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再帰さいき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

再帰さいき(さいき、えい: Recursion, Recursive)とは、ある物事ものごとについて記述きじゅつするさいに、記述きじゅつしているもの自体じたいへの参照さんしょう[注釈ちゅうしゃく 1]、その記述きじゅつちゅうにあらわれることをいう。

再帰さいき言語げんごがくから論理ろんりがくいた様々さまざま分野ぶんや使用しようされている。もっと一般いっぱんてき適用てきよう数学すうがく計算けいさん科学かがくで、定義ていぎされている関数かんすうがそれ自身じしん定義ていぎなか参照さんしょう利用りようされている場合ばあいう。

定義ていぎ

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わせきょうあいだ撮影さつえいするとかがみぞう無限むげんうつる。

平行へいこうわせきょうあいだ物体ぶったいくと、そのぞうかがみなか無限むげんうつされる。このように、あるものが部分ぶぶんてきにそれ自身じしん構成こうせいされていたり、それ自身じしんによって定義ていぎされているときに、それを「再帰さいきてき(Recursive)」だという[1][2]論理ろんりてき思考しこう重要じゅうよう特質とくしつのひとつであり、数学すうがくではややしき数学すうがくてき帰納きのうほう再帰さいきてき構造こうぞうっている[1]計算けいさん科学かがくだと、オブジェクトメソッドクラスが、以下いか2つの項目こうもく定義ていぎできる場合ばあい再帰さいきてき構造こうぞうだとえる。

  • 単純たんじゅん基底きてい段階だんかい (base case) - こたえをすのに再帰さいき使つかわない、論理ろんり展開てんかい終着しゅうちゃくてん基底きてい複数ふくすうあってもかまわない。
  • 再帰さいき段階だんかい (recursive step) - 後続こうぞくのあらゆる事例じれい基底きてい段階だんかい帰着きちゃくさせる一連いちれん法則ほうそく

たとえば、これは人間にんげん祖先そせん再帰さいきてき定義ていぎである。ある人物じんぶつ祖先そせんつぎのいずれかになる。

  • その人物じんぶつおや基底きてい段階だんかい)、または
  • その人物じんぶつおや祖先そせん再帰さいき段階だんかい)。

フィボナッチ数列すうれつは、再帰さいきもちいた古典こてんてき数式すうしきれいである。

  • 基底きてい1として,
  • 基底きてい2として,
  • のあらゆる整数せいすうについて .

おおくの数学すうがくてき公理こうりは、再帰さいきもちいた法則ほうそくもとづいている。たとえば、ペアノの公理こうりによる自然しぜんすう正式せいしき定義ていぎは「ゼロは自然しぜんすうであり、かく自然しぜんすうには後続こうぞくすうがあり、これも自然しぜんすうである」と記述きじゅつされうる[3]。この基底きてい段階だんかいおよび再帰さいきもちいた法則ほうそくによって、すべての自然しぜんすう集合しゅうごう生成せいせいできる。

ほかにも再帰さいきもちいて定義ていぎされている数学すうがくてき対象たいしょうとしては、関数かんすうややしき集合しゅうごうカントール集合しゅうごうフラクタル分野ぶんや、プログラミング言語げんごにおけるかいじょう、などがある。

言語げんご

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言語げんご学者がくしゃノーム・チョムスキーらは、言語げんごにおいて適格てきかくぶんかず上限じょうげんがなく、適格てきかくぶんながさにも上限じょうげんがないことは、自然しぜん言語げんごでの再帰さいき結果けっかとして説明せつめい可能かのうだとろんじている[4][5]

これは、文章ぶんしょうなど統語とうご範疇はんちゅうでの再帰さいきてき定義ていぎという観点かんてんから理解りかい可能かのうである。文章ぶんしょうでは、動詞どうし補語ほごなどがべつ文章ぶんしょうという構造こうぞうつことができる。「ドロシーは魔女まじょ危険きけんだとかんがえている」には「魔女まじょ危険きけんだ」の一文いちぶんがよりおおきな文章ぶんしょうふくまれている。それゆえ文章ぶんしょうとは、名詞めいし動詞どうしべつ文章ぶんしょうふくみうる構造こうぞうつものだと、再帰さいきてきに(非常ひじょうおおまかだが)定義ていぎすることができる。

これは、文章ぶんしょう任意にんいながさになりることも意味いみする。たとえば、英語えいごだと関係かんけい代名詞だいめいしの"that"を使つかうことによって、

"Dorothy thinks that Toto suspects that Tin Man said that..."

