性 せい (英語 えいご : gender )、または文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい (grammatical gender )とは、関連 かんれん する語 かたり のふるまいに文法 ぶんぽう 的 てき に反映 はんえい する名詞 めいし の分類 ぶんるい 体系 たいけい のこと[ 1] [ 2] で、名詞 めいし の文法 ぶんぽう 範疇 はんちゅう の一 ひと つ[ 3] である。
バントゥー語 ご 群 ぐん やコーカサス諸語 しょご の記述 きじゅつ では名詞 めいし 類 るい または名詞 めいし クラス とも呼 よ ばれるが、実質 じっしつ 的 てき な差 さ はほとんどない[ 4] 。この名詞 めいし の分類 ぶんるい が実際 じっさい の性 せい と一致 いっち する場合 ばあい もあるが、そうでないことも多 おお い[ 2] 。文法 ぶんぽう 的 てき な一致 いっち を引 ひ き起 お こさない類別 るいべつ 詞 し とは区別 くべつ される[ 5] [ 6] 。
名詞 めいし の性 せい によって、その名詞 めいし と文法 ぶんぽう 的 てき に関連 かんれん する語 かたり のかたちが変 か わる現象 げんしょう を「性 せい の一致 いっち 」という。例 たと えばロシア語 ご では主語 しゅご の名詞 めいし の種類 しゅるい によって、動詞 どうし の過去 かこ 形 がた が男性 だんせい ・女性 じょせい ・中性 ちゅうせい の3通 とお りにかたちを変 か える。これは、動詞 どうし の過去 かこ 形 がた が主語 しゅご の名詞 めいし と性 せい の一致 いっち をしているのである。
ロシア語 ご の例 れい (a)[ 7]
Журнал
лежал
на
столе.
雑誌 ざっし (男性 だんせい )
あった(男性 だんせい )
の上 うえ に
テーブル
ロシア語 ご の例 れい (b)[ 7]
Книга
лежала
на
столе.
本 ほん (女性 じょせい )
あった(女性 じょせい )
の上 うえ に
テーブル
ロシア語 ご の例 れい (c)[ 7]
Письмо
лежало
на
столе.
手紙 てがみ (中性 ちゅうせい )
あった(中性 ちゅうせい )
の上 うえ に
テーブル
動詞 どうし のほかに、形容詞 けいようし ・限定 げんてい 詞 し ・数詞 すうし ・焦点 しょうてん 標識 ひょうしき などが性 せい の一致 いっち をする言語 げんご がある[ 7] 。
名詞 めいし をある性 せい に分類 ぶんるい することを、性 せい を付与 ふよ するという。どの性 せい を付与 ふよ するかの基準 きじゅん は言語 げんご ごとに異 こと なる。大 おお きく分 わ けると、名詞 めいし の意味 いみ によって分類 ぶんるい する言語 げんご と、名詞 めいし の語形 ごけい に基 もと づいて形式 けいしき 的 てき に分類 ぶんるい する言語 げんご がある。
性 せい を持 も つ言語 げんご には、名詞 めいし の意味 いみ によって性 せい を付与 ふよ する言語 げんご がある。例 たと えばタミル語 ご では、男性 だんせい と男神 おかみ を指 さ す名詞 めいし は男性 だんせい 名詞 めいし 、女性 じょせい と女神 めがみ を意味 いみ する名詞 めいし は女性 じょせい 名詞 めいし 、それ以外 いがい は中性 ちゅうせい 名詞 めいし に分類 ぶんるい される。
意味 いみ による性 せい の付与 ふよ の例 れい (タミル語 ご )
意味 いみ
性 せい
例 れい
和訳 わやく
男性 だんせい と男神 おかみ
男性 だんせい 名詞 めいし
ஆண் (āṇ)
「男 おとこ 」
சிவன் (civaṉ)
「シヴァ 」
女性 じょせい と女神 めがみ
女性 じょせい 名詞 めいし
பெண் (peṇ)
「女 おんな 」
காளி (kāḷi)
「カーリー 」
その他 た
中性 ちゅうせい 名詞 めいし
வீடு (vīṭu)
「家 いえ 」
