同時どうじ審判しんぱんの申出もうしで

同時どうじ審判しんぱんの申出もうしで（どうじしんぱんのもうしで）とは、共同きょうどう被告ひこくの一方いっぽうに対たいする訴訟そしょうの目的もくてきである権利けんりと共同きょうどう被告ひこくの他方たほうに対たいする訴訟そしょうの目的もくてきである権利けんりとが法律ほうりつ上じょう併存へいそんし得えない関係かんけいにある場合ばあいにおいて、弁論べんろん及および裁判さいばんを分離ぶんりしないで行おこなうよう求もとめる申さる出でをいう（民事みんじ訴訟そしょう法ほう41条じょう）。

沿革えんかく・目的もくてき

例たとえば相手方あいてがたの代理人だいりにんと契約けいやくを結むすんだが代理だいり権けんの存在そんざいに疑問ぎもんが生しょうじたという場合ばあいにおいて、有権ゆうけん代理だいりを前提ぜんていに本人ほんにんに履行りこう請求せいきゅうするか、無む権けん代理だいりを前提ぜんていに代理人だいりにんの責任せきにん追及ついきゅうを行おこなうかという問題もんだいが生しょうじうる。しかし別々べつべつに訴訟そしょうを行おこなっては、本人ほんにんに対たいする訴訟そしょうで無む権けん代理だいりを理由りゆうに敗訴はいそ、代理人だいりにん相手あいての訴訟そしょうでは有権ゆうけん代理だいりを理由りゆうに敗訴はいそという、矛盾むじゅんした理由りゆうによる両方りょうほう敗訴はいそが生しょうじうる。このようなことを回避かいひするため、従来じゅうらいから主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうを認みとめるかについて、学説がくせつ上じょう争あらそわれてきた。しかし、これには問題もんだいもあったため、平成へいせい8年ねんに民事みんじ訴訟そしょう法ほうが大だい改正かいせいされる際さい、主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうの明文化めいぶんかは見送みおくられ同時どうじ審判しんぱん申出もうしでの制度せいどが創設そうせつされた。

効果こうか及および違反いはんした場合ばあいの処理しょり

効果こうかは、弁論べんろん・裁判さいばんの分離ぶんり及および併合へいごうが禁止きんしされるというものである。この結果けっか、下記かきに述のべるような限界げんかいはあるものの、一応いちおう矛盾むじゅんした判断はんだんによる両りょう敗訴はいそという結果けっかが回避かいひされやすくなる。

弁論べんろんがもし分離ぶんりされた場合ばあい、直ただちに原告げんこくが異議いぎを述のべない場合ばあいは黙示もくしの申出もうしで撤回てっかいがあったものとみなされ、分離ぶんりは適法てきほうになるとの指摘してきがある。一方いっぽう裁判さいばんが分離ぶんり、すなわち一部いちぶ判決はんけつが行おこなわれた場合ばあい、原告げんこくが異議いぎを述のべる時間じかん的てき余裕よゆうがなければ一部いちぶ判決はんけつは違法いほうとなるものとされる。

主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうとの相違そうい点てん

• 主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうは請求せいきゅうに順位じゅんいを付つけた予備よび的てき併合へいごうであるが、同時どうじ審判しんぱんの申さる出では順位じゅんいを付つけない単純たんじゅん併合へいごうを前提ぜんていとする。
• 主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうでは争あらそいがあるが、同時どうじ審判しんぱんの申さる出でのされた訴訟そしょうは基本きほん的てきに通常つうじょう共同きょうどう訴訟そしょうであり、共同きょうどう訴訟そしょう人じん独立どくりつの原則げんそくが働はたらくため、両りょう被告ひこくに敗訴はいそするということは起おこりうる。
• 被告ひこくの一方いっぽうに勝訴しょうそして他方たほうに敗訴はいそした場合ばあいにおいて、敗訴はいそした他方たほうの被告ひこくのみが上訴じょうそして控訴こうそ審しんが異ことなる判断はんだんを示しめすと、原告げんこくは両方りょうほうに敗訴はいそしうる。このこと自体じたいは主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうでも同様どうようであるが、主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうでは控訴こうそ審しん開始かいし後ごに勝訴しょうそ被告ひこくに対たいして付帯ふたい控訴こうそできるのに対たいして、同時どうじ審判しんぱんの申さる出では基本きほん的てきに通常つうじょう共同きょうどう訴訟そしょうなので、控訴こうそしなかった請求せいきゅうは移うつり審しんしないため、付帯ふたい控訴こうそできなくなる。

参考さんこう文献ぶんけん

高橋たかはし「重点じゅうてん講義こうぎ民事みんじ訴訟そしょう法ほう　下した」p284-290

関連かんれん項目こうもく

• 民事みんじ訴訟そしょう法ほう