ハワード・ハンソン

ハワード・ハンソン
生誕せいたん	(1896-10-28) 1896年ねん10月28日にち
出身しゅっしん地ち	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくネブラスカ州しゅう
死没しぼつ	(1981-02-26) 1981年ねん2月がつ26日にち（84歳さい没ぼつ）
学歴がくれき	インスティテュート・オヴ・ミュージック・アート
ジャンル	クラシック音楽おんがく
職業しょくぎょう	作曲さっきょく家か・指揮しき者しゃ・教育きょういく者しゃ

ワード・ハンソン

ハワード・ハンソン（Howard Harold Hanson, 1896年ねん10月28日にち - 1981年ねん2月がつ26日にち）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの作曲さっきょく家か・指揮しき者しゃ・教育きょういく者しゃ。サミュエル・バーバーと並ならんで、20世紀せいきを代表だいひょうする保守ほしゅ的てきな新しんロマン主義しゅぎ音楽おんがくの作曲さっきょく家かとして知しられる。好このんで北欧ほくおう文化ぶんかを題材だいざいとするため、「アメリカのシベリウス」の異名いみょうをとる。ミドルネームは一般いっぱん的てきには使用しようされない。

生涯しょうがい

ネブラスカ州しゅうワフーにおいて、スウェーデン系けい移民いみんの両親りょうしんの下したに生うまれる。幼児ようじ期きに母親ははおやに音楽おんがくの手てほどきを受うける。1911年ねんに地元じもとワフーのルーサー・カレッジ（現げんミッドランド大学だいがく）を卒業そつぎょうした後のち、1914年ねんにニューヨークのインスティテュート・オヴ・ミュージック・アートにおいて、音楽おんがく理論りろん家かでボストン楽らく派はの代弁だいべん者しゃであったパーシー・ゲチアス（Percy Goetschius）に学まなぶ。その後ごにノースウェスタン大学だいがくに通かよい、教会きょうかい音楽おんがくの専門せんもん家かピーター・ラトキンと、アーン・オールドバーグに作曲さっきょくを師事しじする。その間あいだ、ピアノやチェロも学まなぶ。1916年ねんにノースウェスタン大学だいがくから芸術げいじゅつ学がく学士がくし号ごうを取得しゅとくし、助手じょしゅとして教鞭きょうべんを執とり始はじめる。同年どうねん、カリフォルニア州しゅうパシフィック・カレッジにおいて、音楽おんがく理論りろんと作曲さっきょくの教師きょうしとして、初はじめてフルタイムの地位ちいを得え、3年ねん後ごの1919年ねんには、同校どうこうファインアーツ音楽おんがく院いんの学部がくぶ長ちょうに選任せんにんされた。

1920年ねんに《カリフォルニアの林はやしの劇げき》（The California Forest Play ）を作曲さっきょくし、国内こくないで注目ちゅうもくを浴あびる。カリフォルニア時代じだいには、初期しょきのたくさんの管弦楽かんげんがく曲きょくや室内楽しつないがくが作曲さっきょくされ、《室内しつない協奏曲きょうそうきょく》（Concerto da Camera ）や《交響楽こうきょうがくのための伝説でんせつ曲きょく》（Symphonic Legend ）、《交響こうきょう的てき狂詩曲きょうしきょく》（Symphonic Rhapsody ）に加くわえて、《クリスマス・シーズンの2つの小曲しょうきょく》（Two Yuletide Pieces ）や《スカンジナビア風ふう組曲くみきょく》などのようなピアノ曲きょくもいくつか作曲さっきょくされた。ちなみに後者こうしゃのピアノ曲きょくは、ルター派はと北欧ほくおうの遺産いさんをたたえるために作曲さっきょくされた。

1921年ねんには、《カリフォルニアの林はやしの劇げき》と交響こうきょう詩し《夜明よあけ前まえ》（Before the Dawn ）により、アメリカ・ローマ大賞たいしょうの最初さいしょの受賞じゅしょう者しゃとなった。この賞金しょうきんのおかげで、ハンソンはイタリアに3年ねんにわたって滞在たいざいした。イタリア時代じだいに《単一たんいつ楽章がくしょうによる弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょく》（Quartet in One Movement ）や、合唱がっしょう曲きょく《永久えいきゅうの光ひかり》（Lux aeterna ）、《ベオウルフの哀歌あいか》（The Lament for Beowulf ）、交響こうきょう曲きょく第だい1番ばん『北きた欧風おうふう』を作曲さっきょくした。この交響こうきょう曲きょくの初演しょえんは、1923年ねん5月がつ30日にちに、作曲さっきょく者しゃ自身じしんの指揮しきでイタリアで初演しょえんされた。ローマでハンソンに管弦楽かんげんがく法ほうを指導しどうしたのはオットリーノ・レスピーギである。

