佐伯さえき勇いさむ

さえき いさむ 佐伯さえき 勇いさむ
生誕せいたん	(1903-03-25) 1903年ねん3月25日にち 愛媛えひめ県けん周桑しゅうそう郡ぐん丹原たんばら町まち（現げん・西条さいじょう市し）
死没しぼつ	(1989-10-05) 1989年ねん10月5日にち（86歳さい没ぼつ） 大阪おおさか府ふ
死因しいん	肝不全かんふぜん
出身しゅっしん校こう	東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく法学部ほうがくぶ
職業しょくぎょう	実業じつぎょう家か
栄誉えいよ	藍綬らんじゅ褒章ほうしょう（1962年ねん） 勲一等くんいっとう瑞宝章ずいほうしょう（1976年ねん） 勲一等くんいっとう旭日大綬章あさひだいじゅしょう（1983年ねん） 愛媛えひめ県けん功労賞こうろうしょう（1983年ねん） 丹原たんばら町まち名誉めいよ町民ちょうみん（1988年ねん） 野球やきゅう殿堂でんどう特別とくべつ表彰ひょうしょう（1990年ねん）

佐伯さえき 勇いさむ（さえき いさむ、1903年ねん〈明治めいじ36年ねん〉3月25日にち - 1989年ねん〈平成へいせい元年がんねん〉10月5日にち）は、日本にっぽんの実業じつぎょう家か。近畿日本鉄道きんきにほんてつどう（近鉄きんてつ）の元もと社長しゃちょう、会長かいちょう、名誉めいよ会長かいちょうで、近鉄きんてつグループの総帥そうすい。プロ野球やきゅう・近鉄きんてつバファローズのオーナーでもあった。アメリカの大陸たいりく横断おうだん鉄道てつどうの2階かい建だてドームカーを参考さんこうにした、世界せかいで初はじめての2階かい建けん電車でんしゃによる特急とっきゅう車しゃのビスタカーの生うみの親おやでもある。

来歴らいれき・人物じんぶつ

愛媛えひめ県けん周桑しゅうそう郡ぐん丹原たんばら町まち（現げん・西条さいじょう市し）で、佐伯さえき源三郎げんざぶろうの三男さんなんとして生うまれる。丹原たんばら小学校しょうがっこう、松山まつやま中学ちゅうがく（現げん・愛媛えひめ県立けんりつ松山東まつやまひがし高等こうとう学校がっこう）と進すすむが、父親ちちおやの方針ほうしんで京都きょうと一いち中ちゅう（現げん・京都きょうと府立ふりつ洛らく北きた高等こうとう学校がっこう・附属ふぞく中学校ちゅうがっこう）へ転校てんこう、さらに第だい三さん高等こうとう学校がっこう（旧制きゅうせい・三高さんこう）を経へて東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく法学部ほうがくぶを卒業そつぎょうした。

1927年ねん4月がつに近畿日本鉄道きんきにほんてつどうの前身ぜんしん、大阪おおさか電気でんき軌道きどう（大だい軌）に入社にゅうしゃ。この時とき、社長しゃちょうの金森かなもり又一郎またいちろうは帝みかど大卒だいそつという高学歴こうがくれきを見みて、かつて同おなじような学歴がくれきで入社にゅうしゃしたがすぐ辞やめてしまった者ものがいたことから入社にゅうしゃを渋しぶり、部下ぶかの説得せっとくで何なにとか納得なっとくすることが出来できたといわれる。入社にゅうしゃ当初とうしょは近鉄きんてつラグビー部ぶ（現在げんざいの近鉄きんてつライナーズ）の初はつの練習れんしゅうにも参加さんかしている。

駅員えきいんや運転うんてん士しなどの現業げんぎょうに就ついたのち、本社ほんしゃ庶務しょむ課かに配属はいぞく。秘書ひしょ課長かちょうや総務そうむ部長ぶちょうを経へて、1947年ねん3月15日にちに上層じょうそう部ぶが公職こうしょく追放ついほうで辞任じにんしたのを受うけて、43歳さいで取締役とりしまりやくになる。同年どうねん4月がつ、専務せんむ取締役とりしまりやくとなり、参議院さんぎいん議員ぎいんを兼任けんにんしていた村上むらかみ義一ぎいち社長しゃちょうに代かわって経営けいえいの前線ぜんせんに立たった。1949年ねん、プロ野球やきゅう球団きゅうだん・近鉄きんてつパールスを設立せつりつし、パシフィック・リーグに参加さんか、初代しょだいオーナーとなり、以後いご30年ねん以上いじょうにわたりオーナーを務つとめた。

