マンション

マンション（由来ゆらい: mansion, 英えい: condominium）とは、アパートよりも大型おおがたの共同きょうどう住宅じゅうたく（集合しゅうごう住宅じゅうたく）を表あらわす一般いっぱん名詞めいしとして使つかわれている。ただし、語源ごげんである英語えいご圏けんではコンドミニアムなどの意味いみで用もちいられ、共同きょうどう住宅じゅうたくの意味いみはほとんどない。下記かきの他た言語げんごでの表現ひょうげんも参照さんしょう。

概要がいようと定義ていぎ

マンションという語かたりは、日本にっぽんのデベロッパーが昭和しょうわ30年代ねんだい初はじめより、一部いちぶの限かぎられた豊ゆたかな生活せいかつをする階層かいそうの人々ひとびとを対象たいしょうに、公団こうだん住宅じゅうたくなどとは一線いっせんを画かくした高級こうきゅう路線ろせんの集合しゅうごう住宅じゅうたくを、高級こうきゅう感かんをイメージさせるために「マンション」と銘打めいうって売うり出だしたことに由来ゆらいする^[1]。その後ご、対象たいしょうとする層そうを広ひろげて多様たようなものが開発かいはつ・販売はんばいされるようになっても、「マンション」という呼よび名なが定着ていちゃくした^[2]。ただし、英語えいごでは、Mansionは主おもに豪邸ごうていを示しめす言葉ことばであり、日本語にほんごで言いうような「共同きょうどう住宅じゅうたく」を意味いみする一般いっぱん名詞めいしとして用もちいられることはほとんどない。イギリスではより限定げんてい的てきに、Mansion Houseといった場合ばあいは市長しちょう公邸こうてい、Mansion blockといった場合ばあいは高級こうきゅうなアパートを指さす。

日本にっぽん

日本にっぽんで言いうところのマンションは、比較的ひかくてき大だい規模きぼな共同きょうどう住宅じゅうたくで独立どくりつして住居じゅうきょの用ように供きょうすることができる各室かくしつを有ゆうするものを指さす。また、同おなじく共同きょうどう住宅じゅうたくを指さす「アパート」という言葉ことばが、小規模しょうきぼなもの、木造もくぞうや軽量けいりょう鉄骨てっこつ造づくりのもの、賃貸ちんたい物件ぶっけんを指さしていることが多おおいのに対たいし、「マンション」という言葉ことばは比較的ひかくてき大だい規模きぼで、構造こうぞうとしては基本きほん的てきには鉄筋てっきんコンクリート造づくり・鉄骨てっこつ鉄筋てっきんコンクリート造づくりのような堅固けんごなものという相違そうい点てんがある^[3]。区分くぶん所有しょゆう（建物たてものの区分くぶん所有しょゆう等とうに関かんする法律ほうりつ、略称りゃくしょう：区分くぶん所有しょゆう法ほう）されるもののうち分譲ぶんじょうされたものを分譲ぶんじょうマンション、個人こじんが共同きょうどうで建たてたマンションは個人こじん共同きょうどうマンションまたはコーポラティブマンション、賃貸ちんたいされるものを賃貸ちんたいマンションという。なお、共同きょうどう住宅じゅうたくは住宅じゅうたくの建たて方かたを示しめす用語ようごで、一いち戸建こだて、長屋ながや建けん（タウンハウス）と並ならんで分類ぶんるいされている^[4]。

マンションは、都市とし部ぶにおける住居じゅうきょ形態けいたいとして重おもみをもつ。日本にっぽんでは、国土こくど交通省こうつうしょうが行おこなった調査ちょうさでは、2009年ねん末まつにおいて、全国ぜんこくの分譲ぶんじょうマンションストック戸数こすうは約やく562万まん戸ことしている。なお該当がいとう調査ちょうさにおけるマンションとは、「中高層ちゅうこうそう（3階かい以上いじょう）で分譲ぶんじょう・共同きょうどう住宅じゅうたく、鉄筋てっきんコンクリート・鉄骨てっこつ鉄筋てっきんコンクリートまたは鉄骨てっこつ造づくりの住宅じゅうたく」を示しめす^[5]。

また住宅じゅうたくについて、事業じぎょう者しゃの種類しゅるいに応おうじて分譲ぶんじょう、賃貸ちんたい、コーポラティブハウスに分類ぶんるいされる。このうち分譲ぶんじょうとは、事業じぎょう者しゃが不動産ふどうさん会社かいしゃ（事業じぎょう者しゃ宅建業法たっけんぎょうほう第だい3条じょう第だい1項こうの免許めんきょを受うけて宅地たくち建物たてもの取引とりひき業ぎょうを営いとなむ者もの）であって、住戸じゅうこごとに区分くぶんし売買ばいばいするものを言いう。したがって「分譲ぶんじょうマンション」とは、鉄筋てっきんコンクリート造づくりないし鉄骨てっこつ鉄筋てっきんコンクリート造づくりの共同きょうどう住宅じゅうたくのうち、事業じぎょう主ぬしが不動産ふどうさん会社かいしゃで住戸じゅうこごとに区分くぶんし売買ばいばいするものを示しめしている。

「マンション」は、マンションの管理かんりの適正てきせい化かの推進すいしんに関かんする法律ほうりつ（2001年ねん施行しこう）において、法令ほうれい用語ようごとされた。同どう法ほうにおける定義ていぎでは、「複数ふくすうの店舗てんぽや事務所じむしょと居住きょじゅうとなる専有せんゆう部分ぶぶんが1戸こ以上いじょうある建物たてもので、区分くぶん所有しょゆう者しゃが最低さいてい2名めい以上いじょういること」とされ、これには設備せつびや土地とちも含ふくまれる。これは、同どう法ほうでいうマンションが区分くぶん所有しょゆう法ほうの適用てきよう対象たいしょうでもあるということ、「この法律ほうりつは、土地とち利用りようの高度こうど化かの進展しんてんその他た国民こくみんの住じゅう生活せいかつを取とり巻まく環境かんきょうの変化へんかに伴ともない、多数たすうの区分くぶん所有しょゆう者しゃが居住きょじゅうするマンションの重要じゅうよう性せいが増大ぞうだいしていることに鑑かんがみ（以下いか略りゃく）」とされていることからもわかるように、分譲ぶんじょうマンションにおける管理かんりを想定そうていしたものであるため、オーナーが1人ひとりで賃貸ちんたいに供きょうされているマンションなどは、ここではマンションとされない。ただし、2人ふたり以上いじょういた区分くぶん所有しょゆう者しゃが1人ひとりになった場合ばあいでも、区分くぶん所有しょゆう法ほうは適用てきようされる。

