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氷河ひょうが

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

氷河ひょうが(ひょうが、えい: glacier)は、山地さんちでは重力じゅうりょく平坦へいたん大陸たいりくではこおりおもさによる圧力あつりょくによって塑性そせい流動りゅうどうする、巨大きょだいこおりかたまりである。

概要がいよう

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スイスアルプス氷河ひょうが
モレーンこくせん)が氷上ひかみにみられる
ノルウェーブリックスダール氷河ひょうが
氷河ひょうが周囲しゅういには氷河ひょうがみずうみ形成けいせいされる場合ばあいがある。アイスランドヨークルスアゥルロゥンみずうみ

氷河ひょうがは、やまがちな、または傾斜けいしゃした地形ちけいに、複数ふくすうねんにわたってこおりゆき堆積たいせきし、万年雪まんねんゆき圧縮あっしゅくされることでできる。下部かぶには過去かここおりにできたものがけずにのこっている場合ばあいもある。氷河ひょうが侵食しんしょく堆積たいせき活発かっぱつおこない、独特どくとく氷河ひょうが地形ちけいむ。

地球ちきゅう気温きおん氷河ひょうが密接みっせつ関係かんけいがあり、うみすすむうみ退すさ原因げんいんとなる。現在げんざい陸上りくじょうられる氷河ひょうがは、南極なんきょくこおりゆかグリーンランドこおりゆか最大さいだいきゅうとして、総計そうけい1,633まん km2および、陸地りくち面積めんせきやく11%おおう。

近年きんねん地球ちきゅう温暖おんだん影響えいきょうでその面積めんせきあつさの減少げんしょうはげしく、問題もんだいとなっている(氷河ひょうが融解ゆうかい参照さんしょう)。

氷河ひょうが分類ぶんるい

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氷河ひょうがには発達はったつ地域ちいきによる2種類しゅるい形態けいたいがあることがられている。ひとつは山岳さんがく形成けいせいされる山岳さんがく氷河ひょうがである。もうひとつはおも南極大陸なんきょくたいりくとグリーンランドの広大こうだい面積めんせきおお大陸たいりく氷河ひょうがである。

山岳さんがく氷河ひょうが温度おんどいちねんとおして、表面ひょうめんから底部ていぶまでこおり融点ゆうてん付近ふきんにあることがられている。一方いっぽう極地きょくち氷河ひょうがみずはげしい昇華しょうか冷却れいきゃくにより、つね氷点下ひょうてんかにあり融解ゆうかいすることがない。極地きょくち氷河ひょうが表面ひょうめんぶしにより融点ゆうてん付近ふきんたっし、けたみずがいくらか氷河ひょうが内部ないぶながむが、氷河ひょうが底部ていぶつね融点ゆうてん以下いかである。

氷河ひょうが温度おんど表面ひょうめん状態じょうたい見分みわけることができる。氷河ひょうが本体ほんたい表面ひょうめんている場合ばあい融解ゆうかいしつつあり、かわいたゆきによっておおわれている場合ばあいはたとえなつでも融解ゆうかいしないとされている。融解ゆうかいしたみず表面ひょうめんまっていたり、ながんでいるような場合ばあいは、内部ないぶ表面ひょうめんさい凍結とうけつしてできた氷塊ひょうかいこおりそう存在そんざいする。湿しめったゆきがある場合ばあいにおいては、氷点ひょうてん以上いじょう気温きおん上昇じょうしょうした最後さいごなつからのゆきがすべて堆積たいせきしている。こおりかさなりっている場合ばあい融解ゆうかいしたみず氷河ひょうがなかつめたいそうのところでさい凍結とうけつし、氷河ひょうがになるこおり形成けいせいされつつある場面ばめんであるといえる。

氷河ひょうがなかもっと小規模しょうきぼなものは山岳さんがく地帯ちたい谷間たにま存在そんざいすることから、たに氷河ひょうが(valley glaciers)とばれる。日本にっぽん現存げんそんする氷河ひょうがは、すべてこのたに氷河ひょうがである。それよりすこおおきな規模きぼのものは、こおりぼうからなが流出りゅうしゅつ氷河ひょうが(outlet glaciers)とばれる。こおりぼうやま頂上ちょうじょうにあるゆきかたまりで、山脈さんみゃく存在そんざいすることおおいが、現在げんざい活動かつどうしていない火山かざんうえにも存在そんざいする場合ばあいもある。こおりぼうからこおりしたのようになって谷間たにまながことによって、流出りゅうしゅつ氷河ひょうが形成けいせいする。この流出りゅうしゅつ氷河ひょうが自体じたいは、氷河ひょうが全体ぜんたい規模きぼからればまだまだ小規模しょうきぼなものにぎない。極冠きょっかん巨大きょだい山脈さんみゃくこおりぼうから形成けいせいされた流出りゅうしゅつ氷河ひょうがは、うみにまでたっすることがある。

