末広鉄腸すえひろてっちょう

末広鐵腸すえひろてっちょう（すえひろてっちょう、1849年ねん 3月15日にち（嘉よしみ永ひさし2年ねん2月がつ21日にち） - 1896年ねん（明治めいじ29年ねん）2月がつ5日にち）は、自由じゆう民権みんけん派はの政論せいろん家か・新聞しんぶん記者きしゃ・衆議院しゅうぎいん議員ぎいん・政治せいじ小説しょうせつ家か。幼名ようみょう雄次郎ゆうじろう、後のちに重恭しげやす（しげやす）。号ごうに鐵てつ腸ちょう、子こ倹、浩ひろし斎とき。

生涯しょうがい

宇和島うわじま藩はんの勘定かんじょう役やく『禎介ていすけ』の次男じなんとして、城下じょうかの笹ささ町まち（現げん、愛媛えひめ県けん宇和島うわじま市し笹ささ町まち）に生うまれた。

1860年ねん（万延まんえん元年がんねん）、四書ししょ五経ごきょうの素読そどくを終おえ、翌年よくねん、藩校はんこうの『明倫めいりん館かん』に入はいって朱子学しゅしがくを修おさめ、1869年ねん（明治めいじ2年ねん）、母校ぼこうの教授きょうじゅになった。王おう陽明ようめいの伝習でんしゅう録ろくに傾倒けいとうした。

1870年ねん（明治めいじ3年ねん）、上京じょうきょうしたものの師しを得えず、京都きょうとの春日かすが潜せん庵あんに陽明学ようめいがくを学まなんだ。1872年ねん（明治めいじ5年ねん）、帰郷ききょうして神山かみやま県けんに勤つとめ、1874年ねん（明治めいじ7年ねん）、大蔵省おおくらしょうに転てんじたが、折おりからの自由じゆう民権みんけん運動うんどうの高たかまりの中なかで言論げんろんに志こころざし、1875年ねん（明治めいじ8年ねん）4月がつ、東京とうきょう曙あけぼの新聞しんぶんの編集へんしゅう長ちょうになった。

直後ちょくごの1875年ねん（明治めいじ8年ねん）6月がつ、讒謗ざんぼう律りつと新聞紙しんぶんし条例じょうれいが公布こうふされ、8月がつ、それらを非難ひなんする投書とうしょを掲載けいさいして、自宅じたく禁錮きんこ2ヶ月かげつ・罰金ばっきん二に千せん円えんとなり、最初さいしょの違反いはん者しゃとして名なを広ひろめた。

1875年ねん（明治めいじ8年ねん）10月がつ、朝野あさの新聞しんぶんの編集へんしゅう長ちょうとなり、成島なりしま柳北りゅうほく社長しゃちょうの洒脱しゃだつな諷刺ふうし『雑録ざつろく』と鉄てつ腸ちょうの痛烈つうれつな『論説ろんせつ』とで人気にんきを集あつめたが、1876年ねん（明治めいじ9年ねん）2月がつに、讒謗ざんぼう律りつ・新聞紙しんぶんし条例じょうれいの制定せいてい者しゃ、井上いのうえ毅あつし・尾崎おざき三良さぶろうを紙上しじょうで茶化ちゃかし、柳北りゅうほくは禁獄きんごく4ヶ月かげつと100円えん、鉄てつ腸ちょうは8ヶ月かげつと150円えんの罰ばちを受うけ、収監しゅうかんされた。下獄げごく中ちゅう、漢学かんがくへの偏かたよりを改あらためるべく、英語えいごを独学どくがくした。釈放しゃくほう後ご、『末広すえひろ重恭しげやす転てん獄ごく新しん話はなし』を朝野ちょうや新聞しんぶんに載のせた。

明治めいじ義ぎ塾じゅく（三菱みつびし商業しょうぎょう学校がっこう）に学まなび、1879年ねん（明治めいじ12年ねん）から、嚶鳴社しゃなどの政談せいだん演説えんぜつ会かいで、国会こっかい開設かいせつの啓蒙けいもう演説えんぜつを続つづけ、1880年ねん（明治めいじ13年ねん）慶應義塾けいおうぎじゅく出身しゅっしん者しゃ中心ちゅうしんの政談せいだん演説えんぜつ討論とうろん会かいが中心ちゅうしんとなり、政治せいじ的てき啓蒙けいもう団体だんたい「国友くにとも会かい」が組織そしきされると、大石おおいし正巳まさみ、馬場ばば辰猪たつい、吉田よしだ一いち士しらと共ともに参加さんかして、地方ちほう遊説ゆうぜいもした。