மரம் (maram)
「木 き 」
タミル語 ご ではほぼ例外 れいがい なく、意味 いみ と性 せい が対応 たいおう している。
一方 いっぽう 、コンゴ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく 、スーダン 、中央 ちゅうおう アフリカ共和 きょうわ 国 こく などで話 はな されているザンデ語 ご でも、名詞 めいし は意味 いみ によって性 せい を付与 ふよ されるが、例外 れいがい が存在 そんざい する。
意味 いみ による性 せい の付与 ふよ の例 れい (ザンデ語 ご )
意味 いみ
性 せい
例 れい
和訳 わやく
男性 だんせい
男性 だんせい 名詞 めいし
kumba
「男 おとこ 」
女性 じょせい
女性 じょせい 名詞 めいし
dia
「妻 つま 」
その他 た の有生 ゆうせい 性 せい
動物 どうぶつ 名詞 めいし
nya
「獣 しし 」
その他 た
中性 ちゅうせい 名詞 めいし
bambu
「家 いえ 」
男性 だんせい の人間 にんげん と女性 じょせい の人間 にんげん は、それぞれ男性 だんせい 名詞 めいし ・女性 じょせい 名詞 めいし に分類 ぶんるい されるが、動物 どうぶつ 名詞 めいし には例外 れいがい があり、動物 どうぶつ を意味 いみ しないおよそ80の名詞 めいし がこの性 せい に分類 ぶんるい される。
天体 てんたい :diwi 「月 つき 」、wangu 「虹 にじ 」
金属 きんぞく の物体 ぶったい :bande 「ハンマー」、tongo 「指輪 ゆびわ 」
食用 しょくよう 植物 しょくぶつ :abangbe 「サツマイモ」、baundu 「豆 まめ 」
金属 きんぞく でない丸 まる い物体 ぶったい :mbasa 「呼 よ び子 こ 」、badupo 「ボール」
その他 た :ze 「傷痕 きずあと 」
この例外 れいがい にはザンデの神話 しんわ によって説明 せつめい できるものが少 すこ しだけあるが、ほとんどのものは例外 れいがい としか言 い えない。しかし、ザンデ語 ご の性 せい の付与 ふよ はほとんど意味 いみ に基 もと づいているといえる。
形式 けいしき 的 てき な特徴 とくちょう によって性 せい を付与 ふよ する言語 げんご も存在 そんざい する。しかし、そのような言語 げんご でも性 せい の分類 ぶんるい の中核 ちゅうかく には意味 いみ 的 てき な基準 きじゅん があり、形式 けいしき 的 てき な基準 きじゅん は意味 いみ の基準 きじゅん が適用 てきよう できない場合 ばあい に用 もち いられる。形式 けいしき 的 てき 基準 きじゅん には、形態 けいたい 論 ろん 的 てき なものと、音韻 おんいん 論 ろん 的 てき なものがある。
意味 いみ 的 てき な基準 きじゅん が適用 てきよう できない場合 ばあい に、その名詞 めいし の屈折 くっせつ のしかたによって性 せい を付与 ふよ する言語 げんご がある。
例 たと えばロシア語 ご では、男性 だんせい ・女性 じょせい ・中性 ちゅうせい の3つの性 せい があるが、男性 だんせい と女性 じょせい の付与 ふよ には意味 いみ 的 てき な基準 きじゅん がある。男性 だんせい や高等 こうとう 動物 どうぶつ の雄 ゆう を指 さ す名詞 めいし は男性 だんせい 名詞 めいし に、女性 じょせい や高等 こうとう 動物 どうぶつ の雌 めす を意味 いみ する名詞 めいし は女性 じょせい 名詞 めいし に分類 ぶんるい される。
男性 だんせい や雄 ゆう →男性 だんせい 名詞 めいし :отец 「父 ちち 」、дядя 「おじ」、лев 「雄 お ライオン」
女性 じょせい や雌 めす →女性 じょせい 名詞 めいし :мать 「母 はは 」、тётя 「おば」、львица 「雌 めす ライオン」
しかし、性別 せいべつ を持 も っていないものを表 あらわ す名詞 めいし は、男性 だんせい のこともあれば女性 じょせい や中性 ちゅうせい のこともある。
