中なか正紀まさき念ねん堂どう

中なか正紀まさき念ねん堂どう
中なか正紀まさき念ねん堂どう（2008年ねん10月がつ16日にち）
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	中なか正紀まさき念ねん堂どう
簡体字かんたいじ：	中正ちゅうせい纪念堂どう
拼音：	Zhōngzhèng Jìniàntáng
通用つうよう拼音：	Jhongjhèng Jìniàntáng
注ちゅう音符おんぷ号ごう：	ㄓㄨㄥ ㄓㄥˋ ㄐ｜ˋ ㄋ｜ㄢˋ ㄊㄤˊ
台湾たいわん語ご白話はくわ字じ：	Tiong chèng kí liām tn̂g
英文えいぶん：	National Chiang Kai-shek Memorial Hall

中なか正紀まさき念ねん堂どう
中華民国ちゅうかみんこく 文化ぶんか資産しさん
蔣介石せき座像ざぞうと儀仗ぎじょう隊たい（2005年ねん）
登録とうろく名称めいしょう	（古蹟こせき）臺灣たいわん民主みんしゅ紀き念ねん園その區く （文化ぶんか景観けいかん）中なか正紀まさき念ねん堂どう
種類しゅるい	その他た施設しせつ その他た場じょう域いき
等級とうきゅう	国定こくてい古蹟こせき 台北たいぺい市し文化ぶんか景観けいかん
文化ぶんか資産しさん登録とうろく 公告こうこく時期じき	（古蹟こせき）2007年ねん11月9日にち （文化ぶんか景観けいかん）2008年ねん3月17日にち
位置いち	中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん） 台北たいぺい市し中正ちゅうせい区く
建設けんせつ年代ねんだい	1976年ねん10月がつ31日にち - 1980年ねん3月がつ31日にち

中なか正紀まさき念ねん堂どう（ちゅうせいきねんどう、繁体字はんたいじ中国語ちゅうごくご: 中なか正紀まさき念ねん堂どう、英語えいご: Chiang Kai-shek Memorial Hall）は、中華民国ちゅうかみんこくの台北たいぺい市し中正ちゅうせい区くに位置いちする施設しせつ。初代しょだい総統そうとうである蔣介石せきの顕彰けんしょう施設しせつである。台湾たいわんの3大だい観光かんこう名所めいしょの1つであり、中国ちゅうごくの伝統でんとう的てきな宮殿きゅうでん陵墓りょうぼ式しきが採用さいようされている。なお中ちゅう正紀まさき念ねん堂どうの「中正ちゅうせい」とは蔣介石せきの本名ほんみょう（諱いみな）であり、「介石かいせき」は字じである。

沿革えんかく

1975年ねん4月がつに蔣介石せきが死去しきょした際さい、行政ぎょうせい院いん（日本にっぽんの内閣ないかくに相当そうとう）は全ぜん国民こくみんの哀悼あいとうの意いを表あらわすことを目的もくてきとする紀き念ねん堂どうの建設けんせつを決定けっていし、同年どうねん6月がつ26日にちに14人にんの政治せいじ家か、文人ぶんじん、実業じつぎょう家かからなる中なか正紀まさき念ねん堂どう建設けんせつ委員いいん会かいを設置せっちした。同年どうねん7月がつ、委員いいん会かいは大局たいきょく的てきな建設けんせつ方針ほうしんを決定けっていし、また民間みんかんの専門せんもん家かの意見いけんを取とり入いれ、8月がつ22日にちにはコンペティション要綱ようこうを公開こうかいした。その1年ねん後ご、43組くみの応募おうぼの中なかから楊卓成なりの設計せっけい案あんが採用さいようされた。

中なか正紀まさき念ねん堂どう籌備小しょう組ぐみ籌備委員いいん（後のちに中なか正紀まさき念ねん堂どう籌建指導しどう委員いいん会かいと改称かいしょう）が建設けんせつ準備じゅんびを推進すいしんし、蔣介石せきの生誕せいたんから90年ねんに当あたる1976年ねん10月31日にちに起工式きこうしきが催もよおされ、1980年ねん3月がつ31日にちに完成かんせいした。蔣介石せき逝去せいきょ5周忌しゅうきの4月がつ4日にちに併あわせて落成らくせい式しきが盛大せいだいに開催かいさいされ、海外かいがいの3000名めい余あまりの華僑かきょう・華人かじんが参加さんかし、翌よく4月がつ5日にちに一般いっぱん公開こうかいされた。

