レーザー

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レーザー(赤色あかいろ緑色みどりいろ青色あおいろ
コンサート演出えんしゅつもちいられるレーザー
He-Ne レーザー
典型てんけいてきなレーザーの構成こうせい要素ようそ
1. レーザー媒質ばいしつ
2. 励起れいきようエネルギー
3. ぜん反射はんしゃきょう
4. 出力しゅつりょく結合けつごうきょう英語えいごばん
5. レーザービーム

レーザー (えい: laser) とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation誘導ゆうどう放出ほうしゅつによるひかり増幅ぞうふく放射ほうしゃ)の頭字かしらじ(アクロニム)であり、指向しこうせい収束しゅうそくせいすぐれた、ほぼ単一たんいつ波長はちょう電磁波でんじはコヒーレントこう)を発生はっせいさせる装置そうちである。レーザとも表記ひょうきされる[ちゅう 1]。レザーとも表記ひょうきされる場合ばあいもある[1]

レーザーの発明はつめいにより、非線形ひせんけい光学こうがくという学問がくもんまれた。発生はっせいする電磁波でんじはは、可視かしこうとはかぎらない。紫外線しがいせんXせんなどのよりみじか波長はちょう、また赤外線せきがいせんのようなよりなが波長はちょうひかり装置そうちもある。ミリより波長はちょうなが電磁波でんじは放射ほうしゃするものはメーザーぶ。

原理げんり[編集へんしゅう]

レーザーこうは、コヒーレントこう発生はっせいさせるレーザー発振器はっしんきもちいて人工じんこうてきつくられるひかりである。

レーザー発振器はっしんきは、キャビティ(ひかり共振きょうしん)と、そのなか設置せっちされた媒質ばいしつ、および媒質ばいしつをポンピング(電子でんしをよりたかエネルギーじゅんげること)するための装置そうちから構成こうせいされる。キャビティは典型てんけいてきには、2まいかがみかいった構造こうぞうっている。はん波長はちょうがキャビティながさの整数せいすうぶんいちとなるようなひかりは、キャビティないをくりがえ往復おうふくし、定常波ていじょうは形成けいせいする。媒質ばいしつはポンピングにより、吸収きゅうしゅうよりも誘導ゆうどう放出ほうしゅつほう優勢ゆうせいな、いわゆる反転はんてん分布ぶんぷ状態じょうたい形成けいせいする。すると、キャビティないひかり媒質ばいしつ通過つうかするたびに誘導ゆうどう放出ほうしゅつにより増幅ぞうふくされ、とくひかりがキャビティに共振きょうしん定常波ていじょうは形成けいせいしている場合ばあいには再帰さいきてき増幅ぞうふくおこなわれる。

キャビティを形成けいせいするかがみのうちいちまいはんとおるきょうにしておけば、そこから一部いちぶひかり外部がいぶすことができ、レーザーこうられる。外部がいぶしたり、キャビティないでの吸収きゅうしゅう散乱さんらんなどによりキャビティないからうしなわれる光量ひかりりょうと、誘導ゆうどう放出ほうしゅつにより増加ぞうかする光量ひかりりょうとがっていれば、レーザーこうはキャビティから継続けいぞくてき発振はっしんされる。

媒質ばいしつ反転はんてん分布ぶんぷ形成けいせいするため、さんじゅんモデルよんじゅんモデルなどの量子力学りょうしりきがくてきエネルギー構造こうぞうっている必要ひつようがある。媒質ばいしつのポンピングは、光励起ひかりれいき放電ほうでん化学かがく反応はんのう電子でんし衝突しょうとつなど、さまざまな方法ほうほうおこなわれる。光励起ひかりれいきもちいるもののなかにはのレーザー光源こうげんもちいる方法ほうほうもある。また、半導体はんどうたいレーザーでは、ポンピングは電流でんりゅう注入ちゅうにゅうによりおこなわれる。

1958ねんC・H・タウンズA・L・ショウロウによって理論りろんてき実現じつげん可能かのうせい指摘してきされ、1960ねん5月16にちT・H・メイマンルビー結晶けっしょうによるレーザー発振はっしんはじめて実現じつげんした。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

干渉かんしょうせい(コヒーレンス)[編集へんしゅう]

