中国ちゅうごく脳のう

中国ちゅうごく脳のう

中国ちゅうごく脳のう（ちゅうごくのう、China brain）は、哲学てつがくの一いち分野ぶんやである心しんの哲学てつがくの領域りょういきで議論ぎろんされる思考しこう実験じっけんのひとつ。中国ちゅうごく人民じんみん（ちゅうごくじんみん、Chinese Nation）とも呼よばれる。次つぎのような内容ないようである。

1. 中国人ちゅうごくじん全員ぜんいんに携帯けいたい電話でんわを渡わたす。
2. 一人ひとり一いち人にんに連絡れんらく先さきの電話でんわ番号ばんごうが書かかれたリストを渡わたす。
3. もし自分じぶんの携帯けいたい電話でんわが鳴なったら、自分じぶんが貰もらったリストにある番号ばんごうすべてに電話でんわをかけてもらう。
4. この電話でんわをかける作業さぎょうを、中国人ちゅうごくじん全員ぜんいんに延々のびのびとやり続つづけてもらう。

この作業さぎょうは全体ぜんたいとして、人間にんげんの脳のう活動かつどうのシミュレーションを実行じっこうしている。つまり

1. 携帯けいたい電話でんわを渡わたされた一人ひとり一いち人にんの中国人ちゅうごくじんは、実じつは脳のうの一ひとつ一ひとつの神経しんけい細胞さいぼうの役割やくわりを担になっている。
2. そしてそれぞれが持もつ電話でんわ番号ばんごうのリストは神経しんけい細胞さいぼう同士どうしのつながり（シナプス接合せつごう）の状態じょうたいを表あらわしている。
3. そして携帯けいたい電話でんわによるコールが神経しんけい細胞さいぼう間あいだでの情報じょうほうの伝達でんたつ（神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつの放出ほうしゅつ）を表あらわしている。

これにより中国人ちゅうごくじんたちによる巨大きょだいな携帯けいたい電話でんわのネットワークが、ある一ひとつの脳のうの動作どうさをシミュレートしている事こととなる。

• このとき、この巨大きょだいな携帯けいたい電話でんわネットワークに、意識いしきはあるだろうか？

この携帯けいたい電話でんわネットワークは、機能きのう的てきには人間にんげんの脳のうと同おなじように状態じょうたいが遷移せんいしていくだろうから、言語げんご的てきな出力しゅつりょく、身体しんたいへの出力しゅつりょくなどの信号しんごうなどは、人間にんげんの脳のうにおけるそれとまったく同様どうようになるはずである。問題もんだいはこうした中国人ちゅうごくじんの携帯けいたい電話でんわのネットワークは、赤あかを見みる体験たいけんをするのか？痛いたみの感かんじを経験けいけんするのか？という点てんである。つまり現象げんしょう意識いしき、クオリアなどと言いわれる主観しゅかん的てきな意識いしき体験たいけんを携帯けいたい電話でんわのネットワークが持もつかどうかである。

歴史れきし

この思考しこう実験じっけんの初期しょきのバージョンは1974年ねんにローレンス・デイヴィス（Lawrence Davis）によってまず論ろんじられ、その後ご1978年ねんにネド・ブロックによって論ろんじられた ブロックは中国ちゅうごく脳のうは現象げんしょう的てきな意味いみでの意識いしき（現象げんしょう意識いしき）は持もたないと主張しゅちょうした。これに対たいし意識いしきの現象げんしょう的てきな側面そくめんの実在じつざい性せいを否定ひていするダニエル・デネットは、中国ちゅうごく脳のうは機能きのう的てきに普通ふつうの脳のうと同様どうようの振ふる舞まいをするのだから、そこには意識いしきがある、機能きのう的てきな意味いみでの意識いしきがありそれ以上いじょうの問題もんだいはない、と主張しゅちょうした。

名称めいしょうは似にているが、1980年ねんにジョン・サールによって提出ていしゅつされた中国ちゅうごく語ごの部屋へやの思考しこう実験じっけんとは別べつの議論ぎろんである。ただしどちらも意識いしきや志向しこう性せいに関かんして機能きのう主義しゅぎや物理ぶつり主義しゅぎ的てきな観点かんてんからの説明せつめいの限界げんかいについて問とうている議論ぎろんである点てんで類似るいじしている。

関連かんれん項目こうもく

• 中国ちゅうごく脳のう計画けいかく
• 機能きのう主義しゅぎ
• 物理ぶつり主義しゅぎ
• チューリング・テスト
• 強つよいAI
• Blue Brain
• コネクトーム
• 意識いしきの境界きょうかい問題もんだい