1881年ねん（明治めいじ14年ねん）、国会こっかい設置せっちが予告よこくされ、『自由党じゆうとう』が結党けっとうされて常つね議員ぎいんになったが、1883年ねん（明治めいじ16年ねん）脱党だっとうし、馬場ばば・大石おおいしらと『独立どくりつ党とう』を結成けっせいした。（成島なりしま社長しゃちょうは『立憲りっけん改あらため進しん党とう』。）

1884年ねん（明治めいじ17年ねん）、成島なりしま柳北りゅうほくが没ぼっし、鉄てつ腸ちょうは社長しゃちょう没ぼつ後ごの朝野ちょうや新聞しんぶんを支ささえ、犬いぬ養やしなえ毅あつし・尾崎おざき行雄ゆきおらを補強ほきょうした。糖尿とうにょう病びょうを療養りょうようし、1886年ねん（明治めいじ19年ねん）、政治せいじ小説しょうせつ『雪ゆき中ちゅう梅うめ』を出版しゅっぱんした。1888年ねん（明治めいじ21年ねん）、印税いんぜいを資しに、4月がつ13日にちから米べい欧おうに旅行りょこうした。英語えいごが流暢りゅうちょうに話はなせるわけではない鉄てつ腸ちょうだったが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくサンフランシスコ行いきの船ふねに乗のったのち、船ふね中ちゅうでフィリピンの革命かくめい家か・学者がくしゃとして知しられるホセ・リサールと懇意こんいになり、リサールがなにかと助たすけてくれた。当初とうしょの鉄てつ腸ちょうの目的もくてきは訪米ほうべいだったが、リサールと意気投合いきとうごうしたために予定よていを変更へんこうして4月がつ28日にちのサンフランシスコ到着とうちゃく後ごも行動こうどうを共ともにし、5月16日にちにリサールと共ともにイギリスのリバプールに到着とうちゃくした後のち、ロンドンにて別わかれている。「親切しんせつなフィリピン人じん青年せいねんが船ふねで助たすけてくれた」と鉄てつ腸ちょうは書かき残のこしている。

翌年よくねん2月がつ帰国きこくすると、宿願しゅくがんとする政党せいとうの大同団結だいどうだんけつに立憲りっけん改あらため進しん党とう系けいの朝野ちょうや新聞しんぶん社内しゃないが冷つめたいので、退社たいしゃし、各地かくちを遊説ゆうぜいした。

同年どうねんの春はるに創刊そうかんされた『東京とうきょう公論こうろん』紙しの主筆しゅひつになり、不偏不党ふへんふとうの同社どうしゃと合あわず二に月がつ足たらずでやめ、大阪おおさかの大同だいどう倶楽部くらぶ系けいの『関西かんさい日報にっぽう』紙しの主幹しゅかんとなり、翌よく1890年ねん（明治めいじ23年ねん）6月がつ、東京とうきょうに戻もどって『大同だいどう新聞しんぶん』を主宰しゅさいし、次つぎに村山むらやま龍平りゅうへいと11月、『国会こっかい』紙しを創刊そうかんし、1894年ねん（明治めいじ27年ねん）、のちに『新聞しんぶん経歴けいれき談だん』となる『記憶きおくのまゝ』を連載れんさいした。

その間あいだの1890年ねん（明治めいじ23年ねん）7月がつ、大同だいどう新聞しんぶん記者きしゃの肩書かたがきで第だい一いち回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん選挙せんきょに愛媛えひめ県けんから立候補りっこうほし、当選とうせんした。しかし、所属しょぞくした立憲りっけん自由党じゆうとうから脱党だっとうし、その後ごの選挙せんきょに二に度ど落選らくせんし、1894年ねん（明治めいじ27年ねん）の選挙せんきょで返かえり咲ざいた。