2004年ねん、国土こくど交通省こうつうしょうは「中高層ちゅうこうそう共同きょうどう住宅じゅうたく標準ひょうじゅん管理かんり規約きやく」の改正かいせいにあたり、「分譲ぶんじょうの中高層ちゅうこうそう共同きょうどう住宅じゅうたくを指さす法令ほうれい用語ようごとして『マンション』の用語ようごが定着ていちゃくしている状況じょうきょう」を理由りゆうに、名称めいしょうを「マンション標準ひょうじゅん管理かんり規約きやく」と変更へんこうした^[6]。2015年ねんの国土こくど交通省こうつうしょうの調査ちょうさによる日本にっぽんのマンションの総そう戸数こすうは約やく600万まん戸こで、うち団地だんちにあるものは200万まん戸ことされる^[7]。

他た言語げんごでの表現ひょうげん

英語えいご

語源ごげんである英語えいごでは、集合しゅうごう住宅じゅうたくをアパートメント（apartment）と呼よび、賃貸ちんたい物件ぶっけんならばアパートメント・レンタル（apartment rental（略りゃく：rental））、分譲ぶんじょう物件ぶっけんならば種類しゅるいによって、主おもにコンドミニアム（またはコンドミニウム）（condominium（略りゃく：condo））、と（housing cooperative（略りゃく：coop））に区分くぶん。

マンション（mansion）は米国べいこくと英国えいこくでは邸宅ていたくや豪邸ごうていなどを意味いみする（集合しゅうごう住宅じゅうたくを意図いとしない大だい規模きぼな家屋かおくや敷地しきちという意味いみであるが、言語げんご間あいだで細部さいぶは異ことなる。）。

イギリスでは、集合しゅうごう住宅じゅうたくの中なかの一いち軒けんをフラット（flat）と呼よぶのがもっとも一般いっぱん的てきである。その他たに社会しゃかい政策せいさくで普及ふきゅうしたタワーブロック（Tower block）、逆ぎゃくに高級こうきゅう感かんを出だしたマンションブロック（Mansion block）などの語かたりもあるが、イギリス以外いがいでは一般いっぱん的てきではない。日本語にほんごの「マンション」の語源ごげんとなったMansion Blockの例れいとしては、Devon Mansionsなどがある。

歴史れきし

日本にっぽん

日本にっぽん独自どくじ呼称こしょうの「マンション」を「(3階かい建だて以上いじょうの)高層こうそう鉄筋てっきんコンクリート構造こうぞうの集合しゅうごう住宅じゅうたく」と定義ていぎするならば、日本にっぽん最古さいこ・日本にっぽん初はつのマンション(3階かい建だて以上いじょうの高層こうそう鉄筋てっきんコンクリート構造こうぞうの集合しゅうごう住宅じゅうたく以下いか、マンション)は、1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）竣工しゅんこうの、軍艦ぐんかん島とうとも俗称ぞくしょうされた端はし島とう（長崎ながさき県けん長崎ながさき市しの島しま）の集合しゅうごう住宅じゅうたく群ぐんの30号棟ごうとう（竣工しゅんこう時じ4階かい建だて。後のちに7階かい建だてに増築ぞうちく）である。

次つぎに古ふるいマンションは、関東大震災かんとうだいしんさい（1923年ねん・大正たいしょう12年ねん）の復興ふっこう支援しえんとして、1924年ねん（大正たいしょう13年ねん）から1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）の間あいだに建設けんせつされた同どう潤じゅん会かいアパートである。

ただし、当時とうじまだマンションという呼称こしょうは存在そんざいせず、これらがかつてマンションと呼よばれた事実じじつは全まったく無ないことには留意りゅういが必要ひつようであろう。

日本にっぽんマンション学がく学会がっかい『マンション学がく事典じてん』では、マンション草創そうそう期き（1950年代ねんだい〜1960年代ねんだい前半ぜんはん）、マンション大衆たいしゅう化か期き（1960年代ねんだい後半こうはん〜1970年代ねんだい）、マンション質しつ向上こうじょう期き（1980年代ねんだい〜1990年代ねんだい前半ぜんはん）、多様たようストック形成けいせい期き（1990年代ねんだい後半こうはん〜）の4期きに分わけられている。

マンション草創そうそう期きは、「マンション」の語源ごげんにも関係かんけいするように一般いっぱん庶民しょみんには無縁むえんなデラックス志向しこうのものに限かぎられ、その一方いっぽうで建物たてものの区分くぶん所有しょゆうが広ひろまり始はじめたことを受うけ区分くぶん所有しょゆう法ほうの制定せいていなどがあった。マンション大衆たいしゅう化か期きは、マンションの普及ふきゅうが促うながされるにともない徐々じょじょに住宅じゅうたくローン制度せいどが広ひろまる、その一方いっぽうで後述こうじゅつする建設けんせつ時じなどのトラブルが表面ひょうめん化かし出だした時期じきでもある。

マンション質しつ向上こうじょう期きは、建築けんちく技術ぎじゅつの進歩しんぽ、バブル景気けいきなどの好景気こうけいきを受うけて、高層こうそう化かの進展しんてん、居住きょじゅう性せいの向上こうじょうも進すすんだ時期じきである一方いっぽうで、マンション草創そうそう期きなどに作つくられたマンションの大だい規模きぼ修繕しゅうぜん、建たて替かえの必要ひつよう性せいの問題もんだいが表面ひょうめん化かしてきた。当時とうじは都心としんでの地価ちか高騰こうとうの影響えいきょうにより、戸建こだて住宅じゅうたくが中心ちゅうしんであった郊外こうがいベッドタウンへのマンション進出しんしゅつが相次あいついだ。スポーツクラブ（ジム・プール）やラウンジの設置せっち、温泉おんせんをパイプラインで浴室よくしつに引ひき込こんだ物件ぶっけんや、山間さんかん部ぶのリゾートマンションなど多種たしゅ多様たようなマンションが供給きょうきゅうされた。しかし、それらは区分くぶん所有しょゆう者しゃが維持いじ管理かんりしなくてはならず、修繕しゅうぜん積立つみたて金きん高騰こうとうの一因いちいんとなることがわかり、現在げんざいでは人気にんきは衰おとろえている。

その後ごの時期じきは、単身たんしん世帯せたいの増加ぞうか、高齢こうれい化かの進展しんてんなどを背景はいけいに、想定そうていされる利用りよう者しゃ層そうなどがさまざまなタイプのマンションが市場いちばに登場とうじょうしている。また、マンションにIoTを搭載とうさいした「スマートホーム」も話題わだいになっており、マンションの先進せんしん化かが進すすんでいる。21世紀せいきには地価ちか下落げらくによる土地とち仕入しいれコストの低下ていか、超ちょう高層こうそう建築けんちく技術ぎじゅつの発展はってんにともない、全国ぜんこく的てきに大都市だいとしの都心としん部ぶにタワーマンション建設けんせつが続つづいている。