民主進歩党みんしゅしんぽとう政権せいけん下かでの「去さ蔣化」の影響えいきょうで、2007年ねんには「台湾たいわん民主みんしゅ紀き念ねん館かん」に改名かいめいされ、入いり口くちの門もんに書かかれた「大中おおなか至いたる正ただし」の文字もじが「自由じゆう広場ひろば」に架かけ替かえられ、蔣介石像せきぞう前まえでの儀仗ぎじょう隊たい交代こうたい式しきが中止ちゅうしされていた時期じきがある。中国ちゅうごく国民党こくみんとうが政権せいけん復帰ふっきした2009年ねんに、再度さいど元もとの「中なか正紀まさき念ねん堂どう」に戻もどされた（ただし、「自由じゆう広場ひろば」はそのままである）ほか、蔣介石像せきぞう前まえでの儀仗ぎじょう隊たい交代こうたい式しきも復活ふっかつし2024年ねん7月がつ14日にちまで続つづけられた（後述こうじゅつ）。

施設しせつ

国家こっか戯おどけ劇げき院いん

国家こっか音楽おんがく庁ちょう

角かく亭ていと回廊かいろう

公衆こうしゅう便所べんじょ

中なか正紀まさき念ねん堂どうの敷地しきち面積めんせきは25万まん平方へいほうメートルに上のぼり、日本にっぽん統治とうち時代じだいの山砲さんぽう隊たい、歩兵ほへい第だい一連いちれん隊たいの軍ぐん用地ようち跡地あとちである。敷地しきち中ちゅうには本堂ほんどうの他ほかに国家こっか両りょう庁ちょう院いん・公園こうえん広場ひろば・休息きゅうそく所しょ・回廊かいろう・庭園ていえん・池いけ（光ひかり華はな池ち・雲くも漢かん池ち）なども併設へいせつされている。本堂ほんどうを始はじめとするこれらの施設しせつは市民しみん達たちの憩いこいの場ばとなっている他ほか、公園こうえん広場ひろばは政治せいじ的てきな集会しゅうかいの場ばとして使用しようされることも多おおく、特とくに1987年ねんの戒厳かいげん令れい解除かいじょ後ごには学生がくせい運動うんどうやストライキの集合しゅうごう地点ちてんとしてしばしば使用しようされた。また、中なか正紀まさき念ねん堂どうの最寄駅もよりえきである台北たいぺい捷とし運うんの中なか正紀まさき念ねん堂どう駅えきはホームが中なか正紀まさき念ねん堂どうを意識いしきしたデザインになっている他ほか、出入口でいりぐちも紀きの念ねん館かんへ向むかうことを配慮はいりょした設計せっけいとなっている。

敷地しきちの東側ひがしがわに位置いちする紀き念ねん本堂ほんどうの面積めんせきは約やく1万まん5000平方へいほうメートルで、建物たてものの高たかさは70メートルにも及および、西にしにある中国ちゅうごく大陸たいりくを臨のぞむように設計せっけいされている。本堂ほんどう正面しょうめんには高たかさ30メートルの大中おおなか至いたる正門せいもん と他た2つの門もんがあり、その内部ないぶはメインフロアと地階ちかいに分わけられている。メインフロアの奥おくには巨大きょだいな蔣介石せきの銅像どうぞうが設置せっちされており、銅像どうぞうの上部じょうぶには蔣介石せきの基本きほん政治せいじ理念りねんであった「倫理りんり、民主みんしゅ、科学かがく」という三さん民主みんしゅ義よしの本質ほんしつが、像ぞうの土台どだいには蔣介石せきの言葉ことばがそれぞれ記しるされている。2024年ねん7月がつ14日にちまで、日にち中ちゅうは像ぞうの両りょう脇わきで儀仗ぎじょう隊たいが警護けいごし、1時じ間あいだごとに交代こうたいの儀式ぎしきが行おこなわれていた。なお、フロアの天井てんじょうの最さい上部じょうぶには国くに章あきらである「青天白日せいてんはくじつ」の徽章きしょうが描えがかれている。