実物 じつぶつ には性別 せいべつ がないものを指 さ すロシア語 ご の名詞 めいし の性 せい
男性 だんせい
女性 じょせい
中性 ちゅうせい
журнал (雑誌 ざっし )
дом (家 いえ )
чай (紅茶 こうちゃ )
автомобиль (車 くるま )
вечер (夕方 ゆうがた )
флаг (旗 はた )
закон (法律 ほうりつ )
газета (新聞 しんぶん )
школа (学校 がっこう )
вода (水 みず )
машина (車 くるま )
ночь (夜 よる )
эмблема (紋章 もんしょう )
гласность (開放 かいほう )
письмо (手紙 てがみ )
здание (建物 たてもの )
вино (ワイン)
такси (タクシー)
утро (朝 あさ )
знамя (旗 はた じるし)
доверие (信頼 しんらい )
このように、性別 せいべつ を持 も たないものを指 さ すロシア語 ご の名詞 めいし は意味 いみ 的 てき には似 に ていても違 ちが う性 せい が付与 ふよ される。性別 せいべつ を持 も たないものを意味 いみ する名詞 めいし を分類 ぶんるい する基準 きじゅん は曲 きょく 用 よう のタイプという形態 けいたい 論 ろん 的 てき なものである。
ロシア語 ご の単数 たんすう 名詞 めいし の曲 きょく 用 よう
I
II
III
IV
主格 しゅかく
закон
школ-а
кость
вин-o
対格 たいかく
закон
школ-у
кость
вин-o
生 なま 格 かく
закон-а
школ-y
кост-и
вин-а
与格 よかく
закон-у
школ-е
кост-и
вин-у
造 みやつこ 格 かく
закон-ом
школ-ой
кость-ю
вин-ом
前 ぜん 置 おけ 格 かく
закон-е
школ-е
кост-и
вин-е
закон 「法律 ほうりつ 」
школa 「学校 がっこう 」
кость 「骨 ほね 」
вино 「ワイン」
ロシア語 ご には大 おお きく分 わ けて4つの曲 きょく 用 よう のタイプがあり、タイプ I は男性 だんせい 名詞 めいし 、タイプ II とタイプ III は女性 じょせい 名詞 めいし 、それ以外 いがい は中性 ちゅうせい 名詞 めいし である。ただし、曲 きょく 用 よう のタイプよりも意味 いみ 的 てき な基準 きじゅん が優先 ゆうせん するため、タイプ II にも男性 だんせい 名詞 めいし が存在 そんざい する。このような、曲 きょく 用 よう のタイプと性 せい との強 つよ い相関 そうかん はインド・ヨーロッパ語族 ごぞく にはめずらしくない。
意味 いみ 的 てき な基準 きじゅん が適用 てきよう できない場合 ばあい に、音韻 おんいん 的 てき な基準 きじゅん によって性 せい を付与 ふよ する言語 げんご もある。
例 たと えばアファル語 ご では、人間 にんげん の男性 だんせい と動物 どうぶつ の雄 ゆう を表 あらわ す名詞 めいし は男性 だんせい 名詞 めいし 、人間 にんげん の女性 じょせい と動物 どうぶつ の雌 めす を表 あらわ す名詞 めいし は女性 じょせい 名詞 めいし に分類 ぶんるい される。
男性 だんせい や雄 ゆう →男性 だんせい 名詞 めいし :bàxa 「息子 むすこ 」、toobokòyta 「兄弟 きょうだい 」、barisèyna 「男 おとこ の先生 せんせい 」、kùta 「雄 ゆう 犬 けん 」、abbà 「父 ちち 」
女性 じょせい や雌 めす →女性 じょせい 名詞 めいし :baxà 「娘 むすめ 」、toobokoytà 「姉妹 しまい 」、bariseynà 「女 おんな の先生 せんせい 」、kutà 「雌 めす 犬 けん 」、gabbixeèra 「腰 こし の細 ほそ い女性 じょせい 」