旧きゅうソビエト連邦れんぽう・ロシア連邦れんぽう

1960年代ねんだい、ソビエト連邦れんぽう（ソ連それん）政府せいふはフルシチョフカ （ロシア語ご: хрущёвка; IPA: [xrʊˈɕːɵfkə]）という集合しゅうごう住宅じゅうたくをソ連邦それんぽう内ないに数多かずおおく建設けんせつした。低ていコストで、パネル工法こうほうあるいはレンガで作つくられており、3階かいから5階かい建だてである。建設けんせつはその名前なまえにある通とおり、ニキータ・フルシチョフ政権せいけんが推進すいしんした。

もともとこれらの建物たてものは、成熟せいじゅくした共産きょうさん主義しゅぎによって住宅じゅうたく不足ふそくが軽減けいげんされるまでの一時いちじ的てきな住宅じゅうたくであると考かんがえられていた。フルシチョフは20年ねん以内いないに社会しゃかい主義しゅぎから共産きょうさん主義しゅぎに移行いこうできると予測よそくした。その後ご、レオニード・ブレジネフ政権せいけんは各かく家族かぞくに「1人ひとり1部屋へやの確保かくほと1部屋へや分ぶんの追加ついか」を約束やくそくしたが、ソ連それん崩壊ほうかいを経へたロシア連邦れんぽうでは今日きょうも多おおくの人ひとがフルシチョフカに住すみ続つづけている。

イギリス

「イギリスのタワー・ブロック」も参照さんしょう

インナーシティの高密度こうみつど開発かいはつのために住宅じゅうたく助成じょせい金きん制度せいどを改正かいせい（1946年ねん）。1967年ねんまで高層こうそう住宅じゅうたくブームだった^[8]。しかしタワーは育児いくじ・防犯ぼうはんに問題もんだいが大おおきいとの一連いちれんの調査ちょうさ結果けっか、そして上位じょうい7社しゃで7～8割わりという建設けんせつ会社かいしゃの寡占かせんから批判ひはんを集あつめ、ローナン・ポイント高層こうそう住宅じゅうたくのガス爆発ばくはつ・崩落ほうらく事故じこ（1968年ねん）を機きに高層こうそうの公営こうえい住宅じゅうたくの建設けんせつは中止ちゅうしされた^[9]。

フランス

フランスでは産業さんぎょう振興しんこうや人口じんこう増加ぞうかに対応たいおうして1960年代ねんだいに大だい規模きぼ再さい開発かいはつ事業じぎょうが盛さかんになり、中高層ちゅうこうそう住宅じゅうたくも数多かずおおく建設けんせつされた。その後ご、石油せきゆ危機ききを契機けいきに「人間にんげん規模きぼの都市とし計画けいかく」に都市とし法ほうも転換てんかんする。社会しゃかい住宅じゅうたく建設けんせつや小しょう工業こうぎょう・手工業しゅこうぎょうの首都しゅとパリへの維持いじによる「均衡きんこうのとれた都市としづくり」が追求ついきゅうされ、60年代ねんだいよりもはるかに厳きびしい建物たてものの高度こうど制限せいげんや容積ようせき率りつ制限せいげんが導入どうにゅうされた^[10]。

オランダ

オランダでは、ル・コルビュジエのアントウェルペン計画けいかく（1933年ねん）を踏ふまえて、1960年代ねんだいにアムステルダムに一いち辺へん80～400mもの巨大きょだい高層こうそう住じゅう棟とうから構成こうせいされるバイミール・ニュータウンが建設けんせつされた。低てい所得しょとくオランダ人じん向むけの計画けいかくだったが高層こうそうはまったくの不人気ふにんきで、結果けっか的てきに移民いみん労働ろうどう者しゃ世帯せたいが居住きょじゅうし、40種類しゅるい以上いじょうの言語げんごが話はなされる「コミュニケーションなきコミュニティ」となる。これとすぐ外そとの環境かんきょうを「わがもの意識いしき」で見守みまもれない空間くうかん性せいと相あいまって、犯罪はんざいや破壊はかい、空家あきやの急増きゅうぞうをもたらした。こうした高層こうそう団地だんちの悲惨ひさんな現状げんじょうを受うけ、1970年代ねんだい以降いこうにはオランダの各かく都市とし圏けんの集合しゅうごう住宅じゅうたく建設けんせつは、幼児ようじのいる家族かぞく向むけにはタウンハウス・クラスターとして建設けんせつされることになった^[8]。

アメリカ

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、マンハッタンに1930年代ねんだいから超ちょう高層こうそうマンションが林立りんりつするようになっていた。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後こうはモータリゼーションと並行へいこうし、持家もちいえ所有しょゆうと郊外こうがい開発かいはつが進すすむ。その一方いっぽう、中心ちゅうしん市街地しがいちではスラムクリアランスを目的もくてきとする公共こうきょう住宅じゅうたく法ほう（1937年ねん）以来いらい、マイノリティのコミュニティを全面ぜんめん的てきに破壊はかいしながら中高層ちゅうこうそうの公共こうきょう住宅じゅうたくが建設けんせつされた。しかし大だい規模きぼな高層こうそう住宅じゅうたくほど、エレベーター、廊下ろうか、空地くうちなどお互たがいの監視かんしの目めの届とどかないスペースが生うまれるために、強盗ごうとう、窃盗せっとう、脅迫きょうはく、強姦ごうかん、殺人さつじんといった凶悪きょうあく犯罪はんざいの温床おんしょう（13階かい建けん以上いじょうで1,000人にんあたり年間ねんかん20件けん）となって退去たいきょ者しゃも急増きゅうぞうして荒廃こうはいする。こうした治安ちあん問題もんだいを背景はいけいに、プルーイット・アイゴー団地だんちの全面ぜんめん爆破ばくは（1974年ねん）と中ちゅう低層ていそう団地だんちへの建たて替かえに代表だいひょうされるように、公共こうきょう住宅じゅうたくの高層こうそう化かは下火したびになった^[8]。

住戸じゅうこ形態けいたい

マンションは、対象たいしょうとする利用りよう者しゃ層そう、目的もくてきから、次つぎのような用語ようご例れいがある。

ファミリー型がた：専用せんよう部分ぶぶんはnDK型がたやnLDK型がたと呼よばれる、n個この居室きょしつとダイニングキッチン、リビングなどから構成こうせいされることが多おおい。
ワンルーム型がた：居室きょしつ、ダイニング、寝室しんしつ等とうに仕切しきりがなく一体いったいになっている。ただし、トイレや風呂場ふろばは別べつになっている。

マンションの用途ようとは住戸じゅうこであるが、居住きょじゅう者しゃ層そうなどからさらに細分さいぶん化かされ、それに対応たいおうしたさまざまなものが市場いちばに出でている。