また、地階ちかいには以下いかのような施設しせつが設置せっちされており、それぞれが蔣介石せきの顕彰けんしょう施設しせつとしての役割やくわりを果はたしている。

• 文物ぶんぶつ展示てんじ室しつ - 蔣介石せきの衣服いふく、文献ぶんけん、写真しゃしんなどを陳列ちんれつしており、蔣介石せきの一生いっしょうまたは業績ぎょうせきに従したがって11のユニットに分わけられている。
• 中央ちゅうおう通路つうろ - 蔣介石せきが生前せいぜん乗用じょうようした2台だいのキャディラックと公園こうえんの模型もけいが展示てんじしてある。
• 中なか正紀まさき念ねん図書館としょかん - 床ゆか面積めんせきが2418平方へいほうメートルにも及およぶ図書館としょかんで、蔣介石せきの著作ちょさくや彼かれに関連かんれんする書物しょもつを中心ちゅうしんとした3万まん冊さつ以上いじょうの書籍しょせき・150冊さつ以上いじょうの定期ていき刊行かんこう物ぶつが収蔵しゅうぞうされている。また、館内かんないには視聴覚しちょうかくエリアがあり、文化ぶんか・歴史れきしなどに関連かんれんするビデオ・テープなどの視聴覚しちょうかく教材きょうざいが利用りようできる。
• 故こ蔣介石せき総統そうとう紀き念ねん室しつ - 1994年ねん10月31日にちに完成かんせいした施設しせつで、総統そうとう府ふ内うちにあった蔣介石せきの執務しつむ室しつを当時とうじの文物ぶんぶつを用もちいて忠実ちゅうじつに再現さいげんしたものである。

なお、地階ちかいにはこの他ほかにも講演こうえんホール・懐ふところ恩おんギャラリー・中正ちゅうせいギャラリー・端はし元もとホールといった施設しせつがある。

儀仗ぎじょう隊たい

午前ごぜん6時じ30分ふんに儀仗ぎじょう隊たいが中なか正紀まさき念ねん堂どうに進駐しんちゅうし、午前ごぜん9時じより警護けいご及および毎時まいじ交代こうたい儀式ぎしきが行おこなわれていた。儀仗ぎじょう隊たい交代こうたい式しきは台湾たいわん観光かんこうの名物めいぶつとなっている。なお、儀仗ぎじょう隊たいの交代こうたい儀式ぎしきは、水曜日すいようびは午前ごぜん10時じから午後ごご6時じまで、それ以外いがいの日ひは午前ごぜん10時じから午後ごご4時じまで、1時じ間あいだごとに行おこなわれていた。

2024年ねん7月がつ15日にちからは、『脱だっ個人こじん崇拝すうはい』を目的もくてきとして、紀きの念ねん堂どう内ない・蔣介石像せきぞう前まえでの立たて哨任務にんむを廃止はいし。儀仗ぎじょう隊たいの交代こうたいは、『「パトロール訓練くんれん」「場ばの安全あんぜん維持いじ」という本来ほんらいの任務にんむ』の一環いっかんとして、記念きねん堂どう1階かいの左右さゆうの門もんをそれぞれ出発しゅっぱつし、記念きねん堂どうを囲かこむように敷設ふせつされている道みちに沿そって民主みんしゅ大道だいどうまで行進こうしんする形式けいしきに改あらためられた。交代こうたいは、毎日まいにち午前ごぜん9時じから午後ごご5時じまで、正時まさときに行おこなわれる（雨天うてん時じは実施じっししない）。1回かい当あたりの所要しょよう時間じかんは約やく15分間ふんかん。

「国民こくみん革命かくめい忠ちゅう烈れつ祠ほこら#衛兵えいへい交代こうたい」および「去さ蔣化」も参照さんしょう

建築けんちくテーマ

中なか正紀まさき念ねん堂どう全景ぜんけい

蔣介石せきを追悼ついとうする場ばであると同時どうじに、中国ちゅうごく文化ぶんか・精神せいしんと中華民国ちゅうかみんこくの思想しそう（イデオロギー）を示しめす場ばでもあるため、建物たてものの各かく部分ぶぶんが様々さまざまなテーマに基もとづいて設計せっけいされている。