レーザーこう特徴とくちょうづける性質せいしつのうちもっと重要じゅうようなのは、そのたかコヒーレンス干渉かんしょうせい)である。レーザーこうのコヒーレンスは、空間くうかんてきコヒーレンスと時間じかんてきコヒーレンスにけてかんがえることができる。

ひかり空間くうかんてきコヒーレンスは、ひかり波面はめん一様いちようさをはか尺度しゃくどである。レーザーこうはそのたか空間くうかんてきコヒーレンスのゆえに、ほぼ完全かんぜん平面へいめん球面きゅうめんつくることができる。このためレーザーこう長距離ちょうきょり拡散かくさんせずに伝播でんぱしたり、非常ひじょうちいさなスポットに収束しゅうそくしたりすることが可能かのうになる。この性質せいしつは、レーザーポインターや照準しょうじゅん、またひかりディスクのピックアップ、加工かこう用途ようと光通信ひかりつうしんなど様々さまざま応用おうようするじょう重要じゅうようである。空間くうかんてきにコヒーレントなひかりは、白熱はくねつとうなどの通常つうじょう光源こうげん波長はちょうオーダーのおおきさをピンホールもちいることでもつくすことが出来できる。しかし、この方法ほうほうでは光源こうげんからはなたれたひかりのごく一部いちぶしか利用りようできないため、実用じつようてき強度きょうどることがむずかしい。空間くうかんてきにコヒーレントなひかり容易ようい実用じつようてき強度きょうどられることがレーザーの最大さいだい特長とくちょうのひとつである。

一方いっぽう時間じかんてきコヒーレンスは、ひかり電場でんじょう周期しゅうきせいがどれだけながたもたれるかをあらわ尺度しゃくどである。時間じかんてきコヒーレンスのたかいレーザーこうは、マイケルソン干渉かんしょうけいなどでおおきなひかりあたえて干渉かんしょうさせた場合ばあいでも、鮮明せんめい干渉かんしょうしまることが出来できる。干渉かんしょうしまることの出来でき最大さいだいひかりをコヒーレンスちょうび、時間じかんをコヒーレンス時間じかんぶ。レーザーの時間じかんてきコヒーレンスは、レーザーの単色たんしょくせい密接みっせつ関係かんけいがある。一般いっぱんに、時間じかんてきコヒーレンスのたかひかりほど単色たんしょくせいい。とくに、完全かんぜん単色たんしょくこう電場でんじょう一定いってい周波数しゅうはすう三角さんかく関数かんすうであらわされるので、そのコヒーレントちょう無限むげんだいである。たか時間じかんてきコヒーレンスをつように配慮はいりょして設計せっけいされたレーザーは、ナトリウムランプなどよりもはるかに単色たんしょくせいしめす。レーザーの時間じかんてきコヒーレンスはレーザージャイロのように干渉かんしょう利用りようした応用おうようにおいて重要じゅうようである。また、レーザーの単色たんしょくせいは、レーザー冷却れいきゃくなどの用途ようと重要じゅうようである。

パルス発振はっしん[編集へんしゅう]

レーザーのもうひとつ重要じゅうよう特徴とくちょうは、ナノびょうフェムトびょう程度ていどの、時間じかんはばみじかいパルスこうることが可能かのうてんである。チタンサファイヤレーザーの高次こうじ高調こうちょう発生はっせいなどではアトびょう時間じかんはば実現じつげんされている。レーザー以外いがいひかりパルス光源こうげんとしてフラッシュランプ(キセノンランプ)、LEDなどがあるが、レーザーにくらべて出力しゅつりょくひくい。

パルスレーザーはみじか時間じかんはばなかにエネルギーを集中しゅうちゅうさせることが出来できるため、たかいピーク出力しゅつりょくることができる。レーザーかく融合ゆうごう用途ようとなどのとくおおがかりなものでは、ペタワットクラスのレーザーも使つかわれる。また時間じかんはばみじかいレーザーパルスは、時間じかんとエネルギーの確定かくていせい関係かんけいのためひろいスペクトルはばつ。パルスレーザーは、時間じかん分解ぶんかい分光ぶんこう非線形ひせんけい光学こうがく、またレーザーかく融合ゆうごうなどの分野ぶんや重要じゅうよう道具どうぐである。レーザーをもちいた応用おうよう物理ぶつり研究けんきゅう分野ぶんやなどでは、ボーズアインシュタイン凝縮ぎょうしゅくへパルスレーザーを使用しようすることで、かずろんじょう方程式ほうていしき物理ぶつり実験じっけん具現ぐげんすることに成功せいこうしている。フェムトびょうのパルスこう発振はっしんさせるため連続れんぞくこうからパルス発振はっしん変換へんかんさせるミラー(共振きょうしん内部ないぶかがみ)に半導体はんどうたい飽和ほうわ吸収きゅうしゅうミラー(SESAM)をもちいたレーザーも使用しようされている。

