日本にっぽん原住民げんじゅうみん論ろん

日本にっぽん原住民げんじゅうみん論ろん（にほんげんじゅうみんろん）

1. 歴史れきし小説しょうせつ家か八はち切きり止とめ夫おっとが定義ていぎする「日本にっぽん原住民げんじゅうみん」をキーワードとした一連いちれんの「八はち切きり史観しかん」のこと。
2. 上記じょうきの八はち切きり史観しかんを換骨奪胎かんこつだったいした日本にっぽんの新しん左翼さよくの史観しかんのこと。1・2を合あわせて本ほん項こうにて記しるす。

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八はち切きり史観しかん

八はち切きり止とめ夫おっとは、これまでの歴史れきしの常識じょうしきを覆くつがえす様々さまざまな説せつを唱となえていた。「日本にっぽん原住民げんじゅうみん論ろん」もその一ひとつで、端はし的てきにいえば「大和やまと朝廷ちょうていは外来がいらい政権せいけんであり、それ以前いぜんに存在そんざいしていた先住民せんじゅうみん族ぞくの末裔まつえいが部落ぶらく民みんやサンカである」というものであった。

ただ八はち切きり史観しかんでは、これらの「原住民げんじゅうみん」は、長ながい歴史れきしを通つうじて皇統こうとうのいずれかに繋つながっており、皇室こうしつこそが原住民げんじゅうみん統合とうごうのシンボルであると想定そうていしていた。そのため、八はち切きり本人ほんにんは左翼さよく思想しそうの持もち主ぬしというわけではなかった。

新しん左翼さよく史観しかん

ところが、この「日本にっぽん原住民げんじゅうみん論ろん」は、八はち切きり本人ほんにんの与あずかり知しらぬところで、日本にっぽんの新しん左翼さよくに利用りようされることになった。

潜伏せんぷく中ちゅうの共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ同盟どうめい赤軍せきぐん派は幹部かんぶ・梅内うめうち恒夫つねおは、八はち切きりの日本にっぽん原住民げんじゅうみん論ろんに触発しょくはつされ、「共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ同盟どうめい赤軍せきぐん派はより日にち帝みかど打倒だとうを志こころざすすべての人々ひとびとへ」を発表はっぴょうした。ここに初はじめて「日にち帝みかど打倒だとう」の根拠こんきょが「明治めいじ以降いこうの大日本帝国だいにっぽんていこくの悪行あくぎょう」から「日本にっぽん建国けんこく時じの原住民げんじゅうみん迫害はくがい」に大おおきくシフトすることになった。窮民きゅうみん革命かくめい論ろんを唱となえた太田おおた竜りゅうも、八はち切きりを「真しんの人民じんみん的てき歴史れきし家か」と絶賛ぜっさんした。

こうして新しん左翼さよくの活動かつどう家かは「日本にっぽん先住民せんじゅうみんの復権ふっけん」を掲かかげる独自どくじの史観しかんを確立かくりつしていった。その特徴とくちょうは「大和やまと朝廷ちょうていに滅ほろぼされた幻まぼろしの地方ちほう政権せいけん」を称揚しょうようすることで、「天皇てんのう制せいの相対そうたい化か」を図はかるというものであった。この史観しかんに触発しょくはつされた加藤かとう三郎さぶろうやその他たノンセクト・ラジカル活動かつどう家かによる反日はんにちテロ事件じけんも発生はっせいしている。そして「記紀きき以前いぜんの歴史れきしを伝つたえる」とされる古史こし古伝こでんに関心かんしんを持もつようになった。

そして、新しん左翼さよく活動かつどう家かの中なかには偽にせ史しにのめり込こみ、1980年代ねんだいのオカルトブームを巻まき起おこすことに一役ひとやく買かったものもあった。「東ひがし日び流りゅう外がい三さん郡ぐん誌し」が当時とうじ、一世いっせいを風靡ふうびしたのは決けっして偶然ぐうぜんではない。研究けんきゅう家かの原田はらだ実みのるによると、オウム真理教おうむしんりきょうもこの風潮ふうちょうで台頭たいとうした一種いっしゅの偽にせ史し運動うんどうであり、国家こっか転覆てんぷくをも企くわだてた背景はいけいには、これらのイデオロギーが影響えいきょうしているとしている。