再帰さいきてきぶんすことが可能かのうである。再帰さいきてき定義ていぎできうる文章ぶんしょうほかにもおおくの構造こうぞうがあり、べつ品詞ひんし文章ぶんしょう方法ほうほう沢山たくさんある(たとえば修飾しゅうしょく文章ぶんしょう形式けいしきにする)。なが歳月さいげつて、言語げんごには一般いっぱんてきにこのたね分析ぶんせき順応じゅんのうせいがあることが証明しょうめいされている[6]

しかし近年きんねん再帰さいき人類じんるい言語げんご本来ほんらいてき性質せいしつであるという一般いっぱんてきれられている思想しそうは、ダニエル・L・エヴェレットによってかれピダハン研究けんきゅうもとづく反論はんろんおこなわれている。アンドリュー・ネヴィンズ、デイヴィッド・ペセツキー、シリーン・ロドリゲスがこれに反対はんたいする識者しきしゃたちである[7]。いずれの場合ばあいでも、文学ぶんがくてき自己じこ言及げんきゅう数学すうがくてき論理ろんりてき再帰さいきとは種類しゅるいことなるとろんじられている[8]

再帰さいきは、構文こうぶんだけでなく自然しぜん言語げんご意味いみろんにおいても重要じゅうよう役割やくわりたしている。たとえば接続詞せつぞくし"and"は、文意ぶんい沿ったあたらしい文章ぶんしょう付加ふかできる機能きのうだと解釈かいしゃくすることが可能かのうで、名詞めいし動詞どうしなどに適用てきようできる。これは、ぶんつなげる単純たんじゅん場合ばあいについて定義ていぎしたもので、接続詞せつぞくし同様どうよう観点かんてんから再帰さいきてき定義ていぎすることができる[9]

再帰さいき使つかった洒落しゃれ

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再帰さいきてきなウィキペディアのページ。

たまに再帰さいきは、計算けいさん科学かがく・プログラミングとう書物しょもつで、ジョークとして掲載けいさいされる場合ばあいがある。そうしたほんではがいして循環じゅんかん定義ていぎ自己じこ参照さんしょうされており、つぎのような馬鹿ばからしい項目こうもく用語ようごしゅうとしてっていることもめずらしくない。

  • 再帰さいきについては「再帰さいき」を参照さんしょうのこと[10]

これは想定そうていした再帰さいき段階だんかい基底きてい段階だんかいへと帰着きちゃくすることなく、無限むげん後退こうたいこすという(プログラミング失敗しっぱいれいの)洒落しゃれである。この最初さいしょのジョークは1975-76ねん出版しゅっぱんされたプログラム言語げんご教本きょうほん『Let's talk Lisp 』と『in Software Tools』にられる。これは関数かんすうがたプログラミング伝授でんじゅする一環いっかんとしての洒落しゃれで、うえ書籍しょせき出版しゅっぱんされるまえに(米国べいこくの)プログラミング関連かんれんコミュニティですでひろまっていた。

もうひとつの冗談じょうだんが「再帰さいき理解りかいするには、再帰さいき理解りかいする必要ひつようがある」[10]というものである。英語えいごばんGoogleウェブ検索けんさくエンジンで"recursion"を検索けんさくすると、どうサイトでは一番いちばんじょうに"Did you mean: recursion(再帰さいきって意味いみだったかな)"としゃっ表示ひょうじされる[11][注釈ちゅうしゃく 2]

再帰さいきてき頭字かしらじは、再帰さいきふくんだ洒落しゃれれいである。たとえば、PHP (プログラミング言語げんご)は"PHP Hypertext Preprocessor"のりゃくで、WINEは"WINE Is Not an Emulator"、GNUは"GNU's not Unix"をあらわす。

