北極ほっきょく

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北極ほっきょくかい周辺しゅうへん地図ちずあかせんは7がつ平均へいきん気温きおんが10℃である等温とうおんせんしめす。このあかせんかこまれた部分ぶぶん北極ほっきょく定義ていぎすることもある。なお、この定義ていぎケッペンの気候きこう区分くぶんにおける寒帯かんたいかさなる。

北極ほっきょく(ほっきょく、えい: Arctic)とは、地球ちきゅうなどの惑星わくせい天体てんたい地軸ちじく地表ちひょうまじわるてんのうち、きたがわのものであるきた極点きょくてん周辺しゅうへん地域ちいき、もしくはきた極点きょくてんそのものをす。地球ちきゅうじょうでは北極ほっきょくかいなどをふく地域ちいきで、とく白夜はくやごくよるられる区域くいき北極圏ほっきょくけんぶ。

地球ちきゅう自転じてんじくじょうきた極点きょくてん方位ほうい磁石じしゃくしめきたきょくであるきた磁極じきょくことなる場所ばしょにあり、1000kmほどはなれている。そのため、方位ほうい磁石じしゃくしめ方向ほうこうかならずしもきたとはかぎらない。南北なんぼく磁極じきょく移動いどうつづけている。

地理ちり[編集へんしゅう]

地球ちきゅうじょうきた極点きょくてん中心ちゅうしんとする北極ほっきょくかいおよびその周辺しゅうへん島嶼とうしょ大陸たいりくユーラシア大陸たいりくきたアメリカ大陸あめりかたいりく沿岸えんがんふく地方ちほう北極ほっきょく地方ちほうぶ。きた極点きょくてん北極ほっきょくかいにあるが、いちねんつうじて凍結とうけつしているため、氷上ひかみ移動いどうしてきた極点きょくてん到達とうたつすることが可能かのうである。

北極圏ほっきょくけん天然てんねん資源しげんねむ場所ばしょとしても注目ちゅうもくされていて、その規模きぼ世界せかいの4ぶんの1の埋蔵まいぞうりょうめるものとられている。ロシア連邦れんぽうヤマル半島はんとうでの天然てんねんガス採掘さいくつ後述こうじゅつ)など一部いちぶでは開発かいはつはじまっている。将来しょうらいにおいても、北極圏ほっきょくけん人類じんるい資源しげん採掘さいくつにおいて重要じゅうよう地域ちいきとしてあつかわれ、本格ほんかくてき開発かいはつ計画けいかく資源しげん争奪そうだつおこなわれるであろうことは予想よそうかたくない。

アメリカ地質調査所ちしつちょうさしょ2018ねん公表こうひょうした、石油せきゆ天然てんねんガス資源しげん埋蔵まいぞうりょうかんする報告ほうこくしょには、発見はっけん技術ぎじゅつてき採掘さいくつ可能かのう世界せかい資源しげんのうちやく22%が北極圏ほっきょくけんにあるという見解けんかいしるされている。よって規模きぼがこの報告ほうこくしょどおりであるならば今後こんご採掘さいくつさいには地球ちきゅうじょう資源しげんの2わりかためるりょう産出さんしゅつされることが見込みこまれる。

航路こうろ領域りょういきなどをめぐうご[編集へんしゅう]

現代げんだい北極圏ほっきょくけんふくめて大西おおにしひろしふね北上ほくじょうするこころみは古代こだい中世ちゅうせいヨーロッパからかえされ、アイスランドグリーンランドへの入植にゅうしょく探検たんけん経済けいざい活動かつどう貿易ぼうえき捕鯨ほげいなどの漁業ぎょぎょう)がおこなわれた。

現代げんだいにおいて、北極ほっきょくはこのけん位置いちする国家こっかにとって重要じゅうよう航路こうろとなっており、夏場なつば商業しょうぎょう目的もくてき北極ほっきょくかい重要じゅうようルートとして利用りようされている。現在げんざい地球ちきゅう温暖おんだんによる影響えいきょうもからみ、航行こうこう可能かのう期間きかんはこれまでよりながくなる傾向けいこうにあり、2030ねんころにはなつ氷海ひょうかいがなくなる可能かのうせいがあるとされる。それによって北極ほっきょく航路こうろ通年つうねん開通かいつう現実げんじつせいび、物流ぶつりゅうのコストも従来じゅうらいくらべて格段かくだんやすくなるなどのメリットがはじめている。