在野ざいや時じの1892年ねん（明治めいじ25年ねん）には、清国きよくに・朝鮮ちょうせん・沿海州えんかいしゅうを視察しさつした。他た、興亜こうあ会かいの幹事かんじにも就任しゅうにんしている。

1896年ねん（明治めいじ29年ねん）、現職げんしょく議員ぎいんのまま、舌した癌がんで亡なくなった。墓碑ぼひは宇和島うわじま市し大だい超ちょう寺てらにある。

長男ちょうなん末広すえひろ重雄しげおは国際こくさい法学ほうがく者しゃとして京都大学きょうとだいがく教授きょうじゅ。次男じなん末広すえひろ恭二きょうじは船舶せんぱく工学こうがく者もの。孫まごで恭二きょうじの長男ちょうなんに当あたる末広すえひろ恭きょう雄ゆうは水産すいさん学者がくしゃ。

主おもな著書ちょしょ

単行本たんこうぼん

（翻訳ほんやく）ウ井いクトル、チツソーとコンスタン・アメロー共著きょうちょ：『千里せんり風ふう煙けむり政事せいじ上じょうの放逐ほうちく人じん』、博文ひろぶみ堂どう（1888）（'Victor Tissot et Constant Amero : "Les Contrées mystérieuses et les peuples inconnus" (1884)' の英訳えいやくからの重訳じゅうやく）
『独立どくりつ政党せいとう論ろん』1、2、万まん春はる堂どう（1883 & 1884）
『二に十じゅう三さん年ねん未来みらい記き』、東京とうきょう屋や（1885 & 1886））
（翻訳ほんやく）マコーレー：『印度いんど征せい略りゃく史し』、日進にっしん堂どう、（1885）（Thomas Babington Macaulay: "Lord Clive,"（1840））
『雪ゆき中ちゅう梅うめ』、博文ひろぶみ堂どう（1886）
『近世きんせい欧おう洲しゅう事情じじょう』（菊池きくち広治ひろじと共著きょうちょ）、文学ぶんがく社しゃ（1887）
『雨中うちゅう花はな』、文学ぶんがく社しゃ（1887）
『現今げんこんの政事せいじ社会しゃかい 1、2』、博文ひろぶみ堂どう（1887）
『花はな間あいだ鶯うぐいす上中かみなか下か』、金港きんこう堂どう（1887-1888） / 合本がっぽん、青木あおき嵩山すせ堂どう（1895）
『軋轢あつれき之の原因げんいん』、博文ひろぶみ堂どう（1888）
『雨あめ前之まえの桜さくら』、博文ひろぶみ堂どう（1888）
『治ち外法そとのり憲けん情話じょうわ編へん』、政せい進しん圃（1888）
『政治せいじ社会しゃかい実地じっち演説えんぜつ』、翔しょう雲くも堂どう（1888）
『雨あめ前まえの桜さくら』、博文ひろぶみ堂どう（1888）
『落葉らくよう之の掃寄』（「五色ごしき目め鏡きょう」「浮世うきよの夢ゆめ」「未来みらいの夢ゆめ」「手管てくだのもつれ」）、金きむ桜さくら堂どう（1887）
『鴻おおとり雪ゆき録ろく』、博文ひろぶみ堂どう（1889）
『唖おしの旅行りょこう 1、2、3）』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1889 - 1901）
『我国わがくに之の内政ないせい外交がいこう』、博文ひろぶみ堂どう（1889）
『闇夜やみよ鴉からす』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1890）
『何なにをか政党せいとうと云うんふ』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1890）
高橋たかはし弥之助やのすけ編へん：『衆議院しゅうぎいん議長ぎちょう中島なかじま信行のぶゆき氏しの伝つて　衆議院しゅうぎいん議員ぎいん末広すえひろ重恭しげやす氏しの演説えんぜつ』、安政あんせい堂どう（1890）
『南洋なんよう之の大だい波瀾はらん』、春陽しゅんよう堂どう（1891）- ホセ・リサールをモデルにした政治せいじ小説しょうせつ
『玉手箱たまてばこ』青木あおき嵩山すせ堂どう（1891）
『黄金おうごん之の花はな』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1891）
『第だい二に帝国ていこく議会ぎかいノ一大いちだい要件ようけん』青木あおき嵩山すせ堂どう（1891）
『荒あらしのなこり』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1891）
『失策しっさく又また失策しっさく』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1892）
『南海なんかいの激浪げきろう』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1892）
『北きた征せい録ろく』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1893）
『東亜とうあ之の大勢おおぜい』訂てい2版はん、青木あおき嵩山すせ堂どう（1893）
『明治めいじ四よん十じゅう年ねんの日本にっぽん』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1893）
『大海おおうみ原げん』、春陽しゅんよう堂どう（1894）（「南洋なんよう之の大だい波乱はらん」と「荒あらしのなごり」の合本がっぽん）
『戦後せんごの日本にっぽん1、2、3』（村松むらまつ柳やなぎ江えと共著きょうちょ）、青木あおき嵩山すせ堂どう（1895 - 1897）
『雪ゆきの花園はなぞの』（村松むらまつ柳やなぎ江えと共著きょうちょ）、青木あおき嵩山すせ堂どう（1896）