歴史れきし解釈かいしゃく

新しん左翼さよく史観しかんも基本きほん的てきには八はち切きりの歴史れきし解釈かいしゃくを援用えんようしているため、個々ここの歴史れきし的てき出来事できごとに関かんする解釈かいしゃくは両者りょうしゃともあまり差異さいはない。新しん左翼さよく史観しかんの特異とくい点てんは、八はち切きり流りゅう歴史れきし解釈かいしゃくを反日はんにち亡国ぼうこく論ろんを理論りろん付つける政治せいじ的てきイデオロギーとして活用かつようしているところにある。そのため八はち切きり流りゅう歴史れきし解釈かいしゃくが新しん左翼さよく史観しかんに合あわない場合ばあい、意図いと的てきに無視むししたり、改変かいへんしたりしている。

アイヌ民族みんぞくの出自しゅつじ

八はち切きり史観しかんではアイヌ民族みんぞくを太古たいこから北海道ほっかいどうにのみ居住きょじゅうする民族みんぞくとし、「日本にっぽん原住民げんじゅうみん」とは別べつの扱あつかいにしている。しかし新しん左翼さよく史観しかんではアイヌ民族みんぞくも「日本にっぽん原住民げんじゅうみん」を構成こうせいする民族みんぞくとし、アイヌ民族みんぞくを「奴隷どれい化か」した「日本にっぽんの悪行あくぎょう」を糾弾きゅうだんする根拠こんきょとしている。

皇室こうしつの出自しゅつじ

日本にっぽんの皇室こうしつが君主くんしゅとして歴史れきしに登場とうじょうした年代ねんだいについては両者りょうしゃの見解けんかいに差さがあるが、皇室こうしつの出自しゅつじは「日本にっぽん原住民げんじゅうみん」から出でたのではなく、騎馬きば民族みんぞく征服せいふく王朝おうちょう説せつに基もとづき、大陸たいりくからの渡来とらい人じん出身しゅっしんとしているのは両者りょうしゃとも共通きょうつうしている。これを理由りゆうに、新しん左翼さよくは天皇てんのうの君主くんしゅとしての正統せいとう性せいを否定ひていする根拠こんきょとしている。

藤原ふじわら氏しの出自しゅつじと律令制りつりょうせい

「白村はくそん江こうの戦たたかいで倭国わのくには敗やぶれ、郭かく務つとむ悰率ひきいる唐とう軍ぐんの進駐しんちゅうを許ゆるす破目われめになった。唐とう軍ぐんは大だい海人あまを担かついで傀儡かいらい政権せいけんを樹立じゅりつ、旧きゅう支配しはい層そうを一掃いっそうした。これが壬みずのえ申さるの乱らんである。「進駐軍しんちゅうぐん」はそのまま居座いすわり続つづけ、「傀儡かいらい政権せいけん」の支配しはい層そうとして君臨くんりんすることになった。彼かれらは「公家くげ」と自称じしょうした。藤原ふじわら氏しの出自しゅつじは「唐から進駐軍しんちゅうぐん」の司令しれい官かんに他たならない。藤原ふじわら氏しはこれらの事実じじつを隠蔽いんぺいするために、彼かれらの本来ほんらいの母語ぼごである中国ちゅうごく語ご（漢文かんぶん）で「日本書紀にほんしょき」を編纂へんさんし、歴史れきしを歪曲わいきょくした。そして「宗主そうしゅ国こく」唐とうの律令制りつりょうせいを直輸入ちょくゆにゅうし、急速きゅうそくに中国ちゅうごく化かを進すすめていった。」という解釈かいしゃくをしている。「そもそも日本書紀にほんしょきは純粋じゅんすいな漢文かんぶんで書かかれていない」「唐とう軍ぐんが日本にっぽんに来きた形跡けいせきがない」など、多おおくの矛盾むじゅんがあり、自分じぶんたちを正当せいとう化かするための方便ほうべんにすぎない。

参考さんこう文献ぶんけん

• 八はち切きり止とめ夫おっと「日本にっぽん原住民げんじゅうみん史し」朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1972年ねん
• 太田おおた竜りゅう「日本にっぽん原住民げんじゅうみんと天皇てんのう制せい」新泉しんいずみ社しゃ、1982年ねん
• 太田おおた竜りゅう「日本にっぽん原住民げんじゅうみん史し序説じょせつ」新泉しんいずみ社しゃ、1982年ねん
• 原田はらだ実みのる「幻想げんそうの荒あら覇は吐（アラハバキ）秘史ひし　―「東ひがし日び流りゅう外がい三さん郡ぐん誌し」の泥濘でいねい―」批評社ひひょうしゃ、1999年ねん
• 原はら正ただし寿ことぶき、原田はらだ実みのる、安本やすもと美よし典てん「日本にっぽん史しが危あぶない! ―偽書ぎしょ『東ひがし日び流りゅう外がい三さん郡ぐん誌し』の正体しょうたい―」全貌ぜんぼう社しゃ、1999年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 八はち切きり止とめ夫おっと
• アイヌ革命かくめい論ろん
• 反日はんにち亡国ぼうこく論ろん
• 古史こし古伝こでん
• 偽にせ史し運動うんどう
• 部落ぶらくの起源きげん論争ろんそう
• 梨木なしき神社じんじゃ爆破ばくは事件じけん