氷河ひょうがなかもっとだい規模きぼなものはこおりゆかである。こおりゆか地表ちひょうめんのほぼすべてをおおかくすほどの規模きぼであるが、現在げんざいでは南極大陸なんきょくたいりくとグリーンランドだけに存在そんざいする。これらの地域ちいきこおりゆか存在そんざいするために、かりにグリーンランドのこおりゆか融解ゆうかいした場合ばあいには6m、南極なんきょくのそれが融解ゆうかいすると65m、海面かいめん上昇じょうしょうするとされているほどの、膨大ぼうだい水分すいぶんこおりとしてたくわえられている。

氷原ひょうげんこおりゆかているが、こおりゆかくらべるとあつさや面積めんせきちいさい。大陸たいりく氷河ひょうが標高ひょうこうたか平原へいげん存在そんざいする。このタイプの氷河ひょうが多数たすうあり、アイスランド北極ほっきょくかい島々しまじまブリティッシュコロンビアしゅう南部なんぶきた太平洋たいへいよう山脈さんみゃくからアラスカにかけての地域ちいきなどに存在そんざいしている。

カービング氷河ひょうが(calving glacier)は、末端まったんうみまたはみずうみながんでいる氷河ひょうがである。うみ/みずうみ到達とうたつした氷河ひょうがでは、くずちるか、あるいは分離ぶんりして氷山ひょうざん形成けいせいする。この過程かてい氷山ひょうざん分離ぶんりカービング)という。アラスカもっとながいカービング氷河ひょうがであるフバード氷河ひょうが(en:Hubbard Glacier)は、10kmもの距離きょりわたってうみめんしている。ヤクタットわん氷河ひょうがわんには、たかさ30mもの氷河ひょうがくずちる光景こうけいることができるために、観光かんこうスポットとして活用かつようされている。このタイプの氷河ひょうがは、気候きこう変動へんどうくわえ、うみ/みずうみ環境かんきょう変化へんか影響えいきょうけるため、ほかのタイプの氷河ひょうがよりも複雑ふくざつ変動へんどうしめす。

氷河ひょうが形成けいせい過程かてい

氷河ひょうが形成けいせい

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比較的ひかくてき温度おんどたか氷河ひょうがは、融解ゆうかい凍結とうけつかえしてざらざらしたネヴェ(névé)とばれるゆき主成分しゅせいぶんとする。このゆきはざらめゆきばれる。この氷河ひょうがこおりは、こおりゆきそうした圧力あつりょく融解ゆうかいし、フィルンというこおりつぶ変化へんかする。フィルンのそう一定いってい年月としつきると、さらに圧縮あっしゅくされて氷河ひょうがこおり(glacial ice)となる。また、ゆき温度おんど変化へんかのあるところにあると、数時間すうじかんでそれぞれの表面ひょうめん凹凸おうとつのある結晶けっしょう変性へんせいはじめる(蒸気じょうきあつによる現象げんしょうとはことなる)。

世界せかい氷河ひょうが

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日本にっぽん

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鹿島槍ヶ岳かしまやりがだけからのぞ剱岳さんまど氷河ひょうがしょうまど氷河ひょうが

かつて日本にっぽん氷河ひょうが存在そんざいしないとされていたが、1999ねん立山たてやま内蔵助くらのすけカールない永久えいきゅう凍土とうど発見はっけんされたこと報告ほうこくされ[1]すう年間ねんかん調査ちょうさ流動りゅうどう[2]維持いじ継続けいぞく確認かくにんされた[3]ことで、2012ねん4がつ日本にっぽん雪氷せっぴょう学会がっかい剱岳さんまど雪渓せっけいしょうまど雪渓せっけい立山たてやま前沢まえさわ雪渓せっけい氷河ひょうが現存げんそんしている可能かのうせい報告ほうこくした[4]。その、2012ねん6がつにそれぞれ「さんまど氷河ひょうが」「しょうまど氷河ひょうが」「前沢まえさわ氷河ひょうが」を呼称こしょうとすることで同意どういした[5]。これにより、カムチャツカ半島はんとうとされていた極東きょくとう氷河ひょうが南限なんげん日本にっぽん富山とやまけん立山たてやま連峰れんぽうとなった。