「#用途ようと的てきに細分さいぶん化かされたもの」を参照さんしょう

権利けんり関係かんけい

土地とち、敷地しきち利用りよう権けんの権利けんり態様たいようから、次つぎのようなものに大別たいべつされる。

各室かくしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）を入居にゅうきょ者しゃが所有しょゆうすることが基本きほんで、敷地しきちも各かく専有せんゆう部分ぶぶん所有しょゆう者しゃの共有きょうゆうとするもの。
各室かくしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）を入居にゅうきょ者しゃが所有しょゆうすることが基本きほんで、敷地しきちも各かく専有せんゆう部分ぶぶん所有しょゆう者しゃの地上ちじょう権けんを共有きょうゆうとするもの。
各室かくしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）を入居にゅうきょ者しゃが所有しょゆうすることが基本きほんだが、敷地しきちは定期ていき借地しゃくち権けんなどの設定せっていを受うけて各かく専有せんゆう部分ぶぶん所有しょゆう者しゃが借地しゃくち権けんを準じゅん共有きょうゆうするもの（いわゆる定期ていき借地しゃくち権けんマンションなど）。
建物たてもの全体ぜんたいと敷地しきちが同一どういつの所有しょゆう形態けいたいで、専有せんゆう部分ぶぶんにあたる各室かくしつを賃貸ちんたいに供きょうしているもの（いわゆる賃貸ちんたいマンション）。入口いりくちに管理かんりする不動産ふどうさん業者ぎょうしゃとその連絡れんらく先さきが書かかれたプレートや「入居にゅうきょ者しゃ募集ぼしゅう」と書かかれた貼はり紙がみなどが取とりつけられている場合ばあいが多おおい。
各室かくしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）ごとに所有しょゆう者しゃがおり、敷地しきち利用りよう権けんも各かく専有せんゆう部分ぶぶん所有しょゆう者しゃの共有きょうゆうもしくは借地しゃくち権けん準じゅん共有きょうゆうであるが、建設けんせつ当初とうしょの販売はんばい時じから賃貸ちんたいに供きょうされることを前提ぜんていとしたもの（いわゆる投資とうし用よう物件ぶっけんマンション、居住きょじゅう者しゃ-借主かりぬし側がわから見みると「賃貸ちんたいマンション」に含ふくまれる）。
自みずから居住きょじゅうするための住宅じゅうたくを建設けんせつするものが組合くみあいを結成けっせいし、協同きょうどうして事業じぎょう計画けいかくを進すすめ、土地とちの取得しゅとく、建設けんせつの設計せっけい、工事こうじ発注はっちゅう、その他たの業務ぎょうむを行おこない、住宅じゅうたくを取得しゅとくする方式ほうしき（コーポラティブ方式ほうしき、「コーポラティブハウス」参照さんしょう）。将来しょうらいの建替たてかえ時じの意思いし統一とういつの円滑えんかつ化かの観点かんてんからも、専有せんゆう部分ぶぶんにあたる部分ぶぶんも組合くみあいで共有きょうゆうする方法ほうほうにはメリットがあるという^[11]。

日本にっぽんや大韓民国だいかんみんこくなどにおいては、日本にっぽんの区分くぶん所有しょゆう法ほうのような関係かんけい法令ほうれいにより、一棟ひとむねの建物たてものおよび敷地しきちを、専有せんゆう部分ぶぶん、共用きょうよう部分ぶぶん、敷地しきちというように分類ぶんるいするが、欧米おうべいでは、土地とちと建物たてものを不動産ふどうさんとして区別くべつせず、敷地しきち利用りよう権けんという概念がいねんがない国くにが多おおい。さらに、共同きょうどう住宅じゅうたくの普及ふきゅうの進すすむ国くに、地域ちいきにおいては、法令ほうれいやその運用うんようにより、区分くぶん所有しょゆう権けんに基もとづく利用りようの自由じゆうと区分くぶん所有しょゆう者しゃの共同きょうどうの利益りえきの調和ちょうわが図はかられる。

詳細しょうさいは「専有せんゆう部分ぶぶん」および「共用きょうよう部分ぶぶん」を参照さんしょう

上記じょうきの3.以外いがいは、専有せんゆう部分ぶぶん所有しょゆう者しゃ（区分くぶん所有しょゆう者しゃ）たちにより形成けいせいされる管理かんり組合くみあいにより運営うんえいされていくことになるが、共同きょうどう住宅じゅうたくの普及ふきゅうの進すすむ国くに等とうでは、それぞれ法令ほうれいの整備せいびを進すすめている。日本にっぽんでは、マンションの管理かんり運営うんえいは建物たてものの区分くぶん所有しょゆう等とうに関かんする法律ほうりつ（区分くぶん所有しょゆう法ほう）によって定さだめられており、区分くぶん所有しょゆう者しゃと管理かんり組合くみあいが主体しゅたいとなって管理かんり運営うんえいを行おこなうこととされている。なお、上記じょうきの1.において、年月としつきの経過けいかとともに、専有せんゆう部分ぶぶんを賃貸ちんたいする区分くぶん所有しょゆう者しゃが増ふえていく傾向けいこうがあり（「賃貸ちんたい化か」）、管理かんり上じょうの問題もんだい点てんの一ひとつとされている^[12]。

詳細しょうさいは「管理かんり組合くみあい」を参照さんしょう

区分くぶん所有しょゆう建物たてもののイメージ例れい（専有せんゆう部分ぶぶんと共用きょうよう部分ぶぶん）

立だて面めんイメージ
301号室ごうしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）	302号室ごうしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）	エレベータ階段かいだん廊下ろうか（法定ほうてい共用きょうよう部ぶ分ぶん）
201号室ごうしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）	202号室ごうしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）
1階かい店舗てんぽ（専有せんゆう部分ぶぶん）	管理人かんりにん室しつ（規約きやく共ども用よう部分ぶぶん）

201、202、301、302の各号かくごう室しつ:住戸じゅうこ（各かく戸前とまえのバルコニーの専用せんよう使用しよう権けん付づけ）

高層こうそうマンションでも、上記じょうきイメージの延長えんちょうとなる。こうしたマンションの全景ぜんけいは、バルコニーの部分ぶぶんが凹へこんだような外観がいかんとなることが多おおい。大川おおかわ端はしリバーシティ21 センチュリーパークタワー

平面へいめんイメージ（上記じょうき立りつ面めんイメージの202号室ごうしつ周辺しゅうへん）
廊下ろうか（法定ほうてい共用きょうよう部分ぶぶん）
	202号室ごうしつ（専有せんゆう部分ぶぶん）	階段かいだん等とう（法定ほうてい共用きょうよう部ぶ分ぶん）
	バルコニー（法定ほうてい共用きょうよう部分ぶぶん、 202号ごう室しつの専用せんよう使用しよう権けん）

「規約きやく共用きょうよう部分ぶぶん」とは管理かんり規約きやくにより共用きょうよう部分ぶぶんとされる部分ぶぶんで、「法定ほうてい共用きょうよう部分ぶぶん」とは法令ほうれい上じょう当然とうぜんに共用きょうよう部分ぶぶんとなる部分ぶぶんをいう（区分くぶん所有しょゆう法ほう第だい4条じょう）。