太田おおた竜りゅうの影響えいきょうを受うけた犯人はんにんの加藤かとう三郎さぶろうは「闇やみの土蜘蛛つちぐも」という過去かこ朝廷ちょうていにまつろわず弾圧だんあつされた豪族ごうぞくを指さす蔑称べっしょうを名乗なのって犯行はんこうに及およんだ。

• アイアンキング　

1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）10月8日にちから1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）4月がつ8日にちにわたってTBSで毎週まいしゅう日曜日にちようび19：00 - 19：30に放送ほうそうされた特撮とくさつテレビ番組ばんぐみ。脚本きゃくほん・佐々木ささき守まもる。第だい一部いちぶで敵てきとして、古代こだいにヤマト王権おうけんに征服せいふくされ、その後ご、地下ちか組織そしき化かした日本にっぽん原住民げんじゅうみんの「不知火しらぬい族ぞく」が日本国にっぽんこく政府せいふに反攻はんこう、それをヒーローの「アイアンキング」が鎮圧ちんあつするという設定せっていである。

• 三日月みかづき情話じょうわ

東海とうかいテレビ制作せいさく・フジテレビ系列けいれつで、1976年ねん4月がつ5日にち～5月21日にちに放送ほうそうされた昼ひるドラマ。脚本きゃくほん・佐々木ささき守まもる。浦島うらしま伝説でんせつと本論ほんろんを組くみ合あわせて解釈かいしゃくしたドラマ。

また、佐々木ささき守まもるには本ほん作さくを子供こども向むけにリライトした「竜りゅう宮城みやぎはどこですか」と言いう著書ちょしょもある。

• ズッコケ三さん人組にんぐみ

地下ちか組織そしき化かした日本にっぽん原住民げんじゅうみんが登場とうじょうするエピソードがある。

• 緑みどりの党とう (日本にっぽん 1981)
• 三橋みつはし辰雄たつお
• 土蜘蛛つちぐも・熊くま襲かさね・隼人はやと・蝦夷えぞ・国栖くず・粛慎 (日本にっぽん)
• コロボックル説せつ

石器せっき時代じだい人じん（縄文じょうもん人じん）は現在げんざいのアイヌ民族みんぞくや大和やまと民族みんぞくとは関係かんけいがなく、アイヌ民族みんぞくや大和やまと民族みんぞくが日本にっぽんに到来とうらいする以前いぜんにそれとは別種べっしゅの異ことなる文化ぶんかを持もった原住民げんじゅうみんがいたとし、それをアイヌの伝承でんしょうにあるコロポックルに同定どうていする説せつ。エドワード・S・モースのプレ・アイヌ説せつを発展はってんさせたもので坪井つぼい正ただし五郎ごろうが主張しゅちょうし、石器せっき時代じだい人じん＝アイヌ説せつを主張しゅちょうした白井しらい光太郎こうたろうや小金井こがねい良りょう精せいらとどちらが大和やまと民族みんぞく到来とうらい以前いぜんの日本にっぽんの原住民げんじゅうみんなのか激はげしい論争ろんそうになった（アイヌ・コロボックル論争ろんそう）。現在げんざいでは北海道ほっかいどう以北いほくの縄文じょうもん文化ぶんかが続ぞく縄文じょうもん文化ぶんかや擦こす文ぶん文化ぶんかなどのいくつもの過程かていを経へてアイヌ文化ぶんかが成立せいりつしたという説せつが主流しゅりゅうで石器せっき時代じだい人じん＝アイヌ説せつともども顧かえりみられることはなく、また後ごの八はち切きり史観しかんとは関係かんけいはない。

外部がいぶリンク

• 私わたしが出会であったもうひとりの「カリスマ」1 原田はらだ実みのる1995年ねん
• 私わたしが出会であったもうひとりの「カリスマ」2 原田はらだ実みのる1995年ねん