ローマから帰国きこくしてすぐ指揮しき活動かつどうに取とりかかり、ニューヨークで自作じさくの音おと詩し《北きたと西にし》（North and West ）を手てずから初演しょえんする。1924年ねんにニューヨーク州しゅうモンロー郡ぐんロチェスターにおいて自作じさくの交響こうきょう曲きょく第だい1番ばんを初演しょえんしたところ、コダック社しゃの創業そうぎょう者しゃジョージ・イーストマンの注目ちゅうもくを惹ひき、イーストマン音楽おんがく学校がっこうの校長こうちょう職しょくに選任せんにんされる。以降いこう40年ねんにわたって、ハンソンはその地位ちいを守まもりながら、同校どうこうをアメリカ随一ずいいちの音楽おんがく学校がっこうの一ひとつへと育そだて上あげることとなった。これを実現じつげんするに当あたって、カリキュラムを改訂かいていし、より良よい教師きょうしを獲得かくとくし、学内がくないオーケストラを磨みがき上あげている。しかも、アメリカ人じん教師きょうしとヨーロッパ出身しゅっしんの教師きょうしのバランスを心こころがけたが、このためみすみすバルトークをとり逃にがすことになった。

1925年ねんにハンソンはアメリカ人じん作曲さっきょく家か管弦楽かんげんがく演奏えんそう会かいを設立せつりつした。その後ごに、ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんの一流いちりゅうと認みとめられた演奏えんそう家かと、イーストマン音楽おんがく学校がっこうから選抜せんばつされた学生がくせいを糾合きゅうごうして、イーストマン＝ロチェスター交響こうきょう楽団がくだんを設立せつりつし、アメリカ音楽おんがくフェスティバルを催もよおした。同どう交響こうきょう楽団がくだんとは数すう多おおくの録音ろくおんを残のこし、自作じさくのほかに、ジョン・ノールズ・ペイン、ジョン・オールデン・カーペンター、チャールズ・トムリンソン・グリフス、ダグラス・ムーア、ウォルター・ピストン、ウィリアム・グラント・スティルらの作品さくひんを録音ろくおんした。ハンソンはイーストマン音楽おんがく学校がっこうに在任ざいにん中ちゅうに、500名めい以上いじょうのアメリカ人じん作曲さっきょく家かによる2000曲きょく以上いじょうの作品さくひんを初演しょえんしたことで評価ひょうかを受うけている。

セルゲイ・クーセヴィツキーによるボストン交響こうきょう楽団がくだん設立せつりつ50周年しゅうねん記念きねん作品さくひんの委嘱いしょくに応おうじて、交響こうきょう曲きょく第だい2番ばん『ロマンティック』が作曲さっきょくされ、1930年ねん11月28日にちに初演しょえんされた。これは最もっとも有名ゆうめいなハンソン作品さくひんの一ひとつであり、SF映画えいが『エイリアン』の幕切まくぎれにも伴奏ばんそう音楽おんがくとして使つかわれたほか、インターローチェン芸術げいじゅつセンターにおいて、演奏えんそう会かいの前後ぜんごに、いわば「テーマ音楽おんがく」として流ながされている。

ハンソンのオペラ《メリー・マウント》（Merry Mount ）は、アメリカ人じん作曲さっきょく家かによって作曲さっきょくされ、アメリカ人じん台本だいほん作家さっかによってアメリカ的てきな筋立すじだてが創つくられたために、「最初さいしょのアメリカ・オペラ」と呼よばれている。初演しょえんは1934年ねんにニューヨークのメトロポリタン歌劇かげき場じょうにおいて、ほとんどがアメリカ人じんという顔かおぶれによって行おこなわれた。

ハンソンは1929年ねんから翌よく1930年ねんまで音楽おんがく教育きょういく者しゃ国立こくりつ協会きょうかいの総裁そうさいを務つとめ、1935年ねんにはthe National Institute of Arts and Letters会員かいいんとなり、1935年ねんから1939年ねんまで音楽おんがく学校がっこう国立こくりつ協会きょうかいの総裁そうさいに就任しゅうにんした。1938年ねんにはスウェーデン王立おうりつアカデミー会友かいゆうに選えらばれた。これは、最初さいしょのスウェーデン系けい開拓かいたく民みんのデラウェア到着とうちゃく300周年しゅうねん記念きねん作品さくひん《開拓かいたく者しゃの賛歌さんか》（The Hymn of the Pioneers ）に対たいする功労賞こうろうしょうであった。1944年ねんには、交響こうきょう曲きょく第だい4番ばん『レクィエム』によりピューリッツァー賞しょうを受賞じゅしょうした。