こう分離ぶんり解析かいせき時間じかんこう分解ぶんかい性能せいのう利得りとく応用おうようしながら必要ひつよう出力しゅつりょくたもつため、フィードバック制御せいぎょ機能きのう追加ついかされないシンプルな媒質ばいしつとして欧米おうべいではSESAMをもちいたシンプルなレーザーへのさらなる応用おうよう研究けんきゅう期待きたいされている。連続れんぞくこう反射はんしゃせず、ある程度ていど保持ほじしてめてからすというSESAMの特性とくせいはパルスレーザーに物理ぶつりてき消耗しょうもう変化へんかとしてあらわれる。この場合ばあい放熱ほうねつ管理かんりがレーザー自体じたい寿命じゅみょう利得りとく左右さゆうする。

歴史れきし[編集へんしゅう]

基盤きばんとなる理論りろん[編集へんしゅう]

1917ねんアルベルト・アインシュタイン論文ろんぶん Zur Quantentheorie der Strahlung放射ほうしゃ量子りょうしろんについて)がレーザーとメーザーの理論りろんてき基礎きそ確立かくりつした。アインシュタインは、電磁でんじ放射ほうしゃ吸収きゅうしゅう自然しぜん放出ほうしゅつ誘導ゆうどう放出ほうしゅつについてのかくりつ係数けいすう(アインシュタイン係数けいすう)にもとづいて、マックス・プランク輻射ふくしゃ公式こうしきからあらたな公式こうしきみちびした。

1928ねんRudolf W. Ladenburg誘導ゆうどう放出ほうしゅつおよびまけ吸収きゅうしゅうという現象げんしょう存在そんざいすることを確認かくにんした[2]

1939ねん、Valentin A. Fabrikant は誘導ゆうどう放出ほうしゅつ使つかって「みじかい」波長はちょう増幅ぞうふくできる可能かのうせい予言よげんした[3]

1947ねんウィリス・ラムR. C. Retherford水素すいそスペクトルにあきらかな誘導ゆうどう放出ほうしゅつ発見はっけんし、誘導ゆうどう放出ほうしゅつについて世界せかいはつのデモンストレーションをおこなった[2]

1950ねんアルフレッド・カストレル(1966ねんノーベル物理ぶつりがくしょう受賞じゅしょう)はひかりポンピングほう提案ていあんし、すうねんに Brossel、Winter ととも実験じっけん確認かくにんした[4]

メーザー[編集へんしゅう]

1953ねんチャールズ・タウンズは、大学院生だいがくいんせいの James P. Gordon と Herbert J. Zeiger ととも世界せかいはつのマイクロ増幅器ぞうふくき開発かいはつし、メーザーと名付なづけた。この装置そうちはレーザーと同様どうよう原理げんりもとづくが、赤外線せきがいせん可視かし光線こうせんではなくマイクロ増幅ぞうふくするものである。ただし、タウンズのメーザー連続れんぞく出力しゅつりょくができなかった。

おなごろソビエト連邦れんぽうニコライ・バソフアレクサンドル・プロホロフ独自どくじ量子りょうし振動しんどうについて研究けんきゅうし、2つのエネルギーじゅん使つかって連続れんぞく出力しゅつりょく可能かのうメーザー開発かいはつした。

これらのメーザーシステムは基底きてい状態じょうたいちることなく誘導ゆうどう放出ほうしゅつでき、したがって反転はんてん分布ぶんぷになっている。

1955ねん、プロホロフとバソフは反転はんてん分布ぶんぷつく手段しゅだんとしてじゅんけいひかりポンピングほう示唆しさし、それがのちにレーザーポンピングのおも手法しゅほうとなった。

