可愛かわい山陵さんりょう

可愛かわい山陵さんりょう（えのみささぎ）は、日本書紀にほんしょきに現あらわれるニニギ（天津てんしん日高ひだか彦火瓊瓊杵きね尊みこと）の陵りょう。高屋たかや山上さんじょう陵りょう（たかやのやまの えのみささぎ）・吾平あいら山上さんじょう陵りょう（あひらのやまの えのみささぎ）とともに神代かみよ三さん山陵さんりょうの一ひとつ。

概略がいりゃく

ニニギの陵りょうについては、「日本書紀にほんしょき」に「筑紫つくし日向ひなた可愛かあい山さん之の山陵さんりょう」とある。

久之ひさゆき、天津てんしん彥彥火ひ瓊瓊杵きね尊みこと崩くずれ、因いん葬そう筑紫つくし日向ひなた可愛かわい此云埃ほこり之の山陵さんりょう。

「延喜えんぎ式しき諸しょ陵りょう式しき」に「日向ひなた埃ほこり山陵さんりょう。天津てんしん彦瓊瓊杵尊みこと在ざい_二に日向ひなた国こく_一いち、無む陵りょう戸ど」（_二に、_一いちは返かえり点てん）とあるが、この陵りょうは延喜えんぎ式しきよりも前まえに中央ちゅうおうの官かん掌てのひらを離はなれて、その所在しょざいを単たんに「在ざい日向ひなた国こく」、また「無む陵りょう戸ど」と表あらわされていた。しかしその祭祀さいしは重おもんじられ、神代かみよ三さん陵りょうのために山城やましろ国こく葛野くずの郡田こおりだ邑陵の南みなみの原はらに方かた1町まちの地ちを画かくして遙拝ようはい所しょに当あてられたことがある。

その所在しょざいは江戸えど時代じだい末すえ以来いらい諸説しょせつ紛々ふんぷんとした。

現在げんざいの治定じじょう地ちは鹿児島かごしま県けん（薩摩さつま国こく）であるが、薩摩さつま国こくは大宝たいほう2年ねん（702年ねん）には日向ひなた国こくから分離ぶんりして成立せいりつしていたとみられるが、日本書紀にほんしょきは720年ねんにウガヤフキアエズが日向ひなた国こく（宮崎みやざき県けん）で没ぼっした旨むねを記録きろくしていることなどから、本来ほんらいの神代かみよ三さん陵りょうの場所ばしょは、宮崎みやざき県けんであるとする説せつが根強ねづよい。

治定じじょうの経緯けいい

新田にった神社じんじゃ

可愛かわい山陵さんりょう

1874年ねん（明治めいじ7年ねん）、宮みや内省ないせいにより、可愛かわい山陵さんりょう（えのみささぎ）・高屋たかや山上さんじょう陵りょう（たかやのやまの えのみささぎ）・吾平あいら山上さんじょう陵りょう（あひらのやまの えのみささぎ）が治定じじょうされ、可愛かわい山陵さんりょうは新田にった神社じんじゃ（現げん・鹿児島かごしま県けん薩摩さつま川内せんだい市し宮内くない町まち）境内けいだいの神かみ亀山かめやまにある陵りょうとされた。

明治めいじ7年ねん（1874年ねん）7月がつ10日とおか、他たの日向ひなた三さん代だいの神かみの陵りょう、とともに勅みことのり定じょうがあり、大おおいに修治しゅうじされた。新田にった神社じんじゃの可愛かわい山陵さんりょうは大正たいしょう3年ねん（1914年ねん）に宮みや内省ないせい直轄ちょっかつとなった。

現在げんざいは宮内庁くないちょう書しょ陵りょう部ぶ桃山ももやま監かん区く可愛かあい部ぶ事務所じむしょが置おかれ、内閣ないかく府ふ事務じむ官かんが陵墓りょうぼ守部もるべとして管理かんりされている。大正たいしょう9年ねん（1920年ねん）3月がつ30日にちには昭和しょうわ天皇てんのう（当時とうじの皇太子こうたいし）が参拝さんぱい、昭和しょうわ37年ねん（1962年ねん）には明仁あきひと上皇じょうこう（当時とうじの皇太子こうたいし）及および上うえ皇后こうごう美智子みちこ（当時とうじの皇太子こうたいし妃ひ）が参拝さんぱいなど、皇族こうぞくの参拝さんぱいは9回かいにも及およんでいる。

形態けいたい

現在げんざい、可愛かわい山陵さんりょうと治定じじょうされている新田にった神社じんじゃでは、神かみ亀山かめやまの5分ぶんの4が御陵ごりょうの領域りょういきとなっている。御陵ごりょうと神社じんじゃが一体いったいとなっているのは全国ぜんこくでも珍めずらしい形態けいたいである。

陵りょう形がたについては、方墳ほうふん（南北なんぼく11m・東西とうざい10m）説せつの他ほか、髙塚式しき円えん墳ふん説せつ、扁平へんぺいな小方おがた丘たかし説せつなどがある。

神かみ亀山かめやまは、火山かざん活動かつどうによってつくられたシラス土壌どじょうが一般いっぱん的てきな土地とちに粘土ねんど質しつの岩盤がんばんから出来できており、川内平野せんだいへいやにぽつんと孤立こりつした山塊さんかいであることから、一説いっせつには人為じんい的てきに築きずかれたものではないかともいわれている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 紀元きげん二に千せん六ろく百ひゃく年ねん鹿児島かごしま県けん奉祝ほうしゅく会かい『神代かみよ三さん山陵さんりょうに就ついて』、紀元きげん二に千せん六ろく百ひゃく年ねん鹿児島かごしま県けん奉祝ほうしゅく会かい、1940年ねん。
• 『川内かわうち地方ちほうを中心ちゅうしんとせる郷土きょうど史しと伝説でんせつ』、川内かわうち中学校ちゅうがっこう、1936年ねん。
• みやざきの神話しんわと伝承でんしょう１０１[1]