまって、神秘しんぴ的てきなイメージの強つよい作家さっかとしても知しられる。しかし、2004年ねん1月がつにアニメ『ザ・シンプソンズ』に本人ほんにん役やくとして突如とつじょ出演しゅつえん（声こえのみ）、2月がつにも再さい登場とうじょうし世間せけんを驚おどろかせた。このことは世間せけんに強つよい衝撃しょうげきを与あたえ、覆面ふくめん作家さっかが増ふえる原因げんいんの一ひとつにもなった。
• 上記じょうきに付随ふずいするエピソードとしてフォークナー賞しょう受賞じゅしょう後ご、とある雑誌ざっしが取材しゅざいのためピンチョン宅たくを訪たずねたところ、遠とおくの山中さんちゅうへ逃にげ込こんでしまい、写真しゃしんを撮とることはできなかったという。全米ぜんべい図書としょ賞しょうの授賞じゅしょう式しきの際さいには姿すがたを現あらわさず、代かわりにコメディアンを登壇とうだんさせ、関係かんけい者しゃを困惑こんわくさせた。
• 自殺じさつしたカリフォルニアの作家さっかワンダ・ティナスキーがピンチョンと同どう一人物いちじんぶつであるという噂うわさが1990年代ねんだいにあった。
• 『メイスン&ディクスン』の次つぎの作品さくひんはロシアの数学すうがく者しゃソフィア・コワレフスカヤに関かんする小説しょうせつになると噂うわさされていた。その当時とうじドイツの文化ぶんかメディア大臣だいじんを務つとめていたミヒャエル・ナウマンは、ドイツでピンチョンのコワレフスカヤ研究けんきゅうを助たすけたと発言はつげんしている。その後ご発表はっぴょうされた『逆光ぎゃっこう』では、コワレフスカヤの名なが数すう度ど言及げんきゅうされ、コワレフスカヤを思おもい起おこさせる女性じょせい数すう学者がくしゃヤシュミーン・ハーフコートが登場とうじょうする。
• かねてから少数しょうすうの若手わかて作家さっかとは接触せっしょくがあり、スティーヴ・エリクソンはピンチョンからエイミーコミックを手渡てわたされたと告白こくはくしている。

関連かんれん項目こうもく

• ポストモダン文学ぶんがく
• ポストモダン
• 木原きはら善彦よしひこ - 翻訳ほんやく家か、研究けんきゅう者しゃ