それ以外 いがい の名詞 めいし は音韻 おんいん 的 てき に性 せい が決 き まる。強 つよ 勢 ぜい のある母音 ぼいん で終 お わる名詞 めいし は女性 じょせい 名詞 めいし であり、その他 た は男性 だんせい 名詞 めいし である。
強 つよ 勢 ぜい のある母音 ぼいん で終 お わる→女性 じょせい 名詞 めいし :catò 「助 たす け」、karmà 「秋 あき 」
そのほか→男性 だんせい 名詞 めいし :cedèr 「夕食 ゆうしょく 時 じ 」、gilàl 「冬 ふゆ 」、tàmu 「味 あじ 」、baànta 「トランペット」
性 せい の数 かず
なし (56.4%)
2つ (19.5%)
3つ (10.1%)
4つ (4.7%)
5つ以上 いじょう (9.3%)
グレヴィル・コーベット (英語 えいご 版 ばん ) は世界 せかい 257の言語 げんご について、性 せい がいくつあるか調査 ちょうさ した。それによると、性 せい のない言語 げんご が約 やく 半数 はんすう で145、性 せい が2つある言語 げんご が50、3つある言語 げんご が26、4つある言語 げんご が12、5つ以上 いじょう ある言語 げんご は24あった。
地理 ちり 的 てき にみると、アフリカ 南部 なんぶ ・中西部 ちゅうせいぶ に広 ひろ がるニジェール・コンゴ語族 ごぞく のほぼ全 すべ ての言語 げんご が性 せい を持 も っているほか、コイサン語族 ごぞく やアフロ・アジア語族 ごぞく など、アフリカ・中東 ちゅうとう の言語 げんご には性 せい があるものが多 おお い。またヨーロッパの印欧語 いんおうご 族 ぞく 、コーカサスのナフ・ダゲスタン語族 ごぞく 、南 みなみ アジアの印欧語 いんおうご 族 ぞく やドラヴィダ語族 ごぞく も性 せい のある言語 げんご の多 おお い語族 ごぞく である。
一方 いっぽう 、太平洋 たいへいよう に分布 ぶんぷ するオーストロネシア語族 ごぞく 、アジアのシナ・チベット語族 ごぞく 、シベリアのウラル語族 ごぞく 、アルタイ諸語 しょご には性 せい がほとんど見 み られない。
性 せい がある言語 げんご では、2つあるものがもっとも多 おお く、広 ひろ い地域 ちいき に分布 ぶんぷ している。アフロ・アジア語族 ごぞく は普通 ふつう 2つの性 せい を持 も つ。印欧語 いんおうご 族 ぞく は3つあるものが多 おお いが、2つになっているものも多 おお い。4つある言語 げんご はナフ・ダゲスタン語族 ごぞく によく見 み られる。5つ以上 いじょう の性 せい を持 も つ言語 げんご はニジェール・コンゴ語 ご 族 ぞく に多 おお い。ナイジェリアのフラ語 ご は例外 れいがい 的 てき に多 おお く、20の性 せい を持 も っている。他 た には、パプア・ニューギニアの山岳 さんがく アラペシュ語 ご (英語 えいご 版 ばん ) が13、北 きた オーストラリアのガンギテメリ語 ご (英語 えいご 版 ばん ) が15の性 せい を持 も つ。
欧州 おうしゅう の言語 げんご の文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい 。 水色 みずいろ ■ : 文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい なし。 黄色 おうしょく ■ : 通性 つうせい /中性 ちゅうせい 。 赤色 あかいろ ■ : 男性 だんせい /女性 じょせい 。 緑色 みどりいろ ■ : 有生 ゆうせい 物 ぶつ /無生物 むせいぶつ 。 暗 くら 青色 あおいろ ■ : 男性 だんせい /女性 じょせい /中性 ちゅうせい 。
