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はんぐん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくにおけるはんぐん(はんぐん、えい: semigroup)は、集合しゅうごう S とそのうえ結合けつごうてきこう演算えんざんとをあわせてかんがえた代数だいすうてき構造こうぞうである。いいかえれば、はんぐんとは演算えんざん結合けつごうてきマグマである。「はんぐん」というぐん由来ゆらいする。ぐんことなりはんぐんでは、単位たんいもと存在そんざいするとはかぎらず、またかくもとかならずしもぎゃくもとたない。

はんぐん演算えんざんおおくの場合ばあい乗法じょうほうてきく(順序じゅんじょたい (x, y) に演算えんざんほどこした結果けっかxy あるいはたんxyあらわす)。

はんぐんについて本格ほんかくてき研究けんきゅうおこなわれるようになるのは20世紀せいきはいってからである。はんぐんは、「無記憶むきおくけい ("memoryless" system) すなわちかく反復はんぷく時点じてんでゼロから開始かいしされる時間じかん依存いぞんけい (time-dependent system)抽象ちゅうしょう代数だいすうてき定式ていしき基盤きばんであり、数学すうがく様々さまざま分野ぶんやにおいて重要じゅうよう概念がいねんとなっている。応用おうよう数学すうがくにおいては、はんぐん線型せんけい時間じかん不変ふへんけい英語えいごばん基本きほんモデルである。またへん微分びぶん方程式ほうていしきろんでは、はんぐん空間くうかん発展はってんてきかつ時間じかん依存いぞん任意にんい方程式ほうていしき対応たいおうしている。有限ゆうげんはん群論ぐんろんは1950年代ねんだい以降いこう有限ゆうげんはんぐん有限ゆうげんオートマトンとのあいだ自然しぜん関連かんれんせいから、理論りろん計算けいさん科学かがく分野ぶんやとく重要じゅうようとなっている。確率かくりつろんでははんぐんマルコフ過程かてい関連付かんれんづけられる (Feller 1971)。

定義ていぎ

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集合しゅうごう S とそのうえこう演算えんざん • : S × S → S のたい (S, • ) が結合けつごうりつ結合けつごう法則ほうそく)をたすとき、これをはんぐんという。Sはんぐん (S, •) のたい集合しゅうごうとよぶ。

結合けつごうりつ
Sかくもと a, b, cたいして、等式とうしき (ab) • c = a • (bc) がつ。

また誤解ごかいのおそれがなければ「はんぐん S」のようにだい集合しゅうごうおな記号きごうはんぐんあらわす。

たい集合しゅうごう有限ゆうげん集合しゅうごうであるはんぐん有限ゆうげんはんぐん (finite semigroup) または有限ゆうげんすうはんぐん (semigroup with finite order)たい集合しゅうごう無限むげん集合しゅうごうであるはんぐん無限むげんはんぐん (infinite semigroup) または無限むげんすうはんぐん (semigroup with infinite order)という。

はんぐんれい

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  • そらはんぐん: そら集合しゅうごうそら写像しゃぞう演算えんざんとしてはんぐんす。はんぐん定義ていぎたい集合しゅうごうそらでないことをして、そらはんぐん除外じょがいすることもある。
  • 一元いちげんはんぐん: 一元いちげん集合しゅうごう {a} に aa = a演算えんざんさだめたものは、ただひとつのもとからなるはんぐんとなる。これは(同型どうけいちがいをのぞけば)本質ほんしつてきひとつしか存在そんざいしない。しばしばこれを自明じめいはんぐん (trivial semigroup)ぶ。
  • 二元にげんはんぐん: たい集合しゅうごうが2げんからなるはんぐん同型どうけいのぞいて5種類しゅるいことなったものが存在そんざいする。
  • せい整数せいすう全体ぜんたい集合しゅうごう N加法かほうかんしてはんぐんす。
  • 非負ひふ正方せいほう行列ぎょうれつ(すべての成分せいぶん非負ひふであるような正方せいほう行列ぎょうれつ)の全体ぜんたい行列ぎょうれつせきあたえたものははんぐんす。
  • だいいちれつすべて0であるような2正方せいほう行列ぎょうれつ全体ぜんたい行列ぎょうれつせきあたえたものははんぐんす。
  • 任意にんいたまきのイデアルたまき乗法じょうほうかんするはんぐんである。
  • 文字もじ集合しゅうごう Σしぐま固定こていして、そのうえ有限ゆうげん文字もじれつ全体ぜんたいかんがえると、文字もじれつ連接れんせつ演算えんざんとするはんぐんられる。これを Σしぐま うえ自由じゆうはんぐんという。空文字くうもじれつをもふくめてかんがえるとこのはんぐんΣしぐま うえ自由じゆうモノイドとなる。
  • かくりつ分布ぶんぷ Fたいして、Fたたべき全体ぜんたい集合しゅうごうたたみを演算えんざんとしてかんがえたものははんぐんす。これはたたはんぐん (convolution semigroup)ばれる。
  • 任意にんいモノイド単位たんいもとはんぐんである。
  • 任意にんいぐんかくもとぎゃくもとつモノイドである。
  • ぐんは、変換へんかんからなるはんぐんである(ぐんではないが慣用かんようてきにこのようにばれる)。

