森もり敦あつし

森もり敦あつし
（もりあつし）
森もり敦あつし; （もりあつし）
誕生たんじょう	1912年ねん1月がつ22日にち; 日本にっぽん・長崎ながさき県けん長崎ながさき市し銀ぎん屋や町まち
死没しぼつ	1989年ねん7月がつ29日にち（77歳さい没ぼつ）; 日本にっぽん・東京とうきょう都と新宿しんじゅく区く河田こうだ町まち
墓地ぼち	光照寺こうしょうじ
職業しょくぎょう	小説しょうせつ家か
言語げんご	日本語にほんご
国籍こくせき	日本にっぽん
最終さいしゅう学歴がくれき	第一高等学校だいちこうとうがっこう中退ちゅうたい
活動かつどう期間きかん	1934年ねん - 1989年ねん
ジャンル	小説しょうせつ
代表だいひょう作さく	『月山がっさん』（1973年ねん）; 『鳥海山ちょうかいざん』（1974年ねん）; 『意味いみの変容へんよう』（1984年ねん）; 『われ逝ゆくもののごとく』（1987年ねん）
主おもな受賞じゅしょう歴れき	芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ賞しょう（1974年ねん）; 野間のま文芸ぶんげい賞しょう（1987年ねん）
デビュー作さく	『酩酊めいてい船せん』（1934年ねん）
	影響えいきょうを受うけたもの横光よこみつ利一としかず; 内村うちむら鑑三かんぞう; 菊池きくち寛ひろし; クルト・ゲーデル; フランツ・カフカ;
	影響えいきょうを与あたえたもの小島こじま信夫しのぶ; 柄え谷行たにいき人じん;
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森もり敦あつし（もりあつし、1912年ねん（明治めいじ45年ねん）1月がつ22日にち - 1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）7月がつ29日にち）は、日本にっぽんの小説しょうせつ家か。

来歴らいれき・人物じんぶつ

長崎ながさき市し（当時とうじの銀ぎん屋や町まち）出身しゅっしん。幼少ようしょう期きは朝鮮ちょうせん・京きょう城府じょうふ（今いまのソウル）で暮くらし、京きょう城中じょうちゅう学校がっこうに学まなぶ。1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）に旧制きゅうせい第一高等学校だいちこうとうがっこうに入学にゅうがくするも翌年よくねん退学たいがく。この頃ころ、菊池きくち寛ひろしに見出みいだされる。横光よこみつ利一としかずに師事しじし、その推薦すいせんにより1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）、22歳さいで東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん・大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶんに「酩酊めいてい舟ぶね〔よいどれぶね〕」を連載れんさい、事実じじつ上じょうの処女しょじょ作さくとなる^[1]。同年どうねん、太宰だざい治おさむ、檀だん一雄かずお、中原なかはら中也ちゅうや、中村なかむら地平じへいらと文芸ぶんげい同人どうじん誌し『青あおい花はな』の創刊そうかんに参加さんかしたが、作品さくひんの発表はっぴょうには至いたらず、奈良なら・東大寺とうだいじの瑜伽ゆが山さん（ゆかやま）に住すむ。1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）5月がつ、横光よこみつ利一としかず夫妻ふさいの媒酌ばいしゃくで前田まえだ暘〔よう〕と結婚けっこん。