チャトーカ湖こ近郊きんこうの避暑ひしょ地ちでマーガレット・エリザベス・ネルソンと出逢であい、《フルートとハープ、弦楽げんがく合奏がっそうのためのセレナード》を彼女かのじょに献呈けんていする。1946年ねん7月がつ24日にちにマーガレットと結婚けっこんする。同年どうねん、1945年ねんにニューヨークのラジオ放送ほうそう局きょくWHAMで放送ほうそうされた一連いちれんの演奏えんそうに対たいして、ジョージ・フォスター・ピーボディー賞しょうを授与じゅよされた。1946年ねんから1962年ねんまでハンソンはユネスコで活躍かつやくし、《オーボエとピアノ（またはオーボエと弦楽げんがく合奏がっそう、ハープ）のための牧歌ぼっか》は、ユネスコの委嘱いしょくにより、1949年ねんのパリにおけるユネスコ国際こくさい評議ひょうぎ会かいのために作曲さっきょくされた。

1953年ねんには、イーストマン音楽おんがく学校がっこうの学生がくせいの作品さくひんを表彰ひょうしょうするため、エドワード・ベンジャミン賞しょうの設立せつりつに助力じょりょくした。提出ていしゅつ作品さくひんはハンソンによって査読さどくされ、優勝ゆうしょう者しゃはハンソンのレコードで取とり上あげられることになった。

イーストマン・ウインド・アンサンブルの指揮しき者しゃ、フレデリック・フェネルは、ハンソンの最初さいしょの吹奏楽すいそうがく曲きょく《コラールとアレルヤ》（1954年ねん）を評ひょうして、「私わたしの20年ねんの指揮しき活動かつどうにおいて、一番いちばんの待望たいぼうの吹奏楽すいそうがく作品さくひん」と述のべた。この作品さくひんは、今いまなおニューヨーク州しゅう学校がっこう音楽おんがく協会きょうかいにおいて、ハイスクールの吹奏楽すいそうがく団だんに対たいする課題かだい曲きょくとされており、またハンソンの最もっとも頻繁ひんぱんに録音ろくおんされる作品さくひんの一ひとつとなっている。

1960年ねんには、『近代きんだい音楽おんがくの和声わせいの素材そざい〜平均へいきん律りつ音階おんかいのための源泉げんせん』を上梓じょうしした。ハンソンは決けっして同どう時代じだいの新しん音楽おんがくを好このまなかったにもかかわらず、同書どうしょはピッチクラス理論りろんに基礎きそを与あたえることとなった。同年どうねんから1964年ねんまでの間あいだ、音楽おんがく教育きょういく国民こくみん評議ひょうぎ会かいの理事りじ会かいに出席しゅっせきする。1961年ねんから翌よく1962年ねんまで、学生がくせいオーケストラであるイーストマン・フィルハーモニアを率ひきいて、パリ、カイロ、モスクワ、ウィーンなどの都市としで演奏えんそう旅行りょこうを行おこなった。1964年ねんにイーストマン音楽おんがく学校がっこうを退職たいしょく後ごも、同校どうこうとの関係かんけいは続つづいた。

ウォルト・ホイットマンの詩しによるカンタータ《民主みんしゅ主義しゅぎの歌うた》（Song of Democracy ）は、1969年ねんに次期じきアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうリチャード・ニクソンの就任しゅうにん記念きねん演奏えんそう会かいで初演しょえんされ、ハンソンはその日ひのことを、アメリカ音楽おんがくのみで埋うめ尽つくされた初はじめての就任しゅうにん記念きねん演奏えんそう会かいだったと誇ほこらしげに述のべた。

イーストマン＝コダック社しゃはハンソンの業績ぎょうせきを称となえて、10万まんドルに相当そうとうする証券しょうけんを1976年ねんにイーストマン音楽おんがく学校がっこうに贈与ぞうよし、ハンソンはこの贈おくり物ものをイーストマン・アメリカ音楽おんがく学校がっこうの基金ききんに用もちいるべく明文化めいぶんかした。