1964ねん、タウンズ、バソフ、プロホロフは「量子りょうしエレクトロニクス分野ぶんや基本きほんてき貢献こうけんをし、メーザー・レーザーの原理げんりもとづく発振器はっしんき増幅器ぞうふくきをもたらした」としてノーベル物理ぶつりがくしょう受賞じゅしょうした。

タウンズは、ニールス・ボーアジョン・フォン・ノイマンイジドール・イザーク・ラービポリカプ・クッシュらがメーザーは理論りろんてき不可能ふかのうだと反対はんたいしていたことをかしている[5]

レーザー[編集へんしゅう]

1957ねんベル研究所けんきゅうじょつとめていたチャールズ・タウンズとアーサー・ショーローは、赤外線せきがいせんレーザーを真剣しんけん研究けんきゅうはじめた。研究けんきゅうすすむとかれらは赤外線せきがいせんをやめ、可視かし光線こうせん集中しゅうちゅうするようになった。当初とうしょこの概念がいねんは「光学こうがくメーザー」とばれていた。

1958ねん、ベル研究所けんきゅうじょ光学こうがくメーザーについての特許とっきょ出願しゅつがん同年どうねん、ショーローとタウンズはフィジカル・レビュー光学こうがくメーザーの理論りろん計算けいさん原稿げんこうおくり、それが掲載けいさいされた(Volume 112, Issue No. 6)。このとき取得しゅとくされた特許とっきょが、レーザーにかんする基本きほん特許とっきょとなっている。

1958ねん、プロホロフも独自どくじ開放かいほう共振きょうしん使用しよう提案ていあんし、ソ連それん国内こくないでそれを発表はっぴょうした。

このころコロンビア大学ころんびあだいがく大学院生だいがくいんせいゴードン・グールドは、励起れいきしたタリウムのエネルギーじゅんについての学位がくい論文ろんぶんいていた。グールドはタウンズとって電磁でんじ放射ほうしゃ放出ほうしゅつについてはない、1957ねん11月に、"laser" や開放かいほう共振きょうしんのアイデアについてノートにいていた。

ベル研究所けんきゅうじょでは、ショーローとタウンズが開放かいほう共振きょうしん使つかったレーザーの設計せっけい合意ごういたっしていた。このとき、かれらはプロホロフの発表はっぴょうも、グールドの発表はっぴょうのアイデアもらなかった。

1959ねん学会がっかいで、ゴードン・グールドは論文ろんぶん The LASER, Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationなかはじめて "LASER" という言葉ことばおおやけにした[6][7]。グールドは、マイクロが "maser" なら、同様どうよう概念がいねんにはすべて "-aser" をうしろにつけ、ひかり (light) なら "laser"、Xせんなら "xaser"(ゼーザー)、紫外線しがいせんなら "uvaser" (ユヴェーザー)とぶことを想定そうていしていた。しかし、レーザー (laser) 以外いがい用語ようご定着ていちゃくしなかった。

グールドのノートにはレーザーの用途ようととして、分光ぶんこうほう干渉かんしょうほうレーダー原子核げんしかく融合ゆうごうなどがかれていた。かれはそのかんがえを発展はってんさせ、1959ねん4がつ特許とっきょ出願しゅつがんした。しかし米国べいこく特許とっきょ商標しょうひょうちょうはグールドの出願しゅつがん却下きゃっかし、1960ねんベル研究所けんきゅうじょ特許とっきょあたえた。そのため、28ねんにおよぶ訴訟そしょうとなった。グールドは1977ねんにマイナーな特許とっきょ勝利しょうりったが、ひかりポンピングとガス放電ほうでん使つかったレーザー装置そうちについての特許とっきょをグールドにあたえることを法廷ほうてい特許庁とっきょちょう命令めいれいしたのは1987ねんのことだった。

1960ねん5がつ16にち、カリフォルニアのヒューズ研究所けんきゅうじょセオドア・メイマンが、コロンビア大学ころんびあだいがくのタウンズやベル研究所けんきゅうじょのショーロー[8]やTRG (Technical Research Group) のグールドに先駆さきがけて、最初さいしょのレーザー発生はっせい装置そうち開発かいはつした[9][10]。メイマンのレーザー装置そうちは、ポンピングよう閃光せんこう放電ほうでんかん合成ごうせいルビー励起れいきさせるルビーレーザーであり、694ナノメートルの波長はちょうあかひかり発生はっせいさせる。しかし3じゅんレーザーであるため、パルス発振はっしんしかできなかった。