1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）頃ごろから妻つまの故郷こきょうである山形やまがた県けん酒田さかた市しに住すみ、以後いご同どう県けん庄内しょうない地方ちほうを転々てんてんとする。1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）8月がつ下旬げじゅん、鶴岡つるおか市しにある真言宗しんごんしゅうの古刹こさつ・龍りゅう覚さとし寺てらの住職じゅうしょくの勧すすめで翌年よくねん春はるまで湯殿山ゆどのさん注連寺ちゅうれんじに滞在たいざいする。尾鷲おわせ（三重みえ）、弥彦やひこ（新潟にいがた）、大山おおやま（鶴岡つるおか）などを転々てんてんとした後のち、1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）以降いこうは東京とうきょう都内とないに居きょを構かまえる。印刷いんさつ会社かいしゃに勤務きんむの傍かたわら、同人どうじん誌し『ポリタイア』に「天上てんじょうの眺ながめ」その他たの短編たんぺんを発表はっぴょう。『季刊きかん芸術げいじゅつ』第だい26号ごう（1973年ねん7月がつ）に発表はっぴょうした中編ちゅうへん「月山がっさん」で、1974年ねんに第だい70回かい芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ賞しょう受賞じゅしょう^[1]。62歳さいでの受賞じゅしょうは、2013年ねんに黒田くろだ夏子なつこが75歳さいで受賞じゅしょうするまで39年ねんにわたって最さい高齢こうれい受賞じゅしょう記録きろくであった。

他たに『鳥海山ちょうかいざん』、『意味いみの変容へんよう』、第だい40回かい野間のま文芸ぶんげい賞しょう受賞じゅしょうの長編ちょうへん『われ逝ゆくもののごとく』などがある。なお、『意味いみの変容へんよう』は、『群像ぐんぞう』に連載れんさいされていたものを再編さいへんし筑摩書房ちくましょぼうから出版しゅっぱんされたもので、同おなじ時期じきに『群像ぐんぞう』に連載れんさいを持もっていた柄え谷行たにいき人じんの強つよい要望ようぼうによって出版しゅっぱんが実現じつげんした。柄え谷だには、日本にっぽん文学ぶんがく史上しじょう類例るいれいをみない奇跡きせき的てきな私小説ししょうせつであり、その評価ひょうかは非常ひじょうに高たかいと言いう（ちくま文庫ぶんこの解説かいせつには岩井いわい克人かつと、浅田あさだ彰あきら、中上なかがみ健次けんじ等ひとしも賛辞さんじを寄よせている）。数学すうがく者しゃの森もり毅あつしは、理系りけい的てきセンスを褒ほめた。また『森もり敦あつし全集ぜんしゅう』第だい2巻かん（筑摩書房ちくましょぼう）には先駆せんく稿こうを含ふくめ搭載とうさいされている。山形やまがた県けん旧きゅう朝日あさひ村むらの名誉めいよ村民そんみん（現げん鶴岡つるおか市し名誉めいよ市民しみん）。

森もり富子とみこははじめ文学ぶんがくの弟子でしで、のち養女ようじょとなり森もり夫妻ふさいの面倒めんどうを見みた。職業しょくぎょう作家さっかとしてのデビューはたいへんに遅おそかったが、手広てびろい交友こうゆう関係かんけいを持もち、また評価ひょうか者しゃも多おおかった。殊ことに小島こじま信夫しのぶとは1949年ねんころからの知しり合あいであり、作家さっかでシンガーソングライターの新井あらい満みつるは森もりによって見出みいだされた。小島こじまの大だい長編ちょうへん『別わかれる理由りゆう』は、作中さくちゅうに森もり敦あつしが登場とうじょうすることによって完結かんけつし、その後ご『群像ぐんぞう』で小島こじまと森もりは対談たいだんを連載れんさいした。小島こじまの証言しょうげんによれば、ありし日ひの文学ぶんがく同人どうじんらから「モリトン」と呼よばれていたという。