数学すうがく

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シェルピンスキーのギャスケット-フラクタル形成けいせいする三角形さんかっけい再帰さいき

日本にっぽん国内こくない数学すうがくでは、"Recursion"や"Recursive"にたいして再帰さいきわりに「帰納きのう」の訳語やくごをあてた数学すうがく用語ようごいくつか存在そんざいする(帰納的きのうてき可算かさん集合しゅうごう帰納きのう言語げんご帰納的きのうてき関数かんすうなど)。これはしたにある「自然しぜんすう再帰さいきてき定義ていぎれい」でもかるように、数学すうがくにおける再帰さいきには数学すうがくてき帰納きのうほう原理げんりてき共通きょうつうせいがあるためである。

再帰さいきてき定義ていぎ

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れい: 自然しぜんすう

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再帰さいきてき定義ていぎされた集合しゅうごう標準ひょうじゅんれいが、自然しぜんすうである。

0 はふくまれる。
かりnふくまれるなら、n+1はふくまれる。
自然しぜんすう集合しゅうごうとは、上記じょうき2つの性質せいしつたす最小さいしょう集合しゅうごうである[注釈ちゅうしゃく 3]

数理すうり論理ろんりがくにおいて、ペアノの公理こうりとはドイツの数学すうがくしゃリヒャルト・デーデキントとイタリアの数学すうがくしゃジュゼッペ・ペアノによって19世紀せいき提示ていじされた自然しぜんすう公理こうりである。ペアノの公理こうりは、再帰さいきてき後者こうしゃ関数かんすう再帰さいき関数かんすうとしての加算かさん乗算じょうざん参照さんしょうして自然しぜんすう定義ていぎしている。

れい: 証明しょうめい手続てつづ

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もう1つのれいは、以下いかのように帰納きのうまたは再帰さいきもちいて定義ていぎされる証明しょうめい手続てつづ (Proof procedure観点かんてんから定義ていぎされる公理こうり体系たいけいうちのあらゆる「証明しょうめい可能かのうな」命題めいだい集合しゅうごうである。

  • ある命題めいだい公理こうりであるならば、それは証明しょうめい可能かのう命題めいだいである。
  • ある命題めいだい推論すいろん規則きそくによってしん到達とうたつ可能かのう命題めいだいから導出どうしゅつできるなら、それは証明しょうめい可能かのう命題めいだいである。
  • 証明しょうめい可能かのう命題めいだい集合しゅうごうは、これらの条件じょうけんたす命題めいだい最小さいしょう集合しゅうごうである。

有限ゆうげん分割ぶんかつ規則きそく

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有限ゆうげん分割ぶんかつ規則きそく再帰さいき幾何きかがくてき形式けいしきで、これはフラクタル模様もよう作図さくずするのに使用しようされる。分割ぶんかつ規則きそくは、有限ゆうげんおおくのラベルラベル付らべるつけされた多角たかくがたあつまりを起点きてんとして、かく多角たかくがた最初さいしょ多角たかくがたラベルにのみ依存いぞんする方法ほうほうで、よりちいさなラベル多角たかくがた分割ぶんかつされる。この工程こうていかえおこなうことができる。カントール集合しゅうごうつくるための標準ひょうじゅんてきな「3等分とうぶん中央ちゅうおう除去じょきょする」技法ぎほうが、分割ぶんかつ規則きそくれいである。

関数かんすうでの再帰さいき

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関数かんすう自身じしん再帰さいきてき定義ていぎする場合ばあいがある。とりわけすすむしき数列すうれつ再帰さいきてきさだめる数式すうしきであり、その身近みぢかれいというフィボナッチ数列すうれつである。こうしたすすむしきによる定義ていぎ成立せいりつする場合ばあい、その数式すうしき再帰さいきもちいずに定義ていぎされた基底きてい (フィボナッチの場合ばあい)に帰着きちゃくできる必要ひつようがある。また、ややしき再帰さいき関係かんけいいた場合ばあい再帰さいきてき定義ていぎ一般いっぱんこう)をることが可能かのうである[注釈ちゅうしゃく 4]