直後ちょくごイラン人物じんぶつ理学りがくしゃ Ali Javan と William R. Bennett、Donald Herriot が、ヘリウムネオン使つかったはつガスレーザー開発かいはつした。Javanは1993ねんAlbert Einstein World Award of Science受賞じゅしょうした。

また、ボソフとJavanは量子りょうし振動しんどうによる半導体はんどうたいレーザー概念がいねん提案ていあんした。

1962ねんRobert N. Hallガリウム使つかった半導体はんどうたいレーザー素子そし開発かいはつし、850ナノメートルのちか赤外線せきがいせんレーザー発生はっせい成功せいこうした。直後ちょくごニック・ホロニアック可視かしこう半導体はんどうたいレーザーの実験じっけん成功せいこうした。初期しょきのガスレーザーと同様どうよう初期しょき半導体はんどうたいレーザーはパルス発振はっしんしかできず、液体えきたい窒素ちっそ冷却れいきゃくする必要ひつようがあった。

1970ねんソ連それんジョレス・アルフョーロフはやしいむつよしベル研究所けんきゅうじょの Morton Panish がそれぞれ独自どくじ常温じょうおん連続れんぞく発振はっしんできるヘテロ接合せつごう構造こうぞう使つかった半導体はんどうたいレーザー素子そし開発かいはつした。

1985ねん、チャープパルス増幅ぞうふく(Chirped Pulse Amplification ; CPA)ほう[11]提案ていあんされた。これにより、原子げんし分子ぶんしない電子でんしかくからける電場でんじょう以上いじょうこう強度きょうどレーザーの発振はっしん可能かのうとなった。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

媒質ばいしつによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

レーザーは媒質ばいしつ誘導ゆうどう放出ほうしゅつこす物質ぶっしつ)によっていくつかの種類しゅるいけられる。

固体こたいレーザー
媒質ばいしつ固体こたいであるものを固体こたいレーザーという。通常つうじょう結晶けっしょう構成こうせいする原子げんし一部いちぶ元素げんそわった構造こうぞう人工じんこう結晶けっしょうもちいられ、代表だいひょうてきなものにクロム添加てんかしたルビー結晶けっしょうによるルビーレーザーや、YAG結晶けっしょうちゅうイットリウム希土類きどるい元素げんそ置換ちかんした種々しゅじゅYAGレーザーがある。ネオジム添加てんかYAGをもちいたNd:YAGレーザー波長はちょうが1064nmの赤外線せきがいせんはっする。ただし非線形ひせんけい光学こうがく結晶けっしょうもちいて高調こうちょう発生はっせいさせることによって、波長はちょう532nmの緑色みどりいろひかりSHG)や355nmの紫外線しがいせん(THG)などもすことができる。また、サファイアチタン添加てんかした結晶けっしょう媒質ばいしつ使用しようしたチタンサファイアレーザーがあり、ちょうたんパルス発振はっしん可能かのうである。
固体こたいレーザーの励起れいき光源こうげんとしてレーザーダイオードをもちいたものをDPSSL(Diode Pumped Solid State Laser、ダイオード励起れいき固体こたいレーザー)という。
液体えきたいレーザー
媒質ばいしつ液体えきたいであるレーザーを液体えきたいレーザーといい、色素しきそ分子ぶんし有機ゆうき溶媒ようばい(アルコールなど)にかした有機ゆうき色素しきそ媒質ばいしつとした色素しきそレーザーがよく利用りようされている。色素しきそレーザーの利点りてん使用しようする色素しきそ共振きょうしん調節ちょうせつによって発振はっしん波長はちょう自由じゆうに、かつ連続れんぞくてき選択せんたくできることである。色素しきそレーザーは1970年代ねんだい以降いこうちょうたんパルスレーザーとしてよくもちいられたが、より性能せいのう固体こたいレーザーにえられていった。
ガスレーザー
媒質ばいしつ気体きたいのものはガスレーザー(気体きたいレーザー)とばれる。中性ちゅうせい原子げんしレーザー(ヘリウムネオンレーザー(He-Ne。赤色あかいろ)など)、イオンレーザー(アルゴンイオンレーザー(Ar-ion。おも青色あおいろまたは緑色みどりいろ)など)、分子ぶんしレーザー(炭酸たんさんガスレーザーあかがい)、窒素ちっそレーザーむらさきがい)など)、エキシマレーザーおもむらさきがい)、金属きんぞく蒸気じょうきレーザー金属きんぞく蒸気じょうき電子でんしせんとう励起れいきして誘導ゆうどう放出ほうしゅつする。ヘリウムカドミニウムレーザーなど)などにけることができる。化学かがくレーザー気体きたいレーザーにふくめるときもある。
半導体はんどうたいレーザー
媒質ばいしつ半導体はんどうたいであるもの固体こたいレーザーとは区別くべつされ、半導体はんどうたいレーザーあるいはレーザーダイオード(LD)とばれている。レーザーポインターひかりディスクきなどてい出力しゅつりょくでもよいレーザーにおも使用しようされている。安価あんか小型こがたなため、利用りようひろまっている。
自由じゆう電子でんしレーザー
真空しんくうちゅう光速こうそくちか自由じゆう電子でんし磁界じかいくわ進路しんろえるとき発生はっせいする放射光ほうしゃこう利用りようするレーザーは、自由じゆう電子でんしレーザーばれる。
化学かがくレーザー
化学かがく反応はんのう励起れいきによる誘導ゆうどう放出ほうしゅつ利用りようするレーザーを化学かがくレーザーぶ。酸素さんそ-ヨウ化学かがくレーザー(en)やフッ水素すいそレーザーなどがある。こう出力しゅつりょくのレーザーを発振はっしんできる。
ファイバーレーザー
希土類きどるい添加てんかして利得りとく広帯域こうたいいきさせたファイバーをレーザー媒質ばいしつとしてもちいる。安価あんかでコンパクト・こう出力しゅつりょくちょうたんパルスを作成さくせいするには性能せいのう制限せいげんされるが、レーザー加工かこうによくもちいられる。また、光通信ひかりつうしん用途ようととしても利用りようされる。

