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とみ栄養えいよう

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とみ栄養えいようから転送てんそう
カスピ海かすぴかい東岸とうがんとみ栄養えいよう様子ようす

とみ栄養えいよう(ふえいようか、英語えいご: eutrophication)とは、うみ湖沼こしょう河川かせんなどの水域すいいきが、ひん栄養えいよう状態じょうたいからとみ栄養えいよう状態じょうたいへと移行いこうする現象げんしょうう。ここで「栄養えいよう」とは水中すいちゅう栄養えいようしお窒素ちっそ化合かごうぶつやリンなど)であり、植物しょくぶつプランクトンにとって水面すいめん付近ふきん光合成こうごうせい繁殖はんしょくするために必要ひつよう栄養えいようのことを[1]

  • 自然しぜんとみ栄養えいよう形成けいせいされたばかりのいけみずうみが、遷移せんいによって湖沼こしょうがた変化へんかさせてゆく過程かてい
  • 人為じんいてきとみ栄養えいよう近年きんねんでは、人間にんげん活動かつどう影響えいきょうによる水中すいちゅう肥料ひりょうぶん窒素ちっそ化合かごうぶつリンなど)の濃度のうど上昇じょうしょう意味いみする場合ばあいおおい。水域すいいきとみ栄養えいよう要因よういん生活せいかつ工業こうぎょう排水はいすい農業のうぎょう肥料ひりょう畜産ちくさん糞尿ふんにょうなど多岐たきわたる。このようなとみ栄養えいよう生態せいたいけいにおける生物せいぶつ構成こうせい変化へんかさせ、一般いっぱんには生物せいぶつ多様たようせい減少げんしょうさせる反面はんめん基礎きそ生産せいさん向上こうじょうにより生物せいぶつ生産せいさんせい増加ぞうかする方向ほうこう作用さようする。とみ栄養えいようがすすんだ栄養えいよう状態じょうたい水域すいいきでは、赤潮あかしおあおうしおなどの現象げんしょうてきこすためとみ栄養えいよう公害こうがい環境かんきょう問題もんだいとしてひろ認識にんしきされている。

とみ栄養えいよう影響えいきょう

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とみ栄養えいよう生態せいたいけい変化へんか

水域すいいきひん栄養えいようからとみ栄養えいよう変化へんかすると、栄養えいようしお豊富ほうふ存在そんざいするため日光にっこうたる水面すいめん付近ふきんでは、植物しょくぶつプランクトン増殖ぞうしょくする(いち生産せいさん増大ぞうだい)。また、それを捕食ほしょくする動物どうぶつプランクトンもえる。さらに、これらのプランクトンを捕食ほしょくする、さかな貝類かいるい増殖ぞうしょくにつながる。

しかし、港湾こうわんないいけみずうみなどの停滞ていたい水域すいいきでは、光合成こうごうせい停止ていしするよるあいだとうに、生物せいぶつ呼吸こきゅうによる酸素さんそ消費しょうひえるため、水中すいちゅうさんかけ状態じょうたいとなる。また、異常いじょう増殖ぞうしょくしたプランクトンの群集ぐんしゅう死滅しめつすると、これが沈降ちんこうした水底みなそこでは有機物ゆうきぶつ酸化さんかてき分解ぶんかい進行しんこうし、急激きゅうげき溶存ようぞん酸素さんそりょう低下ていかしてひん酸素さんそすいかたまり形成けいせいされる。水温すいおんおどそうによりこのみずかたまり維持いじされると、有機物ゆうきぶつ分解ぶんかい停滞ていたいしてヘドロ堆積たいせきし、嫌気いやけせい微生物びせいぶつゆううらないして悪臭あくしゅう原因げんいんとなる。また、みずかたまり周囲しゅういみず混和こんわしたさい貝類かいるいとうさんかけ被害ひがいをもたらすことがある。

結果けっかとして、とみ栄養えいようすすんだ環境かんきょうではいち生産せいさんえることにより、漁獲ぎょかくりょう増加ぞうか期待きたいできる。しかし、停滞ていたい水域すいいきでは、栄養えいよう状態じょうたいになると赤潮あかしおあおしお発生はっせいにもつながる。

とみ栄養えいよう防止ぼうし対策たいさく

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とみ栄養えいよう防止ぼうし方法ほうほうリン窒素ちっそ削減さくげんころせざいなどの使用しよう間欠かんけつしき空気くうき揚水ようすいとうもちいた湖水こすい人工じんこう循環じゅんかんほうホテイソウなどを利用りようした生物せいぶつがくてき栄養えいようしお除去じょきょ、曝気や選択せんたく取水しゅすいによるみず理学りがくてき水質すいしつ抑制よくせいなど多岐たきにわたり、かく湖沼こしょう特徴とくちょう環境かんきょうおうじた評価ひょうか予測よそく必要ひつよう不可欠ふかけつである[2][3]間欠かんけつしき空気くうき揚水ようすいとうもちいた湖水こすい人工じんこう循環じゅんかんほうでは、陸上りくじょう設置せっちしたコンプレッサーによって揚水ようすいとうちゅうあいだ空気くうきおくるとやがて揚水ようすいとう下部かぶのUサイフォンがはたらいて空気くうきつつない噴出ふんしゅつ円筒えんとうない上昇じょうしょうする。これにより湖沼こしょうそこそうすい上昇じょうしょう表層ひょうそうすい混合こんごうすることで湖沼こしょうみず酸素さんそ濃度のうどかたよりをなくすのである。

とみ栄養えいよう防止ぼうし方法ほうほうにはそれぞれメリットとデメリットがあり、たとえばリンや窒素ちっそ削減さくげん藻類そうるい栄養えいようとなる物質ぶっしつらすための手段しゅだんの1つでしかないうえ莫大ばくだい経費けいひ時間じかんがかかるという問題もんだいてんがある。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 栄養えいようしお濃度のうどたかくとも、日光にっこうとどかない状態じょうたいや、生物せいぶつ生育せいいくできない強酸きょうさんせいなどでは植物しょくぶつプランクトンはほとんど生育せいいくできない。
  2. ^ 小島こじま貞男さだおとみ栄養えいよう対策たいさくとしての湖水こすい人口じんこう循環じゅんかんほう―その原理げんり実績じっせき」『日本にっぽんすい処理しょり生物せいぶつ学会がっかい』24かん1ごうp.9-23、1988ねん
  3. ^ 宮永みやなが洋一よういち貯水池ちょすいちにおけるみず理学りがくてきとみ栄養えいよう対策たいさく可能かのうせいかんする検討けんとう」『みず学会がっかい講演こうえんろん文集ぶんしゅう』28かんp.297-302、1984ねん

参考さんこう文献ぶんけん

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