敷地しきちについては「敷地しきち利用りよう権けん」を参照さんしょう

参考さんこう:『平成へいせい21年度ねんど版ばん　宅たく建けんポイントマスターI　民法みんぽう等とう』TAC

建設けんせつ

マンションの歴史れきしは高層こうそう化かの歴史れきしでもある^{[注ちゅう 1]}。中高層ちゅうこうそうのマンション建設けんせつ時じには、建設けんせつ工事こうじの騒音そうおん、振動しんどう、中高層ちゅうこうそうの建物たてものができることによる景観けいかん、日照ひでりなどへの影響えいきょう、ビル風ふう、テレビや携帯けいたい電話でんわの電波でんぱ障害しょうがいをめぐって周辺しゅうへん住民じゅうみんとの間あいだにトラブルが起おこることがある。日本にっぽんでは、1976年ねんに建築けんちく基準きじゅん法ほうに日影ひかげ規制きせいが定さだめられる契機けいきともなった^[2]。また、電波でんぱ障害しょうがい対策たいさくとして、周辺しゅうへんの住民じゅうみんに対たいし、ケーブルテレビ等ひとしによる再さい送信そうしんの補償ほしょうが行おこなわれることもある。

日本にっぽんでは、たびたび報道ほうどうや訴訟そしょうの対象たいしょうとされている。個別こべつのトラブル事例じれいは、該当がいとうする事例じれいの項目こうもくを参照さんしょうのこと。東京とうきょう都と国立こくりつ市しにおける国立こくりつマンション訴訟そしょうのように住民じゅうみんの景観けいかん利益りえきを認みとめた事例じれい（ただし、すでに完成かんせいしたマンションの撤去てっきょを求もとめた住民じゅうみんの請求せいきゅうに関かんしては却下きゃっか）が注目ちゅうもくされた。この事例じれいでは、反対はんたい運動うんどう関係かんけい者しゃでもあった当時とうじの国立こくりつ市長しちょう・上原うえはら公子きみこが市議会しぎかいなどで「違法いほう建築けんちく」と発言はつげんしたことが、事業じぎょう者しゃに対たいする営業えいぎょう妨害ぼうがいにあたると認みとめられたが、このように反対はんたい運動うんどうの手段しゅだんの「正当せいとう性せい」が問題もんだいとなる事例じれいも見みられる^[13]。

公共こうきょう施設しせつ整備せいびから受うける制約せいやく

日本にっぽんでは、2000年ねんから2005年ねんごろにかけて、バブル経済けいざい崩壊ほうかい後ごの企業きぎょうがリストラの一環いっかんとして保有ほゆうする土地とちを放出ほうしゅつし、政府せいふの景気けいき対策たいさくもあいまって、東京とうきょう都心としん部ぶなどではマンション建設けんせつに弾はずみがつき、都心としん居住きょじゅうを望のぞむ人々ひとびとから割安わりやす感かん・買かい得どく感かんに基もとづくマンション需要じゅようが急増きゅうぞうし、都心としん回帰かいき現象げんしょうが生しょうじたことがある。そこで、大都市だいとしの都心としんに近ちかく工場こうじょう跡地あとちの多おおかった東京とうきょう都と江東こうとう区く^{[注ちゅう 2]}などではマンションの素地そじの供給きょうきゅうとマンションの需要じゅようから「建設けんせつ（開発かいはつ）ラッシュ」が発生はっせいし、局地きょくち的てきな人口じんこう急増きゅうぞうに公共こうきょう施設しせつの整備せいびが追おいつかない状況じょうきょうが問題もんだいとなった。自治体じちたい側がわは急増きゅうぞうする公共こうきょう施設しせつの整備せいびに対たいしてマンション開発かいはつ業者ぎょうしゃにより多おおくの負担ふたんを求もとめ、業者ぎょうしゃ側がわは負担ふたんが増加ぞうかして開発かいはつコストへの反映はんえい、ひいては販売はんばい価格かかくにも影響えいきょうする形かたちとなった^[14]。

素地そじ

マンション開発かいはつが行おこなわれる土地とちは、「素地そじ」と呼よばれることがあり、素地そじの価格かかくは、マンション開発かいはつの投資とうし採算さいさん性せいの立場たちばから、法令ほうれい上じょう許容きょようされる床ゆか面積めんせきを重視じゅうしして評価ひょうかすることとなる^[15]。

躯むくろ体たい

マンションは居住きょじゅうの用ように供きょうするため、躯むくろ体たいは、強風きょうふうや振動しんどうに対たいする安定あんてい性せいのある鉄筋てっきんコンクリート造づくりが望のぞましいとされる^[16]。一方いっぽうで、鉄筋てっきんコンクリート造づくりは鉄骨てっこつ造づくりに比くらべて建物たてものの自重じちょうが大おおきくなりがちで、建築けんちく物ぶつの高層こうそう化か、大だいスパン化かを目指めざす上うえで柱はしらが邪魔じゃまになるため、「強度きょうどの高たかいコンクリートを使つかうことによって、いかに邪魔じゃまにならない柱はしらの大おおきさにするか」ということを目指めざして、各国かっこくで高こう強度きょうどコンクリートの開発かいはつが進すすめられた^[17]。日本にっぽんでも、超ちょう高層こうそうマンションを中心ちゅうしんに、高こう強度きょうどコンクリートの使用しようが広ひろがっている。

付帯ふたい設備せつび

「共用きょうよう部分ぶぶん」も参照さんしょう

給排水きゅうはいすい設備せつび

躯むくろ体たいより寿命じゅみょうの短みじかい配管はいかんの付づけ替がえリスクを分離ぶんりするため、現在げんざいでは、配管はいかんを部屋へやの中なかに通とおす内うち配管はいかん方式ほうしきに代かわり、マンションの基幹きかん配管はいかんを分離ぶんりして建たてるスケルトン・インフィル住宅じゅうたく（外そと配管はいかん方式ほうしき）を採用さいようするマンションが増ふえている。

電気でんき、情報じょうほう通信つうしん設備せつび

住宅じゅうたくにおけるIT化かの進展しんてんにともない、電気でんき設備せつびの容量ようりょう、インターネット通信つうしんの光ひかりファイバーの有無うむが重要じゅうよう性せいを増ましている。既存きそんのマンションでこれらの新しん増設ぞうせつを行おこなうには、共用きょうよう部分ぶぶんの変更へんこうにあたる工事こうじが必要ひつようとなり、各かく区分くぶん所有しょゆう者しゃが各自かくじ自由じゆうに回線かいせんを引ひき込こめない場合ばあいがある^{[注ちゅう 3]}。