発振はっしん方式ほうしきによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

レーザーはひかりつよさの時間じかんてき変化へんかでもけることができる。

断続だんぞくてきにレーザーこうパルスレーザーと、連続れんぞくてきにレーザーこうCWレーザー(Continuous wave laser)とに区別くべつすることができる。前者ぜんしゃは、複数ふくすう波長はちょう位相いそうをそろえて同時どうじ発振はっしんさせるモード同期どうきという手法しゅほうもちいるか、またはQスイッチという原理げんりもちいて、瞬間しゅんかんてき非常ひじょうつよいパワーをすことが可能かのうである。後者こうしゃはパルス動作どうさくらべると瞬間しゅんかんてきなパワーはひくいが、たか時間じかんてきコヒーレンスをることが可能かのうで、そのため干渉かんしょうなどの現象げんしょう観測かんそくしやすい。

波長はちょうによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

レーザーは発振はっしんされるひかり波長はちょうによって分類ぶんるいすることも出来できる。

おおくの場合ばあい使用しようされるレーザー媒質ばいしつによって、レーザーの発振はっしん波長はちょうはほぼまる。おおくのレーザー媒質ばいしつは、ごく限定げんていされた波長はちょう範囲はんいでしか利得りとくたないからである。ただし、色素しきそレーザーやチタンサファイアレーザーなど、ひろ波長はちょう範囲はんい利得りとく媒質ばいしつ存在そんざいする。これらの場合ばあい共振きょうしんちょうや、利得りとくスペクトルの形状けいじょうなどにより発振はっしん波長はちょうまる。また自由じゆう電子でんしレーザーでは、媒質ばいしつとなる電子でんしビームの利得りとく波長はちょう自由じゆうえらぶことが出来できるため、任意にんい波長はちょう発振はっしんすることができる。

赤外線せきがいせんレーザー
波長はちょうによっては、大気たいきちゅうでの減衰げんすいもっとちいさい
可視かし光線こうせんレーザー
たった場所ばしょ視認しにんすることが出来できるのでレーザーポインターなどに使用しようされている。
紫外線しがいせんレーザー
Xせんレーザー
軌道きどう電子でんし遷移せんい起源きげんとするものをXせんぶため、レーザーの原理げんりじょうガンマ線がんません領域りょういきであってもかたXせんレーザーとぶ。