1896年ねん12月歿

『鉄てつ腸ちょう叢書そうしょ』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1899）
『過去かこの政せい海うみ』第だい2版はん、青木あおき嵩山すせ堂どう（1900）
『落葉らくようのはき寄よせ』、青木あおき嵩山すせ堂どう（1900）（『新聞しんぶん経歴けいれき談だん』を収録しゅうろく）

著作ちょさくを所収しょしゅうする全集ぜんしゅう類るい

『雪ゆき中ちゅう梅うめ』、講談社こうだんしゃ日本にっぽん現代げんだい文学ぶんがく全集ぜんしゅう3（1965）
『雪ゆき中ちゅう梅うめ』『花はな間あいだ鶯うぐいす』『南洋なんようの大だい波瀾はらん』、筑摩書房ちくましょぼう明治めいじ文学ぶんがく全集ぜんしゅう6（1967）
『雪ゆき中ちゅう梅うめ』、日本にっぽん近代文学館きんだいぶんがくかん近代文学館きんだいぶんがくかん特選とくせん4（1971）（複製ふくせい）
『花はな間あいだ鶯うぐいす上うえ編へん緒言しょげん』、『訂正ていせい増補ぞうほ雪せつ中ちゅう梅うめ序じょ』、角川書店かどかわしょてん近代きんだい文学ぶんがく評論ひょうろん大系たいけい1（1971）
『雪ゆき中ちゅう梅うめ』、角川書店かどかわしょてん日本にっぽん近代きんだい文学ぶんがく大系たいけい2（1974）
『偽にせ民権みんけん論ろん』『王権おうけんノ用もちい方かた』『人爵じんしゃくハ天爵てんしゃくニ若わかカズ』、筑摩書房ちくましょぼう近代きんだい日本にっぽん思想しそう大系たいけい30（1976）
『唖おし之の旅行りょこう前まえ、後ご、続編ぞくへん』、ゆまに書房しょぼう明治めいじ欧米おうべい見聞けんぶん録ろく集成しゅうせい19（1987）
『北きた征せい録ろく』、ゆまに書房しょぼう明治めいじ北方ほっぽう調査ちょうさ探検たんけん記き集成しゅうせい3（1988）
『新聞しんぶん経歴けいれき談だん』、日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ明治めいじ文化ぶんか全集ぜんしゅう18（1992）
『雪ゆき中ちゅう梅うめ』、岩波いわなみ文庫ぶんこ第だい3刷さつ（1997）ISBN 9784003113714

出典しゅってん

小林こばやし智さとし賀が平たいら：『解題かいだい』（岩波いわなみ文庫ぶんこ版ばん『雪ゆき中ちゅう梅うめ』（1992）ISBN 9784003113714、p.8）
鵜飼うかい新一しんいち：『朝野ちょうや新聞しんぶんの研究けんきゅう』、みすず書房しょぼう（1985）ISBN 9784622020479
西田にしだ長寿ちょうじゅ：『日本にっぽんジャーナリズム史し研究けんきゅう』、みすず書房しょぼう（1989）ISBN 9784622037828

外部がいぶリンク

典拠てんきょ管理かんりデータベース
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