駐車ちゅうしゃ場じょう等とう

日本にっぽんの場合ばあい、駐ちゅう輪わ・駐車ちゅうしゃスペースが不足ふそくしているマンションが散見さんけんされる^{[注ちゅう 4]}。ただし、逆ぎゃくに駐車ちゅうしゃ場じょうの空あきが発生はっせいすると、入居にゅうきょ後ごに駐車ちゅうしゃ場じょうの駐車ちゅうしゃ場じょう管理かんり費ひまたは利用りよう料りょうが確保かくほできず、それを財源ざいげんの一部いちぶとする修繕しゅうぜん計画けいかくなどの見み直じきを迫せまられるなど管理かんり組合くみあい運営うんえいに影響えいきょうが出でてくることとなる。また、稀まれな例れいではあるが、駐車ちゅうしゃ場じょうまで分譲ぶんじょうされて、駐車ちゅうしゃ場じょうが特定とくていの個人こじんの所有しょゆう物ぶつになている事例じれいもある。

品質ひんしつ問題もんだい

詳細しょうさいは「構造こうぞう計算けいさん書しょ偽造ぎぞう問題もんだい」を参照さんしょう

日本にっぽんでは2005年ねん11月、建築けんちく確認かくにん申請しんせいに添付てんぷする「構造こうぞう計算けいさん書しょ」の数値すうち偽造ぎぞうが発覚はっかくし、結果けっか的てきに建築けんちく基準きじゅん法ほうの耐震たいしん基準きじゅんを満みたさないマンションが多数たすう建設けんせつ・販売はんばいされることとなった。販売はんばい済ずみのマンションでは購入こうにゅう者しゃに対たいする補償ほしょう問題もんだい（瑕疵かし担保たんぽ責任せきにん）、完成かんせい前まえのマンションでは取とり壊こわし、また建設けんせつ業ぎょう者ものや不動産ふどうさん業者ぎょうしゃ倒産とうさんなどの影響えいきょうが出でている。

一方いっぽう、海外かいがいでも品質ひんしつ問題もんだいに起因きいんする崩壊ほうかいなどの事件じけん・事故じこはしばしば発生はっせいしており、2021年ねんにはアメリカでサーフサイド・コンドミニアム崩落ほうらく事故じこ^[18]が、 2022年ねんには韓国かんこくで光州こうしゅうマンション外壁がいへき崩落ほうらく事故じこ^[19]などが発生はっせいしている。

居住きょじゅう

マンション購入こうにゅう時じは、人々ひとびとは建物たてものや環境かんきょう、立地りっちというハード面めんを重視じゅうしする傾向けいこうがある^{[注ちゅう 5]}。一方いっぽう、マンション管理かんり士しの立場たちばからは、「人ひとと人ひととが一緒いっしょに住すむ」（共同きょうどう生活せいかつの場ば）というソフト面めんに重点じゅうてんを置おくことも提唱ていしょうされ、手段しゅだんとして、人間にんげん関係かんけいの構築こうちく、子育こそだて、高齢こうれい者しゃへの福祉ふくし、インターネット活用かつようなどが例示れいじされている^[20]。近年きんねんでは人々ひとびとのライフスタイルが多様たよう化かし、特定とくていの特徴とくちょうを備そなえたマンションを求もとめる人々ひとびともいる。たとえば、ペットを飼かう人々ひとびとのために「ペット飼育しいく可か」という条件じょうけんである物件ぶっけん、さらにはペット用ように室内しつない設計せっけいに工夫くふうされている物件ぶっけん、音楽家おんがくかや趣味しゅみで音楽おんがくを愛好あいこうする人々ひとびとのための防音ぼうおん室しつが各戸かっこに設置せっちしてある物件ぶっけん、オートバイ好すきの人々ひとびとのためにオートバイを各戸かっこに持もち込こむことができる物件ぶっけんなどである。デベロパーはさまざまな提案ていあんを行おこない、需要じゅように応こたえている。

マンションでは「人ひとと人ひととが一緒いっしょに住すむ（共同きょうどう生活せいかつ）」状況じょうきょうであるため、利用りよう方法ほうほうなどをめぐって、入居にゅうきょ者しゃ、区分くぶん所有しょゆう者しゃ間あいだのトラブルも多おおく見みられる。

「専有せんゆう部分ぶぶん#利用りよう等とうに関かんする問題もんだい」も参照さんしょう

トラブル

マンション内ないでもっとも多おおいトラブルに騒音そうおんがある^[21]。隣室りんしつや上下じょうげ階かいの生活せいかつ騒音そうおんは、法令ほうれいなどの違反いはんとなるような大だい音量おんりょうでなくとも、音質おんしつや頻度ひんどによっては不快ふかいに感かんじることがあり、またその程度ていどが人ひとによって大おおきく異ことなる。法令ほうれいや管理かんり規約きやくに違反いはんしないかぎり、当事とうじ者しゃ間あいだの問題もんだいとなる。上うえ階かいからの騒音そうおんは床ゆかスラブが厚あついほど、また直ちょく張はりよりも二に重じゅう床ゆかのほうが軽減けいげんされる。ただし配管はいかんなどを通とおして音おとが漏もれてくる場合ばあいもある。1990年代ねんだい初頭しょとうから急速きゅうそくに広ひろまったフローリングを含ふくめ解決かいけつ策さくといえるものとしては床ゆかや壁かべを厚あつくしたり、防音ぼうおん効果こうかのある絨毯じゅうたんなどを挟はさんだりすることが考かんがえられる。既存きそんマンションで改修かいしゅう工事こうじとしてこれらを行おこなう場合ばあい、共用きょうよう部分ぶぶんである躯むくろ体たいに手てを加くわえることとなるため管理かんり組合くみあい全体ぜんたいの問題もんだいとなったり、工事こうじにともなう騒音そうおん、振動しんどうが隣室りんしつや上下じょうげ階かいに及およんだりするため、困難こんなんな場合ばあいがある。マンションによっては、管理かんり規約きやくを定さだめ（あるいは改定かいていし）守まもるべきL値ちの設定せっていが行おこなわれている事例じれいもみられる。

1980年代ねんだいには上うえ階かいや隣家りんかの騒音そうおんをめぐる住民じゅうみん間あいだの殺傷さっしょう事件じけんなどが発生はっせいした事例じれいもあったが、その後ご、防音ぼうおん技術ぎじゅつやそれの普及ふきゅうの向上こうじょうに伴ともなって問題もんだいとしての深刻しんこく度どは低下ていかしている。

近年きんねんでは、ペット飼育しいくに関かんするトラブルや、マンション内ないにゴミ置場おきばがある場合ばあいにゴミ出だしをめぐるトラブルなどのほかに、生活せいかつ習慣しゅうかんが異ことなる外国がいこく人じん居住きょじゅう者しゃとのトラブル（上記じょうきの騒音そうおんのほかにも、管理かんり費ひを払はらわない、民泊みんぱくのように不ふ特定とくてい多数たすうの他人たにんに又貸またがし宿泊しゅくはくさせるなど）といった新あらたな問題もんだいも発生はっせいしている。また、グループホームの分譲ぶんじょうマンションへの入居にゅうきょを巡めぐり、管理かんり組合くみあいとグループホーム運営うんえい主体しゅたいとの間あいだで、訴訟そしょう沙汰ざたとなった例れいもある^[22]。