1951年ねん、7代目だいめの社長しゃちょうに就任しゅうにんする。同社どうしゃでは初はじめて社員しゃいんからの生はえ抜ぬきでの起用きようとなった。以後いご、近鉄きんてつを合併がっぺいや路線ろせん延伸えんしんにより当時とうじの私鉄してつ最大手さいおおてへと押おし上あげ、高度こうど経済けいざい成長せいちょう期き突入とつにゅう直後ちょくごには、日本にっぽん初はつの高こう加減かげん速そく車しゃ「ラビットカー」や、世界せかい初はつの本格ほんかく的てきなダブルデッカー車しゃ「ビスタカー」など、技術ぎじゅつ的てきに評価ひょうかの高たかい新型しんがた車両しゃりょうの導入どうにゅうを進すすめ、1959年ねんに伊勢湾いせわん台風たいふうの復旧ふっきゅうに合あわせて行いった名古屋なごや線せんの改あらため軌ならびに名めい阪ばん直通ちょくつう特急とっきゅうの実現じつげん化かを初はじめ、生駒いこま・青山あおやま両りょうトンネルの改良かいりょうによる輸送ゆそう力りょく増強ぞうきょう、近鉄きんてつ本社ほんしゃの阿倍野橋あべのばしから創業そうぎょうの地ちの上本うえほん町まち六ろく丁目ちょうめ（上うえ六ろく）への回帰かいき、また近鉄百貨店きんてつひゃっかてんや近畿日本きんきにっぽんツーリストなど近鉄きんてつグループの拡大かくだいなどを進すすめていき、近鉄きんてつ中興ちゅうこうの祖そと呼よばれるようになった。

近鉄きんてつの社長しゃちょうを21年ねん余あまり務つとめ、1973年ねんに会長かいちょうに就任しゅうにん。以後いごもグループのトップとして経営けいえいを指揮しきし続つづけ、1987年ねんには代表だいひょう取締役とりしまりやく相談役そうだんやく名誉めいよ会長かいちょうにまで登のぼり詰つめた。

1989年ねん10月がつ5日にち、近鉄きんてつバファローズのリーグ優勝ゆうしょうに先立さきだつこと9日にちで、肝不全かんふぜんのため大阪大学おおさかだいがく医学部いがくぶ附属ふぞく病院びょういんで死去しきょ。86歳さい没ぼつ。翌年よくねん1月がつ、妻つま・千代子ちよこも後ごを追おうようにして亡なくなった。長男ちょうなん・幸男ゆきおも、グループの都ホテル東京みやこほてるとうきょうの常務じょうむなどを務つとめた。

財界ざいかい活動かつどう

大阪おおさか商工しょうこう会議かいぎ所しょ会頭かいとうを1971年ねんから1981年ねんまで10年間ねんかん務つとめたほか、経団連けいだんれん副ふく会長かいちょうなど、財界ざいかいでも幅広はばひろく活動かつどうした。

大商だいしょう会頭かいとう就任しゅうにん直後ちょくごに中国ちゅうごくを訪問ほうもんし、翌年よくねんの国交こっこう回復かいふくの足あしがかりともなった。また大商だいしょう会頭かいとう5選せんを目指めざしていた当時とうじ、長谷川はせがわ周しゅう重しげるが出馬しゅつば、両者りょうしゃ相打あいうちとなったことは大阪おおさかの財界ざいかいをキタとミナミの真まっ二ぷたつにした「第だい2次じ南北戦争なんぼくせんそう」としてよく知しられている。

この他ほか、日本航空にほんこうくう、関西電力かんさいでんりょく、朝日放送あさひほうそうなどの取締役とりしまりやく、日野自動車ひのじどうしゃ監査かんさ役やくなども務つとめた。また奈良なら県けんの地域ちいき密着みっちゃく型がた放送ほうそう局きょくを目指めざし、奈良ならテレビ放送ほうそうの設立せつりつにも従事じゅうじし、初代しょだい社長しゃちょうに就任しゅうにんした。

プロ野球やきゅう団だんを設立せつりつ

近鉄きんてつを私鉄してつの日本一にっぽんいちにき上ずきあげたが、一方いっぽうで野球やきゅうは意いのままにならなかった。1974年ねん、西本にしもと幸雄ゆきおを監督かんとくに迎むかえ、1979年ねんに創立そうりつ30年ねん目めにして初はつ優勝ゆうしょうを果はたした。また1989年ねんに近鉄きんてつは2位いオリックスにわずか1厘りん差さでの優勝ゆうしょうを果はたしたが、佐伯さえきが死去しきょした当日とうじつ、オリックスに3.0ゲーム差さをつけられて自力じりき優勝ゆうしょうの可能かのう性せいが消滅しょうめつしていた。当時とうじの仰木おうぎ彬あきら監督かんとくは後日ごじつ、「（近鉄きんてつが優勝ゆうしょうしたのは）佐伯さえきオーナーが守まもってくれたからだ」と述懐じゅっかいしている。近鉄きんてつの選手せんしゅ・マネージャー・スカウトを務つとめた荒井あらい健けんは「佐伯さえきオーナーが試合しあいを観かんに来くることはほとんどない。お金かねも出ださないからいい選手せんしゅも取とれなかった」などと話はなしている。1990年ねん1月がつ、野球やきゅう殿堂でんどう特別とくべつ表彰ひょうしょう。