印 しるし 欧 おう 祖語 そご の名詞 めいし には元来 がんらい は男性 だんせい ・女性 じょせい ・中性 ちゅうせい の3つの性 せい があり、形容詞 けいようし の変化 へんか もそれに一致 いっち していたとされる。現在 げんざい の印欧語 いんおうご 族 ぞく においては、これら3つの性 せい を全 すべ て残 のこ している言語 げんご もあれば、中性 ちゅうせい が消失 しょうしつ して男性 だんせい ・女性 じょせい のみになったもの、性 せい をほぼ完全 かんぜん に失 うしな った言語 げんご もあり、性 せい の様相 ようそう は多彩 たさい である。
男性 だんせい ・女性 じょせい ・中性 ちゅうせい の区別 くべつ を全 すべ て残 のこ している言語 げんご としては、ラテン語 らてんご 、ドイツ語 ご 、スラヴ語 ご などがある。これらのうちスラヴ語 ご は男性 だんせい をさらに活動 かつどう 体 たい と不 ふ 活動 かつどう 体 たい に分 わ け、ポーランド語 ご に至 いた ってはこの区別 くべつ に加 くわ えて複数 ふくすう 形 がた を男性 だんせい 人間 にんげん と非 ひ 男性 だんせい 人間 にんげん のカテゴリーに分 わ ける性質 せいしつ も有 ゆう している。ヘブライ文字 もじ で表記 ひょうき されるもののドイツ語 ご から強 つよ い影響 えいきょう を受 う けたイディッシュ語 ご には、男性 だんせい ・女性 じょせい ・中性 ちゅうせい という3つの性 せい がある。これは後述 こうじゅつ するセム語 ご 派 は のヘブライ語 ご とは異 こと なる区分 くぶん である。
英語 えいご では性 せい はほぼ失 うしな われており、生物 せいぶつ 学 がく 的 まと 性 せい に対応 たいおう したもの及 およ び擬人 ぎじん 法 ほう を除 のぞ けば、船 ふね や国名 こくめい など一部 いちぶ の名詞 めいし 、三人称 さんにんしょう 単数 たんすう 代名詞 だいめいし においてのみ現 あらわ れる。また、ペルシア語 ご とアルメニア語 ご においては、性 せい は代名詞 だいめいし も含 ふく めてほぼ完全 かんぜん に失 うしな われている。
名詞 めいし の文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい は、生物 せいぶつ においては原則 げんそく として生物 せいぶつ 学的 がくてき 性 せい と一致 いっち するが(稀 まれ に不一致 ふいっち する場合 ばあい もある。例 れい :ドイツ語 ご の「少女 しょうじょ 」das Mädchen は指 ゆび 小 しょう 辞 じ chenがついたため中性 ちゅうせい 名詞 めいし である[ 8] )、非 ひ 生物 せいぶつ においてはその対象 たいしょう の「男性 だんせい 性 せい 」や「女性 じょせい 性 せい 」とはほとんど無関係 むかんけい である。また、同 おな じ対象 たいしょう を表 あらわ す名詞 めいし について、言語 げんご によって性 せい は異 こと なる。ラテン語 らてんご では太陽 たいよう は男性 だんせい 名詞 めいし 、月 つき は女性 じょせい 名詞 めいし で、そこから派生 はせい したフランス語 ふらんすご なども同 おな じだが、ゲルマン語 ご 派 は では逆 ぎゃく となっているうえ、スラヴ語 ご 派 は では太陽 たいよう が中性 ちゅうせい となる。文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい が生物 せいぶつ 学的 がくてき 性 せい と一致 いっち しない場合 ばあい も稀 まれ にある。
また、語形 ごけい と性 せい が一致 いっち しない場合 ばあい もわずかにあり、例 たと えばポーランド語 ご の pianista 〈男性 だんせい ピアニスト〉は代名詞 だいめいし や接続 せつぞく する形容詞 けいようし が男性 だんせい 形 がた となる歴 れっき とした男性 だんせい 名詞 めいし だが、女性 じょせい 語尾 ごび -a を持 も ち単数 たんすう 形 がた は女性 じょせい 名詞 めいし と全 まった く同 おな じ曲 きょく 用 よう をする[ 9] 。一方 いっぽう 、フランス語 ふらんすご などのように名詞 めいし の曲 きょく 用 よう を失 うしな った言語 げんご では、名詞 めいし だけでは性 せい が判別 はんべつ できず、添 そ えられる冠詞 かんし や形容詞 けいようし で初 はじ めてわかることもある。ドイツ語 ご も格 かく 変化 へんか は残 のこ っているがこれに近 ちか い。
