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ていかく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ていかく(ていかく、英語えいご: rating)とは、機器きき装置そうち部品ぶひんなどについて、指定していされた条件じょうけんにおける仕様しよう性能せいのう使用しよう限度げんどなどのこと。製造せいぞうしゃが、その機器きき仕様しようや、適正てきせい使用しよう方法ほうほうしめした数字すうじで、そのていかく英語えいご: rated value)とう。

概要がいよう

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ていかく出力しゅつりょくトルク電圧でんあつ電流でんりゅう回転かいてんすう荷重かじゅうなどの指定していし、それぞれじょうかく出力しゅつりょくていかくトルク、ていかく電圧でんあつていかく電流でんりゅうていかく回転かいてんすうていかく荷重におもなど、「ていかく○○」とばれる。

指定していされた条件じょうけんは、機器きき性格せいかく使用しよう目的もくてき使用しよう頻度ひんど想定そうていされる保守ほしゅ条件じょうけんなどによりことなるため、 具体ぐたいてき条件じょうけんていかく定義ていぎは、機器きき部品ぶひん種類しゅるい[1]ごとに、工業こうぎょう規格きかくなどでさだめられているのが一般いっぱんてきである。安全あんぜんせいかかわる場合ばあいには、法令ほうれいによってもさだめられている。

ただし、機器きき部品ぶひん使用しよう条件じょうけん特殊とくしゅである場合ばあいは、製造せいぞうしゃ使用しようしゃあいだ個別こべつ条件じょうけん設定せっていすることもある。また、使用しよう条件じょうけんにより性能せいのう変化へんかする機器ききでは、ことなる使用しよう条件じょうけんたいする複数ふくすうていかく設定せっていすることがある。

いずれの場合ばあいも、ていかくとは「格付かくづけ」、あるいは設計せっけい条件じょうけんなど「なんらかの意図いとふくめた」のことで、機器きき仕様しよう記載きさいする場合ばあいにも、「ていかく」と「性能せいのう」・「特性とくせい」などが区別くべつされることが一般いっぱんてきである。また、ていかく製造せいぞうしゃしめすものであるため、製造せいぞうしゃによる保証ほしょうという意味いみつ。

ていかく事例じれい

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ていかくは、さまざまな分野ぶんやさだめられる条件じょうけんことなることから、分野ぶんやにより具体ぐたいてき意味いみことなる。ここでは、いくつかの分野ぶんやていかくについて事例じれいとともにしめす。

移動いどうしきクレーンにおけるていかく荷重かじゅう

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クレーンのていかく荷重かじゅうは、最大さいだいつるし荷重かじゅうから重量じゅうりょういたものと定義ていぎされる。

移動いどうしきクレーンでは、クレーンの仕様しよう、およびるときの条件じょうけんにより、最大さいだいつるし荷重かじゅうさだまっている。最大さいだいつるし荷重かじゅうは、クレーンの重量じゅうりょうそなえるアームの強度きょうど作業さぎょう半径はんけいなどから算定さんていされ、クレーンの最大さいだい能力のうりょくしめすものである。この最大さいだいつるし荷重かじゅうには、実際じっさいおもさのほか、滑車かっしゃるためのフック)の重量じゅうりょうふくんでいるため、実際じっさいることのできるおもさはこれよりちいさくなる。

そこで、移動いどうしきクレーンにおいては、最大さいだいつるし荷重かじゅうから重量じゅうりょうき、実際じっさいれるおもさの最大さいだいていかく荷重かじゅうしょうしている[2]。このことから、ていかく荷重かじゅうを『正味しょうみ荷重かじゅう』とぶこともある。ていかく荷重かじゅう算定さんていにあたっては、おもさを正確せいかく把握はあくすることがのぞましいが、簡易かんいてき最大さいだいつるし荷重かじゅうの90パーセントをていかく荷重かじゅうとする計算けいさんおこなわれる。

このように、ていかく機器きき適切てきせつ使用しようするためにもっとも重要じゅうようなものがえらばれる。そのため、移動いどうしきクレーンでは、『ていかく荷重かじゅう』が安全あんぜんじょうもっとも重要じゅうような『正味しょうみ荷重かじゅう』にめられている。

電気でんき機器ききにおけるていかく

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電気でんきもちいる機器ききやシステムでは、設計せっけいじょう安定あんていして使用しようできる電圧でんあつ電流でんりゅうがあり、これをていかくとしている。ただし、一般いっぱんていかく余裕よゆうってさだめられており、一時いちじてきであればじょうかくえて使用しようできる場合ばあいもある。この場合ばあいは、一瞬いっしゅんたりともえてはならないとして絶対ぜったい最大さいだいていかくまたは瞬間しゅんかん最大さいだいなどが別途べっとさだめられている。