ハンソンは80歳さい代だいになっても、ニューヨーク州しゅうロチェスターに没ぼっするまで、指揮しき活動かつどうを続つづけた。

作風さくふうと主要しゅよう作品さくひん

ハンソンは現在げんざい、新しんロマン主義しゅぎの立場たちばによる20世紀せいきのアメリカ人じん交響曲こうきょうきょく作家さっかとして知しられている。ハンソンは、当代とうだいのモダニズム芸術げいじゅつに常々つねづね反感はんかんを抱だいていた。リズムと色彩しきさいの乱舞らんぶ、線せん的てきなポリフォニーの躍動やくどうに特徴付とくちょうづけられる同どう時代じだいの音楽おんがくへの反感はんかんは、旋律せんりつ美びと、安定あんていした和声わせい進行しんこうにもとづく抒情じょじょう的てき・伝統でんとう的てきな表現ひょうげんへと結実けつじつすることになった。ハンソンのロマン主義しゅぎへの耽溺たんできは、18世紀せいきのチェコ系けい移民いみんによる作品さくひんや、チャドウィックやマクダウェルらの作品さくひんを手てずから指揮しきして録音ろくおんした姿勢しせいにも現あらわれている。ハンソンの作品さくひんは、著いちじるしく拡張かくちょうされているとはいえ調ちょう的てきである。

その一方いっぽうで指揮しき者しゃとしては、デイヴィッド・ダイアモンドの《モーリス・ラヴェルに寄よせる悲歌ひか》を「あまりにも現代げんだい的てきである」と毒どくづきながらも、指揮しき者しゃとしてこれを初演しょえんし、成功せいこうに導みちびくなどの功績こうせきもあった。ロジャー・セッションズやアラン・ホヴァネスのような作曲さっきょく家かも、同どう時代じだいのアメリカ音楽おんがくを擁護ようごするハンソンの姿勢しせいに恩恵おんけいを受うけている（またハンソンが人間にんげん的てきにも無私むしで親切しんせつだったことは、友人ゆうじんやかつての学生がくせいが証言しょうげんしている）。

• オペラ
  • メリー・マウント （Merry Mount ） （1930年代ねんだい前半ぜんはん、1934年ねん初演しょえん）

• カンタータ、オラトリオ
  • ベオウルフの哀歌あいか （Lament of Beowulf ） 作品さくひん25（1925年ねん）
  • 民主みんしゅ主義しゅぎの歌うた （Song of Democracy ）

• 交響曲こうきょうきょく
  • 第だい1番ばん ホ短調たんちょう《北きた欧風おうふう》（1922年ねん）
  • 第だい2番ばん（1930年ねん）
  • 第だい3番ばん（1936年ねん - 1938年ねん）
  • 第だい4番ばん 《レクィエム》作品さくひん34（1943年ねん）
  • 第だい5番ばん 《神聖しんせいなる交響曲こうきょうきょく》（Sinfonia Sacra ）作品さくひん43（1954年ねん）
  • 第だい6番ばん（1967年ねん - 1968年ねん）
  • 第だい7番ばん 《海うみの交響曲こうきょうきょく》（A Sea Symphony ） （1977年ねん、実質じっしつ的てきに交響こうきょう的てきカンタータ）

• 管弦楽かんげんがく曲きょく
  • 管弦楽かんげんがく組曲くみきょく《メリー・マウント》作品さくひん31
  • ピアノ協奏曲きょうそうきょく ト長調とちょうちょう 作品さくひん36（1948年ねん）
  • セルゲイ・クーセヴィツキー追悼ついとうの悲歌ひか （Elegy in Memory of Serge Koussevitsky ）作品さくひん41（1955年ねん）
  • 交響楽こうきょうがくのための《モザイク》 （Mosaics ）（1957年ねん - 1958年ねん）
  • ディエス・ナタリス（1967年ねん）

• 室内しつない合奏がっそうのための作品さくひん
  • フルート、ハープ、弦楽げんがく合奏がっそうのためのセレナード 作品さくひん35（1946年ねん）
  • オーボエ、ハープ、弦楽げんがく合奏がっそうのためのパストラール 作品さくひん38（1949年ねん）
  • ピアノと弦楽げんがく合奏がっそうのための《青年せいねん時代じだいの主題しゅだいによる幻想げんそう的てき変奏曲へんそうきょく》（Fantasy Variations on a Theme of Youth ）（1951年ねん）

• 吹奏楽すいそうがく曲きょく
  • コラールとアレルヤ（1954年ねん）
  • ディエス・ナタリス（1972年ねん） 上記じょうきの管弦楽かんげんがく曲きょくを編曲へんきょく（改作かいさく）
  • ラウデ（1975年ねん）
  • 若わかい作曲さっきょく家かのための6音おと音階おんかい入門にゅうもん（Young Composer's Guide To The Six Tone Scale）（1978年ねん、イーストマン音楽おんがく学校がっこう創立そうりつ50周年しゅうねん記念きねんのために作曲さっきょく）