年譜ねんぷ

1912年ねん、長崎ながさき市し銀ぎん屋や町まちに生うまれる（本籍ほんせきは熊本くまもと県けん天草てんぐさ）。
1932年ねん、旧制きゅうせい一いち高だかを依願いがん退学たいがく。
1934年ねん、「酩酊めいてい船せん」（よいどれふね）を「東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん」「大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶん」に連載れんさいして文壇ぶんだんに登場とうじょう。
1934年ねん、「青あおい花はな」（文芸ぶんげい同人どうじん誌し）に参加さんか。1935年ねんより、奈良なら市し、松本まつもと市しを放浪ほうろう。
1941年ねん、横光よこみつ利一としかず夫妻ふさいの媒酌ばいしゃくにより前田まえだ暘〔よう〕と結婚けっこん。
1945年ねん、この頃ころより酒田さかた市し、弥彦やひこ村むら、吹浦ふくら村むら、山形やまがた県けん庄内しょうない地方ちほう、尾鷲おわせ市しなどを放浪ほうろうする。
1951年ねん、8月がつ下旬げじゅんから翌年よくねん春はるまで真言宗しんごんしゅうの古刹こさつ：湯殿山ゆどのさん注連寺ちゅうれんじに滞在たいざい。
1974年ねん、『月山がっさん』で第だい70回かい芥川賞あくたがわしょう（昭和しょうわ48年ねん下半期しもはんき）を受賞じゅしょう。
1987年ねん、『われ逝ゆくもののごとく』で第だい40回かい野間のま文芸ぶんげい賞しょうを受賞じゅしょう。
1989年ねん7月がつ29日にち、新宿しんじゅく区く市谷いちたにの自宅じたくで意識いしきを失うしない、東京女子医科大学とうきょうじょしいかだいがく病院びょういんへ搬送はんそうされたが、午後ごご5時じ43分ふんに腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃく瘤こぶ破裂はれつによる急性きゅうせい心不全しんふぜんのため死去しきょ（享年きょうねん77歳さい）^[2]。戒名かいみょうは雲くも月がつ院いん敦あつし誉ほまれ正覚しょうがく文ぶん哲あきら居士こじ^[3]^[4]。旧きゅう朝日あさひ村むら名誉めいよ村民そんみん（現げん：鶴岡つるおか市し名誉めいよ市民しみん）となる。

著書ちょしょ

『月山がっさん』（河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1974年ねん）、新版しんぱん再刊さいかん
『鳥海山ちょうかいざん』（河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1974年ねん）→「月山がっさん・鳥海山ちょうかいざん」（文春ぶんしゅん文庫ぶんこ、1979年ねん、改版かいはん2017年ねん）
『文壇ぶんだん意外いがい史し』（朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1974年ねん）→「星霜せいそう移うつり人じんは去さる　わが青春せいしゅん放浪ほうろう」（角川かどかわ文庫ぶんこ、1979年ねん）
『私家版しかばん聊齋志こころざし異こと』（潮出版社うしおしゅっぱんしゃ、1979年ねん）→（小学館しょうがくかん、2018年ねん）
『わが青春せいしゅんわが放浪ほうろう』（福武書店ふくたけしょてん、1982年ねん）→（福武ふくたけ文庫ぶんこ、1986年ねん）→（小学館しょうがくかん、2017年ねん）
『わが風土記ふどき』（福武書店ふくたけしょてん、1982年ねん）
『意味いみの変容へんよう』（筑摩書房ちくましょぼう、1984年ねん）→（ちくま文庫ぶんこ、1991年ねん）→「意味いみの変容へんよう・マンダラ紀行きこう」（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、2012年ねん）
『月山がっさん抄しょう』（河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1985年ねん）
『マンダラ紀行きこう』（筑摩書房ちくましょぼう、1986年ねん）→（ちくま文庫ぶんこ、1989年ねん）
『われ逝ゆくもののごとく』（講談社こうだんしゃ、1987年ねん）→（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、1991年ねん）
『十じゅう二に夜や　月山つきやま注連寺ちゅうれんじにて』（実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ、1987年ねん）
『われもまた　おくのほそ道みち』（日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、1988年ねん）→（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、1999年ねん）
『浄土じょうど』（講談社こうだんしゃ、1989年ねん）→（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、1996年ねん）、短篇たんぺん集しゅう
『わが人生じんせいの旅たび上じょう天てんの遊あそび』『― 下した百ひゃく里さとを行いく者もの』（弘ひろ済ずみ出版しゅっぱん社しゃ、1990年ねん）
『天てんに送おくる手紙てがみ』（小学館しょうがくかん、1990年ねん）→（小学館しょうがくかんライブラリー、1996年ねん）
『酩酊めいてい船せん　森もり敦あつし初期しょき作品さくひん集しゅう』（筑摩書房ちくましょぼう、1990年ねん）→（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、2008年ねん）
『森もり敦あつし全集ぜんしゅう』全ぜん8巻かん、別巻べっかん1（筑摩書房ちくましょぼう、1993-1995年ねん）