基本きほんてき概念がいねん

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単位たんいもとれいげん

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任意にんいはんぐんつことのできる単位たんいもと高々たかだかひとつである(これは任意にんいのマグマについてもつ)。単位たんいもとはんぐんは、単位たんいてきはんぐんあるいはモノイドばれる。はんぐん SS のどのもとともことなるもと e添加てんかして S ∪ {e} のかくもと sたいして es = se = sさだめることによって、はんぐんをモノイドにことができる。S単位たんいもと添加てんかしてられるモノイドを S1あらわし、S単位たんいもと添加てんかあるいは 1-添加てんかぶ(誤解ごかいのおそれがなければ、S の 1-添加てんかおな記号きごう Sあらわすこともある)。したがって、任意にんいかわはんぐんグロタンディーク構成こうせいつうじてぐんむことができる。

任意にんいのマグマがちうる吸収きゅうしゅうもと高々たかだかひとつであり、はんぐんではそれをれいげんぶ。れいげんたないはんぐん SSぞくさないもと 0 を添加てんかして、れいげんはんぐん S0Sむことができる。S0Sれいもと添加てんかあるいは 0-添加てんかぶ。

部分ぶぶんはんぐんとイデアル

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はんぐん (S, ∗) の部分ぶぶん集合しゅうごう A, Bあたえられたとき、AB (あるいはたんAB) であらわされる S部分ぶぶん集合しゅうごう

さだめる。この記法きほうもちいれば、はんぐん S部分ぶぶん集合しゅうごう A について

  • AS部分ぶぶんはんぐん (subsemigroup) であるとは、AAA であることをう。
  • ASみぎイデアル (right ideal) であるとは、ASA であることをう。
  • ASひだりイデアル (left ideal) であるとは、SAA であることをう。

Aひだりイデアルかつみぎイデアルであるとき、A両側りょうがわイデアル (two-sided ideal) あるいはたんイデアル (ideal)う。

はんぐん S部分ぶぶんはんぐんからなるぞくまじわりはふたたS部分ぶぶんはんぐんとなる。すなわち、S部分ぶぶんはんぐん全体ぜんたい完備かんびたばす。

極小きょくしょうイデアル(包含ほうがん関係かんけいかんして極小きょくしょうなイデアル)をたないはんぐんれいは、せい整数せいすう全体ぜんたい加法かほうかんしてはんぐん N である。かわはんぐん極小きょくしょうイデアルは(存在そんざいするならば)ぐんす。

もとをそれが生成せいせいするしゅイデアル言葉ことば特徴付とくちょうづける、いつつの同値どうち関係かんけいからなるグリーンの関係かんけいしき英語えいごばんはんぐんのイデアルや関連かんれんする構造こうぞう概念がいねん調しらべる重要じゅうよう道具どうぐである。

はんぐんじゅん同型どうけいはんぐん合同ごうどう

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はんぐんじゅん同型どうけい (semigroup homomorphism) とははんぐん構造こうぞうたも写像しゃぞうのことである。2つのはんぐん S, Tあいだ写像しゃぞう f: STじゅん同型どうけいであるとは、等式とうしき

f(ab) = f(a)f(b)