子育こそだて

マンションは子育こそだてを行おこなっている世代せだいの入居にゅうきょ者しゃも多おおいが、成長せいちょう期きの子こどもは立体りったい的てきなものに対たいする感覚かんかくが未み発達はったつであり、高たかいところに住すむという意識いしきが薄うすい。建築けんちく基準きじゅん法ほう上うえでは、ベランダの手てすりの安全あんぜん上じょう必要ひつような高たかさは110cm以上いじょうとされているが（建築けんちく基準きじゅん法ほう施行しこう令れい第だい126条じょう）、これでは子こどもの転落てんらく事故じこに発展はってんすることもある。

日本にっぽんでは近年きんねん、自治体じちたいによって「子育こそだて支援しえんマンション」に関かんする条例じょうれいを制定せいていする例れいが増ふえている。多おおくの場合ばあい実態じったいはさまざまであるが、多おおくは一定いっていの基準きじゅんを満みたすことで「子育こそだてマンション」と認定にんていし、結果けっかとしてマンションの資産しさん価値かちが上あがるというものである。基準きじゅんとしては、共用きょうよう部分ぶぶんにキッズルームを設もうけるなどがある。

自動車じどうしゃ

上述じょうじゅつのごとく、概がいして駐車ちゅうしゃ場じょうが不足ふそくしているマンションは多おおく、周辺しゅうへんにも手頃てごろな駐車ちゅうしゃ場じょうが存在そんざいしない場合ばあい、新あらたに車くるまを所有しょゆうしようと考かんがえる居住きょじゅう者しゃは、駐車ちゅうしゃ場じょうの利用りようが空すくのを待まつ順番じゅんばん待まちに加くわわることになる。需給じゅきゅうの差さが大おおきかったり入いれ替かわりの速度そくどが遅おそいと、空あき待まちの状態じょうたいで数すう年ねん以上いじょう待またされることも生しょうじうる。ただし基本きほん的てきには、自治体じちたいなどが開発かいはつ業者ぎょうしゃに対たいしてマンションの戸数こすうの一定いってい割合わりあいの駐車ちゅうしゃ場じょうを設置せっちする義務ぎむを課かしている。最近さいきんでは自動車じどうしゃの所有しょゆうにこだわらない人ひとも増ふえた。このためマンション管理かんり組合くみあいがカーシェアリングを運営うんえい、マンション付設ふせつの駐車ちゅうしゃ場じょうにその車くるまを置おき、多おおくの住民じゅうみんが車くるまを所有しょゆうせずして手軽てがるに車くるまを利用りようできるということを特徴とくちょうとして打うち出だすマンションも出でてきた。

維持いじ管理かんり

「共用きょうよう部分ぶぶん#区分くぶん所有しょゆう建物たてもの」および「管理かんり組合くみあい」も参照さんしょう

建物たてもののうち、特とくにマンションは、日常にちじょうの維持いじ管理かんり、計画けいかく的てきな大だい規模きぼ修繕しゅうぜんの実施じっしなどにより、経済けいざい価値かちや「寿命じゅみょう」が大おおきく影響えいきょうを受うける。日常にちじょうの維持いじ管理かんり、大だい規模きぼ修繕しゅうぜんは、管理かんり組合くみあいが主体しゅたい的てきに実施じっしすべきものである。マンションは築ちく年数ねんすうが経過けいかすると資産しさん価値かちの維持いじや老朽ろうきゅう化かの防止ぼうしのため、10年ねん～15年ねんに1度どの頻度ひんどで大だい規模きぼ修繕しゅうぜん工事こうじを行おこなうのが一般いっぱん的てきである。その費用ひようは居住きょじゅう者しゃからの修繕しゅうぜん費ひ積立つみたて金きんより支払しはらわれる。マンションの規模きぼによって金額きんがくが異ことなるため、一概いちがいにいくらとは言いえない。

管理かんり組合くみあいと町内ちょうない会かい（自治じち会かい）

マンションにおいて任意にんいに設立せつりつすることができる管理かんり組合くみあいは、区分くぶん所有しょゆう者しゃ全員ぜんいんの加入かにゅうが区分くぶん所有しょゆう法ほうに基もとづき入会にゅうかいが義務付ぎむづけられている（管理かんり組合くみあいが存在そんざいしないマンションでは管理かんり組合くみあいに入にゅうろうにも入はいりようが無ない）。一方いっぽう、区分くぶん所有しょゆう者しゃが賃貸ちんたいに出だしている場合ばあい、賃借ちんしゃく人じんは管理かんり組合くみあい員いんではない。関かかわる項目こうもくも、原則げんそくとして共有きょうゆう部分ぶぶんに関かんすることであり、マンション標準ひょうじゅん管理かんり規約きやく（単たん棟とう型がた）では、「管理かんり組合くみあいの業務ぎょうむ」に「地域ちいきコミュニティにも配慮はいりょした居住きょじゅう者しゃ間あいだのコミュニティ形成けいせい」を含ふくめているが（第だい32条じょう）、本来ほんらい目的もくてきではない。

日本にっぽんの場合ばあい、既存きそんの市街地しがいちには町内ちょうない会かい（自治じち会かい）がある場合ばあいが多おおい。これらには賃借ちんしゃく人じんであろうと居住きょじゅう者しゃが加入かにゅうするが、任意にんいのため加入かにゅうしない人ひともいる。マンション標準ひょうじゅん管理かんり規約きやく（単たん棟とう型がた）第だい27条じょうのコメントでは、各かく居住きょじゅう者しゃが任意にんいの判断はんだんで加入かにゅうする自治じち会費かいひ、町内ちょうない会費かいひは、管理かんり費ひとは別べつで各自かくじの負担ふたんとして、マンションの管理かんり組合くみあいとは区別くべつしている^[23]。住民じゅうみんの親睦しんぼくを図はかるほかに、自治体じちたい事務じむの委任いにんを受うけて仕事しごとをすることがある。マンションの場合ばあい、小規模しょうきぼであれば町内ちょうない会かいの「班はん」程度ていどとなるが、大だい規模きぼであれば、独自どくじの自治じち会かいを組織そしきして上位じょういの「町内ちょうない会かい連合れんごう会かい」などに加盟かめいすることもある。

上記じょうきの性質せいしつの差さから「管理かんり組合くみあい=実質じっしつ的てきに（マンション独自どくじの）自治じち会かい」「管理かんり組合くみあい役員やくいんと自治じち会かい役員やくいんの選出せんしゅつはまったく別べつ」などのさまざまな形態けいたいがある。実質じっしつ同一どういつであれば賃借ちんしゃく人じんの問題もんだい、実質じっしつ別べつであれば業務ぎょうむの切きり分わけ（例れい：共有きょうゆうの防災ぼうさい施設しせつの扱あつかいは誰だれが行おこなうか）、自治体じちたいの委任いにん事務じむの扱あつかいなどの課題かだいがある。