有名ゆうめい再帰さいき関数かんすうアッカーマン関数かんすうがあるが、これは原始げんし再帰さいき関数かんすうよりもはや増大ぞうだいしてきょ大数たいすうすため、再帰さいき使つかわずに一般いっぱんこう簡単かんたんしきあらわすことが出来できない[13]てんがフィボナッチ数列すうれつとはことなる。

再帰さいきてき定義ていぎふく証明しょうめい

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前節ぜんせつのような、再帰さいきてき定義ていぎがされた集合しゅうごう関数かんすうたいして複数ふくすう場合ばあいけによる証明しょうめい標準ひょうじゅんてき手法しゅほう適用てきようすると、構造こうぞうてき帰納きのうほうられる。これは数理すうりろん理学りがくとコンピュータサイエンスで証明しょうめい導出どうしゅつするのにひろ使用しようされている数学すうがくてき帰納きのうほう強力きょうりょく一般いっぱんである。

再帰さいき使つかった最適さいてき

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動的どうてき計画けいかくほうは、周期しゅうきないし段階だんかい最適さいてき問題もんだい再帰さいき形式けいしきさい記述きじゅつする数理すうり最適さいてきへのアプローチ手法しゅほうである。動的どうてき計画けいかくほうおも成果せいかベルマン方程式ほうていしきで、これは最適さいてき問題もんだい直近ちょっきん直近ちょっきん段階だんかい)でのを、その次回じかい時刻じこく次段じだんかい)における観点かんてんから記述きじゅつするものである。

再帰さいき定理ていり

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集合しゅうごうろんにおいて、これは再帰さいきてき定義ていぎがなされた関数かんすう存在そんざいすることを保証ほしょうする定理ていりである。集合しゅうごう Xと、X要素ようそ aと、関数かんすうf: XXあたえられた場合ばあいに、任意にんい自然しぜんすうnについて

となるような一意いちい関数かんすう (where 存在そんざいする、とどう定理ていりべている(ここでのは、ゼロをふく自然しぜんすう集合しゅうごうしめす)。

一意いちいせい証明しょうめい

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2つの関数かんすうると:

ここでaX要素ようそである。

すべての自然しぜんすうnについてF(n) = G(n) であることは数学すうがくてき帰納きのうほうによって証明しょうめいできる。

基底きてい段階だんかい: F(0) = a = G(0) だからn = 0たいして等式とうしきつ。
帰納きのう段階だんかい: ある.についてF(k) = G(k)仮定かていすると、F(k + 1) = f(F(k)) = f(G(k)) = G(k + 1)である。
したがってF(k) = G(k)F(k + 1) = G(k + 1)ふくんでいる。

帰納きのうほうにより、すべてのについてF(n) = G(n)である。

計算けいさん科学かがく

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単純たんじゅん一般いっぱんてき方法ほうほうは、問題もんだいおな種類しゅるいしょうとい分割ぶんかつすることである。コンピュータプログラミングの技法ぎほうとしてこれは分割ぶんかつ統治とうちほうばれ、おおくの重要じゅうようなアルゴリズム設計せっけいかぎとなる。分割ぶんかつ統治とうちほうは、問題もんだい解決かいけつへのトップダウンがたアプローチとして機能きのうし、そこでは問題もんだいがよりちいさなインスタンス解決かいけつすることにより解決かいけつされる。反対はんたいのアプローチ手法しゅほう動的どうてき計画けいかくほうである。こちらはボトムアップがたアプローチとして機能きのうし、目的もくてき規模きぼたっするまでよりおおきなインスタンスを解決かいけつすることによって問題もんだい解決かいけつされる。

プログラミングの観点かんてんでは、nを表現ひょうげんするのにn-1という参照さんしょうしてくるものを「再帰さいき」という。再帰さいき古典こてんてきれいとしては、C言語げんごあたえられたかいじょう関数かんすう定義ていぎがある。

