新しん優生ゆうせい学がく

新しん優生ゆうせい学がく（しんゆうせいがく、英えい: new eugenics）または新あたらしい優生ゆうせい学がくは、胚はい選択せんたくや遺伝子いでんし工学こうがくによる胚はいの操作そうさによって望のぞましい特徴とくちょうを備そなえた子供こどもを作つくることを、それが親おやの自発じはつ的てきな選択せんたくである限かぎり支持しじする思想しそうである。リベラル優生ゆうせい学がく（liberal eugenics）や個人こじん主義しゅぎ的てき優生ゆうせい学がくとも呼よばれる。

「古ふるい優生ゆうせい学がく」は、集団しゅうだんの遺伝いでん的てきな質しつを改善かいぜんするために、社会しゃかいにとって望のぞましくない子孫しそんの出生しゅっしょう防止ぼうし、または望のぞましい子孫しそんの出生しゅっしょう促進そくしんという形かたちで政策せいさく実行じっこうされた。これに対たいして新あたらしい優生ゆうせい学がくは、個人こじんの自由じゆうな意思いしに基もとづく場合ばあいに限かぎって、子孫しそんの遺伝いでん的てきな質しつを操作そうさすることを許容きょようし、それを「生殖せいしょくの自由じゆう・権利けんり」とみなし、社会しゃかいによる規制きせいを不当ふとうなものと考かんがえる。子供こどもの環境かんきょうを向上こうじょうさせることが認みとめられている以上いじょう、それと同様どうような効果こうかを得えられる遺伝子いでんしへの介入かいにゅうは禁止きんしされるべきではないと考かんがえる。生命せいめいへの介入かいにゅうは、あくまでも個人こじんがどのような子供こどもを作つくるかという選択せんたくであり幸福こうふく追求ついきゅう権けんの行使こうしであって、遺伝子いでんしプールの改善かいぜんが目的もくてきではない。

新しん優生ゆうせい学がくはどのような遺伝いでん的てき介入かいにゅうでも支持しじするわけではなく、論者ろんしゃによって遺伝子いでんし改変かいへんを許容きょようする程度ていどは異ことなるが、一般いっぱんに子供こどもに障害しょうがいをもたせるなど、子供こどもの人生じんせいの選択肢せんたくしを狭せばめる介入かいにゅうは許容きょようされない。

新しん優生ゆうせい学がくは、旧来きゅうらいの優生ゆうせい学がくと同おなじく、有害ゆうがいな遺伝子いでんしを取とり除のぞく消極しょうきょく的てき優生ゆうせい学がくと、望のぞましい遺伝子いでんしを導入どうにゅうする積極せっきょく的てき優生ゆうせい学がくに分わけられる。世論せろん調査ちょうさでは、子供こどもの能力のうりょくを増強ぞうきょうする積極せっきょく的てき介入かいにゅうよりも、疾患しっかんから子供こどもを守まもる消極しょうきょく的てき介入かいにゅうの方ほうが受うけ入いれられやすい傾向けいこうがある。もっとも新しん優生ゆうせい学がくの論者ろんしゃの多おおくは、治療ちりょうと能力のうりょく増強ぞうきょうを厳密げんみつに区別くべつすることはできないと強調きょうちょうしている。例たとえば視力しりょくの改善かいぜんは治療ちりょうでもあるし、能力のうりょく増強ぞうきょうでもある。

新しん優生ゆうせい学がくは、好すきな商品しょうひんを選えらぶように自分じぶんの好このみに合あわせて子供こどもの質しつを選えらぶといった視点してんから「消費しょうひ者しゃ優生ゆうせい学がく」とも呼よばれる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 桜井さくらい徹とおる『リベラル優生ゆうせい主義しゅぎと正義まさよし』ナカニシヤ出版しゅっぱん、2007年ねん。 
• マイケル・J・サンデル『完全かんぜんな人間にんげんを目指めざさなくてもよい理由りゆう－遺伝子いでんし操作そうさとエンハンスメントの倫理りんり』ナカニシヤ出版しゅっぱん、2010年ねん。 
• Agar, Nicholas (2004). Liberal Eugenics: In Defence of Human Enhancement 

関連かんれん項目こうもく

• 人間にんげん強化きょうか
• 遺伝子いでんし治療ちりょう
• デザイナーベビー
• 出生しゅっしょう前ぜん診断しんだん
• 人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ
• ガタカ - 親おやの自由じゆうな選択せんたくによる胚はいの遺伝いでん的てき操作そうさが一般いっぱん的てきとなった世界せかいを描えがくSF映画えいが。

外部がいぶリンク

• 桑原くわばら真木子まきこ「戦後せんご日本にっぽんにおける優生ゆうせい学がくの展開てんかいと教育きょういくの関係かんけい」『教育きょういく社会しゃかい学がく研究けんきゅう』第だい76巻かん、日本にっぽん教育きょういく社会しゃかい学会がっかい、2005年ねん、265-285頁ぺーじ、doi:10.11151/eds1951.76.265。