Sかくもと a, bたいして成立せいりつすることをう。つまり(Sなかで)せきをとってから fうつしても、fうつしてから(T のなかで)せきをとっても同一どういつ結果けっかられるとうことである。はんぐん単位たんいもと場合ばあいでも、はんぐんじゅん同型どうけいかならずしも単位たんいもと単位たんいもとうつすとはかぎらない。

ふたつのはんぐん S, T同型どうけいであるとは、ぜんたんしゃはんぐんじゅん同型どうけい(すなわちはんぐん同型どうけい写像しゃぞうf: ST存在そんざいすることをう。同型どうけいはんぐんは、はんぐんとして同一どういつ構造こうぞうつ。

はんぐん合同ごうどう (semigroup congruence) は、はんぐん演算えんざん両立りょうりつする同値どうち関係かんけいである。つまり、はんぐん合同ごうどう ∼ (⊂ S × S)S うえ同値どうち関係かんけいであって、かつ

[xy かつ uv] ならば xuyv

S任意にんいもと x, y, u, vたいして成立せいりつするものをう。任意にんい同値どうち関係かんけいおなじくはんぐん合同ごうどう 合同ごうどうるい

さだめるが、さらに合同ごうどうるいあいだこう演算えんざん

さだめるとこれは矛盾むじゅん定義ていぎできてはんぐん演算えんざんとなる。これにより、はんぐん合同ごうどう による合同ごうどうるい全体ぜんたい S/∼演算えんざんとしてはんぐんす。このはんぐん剰余じょうよはんぐん (residue class semigroup)しょうはんぐん (quotient semigroup, factor semigroup) などとぶ。自然しぜん写像しゃぞう

ぜんはんぐんじゅん同型どうけいであり、しょう写像しゃぞうなどとばれる。S がモノイドならばその剰余じょうよはんぐんS単位たんいもとぞくする合同ごうどうるい単位たんいもととするモノイドをす。ぎゃくに、任意にんいはんぐんじゅん同型どうけいかくはんぐん合同ごうどうあたえる。これらの結果けっかは、普遍ふへん代数だいすうがくにおけるだい一同いちどうがた定理ていり特別とくべつ場合ばあいにほかならない。

はんぐん任意にんいのイデアル I は、

さだまるはんぐん合同ごうどう ρろーかんするリース剰余じょうよはんぐん英語えいごばんとして部分ぶぶんはんぐん誘導ゆうどうする。

はんぐん構造こうぞう

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S任意にんい部分ぶぶん集合しゅうごう Aたいし、Aふくむような S最小さいしょう部分ぶぶんはんぐん T存在そんざいする。この TA生成せいせいする (generate) 部分ぶぶんはんぐんという。Sひとつのもと x が(つまり単元たんげん集合しゅうごう {x} が)生成せいせいする部分ぶぶんはんぐん(のたい集合しゅうごう) { xn | nせい整数せいすう} が有限ゆうげん集合しゅうごうであるとき、x有限ゆうげんすうつ、あるいはくらいすう有限ゆうげん (finite order) であるといい、そうでないとき無限むげんすうつあるいはくらいすう無限むげん (infinite order) であるという。 はんぐん周期しゅうきてき (periodic) あるいはねじれはんぐん (torsion semigroup) であるとは、その任意にんいもとくらいすう有限ゆうげんであるときにう。また、ただひとつのもとから生成せいせいされるはんぐん単項たんこう生成せいせいまたは巡回じゅんかいはんぐんであるという。巡回じゅんかいはんぐんくらいすう無限むげんならばそれはせい整数せいすう全体ぜんたい加法かほうかんしてはんぐん同型どうけいであり、くらいすう有限ゆうげんかつそらでないならばすくなくともひとつはべきとうもとふくまねばならない。したがって、任意にんいそらでない周期しゅうきてきはんぐんすくなくともひとつのべきとうもとふくむ。