/* かいじょう n! の計算けいさん */
int fact(int n) {
  if (n == 0) return 1; /* 基底きてい段階だんかい。(n = 0) の場合ばあい: 1*/
  else return fact(n - 1) * n; /* 再帰さいきてき構造こうぞう。(n > 0) の場合ばあい: n * (n - 1)!。再帰さいき呼出よびだし */
}

この関数かんすうでは、ざんのため入力にゅうりょく自身じしんよりちいさな(n-1)という参照さんしょう再帰さいきてきし、再帰さいきしの結果けっかにnをける処理しょりを、かいじょう数学すうがくてき定義ていぎおなじく基底きてい段階だんかいたっするまで実行じっこうする。

アルゴリズムにおける再帰さいき使用しようには、長所ちょうしょ短所たんしょもある。おも長所ちょうしょは、一般いっぱん命令めいれい単純たんじゅんさである。おも短所たんしょは、自身じしん手法しゅほうなので引数ひきすう再帰さいき終了しゅうりょう条件じょうけんたさない状況じょうきょうけるよう変化へんか注意ちゅういする必要ひつようがあること。また、再帰さいきアルゴリズムのメモリ使用しようりょういちじるしく激増げきぞうして負荷ふかががかかるため、だい規模きぼなインスタンスをあつかうには実用じつようてきてんである。

再帰さいき呼出よびだ

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手続てつづきや関数かんすうといった概念がいねんをもつプログラミング言語げんごでは、ある手続てつづちゅうふたたびその手続てつづ自身じしんすことをみとめる場合ばあいおおい。これを再帰さいき呼出よびだしといい、かいじょう計算けいさんやフィボナッチ数列すうれつのように、本来ほんらい再帰さいきてき構造こうぞうをもつアルゴリズム(再帰さいきてきアルゴリズム)を記述きじゅつするのにてきしている。

複数ふくすう手続てつづき/関数かんすうたがいに相手あいて場合ばあいも、ひろ意味いみでの再帰さいき呼出よびだし(相互そうご再帰さいき)である。C言語げんごでのれい

void a() {
    b();
}
void b() {
    a();
}

処理しょり中断ちゅうだん終了しゅうりょうする基底きてい条件じょうけんかならず1つは必要ひつようで、その部分ぶぶんあやまっていると、無限むげん関数かんすうつづけることがある(暴走ぼうそう)。無限むげん再帰さいきおちいると、スタックオーバーフローによりプログラムが異常いじょう終了しゅうりょうしたり、システムが停止ていししたりする原因げんいんとなる。

再帰さいきてきデータ構造こうぞう

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連結れんけつリスト構造こうぞうは、要素ようそ(ノード)のかたなかにその要素ようそがた自身じしんへの参照さんしょう自己じこ参照さんしょう)が存在そんざいするようなデータがたもちいて実現じつげんされる。これは再帰さいきてきデータ構造こうぞう再帰さいきデータがた)である。再帰さいきてきデータ構造こうぞう探索たんさくには、再帰さいきしを使つかうことがおおい。

下記かきJava でのれい。Tree のクラス定義ていぎなかで Tree を使用しようしている。

class Tree {
    Tree[] children;
}

生物せいぶつがく

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あるおおきな部位ぶい複数ふくすうちいさな自己じこ相似そうじ分岐ぶんきする構造こうぞうフラクタル)など、再帰さいきてき過程かていによってしょうじたとおもわれる形状けいじょうが、植物しょくぶつ動物どうぶつ時々ときどきられる。野菜やさいロマネスコがそのいちれいである[14]

芸術げいじゅつ

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再帰さいきてき人形にんぎょうれい:いちくみマトリョーシカ人形にんぎょう(1892ねん)
ドロステ効果こうかばれる再帰さいき視覚しかく形式けいしき。このココアはこえがかれた女性じょせいぼんうえにあるココアばこには、ふたたおな構図こうずえがかれている。ジャン・ミュゼ(1904)

