散文さんぶん

散文さんぶん（さんぶん）とは、小説しょうせつや評論ひょうろんのように、5・7・5などの韻律いんりつや句法くほうにとらわれずに書かかれた文章ぶんしょうのことである。狭義きょうぎには、そのようにして書かかれた文学ぶんがく。韻文いんぶんの反意語はんいご。散文さんぶんで書かかれた詩しのことは散文詩さんぶんしと言いう。また、散文さんぶん的てきという言葉ことばは「味気あじけなく、情趣じょうしゅが薄うすい」という意味いみで使つかわれることもある。

歴史れきし的てき背景はいけい

中国ちゅうごく文学ぶんがく史上しじょう、六朝りくちょう時代じだい以降いこう、韻文いんぶん・駢文と区別くべつする言葉ことばとして生うまれ、韻律いんりつの制約せいやくを受うけず、押韻おういんや排はい偶を用もちいないことを特徴とくちょうとする経書けいしょ・史書ししょなども含ふくめた文章ぶんしょう形式けいしきのことであった。これは中国ちゅうごくでは近代きんだいの新しん文化ぶんか運動うんどうに至いたるまで文学ぶんがくと文章ぶんしょうとを分わける考かんがえ方かたがなかったためである。ここでの「散ち」とは「束縛そくばくを受うけない」という意味いみである。後代こうだいには文学ぶんがく上じょうにおいて詩歌しか以外いがいの文学ぶんがくジャンルを指さす言葉ことばになった。

一方いっぽう、英語えいごのプローズ（prose）は、ラテン語らてんごのプロルスス（prorsus、「まっすぐ」「平たいら」の意い）を語源ごげんとし、抑揚よくように富とみ、感情かんじょうや感性かんせいを表現ひょうげんする詩しに対たいして、事物じぶつの描写びょうしゃや羅列られつにより平坦へいたんで陳腐ちんぷな文章ぶんしょうを指さしていた。

文学ぶんがく作品さくひんとしての散文さんぶん

『古事記こじき』や『日本書紀にほんしょき』などの記紀きき、『源氏物語げんじものがたり』などの恋愛れんあい小説しょうせつ、『枕草子まくらのそうし』などの随筆ずいひつは各々おのおののジャンルの日本にっぽん文学ぶんがくの散文さんぶんの始祖しそである。

文章ぶんしょう読本とくほん

近代きんだい以降いこう、日本語にほんごで散文さんぶんを書かくための教科書きょうかしょ、散文さんぶんについての随筆ずいひつとして「文章ぶんしょう読本とくほん」と呼よばれるものが多おおく書かかれた。多おおくは作家さっか・文芸ぶんげい評論ひょうろん家かなどの文学ぶんがく者しゃによるもので、「優すぐれた文学ぶんがく者しゃが基本きほん的てきな文章ぶんしょう作法さほうから小説しょうせつの技法ぎほうまでを教おしえる」というスタイルの啓蒙けいもう書しょとも言いえる。レポートの書かき方かたなど文章ぶんしょう執筆しっぴつのノウハウ本ほんは、その後ごも数多かずおおく出版しゅっぱんされ続つづけている。

• 谷崎たにざき潤一郎じゅんいちろう『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 菊池きくち寛ひろし『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 三島みしま由紀夫ゆきお 『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 丸谷まるや才一さいいち 『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 川端かわばた康成やすなり 『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 吉行よしゆき淳之介じゅんのすけ 『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 向井むかい敏さとし『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 中条ちゅうじょう省しょう平たいら『文章ぶんしょう読本とくほん』
• 井上いのうえひさし 『自家製じかせい 文章ぶんしょう読本とくほん』

外部がいぶリンク

• 『散文さんぶん』 - コトバンク