ドゥルミトル

ドゥルミトル国立こくりつ公園こうえん （モンテネグロ）
英名えいめい	Durmitor National Park
仏ふつ名めい	Parc national de Durmitor
面積めんせき	34000 ha
登録とうろく区分くぶん	自然しぜん遺産いさん
IUCN分類ぶんるい	II（国立こくりつ公園こうえん）
登録とうろく基準きじゅん	(7), (8), (10)
登録とうろく年ねん	1980年ねん（ID100）
拡張かくちょう年ねん	2005年ねん
公式こうしきサイト	世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
地図ちず
使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ

ドゥルミトル山さん(セルビア語ご: Дурмитор)はディナル・アルプス山脈さんみゃくの延長線えんちょうせん上じょうに位置いちする山やま。最高峰さいこうほうはボボトヴ・クク（Bobotov Kuk）で、標高ひょうこうは2528 m。ドゥルミトルの名なはルーマニア語ごで「眠ねむるもの」を意味いみする。その名前なまえは古代こだいローマの軍人ぐんじんたちが一帯いったいを征服せいふくしたときに、山やまの穏おだやかさを評ひょうして付づけたものが元もとになったとされている。

ドゥルミトル山さんは1952年ねんに設定せっていされたドゥルミトル国立こくりつ公園こうえんの中なかにあり、1980年ねんには固有こゆう種しゅの植物しょくぶつ相しょうや昆虫こんちゅうの多様たようさが評価ひょうかされ、ユネスコの世界せかい遺産いさんに登録とうろくされた。国立こくりつ公園こうえんは、氷こおり期きに形成けいせいされた起伏きふくに富とんだ地形ちけいにヨーロッパクロマツなどの森林しんりんが広ひろがる。多おおくの動物どうぶつも生息せいそくしており、ヨーロッパオオライチョウ、クロライチョウ、ヒグマ、シャモア、オオカミ、ヤマネコ、ユーラシアカワウソなどが代表だいひょう的てきである。猛禽もうきん類るいもイヌワシ、ボネリークマタカ、ヒメクマタカ、シロエリハゲワシ、ハヤブサ、ワシミミズク、チュウヒワシ、ヨーロッパハチクマなど多彩たさいである。一帯いったいの水域すいいきにはドナウイトウも生息せいそくしている。

国立こくりつ公園こうえんの面積めんせきはおおよそ300 km² で、ドルミトル山塊さんかいや、ヨーロッパ最深さいしんのタラ渓谷けいこく（深ふかさ1900m）も含ふくまれ、タラ川がわも保護ほご対象たいしょうとなっている。しかし、公園こうえん近ちかくのジャブリャク市しや人間にんげんの諸しょ活動かつどうが、不幸ふこうにも環境かんきょうを害がいしている。加くわえてモンテネグロの独立どくりつ以来いらい、観光かんこう客きゃくの増加ぞうかが見込みこまれており、公園こうえんの動物どうぶつ相しょう・植物しょくぶつ相しょうの観点かんてんにとっては好このましいことではない。

そのため、2002年ねんに70 km² 近ちかくが人間にんげんが活動かつどうを拡大かくだいすることを許ゆるされている対象たいしょうから外はずされた。しかし、なおも公園こうえんの完全かんぜん性せいを脅おびやかす活動かつどうが見みられる。その例れいとしては特とくに森林しんりん伐採ばっさいが挙あげられる。森林しんりん伐採ばっさいは「衛生えいせい上じょうの間伐かんばつ」の名目めいもくで行おこなわれ、数すう千せん立方りっぽうメートル分ぶんの木材もくざいが、近ちかくのズミニツァ（Zminica）の製材せいざい所しょに運はこばれている。

公園こうえんにはいくつかの村むらが点在てんざいし、その中なかには村むらとしてはバルカン半島ばるかんはんとう最高さいこう地点ちてんのマラ・ツルナ・ゴーラ（Mala Crna Gora）村むらもある。この村むらはバルカン半島ばるかんはんとうの山村さんそんとしては典型てんけい的てきなもので、牛うしや羊ひつじの牧畜ぼくちくを主体しゅたいとする山岳さんがく民みんの生活せいかつが維持いじされている。牛うしや羊ひつじたちは山やまと調和ちょうわして何なに世紀せいきもの間あいだ暮くらしており、それはティトー政権せいけん下かのユーゴスラビアで環境かんきょうが悪化あっかしても変かわらなかった。そして、この地ちでは、ユーゴスラビアの2人ふたりの英雄えいゆうが生うまれている。ラドイェ・ダキッチ（Radoje Dakić）とヴラディミル・シプチッチである。

ドゥルトミル国立こくりつ公園こうえんは、特とくに密猟みつりょうによって脅おびやかされている動物どうぶつたちのために、より首尾しゅび一貫いっかんした方針ほうしんでもって保護ほごされるべきである。密猟みつりょうを行おこなっているのは、公園こうえんに元もとから住すんでいた人々ひとびと以外いがいの近隣きんりん住民じゅうみんや、ボスニア・ヘルツェゴビナから来きた人々ひとびとであったが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争ふんそうの影響えいきょうでカラシニコフなどの自動じどう小銃しょうじゅうを携たずさえた密猟みつりょう者しゃたちが流入りゅうにゅうしてから、情勢じょうせいはより一層いっそう悪化あっかした。彼かれらは群むれを虐殺ぎゃくさつすることをためらわなかったからである。1994年ねんには4000頭とういたシャモアは、2005年ねんには600頭とうにまで減少げんしょうした。公園こうえんの管理かんり側がわには対抗たいこうしうる武器ぶき類るいはなく、行政ぎょうせいの腐敗ふはいも密猟みつりょうを助長じょちょうする結果けっかになっている。

世界せかい遺産いさん

1980年ねんに「ドゥルミトル国立こくりつ公園こうえん」が世界せかい遺産いさんに登録とうろくされた（ID100）。当初とうしょの登録とうろく面積めんせきは32000 ha だったが、2005年ねんに34000 ha に拡大かくだいされた。

上記じょうきの通とおり、密猟みつりょうなどの問題もんだいはあるものの、2007年ねんの第だい31回かい世界せかい遺産いさん委員いいん会かい終了しゅうりょう時点じてんでは、危機きき遺産いさんリストには挙あげられていない。

登録とうろく基準きじゅん

この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

• (7) ひときわすぐれた自然しぜん美び及および美的びてきな重要じゅうよう性せいをもつ最高さいこうの自然しぜん現象げんしょうまたは地域ちいきを含ふくむもの。
• (8) 地球ちきゅうの歴史れきし上じょうの主要しゅような段階だんかいを示しめす顕著けんちょな見本みほんであるもの。これには生物せいぶつの記録きろく、地形ちけいの発達はったつにおける重要じゅうような地学ちがく的てき進行しんこう過程かてい、重要じゅうような地形ちけい的てき特性とくせい、自然しぜん地理ちり的てき特性とくせいなどが含ふくまれる。
• (10) 生物せいぶつ多様たよう性せいの本来ほんらい的てき保全ほぜんにとって、もっとも重要じゅうようかつ意義いぎ深ふかい自然しぜん生息せいそく地ちを含ふくんでいるもの。これには科学かがく上じょうまたは保全ほぜん上じょうの観点かんてんから、すぐれて普遍ふへん的てき価値かちを持もつ絶滅ぜつめつの恐おそれのある種しゅの生息せいそく地ちなどが含ふくまれる。