売買ばいばい

新築しんちく時じの分譲ぶんじょう^{[注ちゅう 6]}と使用しよう開始かいし後ごの「中古ちゅうこ」売買ばいばいに分わけられる。マンションの売買ばいばいについては、構造こうぞう面めん、権利けんり面めんの特殊とくしゅ性せいなどから、ほかの建物たてもの、土地とちの取引とりひきとは異ことなる特徴とくちょうがある。

マンションの売買ばいばいをめぐる問題もんだいについては「専有せんゆう部分ぶぶん」を参照さんしょう

建替たてかえ・解体かいたい

詳細しょうさいは「マンション建替たてかえ」を参照さんしょう

マンションに限かぎらず建物たてものは、経年けいねんにともなう劣化れっか、機能きのう的てき・経済けいざい的てき劣化れっか、被災ひさいによる損壊そんかいなどにより、最終さいしゅう的てきには、建たて替かえ・解体かいたいを検討けんとうする場合ばあいもある。

特とくにマンションは施工しこうの質しちや維持いじ管理かんりの状態じょうたいなどにより、「寿命じゅみょう」に大おおきな差異さいが生しょうずることもあり、さらに多数たすうの権利けんり者しゃが関係かんけいし、建たて替かえにあたっては、建たて替かえに参加さんかしない者ものの専有せんゆう部分ぶぶんを取得しゅとくするなど、その権利けんり者しゃ間あいだの調整ちょうせいが重要じゅうようである。国土こくど交通省こうつうしょうは「マンションの建替たてかえに向むけた合意ごうい形成けいせいに関かんするマニュアル」および「マンションの建替たてかえか修繕しゅうぜんかを判断はんだんするためのマニュアル」を作成さくせいしている。これらマニュアルでは、合意ごうい形成けいせいについては、発意はついから準備じゅんび段階だんかい-検討けんとう段階だんかい-計画けいかく段階だんかいを経へて建たて替かえ決議けつぎをゴールとし、事業じぎょう実施じっしについては、建替たてかえ組合くみあいの設立せつりつ段階だんかい-権利けんり変換へんかん段階だんかい-工事こうじ実施じっし段階だんかいを経へて再さい入居にゅうきょ・新しん管理かんり組合くみあい設立せつりつ段階だんかいまで盛もり込こまれている。建たて替かえか修繕しゅうぜんかの判断はんだんについては、費用ひよう対たい改善かいぜん効果こうかを把握はあくし、それに基もとづき総合そうごう的てきに判断はんだんするものとされている。「専有せんゆう部分ぶぶん#売うれ渡わたり請求せいきゅう権けん」「専有せんゆう部分ぶぶん#買取かいとり請求せいきゅう権けん」も参照さんしょう。

各国かっこくではさまざまな法制ほうせいの整備せいびが進すすめられている。たとえばアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、「区分くぶん所有しょゆう関係かんけいの解消かいしょう手続てつづき」を区分くぶん所有しょゆう権けんの80%以上いじょうの賛成さんせいにより行おこない、専有せんゆう部分ぶぶんおよび共有きょうゆう部分ぶぶんの所有しょゆう権けんを組合くみあいに帰属きぞくさせたうえで建たて替かえを進すすめることとしているという^[24]。

日本にっぽんでは、以下いかの2つの法律ほうりつがある。

建たて替かえそのものの手続てつづきなどを迅速じんそくにできるようにした「マンションの建替たてかえ等とうの円滑えんかつ化かに関かんする法律ほうりつ」がある。
詳細しょうさいは「マンションの建替たてかえ等とうの円滑えんかつ化かに関かんする法律ほうりつ」を参照さんしょう
区分くぶん所有しょゆう法ほうにより、管理かんり組合くみあい総会そうかいにおいて区分くぶん所有しょゆう者しゃおよび議決ぎけつ権けんの各かく5分ぶんの4以上いじょうの賛成さんせいにより建たて替かえを決議けつぎできる。建たて替かえ決議けつぎの要件ようけんとして、以前いぜんはさまざまな規定きていがあったが^{[注ちゅう 7]}、2003年ねんに大幅おおはばに緩和かんわされた。さらに、マンションの建替たてかえ等とうの円滑えんかつ化かに関かんする法律ほうりつが制定せいていされている。同どう法ほうでは、区分くぶん所有しょゆう法ほうの建たて替かえ決議けつぎが成立せいりつした場合ばあいは、マンション建替たてかえ組合くみあいを設立せつりつすることが義務付ぎむづけられ、組合くみあいが建たて替かえ不参加ふさんか者しゃへの区分くぶん所有しょゆう権けん売うり渡わたり請求せいきゅうなどを行おこなえることとしている。2002年ねんの国土こくど交通省こうつうしょうの発表はっぴょうによると、81例れいすべてが100%の合意ごういで建たて替かえられている。

人口じんこう減少げんしょうと高齢こうれい化かが進すすむ状態じょうたいでは、マンション住民じゅうみんの高齢こうれい化か、死亡しぼうにより空室くうしつが増加ぞうかし、維持いじ費ひの調達ちょうたつが困難こんなんになった荒廃こうはいマンションが増加ぞうかする。高齢こうれい化かによる荒廃こうはいマンションの増加ぞうかを経験けいけんしたイギリスは、高層こうそうマンションの建設けんせつを禁止きんしするとともに、荒廃こうはいしてスラムとなったマンションを税金ぜいきんで取とり壊こわしている。日本にっぽんは急速きゅうそくな高齢こうれい化かが進すすんでいるものの、他国たこくのこういった事例じれいに気きづく動うごきがないことを、藻も谷たに浩ひろし介かいが指摘してきしている^[25]。

停電ていでん・災害さいがい

長時間ちょうじかんの停電ていでんや停電ていでんをともなう災害さいがいが発生はっせいすると、マンションの生活せいかつは、特とくに高層こうそう階かいにおいて数々かずかずの不便ふべんが生しょうじる。エレベーターが動うごかない間あいだは階段かいだんで上のぼり下くだりを強しいられ、体力たいりょく的てきに難むずかしい人ひとは「高層こうそう難民なんみん」「マンション内ない帰宅きたく困難こんなん者しゃ」になりかねない。オートロックや自動じどうドア、増ぞう圧あつ直結ちょっけつ給水きゅうすいのポンプが停止ていしすると出入でいりや防犯ぼうはん、水みずの使用しように支障ししょうが出でてくる。非ひ常用じょうよう発電はつでん機きを備そなえたマンションでは平時へいじから点検てんけんしておく、水みず・食料しょくりょうを備蓄びちくしておくといった対応たいおうが重要じゅうようとなる^[26]。