• 屋根やね - 北京ぺきんの天壇てんだんを模もして造つくられた本堂ほんどうの屋根やねは八角はっかく形がたで、「忠ただし、孝こう、仁ひとし、愛あい、信しん、義よし、和わ、平ひらた」の八はち徳とくを象徴しょうちょうしている。また、「人ひと」の字じが重かさなって天てんに達たっするように見みえる設計せっけいもされており、これによって「天人てんにん合一ごういつ」（天てんと人ひとが一ひとつになる）という中国ちゅうごくの思想しそうを反映はんえいしている。その他たにも、頂いただきの黄金おうごん色しょくが栄光えいこうある昇華しょうかを象徴しょうちょうしている。
• ひさし - 二に重じゅうのひさし（簷）のことを中国ちゅうごく語ごでは「複ふく簷」と言いうが、この「複ふく」は「復ふく」と発音はつおんが同おなじであることから、中華民国ちゅうかみんこくの復興ふっこうと大陸たいりくの回復かいふく（国共こっきょう内戦ないせんで中華民国ちゅうかみんこく政府せいふが失うしなった中国ちゅうごく大陸たいりくの領土りょうどの奪還だっかん）という目標もくひょうを表あらわしている。
• 階段かいだん - 本堂ほんどうの三さん方ぽうには花崗岩かこうがんの階段かいだんが84段だんあるが、正面しょうめんの階段かいだんにある5段だんを加くわえると89段だんになるので、これによって蔣介石せきの享年きょうねんである89を表あらわしている。また、正面しょうめん階段かいだんの中央ちゅうおうには国くに徽（国くにの象徴しょうちょう）であることを示しめす「御ご路みち」（中国ちゅうごくの伝統でんとう建築けんちくにおいて、宮殿きゅうでんや廟堂びょうどうにのみ用もちいられる参拝さんぱい路ろ）がある他ほか、3層そうある階段かいだんによって蔣介石せきと中華民国ちゅうかみんこくが奉ほうずる三さん民主みんしゅ義よしの「民権みんけん、民族みんぞく、民生みんせい」を表あらわしている。
• 基礎きそ - 3層そうからなる本堂ほんどうの広ひろい基礎きそ部分ぶぶんは全すべて正方形せいほうけいであり、これによって蔣介石せきの本名ほんみょうである「中正ちゅうせい」を象徴しょうちょうしている。
• 外装がいそう - 本堂ほんどうの外装がいそうは屋根やね瓦かわらとして用もちいられている青色あおいろの瑠璃るり瓦かわら、壁かべに用もちいられている白色はくしょくの大理石だいりせきによって中華民国ちゅうかみんこくの国くに章しょうである「青天白日せいてんはくじつ」を表あらわしている。更さらには、紀きの念ねん館かん前まえの伝統でんとう図案ずあんによる花壇かだんも含ふくめることによって、「自由じゆう、平等びょうどう、博愛はくあい」を象徴しょうちょうする「青天白日せいてんはくじつ満まん地ち紅べに」（中華民国ちゅうかみんこくの国旗こっきの図柄ずがら）を表あらわすような配慮はいりょもされている。ちなみに、「青天白日せいてんはくじつ」は蔣介石せきが所属しょぞくしていた中国ちゅうごく国民党こくみんとうの党とう章しょうでもある。
• 山並やまなみ - 敷地しきち内ないにある国家こっか戯おどけ劇げき院いんの屋根やねは「廡殿」、国家こっか音楽おんがく庁ちょうの屋根やねは「歇山」と呼よばれる中国ちゅうごくの伝統でんとう的てきな設計せっけいにそれぞれなっており、紀きの念ねん館かんの八角はっかく形がたの屋根やねを「主峰しゅほう」として3つの山やまが立たち並ならぶように配置はいちされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 長谷川はせがわ啓之ひろゆき「中正ちゅうせい記念きねん堂どう」（長谷川はせがわ啓之ひろゆき（監修かんしゅう） 『現代げんだいアジア事典じてん』 文ぶん眞堂しんどう、2009年ねん、789-790ページ所収しょしゅう。ISBN 978-4830946493。）
• 白はく佐立さたち「中なか正紀まさき念ねん堂どうの記憶きおく／記憶きおくの中なか正紀まさき念ねん堂どう－台湾たいわん・台北たいぺいにおける中なか正紀まさき念ねん堂どうの建設けんせつとその使用しようをめぐって」 『シムパティア』 第だい5号ごう、人文じんぶん・社会しゃかい科学かがく振興しんこうプロジェクト研究けんきゅう事業じぎょう・若手わかての会かい、2009年ねん3月がつ。

外部がいぶリンク

• 中なか正紀まさき念ねん堂どう公式こうしきサイト