はんぐん部分ぶぶんはんぐんは、それ自身じしんぐんすならば部分ぶぶんぐんばれる。はんぐん部分ぶぶんぐんはんぐんべきとうもとあいだにはちかしい関係かんけい存在そんざいする。はんぐんかく部分ぶぶんぐんはちょうどひとつのべきとうもとふくみ、それはつまり部分ぶぶんぐん単位たんいもとである。ぎゃくに、はんぐんかくべきとうもと eたいし、eふく極大きょくだい部分ぶぶんぐんただひと存在そんざいする。はんぐんかく極大きょくだい部分ぶぶんぐんかならずこのやりかたることができ、したがってはんぐん極大きょくだい部分ぶぶんぐんべきとうもととのあいだ一対一いちたいいち対応たいおうがとれる。ここでの、極大きょくだい部分ぶぶんぐん群論ぐんろんにおける標準ひょうじゅんてき語法ごほうとはことなる。

くらいすう有限ゆうげん場合ばあいにはさらにいろいろなことがえる。たとえば、任意にんいそらでない有限ゆうげんはんぐんは、周期しゅうきてきで、極小きょくしょうイデアルをち、すくなくともひとつのべきとうもとつ。さらなる有限ゆうげんはんぐん構造こうぞうについての議論ぎろんKrohn-Rhodes理論りろん英語えいごばんこう参照さんしょうせよ。

はんぐんのクラス

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  • モノイド単位たんいてきはんぐんである。
  • 部分ぶぶんはんぐんはんぐん部分ぶぶん集合しゅうごうであって、もとのはんぐん演算えんざんについてじているようなものである。部分ぶぶんはんぐんぐんすならば、それをもとのはんぐん部分ぶぶんぐんぶ。
  • おびはその演算えんざんべきとうであるようなはんぐんである。
  • けしやくはんぐんひだりけしやくりつab = ac ならば b = c」かつみぎけしやくりつba = ca ならば b = c」をたすはんぐんである[1]
  • はんたばはその演算えんざんべきとうかつかわはんぐんである。
  • 0-単純たんじゅんはんぐん
  • 変換へんかんはんぐんなんらかの集合しゅうごうじょう変換へんかんからなる、写像しゃぞう合成ごうせいせきとするはんぐんである。任意にんい有限ゆうげんはんぐん S高々たかだか |S| + 1 状態じょうたいをもつ(状態じょうたい集合しゅうごう Q うえ変換へんかんはんぐんとして表現ひょうげんすることができる。Sかくもと xQ をそれ自身じしんうつ写像しゃぞう x: QQ であり、れつ xyQかくもと qたいして q(xy) = (qx)y定義ていぎされる。変換へんかんれつつく操作そうさあきらかに結合けつごうてき演算えんざんで、ここでは写像しゃぞう合成ごうせい等価とうかである。この表現ひょうげん任意にんいオートマトンあるいは有限ゆうげん状態じょうたい機械きかい (FSM) にたいする基本きほんである。
  • そう巡回じゅんかいはんぐん英語えいごばんじつはモノイド)は、ふたつの生成せいせいもと p, q生成せいせいする自由じゆうはんぐん基本きほん関係かんけいしき pq = 1 でったものとしてられる。
  • C0-はんぐん発展はってん方程式ほうていしきかい時間じかん発展はってんあらわはんぐんである。これは解析かいせきがくにおけるはんぐん代表だいひょうれいである。
  • 正則せいそくはんぐんかくもと xすくなくともひとつの一般いっぱんぎゃくもと yxyx=x かつ yxy=yたすもと)をはんぐんである。このときもと x および y は「たがいにぎゃくである」("mutually inverse") ということもある。
  • ぎゃくはんぐん任意にんいはらがちょうどひとつの一般いっぱんぎゃくもとをもつような正則せいそくはんぐんである。あるいは、正則せいそくはんぐんぎゃくはんぐんとなるために必要ひつよう十分じゅうぶん条件じょうけんとして、任意にんいふたつのべきとうもとたがいにかわとなることがげられる。
  • アフィンはんぐんZd有限ゆうげん生成せいせい部分ぶぶんはんぐん同型どうけいはんぐんである。アフィンはんぐんかわたまきろん応用おうようつ。

分数ぶんすうぐん

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はんぐん S分数ぶんすうぐんあるいはしょうぐん (group of fractions) G = G(S) とは、Sもと全体ぜんたい生成せいせいされ、S において成立せいりつする xy = zかたち等式とうしきすべてを基本きほん関係かんけいとするようなぐんである[2]しょうぐんS からぐんへのしゃたいする普遍ふへんせいしめ[3]