芸術げいじゅつ・教育きょういくとのかかわり

文楽ぶんらくや清元きよもとにも詳くわしく、文楽ぶんらく協会きょうかいを1958年ねんに設立せつりつし理事りじ長ちょうを務つとめたほか、国立こくりつ文楽ぶんらく劇場げきじょうの誘致ゆうちにも尽力じんりょくした。1960年ねんには学園前がくえんまえの丘陵きゅうりょう地ちに大だい和文わぶん華はな館かんを開館かいかん。さらに帝塚山てづかやま学園がくえんが1964年ねんに帝塚山大学てづかやまだいがくを開ひらけ学がくする際さいには、三碓みつがらす丘おか（現在げんざいの奈良なら市し帝塚山てづかやま四よん丁目ちょうめ）の敷地しきちの提供ていきょうと設立せつりつ準備じゅんび資金しきんの協力きょうりょくも行おこなっており、1975年ねんから1989年ねんまで帝塚山てづかやま学園がくえんの理事りじ長ちょうを務つとめた。

奈良なら県けん奈良なら市し登美とみヶ丘おかにあった自宅じたくは近鉄きんてつの出資しゅっしする財団ざいだんによって、1994年ねんに上村うえむら松園しょうえん、上村うえむら松まつ篁たかむら、上村うえむら淳あつし之これ3代だいの日本にっぽん画家がかの作品さくひんを展示てんじする松まつ伯はく美術館びじゅつかんとなった。また、出身しゅっしん地ちの愛媛えひめ県けん西条さいじょう市し丹原たんばら町まちには佐伯さえき記念きねん館かん・郷土きょうど資料しりょう館かんが設もうけられ、遺品いひんなどが展示てんじされている。

著書ちょしょ

• 『運うんをつかむ 事業じぎょうと人生じんせいと』実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ、1980年ねん10月がつ。

参考さんこう文献ぶんけん

• 和田わだ進すすむ『近鉄きんてつの経営けいえい　コングロマリット戦略せんりゃくと佐伯さえき勇いさむの経営けいえい語録ごろく』評言ひょうげん社しゃ、1982年ねん3月がつ。
• 神崎かんざき宣せん武ぶ『経営けいえいの風土ふうど学がく－佐伯さえき勇いさむの生涯しょうがい』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1992年ねん10月がつ。ISBN 978-4309007830。
  • 『近鉄きんてつ中興ちゅうこうの祖そ－佐伯さえき勇いさむの生涯しょうがい』創つく元もと社しゃ、2019年ねん1月がつ。ISBN 978-4422240978。
• 軒のき上じょう泊はく『君きみよ日ひに新あらたなれ　鉄路てつろを走はしり続つづけた男おとこ 佐伯さえき勇いさむ伝でん』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ、1998年ねん4月がつ。ISBN 978-4120027734。
• 稲葉いなばなおと『匠たくみたちの名めい旅館りょかん　平田ひらた雅哉まさや　吉村よしむら順三じゅんぞう　村野むらの藤吾とうご』集英社しゅうえいしゃインターナショナル、2013年ねん8月がつ。ISBN 978-4797672534。

関連かんれん項目こうもく

• 藤田ふじた省三しょうぞう（近鉄きんてつ球団きゅうだんの初代しょだい監督かんとく）
• 井内いうち彦四郎ひこしろう（大だい軌に入社にゅうしゃし、参まいり急きゅう専務せんむを務つとめた）
• 馬場ばば勇いさむ（近畿日本きんきにっぽんツーリストの源流げんりゅうである日本にっぽんツーリストの社長しゃちょう）
• 種田たねた虎雄とらお（近鉄きんてつ初代しょだい社長しゃちょう）
• 影山かげやま光一こういち（近鉄きんてつ専務せんむでビスタカー開発かいはつに尽力じんりょく）
• 上山うえやま善よし紀き（近鉄きんてつ球団きゅうだんオーナー職しょくの後任こうにん、死去しきょ時じの会長かいちょう。文楽ぶんらく協会きょうかいの代表だいひょう職しょくも継ついだ）
• 金森かなもり茂一郎しげいちろう（又一郎またいちろうの孫まご）
• 小林こばやし哲也てつや（現在げんざいの近鉄きんてつグループHD会長かいちょう。最後さいごの近鉄きんてつ球団きゅうだん社長しゃちょう）

外部がいぶリンク

• 近畿日本鉄道きんきにほんてつどう
• 松まつ伯はく美術館びじゅつかん
• 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん文楽ぶんらく協会きょうかい
• 西条さいじょう市し佐伯さいき記念きねん館かん・郷土きょうど資料しりょう館かん
• 愛媛えひめの偉人いじん・賢人けんじんの紹介しょうかい 佐伯さえき勇いさむ

先代せんだい 村上むらかみ義一ぎいち

近畿日本鉄道きんきにほんてつどう社長しゃちょう 第だい7代だい:（1951年ねん - 1973年ねん）

次代じだい 今里いまさと英三えいぞう

先代せんだい 市川いちかわ忍しのぶ

大阪おおさか商工しょうこう会議かいぎ所しょ会頭かいとう 第だい19代だい:（1971年ねん - 1981年ねん）

次代じだい 古川ふるかわ進すすむ