大気たいきちゅうでの伝送でんそうてきした波長はちょう[編集へんしゅう]

大気たいきちゅう伝播でんぱするレーザーこうは、気体きたい分子ぶんしによる吸収きゅうしゅう散乱さんらんにより減衰げんすいされる。気体きたい分子ぶんしによる吸収きゅうしゅうすくない波長はちょう可視かしあかがい領域りょういき一部いちぶ存在そんざいし、大気たいきまどばれる。一方いっぽう気体きたい分子ぶんしによる散乱さんらん波長はちょうながひかりほどすくなくてすむ。このため、大気たいきちゅう長距離ちょうきょり伝送でんそうする用途ようとには、大気たいきまどなか発振はっしん波長はちょうをもつ赤外線せきがいせんレーザーがもちいられる。たとえば炭酸たんさんガスレーザーは、大気たいきちゅう伝送でんそうさせる用途ようとによくもちいられるレーザーのひとつである。

Xせんこう出力しゅつりょくレーザーを空気くうきちゅう照射しょうしゃすると、気体きたい分子ぶんしをプラズマさせ、プラズマから放射ほうしゃされるひかりることができる。このとき、レーザーのエネルギーは、空気くうきをプラズマさせることに使つかわれてはげしく減衰げんすいしてしまい、長距離ちょうきょり伝播でんぱさせることはむずかしい。

アイセーフレーザー[編集へんしゅう]

1.4μみゅーmから2.6μみゅーmまでの波長はちょうのレーザーこう角膜かくまく吸収きゅうしゅうされ、網膜もうまくまでたっしにくいため、マーケティングてきにこのように呼称こしょうされることがある。ただし、これらの波長はちょうのレーザーを「アイセーフ」と呼称こしょうすることは、実際じっさい安全あんぜんであるのは比較的ひかくてきよわ出力しゅつりょく連続れんぞくこうレーザーのみであるため、誤解ごかいまねく。これらの波長はちょうでも、出力しゅつりょくつよかったり、ピーク出力しゅつりょくたかいQスイッチレーザーなどでは、容易ようい角膜かくまくき,深刻しんこく肉眼にくがんへの障害しょうがいまねきうる。また、それほどの強度きょうどではなくても、肉眼にくがんへの損傷そんしょう想定そうていされる。 レーザー安全あんぜん規格きかく[12]においても、アイセーフレーザーはクラス1をあらわすと明記めいきされており、特定とくてい波長はちょうのレーザーをアイセーフと呼称こしょうすることへの危険きけんせいへの注意ちゅういがなされている。

応用おうよう[編集へんしゅう]

レーザーは、おおくの分野ぶんや利用りようされている。

安全あんぜん基準きじゅんとクラス[編集へんしゅう]

レーザー警告けいこくシンボル

レーザーは出力しゅつりょくひくいものでも、直視ちょくしすると失明しつめい危険きけんがあり注意ちゅうい必要ひつようである。国際こくさい機関きかんである国際電気こくさいでんき標準ひょうじゅん会議かいぎ(International Electro-technical Commission、略称りゃくしょうIEC)の60825-1「レーザー機器ききおよびその使用しようしゃのための安全あんぜん指針ししん」により、レーザー機器きき出力しゅつりょく光線こうせん波長はちょうなどによる、クラスけがなされており、クラスごと労働ろうどう衛生えいせい安全あんぜん管理かんり体制たいせい整備せいび必要ひつようとなる。

国内こくないにおける安全あんぜん基準きじゅん
JIS日本工業規格にほんこうぎょうきかく
アメリカにおける安全あんぜん基準きじゅん
ANSI米国べいこく規格きかく協会きょうかい
  • ANSI Z 136.1 「レーザーにかんする安全あんぜん使用しよう
FDA米国べいこく食品しょくひん医薬品いやくひんきょく
  • FDA 21CFR PART1040_10and1040.11 「保護ほご安全あんぜんのための放射線ほうしゃせん規制きせいほう

クラスけと制約せいやく条件じょうけん[編集へんしゅう]