たとえば、電動でんどう(モーター)は多数たすうまきせんにより磁界じかい発生はっせいさせることから、その絶縁ぜつえん性能せいのう確保かくほすることがひとつの制限せいげんとなる。絶縁ぜつえん性能せいのう確保かくほするには、められた電圧でんあつまもることのほか、められた温度おんど以上いじょうとならないようにすることが重要じゅうようである。モーターにだい電流でんりゅうながつづけると温度おんど上昇じょうしょうし、やがて絶縁ぜつえん性能せいのう確保かくほできなくなる。また、効率こうりつ悪化あっかまねくこともある。そこで、製造せいぞうしゃがそうした不都合ふつごう考慮こうりょして適当てきとうかんがえた、ながつづけてもよい電流でんりゅうていかく電流でんりゅうび、そのとき発揮はっきできる性能せいのうていかく出力しゅつりょくていかく速度そくどなどとさだめている。ていかくは、一般いっぱんにその機器ききけられた銘板めいばん記載きさいされている。

電気でんき機器きき連続れんぞくてき使つかつづけた場合ばあい発熱はつねつ放熱ほうねつ冷却れいきゃくがつりあって温度おんど一定いっていとなった時点じてん許容きょようできる温度おんど以下いかであれば、問題もんだいなく使用しようできる。また、一時いちじてきおおきな出力しゅつりょくしたとしても、それが十分じゅうぶん短時間たんじかんであれば温度おんど上昇じょうしょう許容きょようできる範囲はんいおさまるので、やはり問題もんだいなく使用しようできる。このことから、連続れんぞくてきもちいる場合ばあいと、短時間たんじかんもちいる場合ばあいていかくことなってくる。連続れんぞくてき使用しようすることを前提ぜんていにしたていかく連続れんぞくていかく(continuous rating)、短時間たんじかん使用しようすることを前提ぜんていにしたていかく短時間たんじかんじょうかく(short-time rating)、断続だんぞくてき使用しようすることを前提ぜんていにしたていかく反復はんぷくていかく(intermittent-service rating)とぶ。短時間たんじかんじょうかくは、前提ぜんていとする使用しよう時間じかんをつけて30ふんじょうかくとか1あいだじょうかくなどのかたをする。

通常つうじょう連続れんぞくていかく前提ぜんていにするが、クレーン電車でんしゃ電動でんどうはその使用しよう条件じょうけんから短時間たんじかんじょうかく前提ぜんていとした設計せっけいをすることが普通ふつうである。一概いちがいにはいえないが、おな機械きかい連続れんぞくていかく短時間たんじかんじょうかくでは、短時間たんじかんじょうかくほうが20 - 30%程度ていどおおきくなる。

電車でんしゃ走行そうこう曲線きょくせんれい
たてじく-速度そくどよこじく-時間じかん

たとえば、実際じっさい電車でんしゃ走行そうこうかんがえてみると、おおきな電流でんりゅう連続れんぞくしてながすことはあまりおこなわれない。えき発車はっしゃした電車でんしゃは、速度そくどげるためモーターに電流でんりゅうながすが、一定いってい速度そくど到達とうたつすると電流でんりゅうり、惰性だせい走行そうこうすることが一般いっぱんおこなわれる(みぎ)。これは摩擦まさつちいさく走行そうこう抵抗ていこうひく鉄道てつどう特性とくせいによるもので、モーターに電流でんりゅうながれるのは短時間たんじかんかぎられる。また、えき停車ていしゃしているあいだもモーターは負荷ふかであり、電流でんりゅうながれない。電流でんりゅうながれていないあいだにモーターは十分じゅうぶん冷却れいきゃくされるので、連続れんぞくして電流でんりゅうながつづける場合ばあいくらべておおきな電流でんりゅうながしても許容きょよう温度おんどたっすることはない。

このように、電車でんしゃ搭載とうさいされているモーターの連続れんぞくていかくと、実際じっさい電車でんしゃ走行そうこうにおけるモーターの使用しよう条件じょうけんは、おおきくことなっている。したがって電車でんしゃのモーターでは、短時間たんじかん使用しようであることを前提ぜんていに、連続れんぞくていかくおおきくえた短時間たんじかんじょうかく範囲はんい使用しようすることがしばしばおこなわれる。公称こうしょう数値すうちは1あいだじょうかくでも、実際じっさい使用しよう範囲はんいはその2ばい以上いじょうにもたっすることがおおい(後述こうじゅつする速度そくど)。ただし新幹線しんかんせんでは速度そくどいきたか空気くうき抵抗ていこうおおきいため、一定いってい速度そくどたっしても速度そくど維持いじするためにつね電流でんりゅうながしている。そのため、連続れんぞくていかく基準きじゅんとした電動でんどう制御せいぎょとなっている。