ロシアでまれたマトリョーシカ人形にんぎょうは、再帰さいきという概念がいねん物理ぶつりてき造形ぞうけいれい[15]日本にっぽんではこうした形式けいしきを「細工ざいく」ともんでいる。

再帰さいきは、1320ねんつくられたジョットさんれん祭壇さいだん (Stefaneschi Triptych以来いらい絵画かいが使用しようされている。この中央ちゅうおうパネルにはステファネスキ枢機卿すうききょうのひざまずく姿すがたがあり、さんれん祭壇さいだん自体じたい供物くもつとしてかかげている[16][17]。この手法しゅほう一般いっぱんてきドロステ効果こうか通称つうしょうされており、もんちゅうもん技法ぎほういちれいである。

マウリッツ・エッシャーによる1956ねん作品さくひん (Print Gallery (M. C. Escher)は、再帰さいきてきかざった画廊がろうふくいがんだ都市としえがいた版画はんがで、無限むげん堂々巡どうどうめぐりする構図こうずとなっている[18]

日本にっぽん文芸ぶんげい作品さくひんでは、夢野ゆめの久作きゅうさくの『ドグラ・マグラ』が再帰さいきてきである。ほんさく序盤じょばんに、記憶きおく喪失そうしつ青年せいねんは『ドグラ・マグラ』なる小説しょうせつ記憶きおく喪失そうしつ精神せいしん患者かんじゃいたもの)をつけることになり、この作中さくちゅうさくつづられている展開てんかい結末けつまつをなぞるかのようにほんさく展開てんかいしていき混迷こんめい結末けつまつへ、という構造こうぞうられる[19]

落語らくご頭山とうやま』の、自分じぶん自身じしんあたま出来できいけ身投みなげしてしまう、というサゲも、再帰さいきてきなものとして言及げんきゅうされることがある。[20][21]

類似るいじする概念がいねん

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ここではプログラミング手続てつづきの観点かんてんから、再帰さいきとのおもちがいをべる。

  • 回帰かいき - 元々もともとあったオブジェクト(もと位置いち状態じょうたい)にもどってくることす。
たいして「再帰さいき」は元々もともとのオブジェクトではなく、その参照さんしょう (計算けいさん科学かがく)にあたるちいさいオブジェクトをす。
  • 帰納きのう - 証明しょうめい手続てつづきの方向ほうこうせいとして「基底きてい段階だんかいちいさなものから段々だんだんおおきい(普遍ふへんてきな)もの」へとすすんでいく。とく数学すうがくてき帰納きのうほう帰納きのう段階だんかいでは、任意にんい自然しぜんすうたいしてことしめす。
たいして「再帰さいき」のプログラムは「おおきなものから、段々だんだんちいさいもの」にすすんでいく[22]計算けいさんするために参照さんしょうオブジェクトをし、この基底きてい段階だんかいたっするまで処理しょりかえおこなう。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 記述きじゅつしている対象たいしょう同義どうぎ性質せいしつ情報じょうほうゆうする(幾何きかがくでいう相似そうじ関係かんけいの)おもちいさい事象じしょう参照さんしょうぶ。記述きじゅつしている対象たいしょう完全かんぜん同一どういつなもの(幾何きかがくでいう合同ごうどう図形ずけい)は参照さんしょうふくめない。
  2. ^ 顛末てんまつまで解説かいせつすると、"recursion"の文字もじれつにはあおのページリンクがられており、このリンクさきが"recursion"をさい検索けんさく自己じこ参照さんしょう)した結果けっかページという洒落しゃれ日本語にほんごばんGoogle検索けんさくでも、「再帰さいき」を検索けんさくすると同様どうよう仕組しくみが「もしかして:再帰さいき」でられる。
  3. ^ なお、自然しぜんすうに0をふくめるかかはあつか数学すうがく分野ぶんやによってことなることがある(たとえばかずろん解析かいせきがくでは一般いっぱんに0をふくめない)。詳細しょうさい自然しぜんすう参照さんしょう
  4. ^ フィボナッチ数列すうれつ再帰さいきてき一般いっぱんこうは、つぎとお[12]:  

出典しゅってん

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外部がいぶリンク

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