非常 ひじょう に変 か わった例 れい としてウェールズ語 ご がある。全体 ぜんたい としては性 せい の指標 しひょう は失 うしな われているが、ある場所 ばしょ で最初 さいしょ の子音 しいん が他 た の子音 しいん に変 か わるという特徴 とくちょう がある。たとえば merch という単語 たんご は女 おんな の子 こ を意味 いみ するが、定冠詞 ていかんし を付 つ けた形 かたち は y ferch である。これは女性 じょせい 名詞 めいし にのみ起 お こる現象 げんしょう で、男性 だんせい 名詞 めいし は定冠詞 ていかんし の後 のち でも変化 へんか しない。性 せい は名詞 めいし の後 のち に続 つづ く形容詞 けいようし にも同様 どうよう に影響 えいきょう する。たとえば、「大 おお きい女 おんな の子 こ 」は y ferch fawr だが、 「大 おお きい息子 むすこ 」は y mab mawrである。
動詞 どうし の変化 へんか は通常 つうじょう は性 せい によらないが、スラヴ語 ご においては、過去 かこ 時制 じせい のみ性 せい によって変化 へんか する[ 10] 。
ヘブライ語 ご やアラビア語 ご などセム諸語 しょご は原則 げんそく として男性 だんせい ・女性 じょせい の2種類 しゅるい の性 せい があり中性 ちゅうせい はない。以下 いか は代表 だいひょう 的 てき なアラビア語 ご を例 れい にして説明 せつめい する。名詞 めいし は語尾 ごび で男性 だんせい か女性 じょせい か判別 はんべつ できるものが多 おお い。大抵 たいてい の女性 じょせい 名詞 めいし はة (ター・マルブータ)で終 お わり、男性 だんせい 名詞 めいし にةをつけて女性 じょせい 名詞 めいし にしたものも多 おお い。双 そう 数 すう や複数 ふくすう 、動詞 どうし の人称 にんしょう 変化 へんか でも男女 だんじょ の区別 くべつ がある。形容詞 けいようし は叙述 じょじゅつ 用法 ようほう 、限定 げんてい 用法 ようほう にかかわらず修飾 しゅうしょく する名詞 めいし によって形 かたち を変 か え、ほとんどの場合 ばあい にはةをつけることで女性 じょせい 形 がた となる。但 ただ し定冠詞 ていかんし は性 せい によらず常 つね に ال (al)を用 もち いる。また名詞 めいし や形容詞 けいようし の格 かく 変化 へんか も性 せい によらない。ヘブライ語 ご もアラビア語 ご と同様 どうよう に冠詞 かんし は性 せい によらずהを用 もち い、複数 ふくすう 形 がた や動詞 どうし の人称 にんしょう 変化 へんか でも性 せい の区別 くべつ があり、形容詞 けいようし は修飾 しゅうしょく する名詞 めいし によって語尾 ごび などが変化 へんか する。
アラビア語 ご では体 からだ の対 たい を成 な す部分 ぶぶん や地名 ちめい は女性 じょせい 名詞 めいし であるが、例外 れいがい 的 てき にアラブ世界 せかい の7カ国 かこく の国名 こくめい (レバノン、ヨルダン、イラク、スーダン、モロッコ、イエメン、ソマリア)は男性 だんせい 名詞 めいし である。また、集合 しゅうごう 名詞 めいし を女性 じょせい 名詞 めいし 化 か することで個別 こべつ の名詞 めいし を作 つく ることが出来 でき る。例 たと えばشجر(shajar: 樹木 じゅもく )に対 たい するشجرة(shajara: 木 き )などである。さらに、طريق(tarīq:道 みち )やسكين(sikkīn:ナイフ)のような、男性 だんせい 名詞 めいし としても女性 じょせい 名詞 めいし としても使 つか われる名詞 めいし もある。