鉄道てつどう車両しゃりょうにおけるていかく速度そくど

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鉄道てつどう電気でんきしゃ電気でんき機関きかんしゃ電車でんしゃ)においては、「ていかく速度そくど」という概念がいねんおおもちいられる。しゅ電動でんどうていかく電圧でんあつ(= 端子たんし電圧でんあつ)をかけたとき電流でんりゅうていかく電流でんりゅう一致いっちしたとき回転かいてんすうていかく回転かいてんすうであり、ていかく回転かいてんすうとき速度そくどていかく速度そくどである。ぜんさかい磁(100 %さかい磁)ていかく速度そくどもっ公称こうしょうとする場合ばあいがほとんどだが、カルダン駆動くどう方式ほうしき直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどうではよわかいていかく設計せっけいのものもおお生産せいさんされた。国鉄こくてつ制式せいしきぬし電動でんどうれいにとると、MT46がたが70 %さかい磁定かく、MT54がたぜんさかい磁定かく、MT55がたが85 %さかい磁定かくである。いずれの場合ばあいていかく回転かいてんすう(= ていかく速度そくど)において効率こうりつ最大さいだいとなる(やく89 %)。なお、出力しゅつりょくおなじであれば、ていかく引張ひっぱちからていかく速度そくど反比例はんぴれいする。ていかく速度そくどげれば高速こうそく性能せいのう向上こうじょうするが、歯車はぐるま固定こていのため(変速へんそくたないため)一般いっぱん起動きどう加速度かそくどがる。しかし、加速度かそくどしゅ電動でんどう実際じっさいなが最低さいてい電流でんりゅうきりりゅう)をていかく電流でんりゅう以上いじょう(とっても上限じょうげんは2ばいじゃく程度ていど)にげることでカバーできる。高速こうそく性能せいのうもまた、モーターに補償ほしょうまきせん付加ふかよわ界磁制御かいじせいぎょ範囲はんい拡大かくだいすることによって同様どうよう向上こうじょうさせることが可能かのうである(私鉄してつ電車でんしゃ実例じつれい多数たすう)。また、動力どうりょくしゃ高速こうそく性能せいのうあらわすために、よわかい最終さいしゅうだんにおけるていかく速度そくど明示めいじすることもあるほか、設計せっけい最高さいこう速度そくどぜんさかい磁定かく速度そくどとの速度そくど場合ばあいもある。ていかく速度そくど30 km/hの電車でんしゃが100 km/h以上いじょう高速こうそくいきから発電はつでんブレーキ使用しようする場合ばあいしゅ電動でんどうには瞬間しゅんかんてきていかくの3ばい以上いじょうもの負荷ふかがかかることになる。

以上いじょう直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどうおおくがちょくまき整流せいりゅう電動でんどう)を使用しようしていた時代じだいはなしであり、現在げんざい主流しゅりゅう交流こうりゅう電動でんどう使用しようしたVVVFインバータ制御せいぎょではプログラミングにより出力しゅつりょく特性とくせい走行そうこう特性とくせい比較的ひかくてき自在じざい設定せっていすることが可能かのうなため、電動でんどう自体じたいていかく前面ぜんめんしてろんじられることはすくなくなっている。JR東日本ひがしにっぽん209けい電車でんしゃなどはその好例こうれいである。

  • 国鉄こくてつ183けい電車でんしゃ
    • MT54がたぬし電動でんどうていかく電圧でんあつ375 V・1あいだていかく電流でんりゅう360 A・ていかく出力しゅつりょく120 kW・ぜんさかい磁定かく回転かいてんすう1,630 rpm・40 %じゃくかい磁定かく回転かいてんすう2,620 rpm。
    • 歯車はぐるま 77:22 = 3.5:1、動輪どうりん直径ちょっけい 860 mm(摩耗まもう限度げんどまでの使用しよう考慮こうりょして計算けいさんでは820 mmとする)
    • よってぜんさかい磁定かく速度そくど72.0 km/h、40 %さかい磁時ていかく速度そくど116.0 km/h。設計せっけい最高さいこう速度そくど160 km/h。ぜんさかい磁時のていかく引張ひっぱちから電動でんどうしゃ1ユニットしゅ電動でんどう8)で4,860 kgとなる。
  • 国鉄こくてつ185けい電車でんしゃ
    • MT54がたぬし電動でんどう
    • 歯車はぐるま 82:17 = 4.82:1
    • よってぜんさかい磁定かく速度そくど52.5 km/h、40 %さかい磁時ていかく速度そくど84.5 km/h。設計せっけい最高さいこう速度そくど115 km/h(歯車はぐるまおな国鉄こくてつ117けい電車でんしゃ運用うんよう実績じっせきから)。ぜんさかい磁時のていかく引張ひっぱちから電動でんどうしゃ1ユニットで6,690 kgとなる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ たとえば「電気でんき器用きよう固定こていコンデンサ」や「鉄道てつどうしゃ両用りょうよう直流ちょくりゅうぬし電動でんどう」のような用途ようとふく品目ひんもく
  2. ^ クレーンとう安全あんぜん規則きそく昭和しょうわよんじゅうななねん労働省ろうどうしょうれいだいさんじゅうよんごう”. e-Gov法令ほうれい検索けんさく. 総務そうむしょう行政ぎょうせい管理かんりきょく (2019ねん11月1にち). 2019ねん12月26にち閲覧えつらん。 “2019ねん11月1にち施行しこうぶん

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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