あきらかに SかくもとG(S) のなか対応たいおうする生成せいせいもとうつ写像しゃぞう存在そんざいする。重要じゅうよう問題もんだいとして、この写像しゃぞうみとなるようなはんぐん特徴とくちょうづけの問題もんだいがある。かならずしもみとならないことのれいとして、S をある集合しゅうごう X部分ぶぶん集合しゅうごうまじわり演算えんざんとしてはんぐんがある(じつはんたばす)。これは、S任意にんいもとAA = Aたすから G(S) の生成せいせいもともすべてそうでなければならず、したがって G(S) は自明じめいぐんとなっている。問題もんだい写像しゃぞう SG(S) がみとなるためには Sけしやくりつたすことが必要ひつようとなるのはあきらかである。Sかわならばそれは十分じゅうぶん条件じょうけんにもなり[4]、かつはんぐんグロタンディークぐん分数ぶんすうぐん構成こうせいあたえる。かわはんぐんたいするこの問題もんだいはんぐんについて本格ほんかくてきにあつかった最初さいしょ論文ろんぶん (Suschkewitsch 1928) で追求ついきゅうされている[5]アナトリー・マルチェフ英語えいごばんは1937ねん可能かのうせいについての必要ひつよう条件じょうけんあたえている[6]

へん微分びぶん方程式ほうていしきはんぐんほう

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はん群論ぐんろんは、へん微分びぶん方程式ほうていしきろんにおいてもあるしゅ問題もんだい研究けんきゅうのためにもちいられる。大雑把おおざっぱにいえば、はんぐん使つかった手法しゅほうというのはへん微分びぶん方程式ほうていしきをあるしゅ函数かんすう空間くうかんじょう常微分じょうびぶん方程式ほうていしきとみなすことである。たとえば、つぎのような空間くうかんてき区間くかん (0, 1) ⊂ R時間じかん t ≥ 0 じょうねつ方程式ほうていしき初期しょき/境界きょうかい問題もんだい

かんがえる。XL2((0, 1); R) とし、A

定義ていぎいきとするかい微分びぶん作用素さようそとすれば、さきほどの初期しょき/境界きょうかい問題もんだい空間くうかん X うえ常微分じょうびぶん方程式ほうていしき初期しょき問題もんだい

として解釈かいしゃくすることができる。発見はっけんてき方法ほうほうのレベルでいえば、この問題もんだいかいu(t) = exp(tA)u0 というかたちをしている「はず」である。しかし厳密げんみつえば tAべきとはなにであるかということに意味いみあたえなければならない。t函数かんすうとしては、exp(tA) は X から X への作用素さようそからなるはんぐんであり、時刻じこく t = t0 において初期しょき状態じょうたい u0 をとり、任意にんい時刻じこく t において状態じょうたい u(t) = exp(tA)u0 をとるものである。このとき、作用素さようそ A はこのはんぐん無限むげんしょう生成せいせい作用素さようそばれる。

歴史れきし

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はんぐん研究けんきゅうは、ぐんたまきといったより複雑ふくざつ公理こうりからまるほかの代数だいすうてき構造こうぞうからすると、随分ずいぶんわかい。いくつかの文献ぶんけん[7][8] によれば、はんぐん対応たいおうする用語ようごもちいられた最初さいしょフランス語ふらんすごで、1904ねんに J.-A. de Séguier のあらわした Élements de la Théorie des Groupes Abstraits(『抽象ちゅうしょうぐん原論げんろん』)においてである。

Anton Suschkewitschはんぐんについてのそれなりに意味いみのある結果けっか最初さいしょひとで、1928ねん論文ろんぶん Über die endlichen Gruppen ohne das Gesetz der eindeutigen Umkehrbarkeit(『一意いちい可逆かぎゃくせい条件じょうけんはずした有限ゆうげんぐんについて』)で有限ゆうげん単純たんじゅんはんぐん構造こうぞう決定けっていし、有限ゆうげんはんぐん極小きょくしょうイデアル(あるいはグリーンの関係かんけいしきJ-系列けいれつ)が単純たんじゅんであることをしめした[8]。そういったことからすれば、有限ゆうげんぐんろん基礎きそけがおこなわれるのは随分ずいぶんのちになってからのことで、デヴィット・リースジェイムス・アレクサンダー・グリーンEvgenii Sergeevich Lyapinアルフレッド・クリフォードおよびゴードン・プレストンらによる。最後さいごしゃはん群論ぐんろんかんするかんのモノグラフを1961ねんと1967ねんにそれぞれ出版しゅっぱんしている。1970ねんには『はんぐんフォーラム』という定期ていき刊行かんこう雑誌ざっし現在げんざいシュプリンガー・フェアラーク編集へんしゅう)が発行はっこうされ、はん群論ぐんろん全般ぜんぱんあつか数少かずすくない数学すうがく雑誌ざっしひとつとなっている。