1-6は作品さくひん、7・8はエッセイ、別巻べっかんは書簡しょかん・書誌しょし・年譜ねんぷ

共著きょうちょ・対談たいだん集しゅう

『浦島うらしま太郎たろうの人間にんげん探検たんけん記き』（青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃ、1975年ねん）
『森もり敦あつしのおかっぱ愛情あいじょう学がく　どう愛あいし、どう生いきるか』^[5]（主婦しゅふと生活社せいかつしゃ、1975年ねん）
『一いち即そく一切いっさい、一切いっさい即そく一いち　『われ逝ゆくもののごとく』をめぐって』（法蔵館ほうぞうかん、1988年ねん）
小島こじま信夫しのぶ『対談たいだん・文学ぶんがくと人生じんせい』（講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ、2006年ねん）

翻訳ほんやく

尾崎おざき紅葉こうよう『金色きんいろ夜叉やしゃ』現代げんだい語ご訳やく『明治めいじの古典こてん』学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ、1982年ねん
ドナルド・T・ローデン『友ともの憂うれいに吾われは泣なく旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう物語ものがたり』監訳かんやく（上下じょうげ、講談社こうだんしゃ、1983年ねん）
洪ひろし思おもえ重じゅう『韓国かんこく人じんの美意識びいしき』監訳かんやく（三修社さんしゅうしゃ、1984年ねん）

脚注きゃくちゅう

^ ^a ^b “森もり敦あつし｜人物じんぶつ”. NHKアーカイブス. NHK. 2023年ねん10月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ 「作家さっか・森もり敦あつしさん死去しきょ」読売新聞よみうりしんぶん 1989年ねん 7月がつ30日にち朝刊ちょうかん31面めん
^ 大塚おおつか英えい良りょう『文学ぶんがく者しゃ掃苔録ろく図書館としょかん』（原はら書房しょぼう、2015年ねん）234頁ぺーじ
^ 岩井いわい寛ひろし『作家さっかの臨終りんじゅう・墓碑ぼひ事典じてん』（東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、1997年ねん）327頁ぺーじ
^ 毎日新聞社まいにちしんぶんしゃの週刊しゅうかん誌し「サンデさんでー毎日まいにち」に連載れんさい対談たいだんをもっていた

外部がいぶリンク

Scholiaには森もり敦あつし (Q11539718)に関かんするプロフィールがあります。

[:0-1] “森もり敦あつし｜人物じんぶつ”. NHKアーカイブス. NHK. 2023年ねん10月がつ30日にち閲覧えつらん。

[2] 「作家さっか・森もり敦あつしさん死去しきょ」読売新聞よみうりしんぶん 1989年ねん 7月がつ30日にち朝刊ちょうかん31面めん

[3] 大塚おおつか英えい良りょう『文学ぶんがく者しゃ掃苔録ろく図書館としょかん』（原はら書房しょぼう、2015年ねん）234頁ぺーじ

[4] 岩井いわい寛ひろし『作家さっかの臨終りんじゅう・墓碑ぼひ事典じてん』（東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、1997年ねん）327頁ぺーじ

[5] 毎日新聞社まいにちしんぶんしゃの週刊しゅうかん誌し「サンデさんでー毎日まいにち」に連載れんさい対談たいだんをもっていた

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