現時点げんじてんひがしアジア欧州おうしゅう往来おうらいするふね大半たいはんは、スエズ運河うんが経由けいゆ航路こうろ利用りようしている。この航路こうろ北極ほっきょくかい航路こうろえると、航海こうかい距離きょりやく3ぶんの2に短縮たんしゅくされ、航行こうこう時間じかんやく1ヶ月かげつやく10にちほどみじかくなる。このため燃料ねんりょう消費しょうひりょう最大さいだい50%削減さくげんできるとされ、二酸化炭素にさんかたんそ窒素ちっそ酸化さんかぶつ排出はいしゅつ削減さくげんにもつながる利点りてんがある。また現今げんこんにおいては中東ちゅうとう情勢じょうせいからんだ問題もんだいもあり、その緊迫きんぱくという政治せいじリスクを低減ていげんできることもおおきい。

だが、北極ほっきょく開発かいはつ自由じゆうおこなえるわけではない。国際こくさい海洋かいようほうもとづいて5沿岸えんがんこくアラスカしゅう領有りょうゆうするアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく、ロシア、カナダ、グリーンランドを領有りょうゆうするデンマークノルウェー)が主権しゅけん主張しゅちょうし、排他はいたてき経済けいざい水域すいいき(EEZ)や大陸棚たいりくだな主張しゅちょう設定せっていしている。EEZないでの開発かいはつには主権しゅけん国家こっか同意どうい必要ひつようになる。安全あんぜん保障ほしょうじょう問題もんだいでは、航行こうこう自由じゆう主張しゅちょうするアメリカにたいして、自国じこく沿岸えんがん管轄かんかつけん行使こうし主張しゅちょうするほか沿岸えんがんこくとの対立たいりつつづいており、法的ほうてき規範きはん現状げんじょうではまだととのっていない。

また北極ほっきょくソ連それんとアメリカなど西側にしがわ諸国しょこく冷戦れいせん以降いこう軍事ぐんじてき対峙たいじともなっている[1]

北極圏ほっきょくけん諸国しょこく関与かんよ[編集へんしゅう]

北極圏ほっきょくけん位置いちしない諸国しょこくも、北極ほっきょくかい航路こうろ資源しげん開発かいはつ安全あんぜん保障ほしょうなどで関与かんよしている。北極ほっきょく評議ひょうぎかい北極圏ほっきょくけん領土りょうどゆうする各国かっこく北欧ほくおう諸国しょこくスウェーデンフィンランド)の正規せいきメンバー8カ国かこくくわえて、日本にっぽんふく北極ほっきょく諸国しょこく13カ国かこくオブザーバー参加さんかしている[2]

2017ねんれの12月8にち北極ほっきょくめんしたロシア・ヤマル半島はんとうで、中国ちゅうごくがロシアに資金しきん協力きょうりょくするかたちむすばれた協力きょうりょく案件あんけんでLNG(液化えきか天然てんねんガス開発かいはつプロジェクトでもある「ヤマルLNG」が正式せいしき稼働かどう2019ねん全面ぜんめん竣工しゅんこう、3ほん生産せいさんラインで毎年まいとし中国ちゅうごくへ400まんtのLNGが供給きょうきゅうされている。このりょう中国ちゅうごく輸入ゆにゅうするLNG総量そうりょうの8%に相当そうとうし、中国ちゅうごくはこの箇所かしょシルクロードになぞらえ「氷上ひかみシルクロードの重要じゅうよう拠点きょてん」と位置いちづけている[3]

また中国ちゅうごく北極ほっきょく進出しんしゅつ2004ねんおこなっており、同国どうこくはつとなる北極ほっきょく観測かんそく基地きち黄河こうが基地きち」をノルウェー・スバールバル諸島しょとう建設けんせつしている。そして2017ねんには、気象きしょう航路こうろ調査ちょうさ海洋かいよう生物せいぶつ多様たようせい調査ちょうさなどで北極ほっきょくを3かげつかけ一周いっしゅうする調査ちょうさ活動かつどうおこなった。

一方いっぽう北極ほっきょくちか極東きょくとう位置いちする日本にっぽん2015ねん国家こっか政策せいさくひとつ『くに北極ほっきょく政策せいさく』を発表はっぴょうし、航路こうろ資源しげん開発かいはつ姿勢しせいしめした[4]前述ぜんじゅつ北極圏ほっきょくけん評議ひょうぎかいオブザーバー参加さんかつづいて、産官学さんかんがく北極圏ほっきょくけん課題かだいはなう「北極ほっきょくサークル」に2018ねん10がつ河野こうの太郎たろう外務がいむ大臣だいじん出席しゅっせきし、閣僚かくりょうはじめて派遣はけんした。上記じょうきのヤマルLNGプロジェクトには日本にっぽん企業きぎょう関与かんよしている。こうした日本にっぽん積極せっきょく姿勢しせいは、中国ちゅうごく北極ほっきょく進出しんしゅつ視野しやれている[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]