近年きんねん在野ざいや研究けんきゅうではより分化ぶんかすすんでおり、(ぎゃくはんぐんのような)はんぐん重要じゅうようなクラスに焦点しょうてんてたモノグラフや、代数だいすうてきオートマトン理論りろんとく有限ゆうげんオートマトン)や函数かんすう解析かいせきがくにおける応用おうようなどに焦点しょうてんてたものなどもあらわれている。

一般いっぱん

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はんぐんから演算えんざん結合けつごうせい公理こうりとせば、マグマられる。これは こう演算えんざん M × MMそなえた集合しゅうごう M という意味いみ以上いじょうのものではない。

べつ方向ほうこうでの一般いっぱんとして、n-こうはんぐん (n-ary semigroup) あるいはn-はんぐん (n-semigroup)多重たじゅうこうはんぐん (polyadic semigroup) とか多項たこうはんぐん (multiary semigroup) などとばれるタイプの一般いっぱんがある。これは演算えんざんアリティ変更へんこうし、こう演算えんざんわりに多項たこう演算えんざんそなえた「はんぐんGかんがえるものである[9]結合けつごうりつ一般いっぱんは、たとえばさんこうばん結合けつごうりつ

(abc)de = a(bcd)e = ab(cde)

つまり文字もじれつのどのとなみっつを括弧かっこくくったものも相等そうとうしい、というふうにあたえられる。一般いっぱんn-こうばんn + (n − 1) のながさの文字もじれつのどのとなn-こうくくってもそうひとしいとなる。2-はんぐん通常つうじょうはんぐんである。詳細しょうさい多項たこうぐん英語えいごばん参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ (Clifford & Preston 1967, p. 3)
  2. ^ B. Farb, Problems on mapping class groups and related topics (Amer. Math. Soc., 2006) page 357. ISBN 0821838385
  3. ^ M. Auslander and D.A. Buchsbaum, Groups, rings, modules (Harper&Row, 1974) page 50. ISBN 006040387X
  4. ^ (Clifford & Preston 1961, p. 34)
  5. ^ G. B. Preston (1990ねん). “Personal reminiscences of the early history of semigroups”. 2009ねん5がつ12にち閲覧えつらん
  6. ^ Maltsev, A. (1937). Math. Annalen 113: 686–691. 
  7. ^ Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics
  8. ^ a b An account of Suschkewitsch's paper by Christopher Hollings
  9. ^ Dudek, W.A. (2001), “On some old problems in n-ary groups”, Quasigroups and Related Systems 8: 15–36, http://www.quasigroups.eu/contents/contents8.php?m=trzeci 

参考さんこう文献ぶんけん

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全般ぜんぱん

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  • Clifford, A. H.; Preston, G. B. (1961), The algebraic theory of semigroups, volume 1 (2nd UK ed.), American Mathematical Society, ISBN 978-0-8218-0271-7 .
  • Clifford, A. H.; Preston, G. B. (1967), The algebraic theory of semigroups, volume 2, American Mathematical Society, ISBN 978-0-8218-0272-4 .
  • Grillet, Pierre Antoine (1995), Semigroups: an introduction to the structure theory, Marcel Dekker, Inc., ISBN 978-0-471-25243-6 
  • Howie, John M. (1995), Fundamentals of Semigroup Theory, Clarendon Press, ISBN 978-0-19-851194-6 .
  • 田村たむら孝行たかゆきはん群論ぐんろん共立きょうりつ出版しゅっぱん復刊ふっかん〉、2001ねん5がつISBN 978-4-320-01676-7 

各論かくろん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてんはんぐん』 - コトバンク
  • Weisstein, Eric W. "Semigroup". mathworld.wolfram.com (英語えいご).