上記じょうきJIS C 6802の平成へいせい17ねん改訂かいていもとにしたクラスけ。

クラス1
合理ごうりてき予見よけん可能かのう運転うんてんじょうきょう安全あんぜんであるレーザー。どのような光学こうがくけい(レンズや望遠鏡ぼうえんきょう)でしゅうひからしても、たいして安全あんぜんなレベルであり、クラス1であることをしめすラベルを以外いがいとく対策たいさく要求ようきゅうされていない。
クラス2
可視かしこうのみに規定きていされ、保護ほごは「まばたき」などの嫌悪けんお反応はんのうによりおこなわれることによりクラス1なみの安全あんぜん確保かくほされるレーザー。
クラス1M
合理ごうりてき予見よけん可能かのう運転うんてんじょうきょう安全あんぜんである302.5 - 4000nmの波長はちょう範囲はんいひかり放出ほうしゅつするレーザー。光学こうがくけいのぞかないかぎりは安全あんぜんなレベルである。
クラス2M
可視かしこうのみに規定きていされ、保護ほごは「まばたき」などの嫌悪けんお反応はんのうにより安全あんぜん確保かくほされるレーザー。光学こうがくけいのぞかないかぎりは安全あんぜんなレベルである。
クラス3R
直接ちょくせつのビームない観察かんさつ潜在せんざいてき危険きけんであるが、その危険きけんせいはクラス3Bレーザーにたいするものよりもひくいレーザー。製造せいぞうしゃ使用しようしゃたいする規制きせい対策たいさくがクラス3Bレーザーにたい緩和かんわされている。クラス1あるいはクラス2のAELの5ばい以内いないである。かぎやインタロックをける必要ひつようがないてんで、そのうえのクラスとはことなっている。
クラス3B
連続れんぞく発振はっしんレーザーで0.5W以下いか、パルスレーザーで10~5Jm/m~2以下いかのもの。直接ちょくせつることは危険きけんなレーザー。直視ちょくしをしなければ安全あんぜんなレベル。かぎやインタロックをける必要ひつようがある。使用しようちゅう警報けいほう表示ひょうじなどが必要ひつよう
クラス4
散乱さんらんされたひかりても危険きけんなレーザー。皮膚ひふたると火傷かしょうしょうじたり、ものたると火災かさいしょうじたりするおそれのあるものをふくむ。出射しゅっしゃしたビームはかならずブロックするなどの対策たいさく必要ひつようかぎやインタロックをけることや、使用しようちゅう警報けいほう表示ひょうじなどが必要ひつよう

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ JIS Z8301 では最後さいごばさないが、国語こくご表記ひょうき基準きじゅん文化庁ぶんかちょう)ではばす。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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  2. ^ a b Steen, W. M. "Laser Materials Processing", 2nd Ed. 1998.
  3. ^ Valentin Aleksandrovich Fabrikant (on the occasion of his 70th birthday) Journal of Applied Spectroscopy, Volume 27, Number 5, 1977ねん11月
  4. ^ The Nobel Prize in Physics 1966 Presentation Speech by Professor Ivar Waller. Retrieved 1 January 2007.
  5. ^ Charles H. Towns (1999). How the laser happened: adventures of a scientist (5. MASTER EXCITEMENT AND A TIME FOR REFLECTION)
  6. ^ Gould, R. Gordon (1959). “The LASER, Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation”. In Franken, P.A. and Sands, R.H. (Eds.). The Ann Arbor Conference on Optical Pumping, the University of Michigan, 15 June through 18 June 1959. pp. 128. OCLC 02460155 
  7. ^ Chu, Steven; Townes, Charles (2003). “Arthur Schawlow”. In Edward P. Lazear (ed.),. Biographical Memoirs. vol. 83. National Academy of Sciences. pp. 202. ISBN 0-309-08699-X 
  8. ^ Hecht, Jeff (2005). Beam: The Race to Make the Laser. Oxford University Press. ISBN 0-19-514210-1 
  9. ^ Maiman, T.H. (1960). “Stimulated optical radiation in ruby”. Nature 187 (4736): 493–494. doi:10.1038/187493a0. 
  10. ^ Townes, Charles Hard. “The first laser”. University of Chicago. 2008ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  11. ^ D. Strickland and G. Mourou, Opt. Commun. 56, 219 (1985)
  12. ^ JIS C 6802:2014 用語ようごおよ定義ていぎ 3.37

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]