コーカサス諸語 しょご には、男性 だんせい ・女性 じょせい ・活動 かつどう 体 たい やある種 しゅ の物体 ぶったい ・その他 た 、という4類 るい を持 も つ言語 げんご が最 もっと も多 おお いが、ジョージア語 ご のような名詞 めいし クラスがない言語 げんご 、2クラスだけある言語 げんご 、8クラスをもつバツ語 ご もある。アンディ語 ご (英語 えいご 版 ばん ) には虫 むし のクラスというものがある。コーカサス諸語 しょご ではクラスは名詞 めいし そのものには明示 めいじ されないが、動詞 どうし 、形容詞 けいようし 、代名詞 だいめいし によって示 しめ される。
北米 ほくべい のアルゴンキン語族 ごぞく では活動 かつどう 体 たい ・不 ふ 活動 かつどう 体 たい の2クラスを区別 くべつ するが、この区別 くべつ はむしろ力 りょく のある・なしの区別 くべつ だとする人 ひと もいる。すべての生物 せいぶつ 、また神聖 しんせい なものや大地 だいち につながりのあるものは力 ちから のあるものと考 かんが えられ「活動 かつどう 体 たい 」に分類 ぶんるい される。しかし分類 ぶんるい は極 きわ めて恣意 しい 的 てき で、たとえば「キイチゴ」が活動 かつどう 体 たい 、「イチゴ」が不 ふ 活動 かつどう 体 たい となる。
バントゥー語 ご 群 ぐん にはのべ22種 しゅ の名詞 めいし クラスがある。1言語 げんご でそのすべてを持 も っているものはないが、少 すく なくとも10種 しゅ は持 も っている。たとえばスワヒリ語 ご には15種 しゅ 、ソト語 ご には18種 しゅ ある。人間 にんげん に関 かん して数 すう 種 しゅ ある場合 ばあい が多 おお い。
モンゴル語 ご の単語 たんご にも、男性 だんせい 語 ご ・女性 じょせい 語 ご の分類 ぶんるい があるが、これは母音 ぼいん 調和 ちょうわ に関 かん する分類 ぶんるい であり、文法 ぶんぽう 的 てき 性 せい とは異 こと なり一致 いっち を生 しょう じない。モンゴル語 ご では、母音 ぼいん を男性 だんせい 母音 ぼいん ・女性 じょせい 母音 ぼいん ・中性 ちゅうせい 母音 ぼいん に分類 ぶんるい し、男性 だんせい 母音 ぼいん の伴 ともな う語 かたり を男性 だんせい 語 ご 、女性 じょせい 母音 ぼいん の伴 ともな う語 かたり または中性 ちゅうせい 母音 ぼいん のみ伴 ともな う語 かたり を女性 じょせい 語 ご と呼 よ ぶ。
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^ 複数 ふくすう 形 がた は男性 だんせい 人間 にんげん 型 がた 変化 へんか となる。なお、〈女性 じょせい ピアニスト〉は指 ゆび 小 しょう 辞 じ の付 つ いた pianistka という形 かたち となる。
^ 本来 ほんらい の過去 かこ 形 がた である未 み 完了 かんりょう 過去 かこ 、アオリストは人称 にんしょう と数 かず によって変化 へんか するが、南 みなみ スラブ系 けい の一部 いちぶ を除 のぞ いてこれらは(ほぼ)廃 すた れ本来 ほんらい 現在 げんざい 完了 かんりょう 形 がた である「コピュラ動詞 どうし 現在 げんざい +能動 のうどう 完了 かんりょう 分詞 ぶんし (結果 けっか 分詞 ぶんし ・L分詞 ぶんし などとも呼 よ ばれる)」がそれらに代 か わった。分詞 ぶんし は形容詞 けいようし とも考 かんが えられるので主語 しゅご に性 せい 数 すう 一致 いっち する。ロシア語 ご においてはコピュラ動詞 どうし の現在 げんざい 形 がた は一部 いちぶ の用法 ようほう 以外 いがい は省略 しょうりゃく されるので動詞 どうし が性 せい 数 すう 変化 へんか するように見 み えるのである。
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