2018ねん1がつには、長野ながのけん富山とやまけんにまたがるきたアルプス(飛騨山脈ひださんみゃく)の一部いちぶである鹿島槍ヶ岳かしまやりがだけのカクネさと雪渓せっけい長野ながのけん大町おおまち)が氷河ひょうがであることが、現地げんち調査ちょうさ結果けっかをまとめた論文ろんぶん複数ふくすう研究けんきゅうしゃ審査しんさのち学会がっかい地理ちりがく評論ひょうろん』(2018ねん1がつごう[6]掲載けいさいされたことで確定かくてい。カクネさと雪渓せっけい日本にっぽんでは4れいとなる氷河ひょうがとなった[7]。この論文ろんぶんをまとめた調査ちょうさだんは、富山とやまけん上市うわいちまち位置いちする剱岳の池ノ谷いけのたに(いけのたん)雪渓せっけいと、立山たてやままちにある立山たてやま内蔵助くらのすけ(くらのすけ)雪渓せっけい氷河ひょうが判断はんだんしており[8]、2019ねん氷河ひょうが確認かくにんされた唐松岳からまつだけから松沢まつざわ雪渓せっけい長野ながのけん白馬はくばむら)もわせると、2019ねん時点じてん日本にっぽん国内こくない氷河ひょうが最大さいだい7カ所かしょとなる[9]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 福井ふくい幸太郎こうたろう岩田いわた修二しゅうじ ,「立山たてやま,内蔵助くらのすけカールでの永久えいきゅう凍土とうど発見はっけん」『雪氷せっぴょう』 62かん 1ごう 2000ねん1がつ p.23-28, 日本にっぽん雪氷せっぴょう学会がっかい, doi:10.5331/seppyo.62.23, NAID 10004644350
  2. ^ 福井ふくい幸太郎こうたろう,「立山たてやま,内蔵助くらのすけカールのプロテーラスランパートでの永久えいきゅう凍土とうど調査ちょうさ地表ちひょうめん移動いどうりょう観測かんそく」『地学ちがく雑誌ざっし』 2002ねん 111かん 4ごう p.564-573, 東京とうきょう地学ちがく協会きょうかい, doi:10.5026/jgeography.111.4_564, NAID 10009483171
  3. ^ 福井ふくい幸太郎こうたろう, 「立山たてやまでの山岳さんがく永久えいきゅう凍土とうど形成けいせい維持いじ機構きこう」『雪氷せっぴょう』 2004ねん 66かん 2ごう p.187-195, 日本にっぽん雪氷せっぴょう学会がっかい, doi:10.5331/seppyo.66.187, NAID 10012918958
  4. ^ 福井ふくい幸太郎こうたろう飯田いいだはじめ飛騨ひだ山脈さんみゃく, 立山たてやま・剱山いきの3つの多年たねんせい雪渓せっけいこおりあつ流動りゅうどう : 日本にっぽん現存げんそんする氷河ひょうが可能かのうせいについて」『雪氷せっぴょうだい74かんだい3ごう、2012ねん、213-222ぺーじNAID 100307431752020ねん4がつ23にち閲覧えつらん 
  5. ^ 白岩しらいわ孝行たかゆき内藤ないとうのぞむ飯田いいだはじめ福井ふくい幸太郎こうたろう氷河ひょうが情報じょうほうセンター公開こうかいシンポジウム報告ほうこく日本にっぽん多年たねんせい雪渓せっけい氷河ひょうが─これまでの研究けんきゅう今後こんご展望てんぼう─」雪氷せっぴょう』 Vol.74 (2012) No.5 p.353-357, NAID 10031060255
  6. ^ 福井ふくい幸太郎こうたろう飯田いいだはじめ小坂こさか共栄きょうえい飛騨ひだ山脈さんみゃくあらたに見出みいだされた現存げんそん氷河ひょうがとその特性とくせい」『地理ちりがく評論ひょうろんだい91かんだい1ごう、2018ねん、43-61ぺーじdoi:10.4157/grj.91.43 
  7. ^ きたア・カクネさと雪渓せっけいは「氷河ひょうが県内けんないはつ確認かくにん 国内こくない4れい しんじまいweb 2018ねん1がつ17にち
  8. ^ きたアの氷河ひょうが、6カ所かしょに=富山とやま長野ながの確認かくにんしんだいなど時事通信じじつうしん(2018ねん1がつ18にち)2018ねん1がつ19にち閲覧えつらん
  9. ^ 国内こくない7カ所かしょ氷河ひょうが確認かくにん きたアルプス、から松沢まつざわ雪渓せっけい」『産経新聞さんけいしんぶん』2019ねん10がつ4にちオリジナルの2019ねん10がつ6にち時点じてんにおけるアーカイブ。2022ねん9がつ5にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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