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無理むりすう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

無理むりすう(むりすう、 えい: irrational number)とは、有理数ゆうりすうではない実数じっすう、つまり整数せいすうえい: ratio)(分数ぶんすう)であらわすことのできない実数じっすうのことである。実数じっすう可算かさん有理数ゆうりすう可算かさんであるから、無理むりすう可算かさんあり、ほとんどすべての実数じっすう無理むりすうである。

無理むりすうというかたりは、なにかが「無理むりであるかず」という意味いみれるため、語義ごぎてきに「無比むひすう」とやくすべきだったという意見いけんもある[1][2][3]有理数ゆうりすう#用語ようご由来ゆらい参照さんしょう)。

2無理むりすうである。

無理むりすうれい

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以下いか実数じっすう無理むりすうである。

無理むりすう判定はんていほう

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任意にんいεいぷしろん > 0たいして不等式ふとうしき

有理数ゆうりすうかい p/qつとき、αあるふぁ無理むりすうである。おおくの無理むりせい証明しょうめいはこれをもちいている。これは αあるふぁ無理むりすうであるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんでもある。

性質せいしつ

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無理むりすうじゅうしん小数しょうすう表記ひょうきすると、かえしのない無限むげん小数しょうすう循環じゅんかん小数しょうすう)になる。これは記数きすうほうそこによらず一般いっぱんN すすむ小数しょうすうでもつ。

αあるふぁ無理むりすうとすると、

たす無限むげんおおくの有理数ゆうりすう p/q存在そんざいする(ディリクレの定理ていり)。なお、このように無理むりすう有理数ゆうりすうによる近似きんじあつか理論りろんディオファントス近似きんじばれるかずろん分野ぶんやぞくする。

無理むりすう全体ぜんたい空間くうかん完備かんびとするような距離きょり存在そんざいする。またA-演算えんざん自然しぜん応用おうようできるれいでもあり、この空間くうかんてん集合しゅうごうろんてきトポロジーでは重要じゅうよう対象たいしょうである。

代数だいすうてき無理むりすう超越ちょうえつすう

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無理むりすうのうち、代数だいすうてきすうであるものを代数だいすうてき無理むりすう、そうでないものを超越ちょうえつすうという。

αあるふぁ代数だいすうてきすうκかっぱ > 2 ならば、

たす有理数ゆうりすう p/q有限ゆうげんしかない(トゥエ-ジーゲル-ロスの定理ていり[5]。このことは不定ふてい方程式ほうていしきかい有限ゆうげんせいしめすときに使つかわれる。

2の平方根へいほうこん代数だいすうてき無理むりすうであり、log2 3, e, πぱい, eπぱい といったかず超越ちょうえつすうである。ζぜーた(3) が超越ちょうえつすうであるかかはいまだに解決かいけつされていない。

無理むりすう

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かず αあるふぁたいして

たす有理数ゆうりすう p/q有限ゆうげんしかない、という性質せいしつたす κかっぱ下限かげんαあるふぁ無理むりすう (えい: irrationality measure) という。

有理数ゆうりすう無理むりすうは 1, ディリクレの定理ていりおよびロスの定理ていりより代数だいすうてき無理むりすう無理むりすうは 2, リウヴィルすう無理むりすうは ∞ である。ディリクレの定理ていりより無理むりすう無理むりすうすべて 2 以上いじょうである。e無理むりすうは 2 であることがられている。また、πぱい無理むりすう上限じょうげんは7.103程度ていどであることがわかっている[6]

ルベーグ測度そくどかんしてほとんどすべてのかず無理むりすうは 2 である。

歴史れきし

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無理むりすう発見はっけん古代こだいギリシア文明ぶんめいにまでさかのぼる。一説いっせつでは、無理むりすう発見はっけんしゃ古代こだいギリシャの大数たいすう学者がくしゃピタゴラス弟子でしであったヒッパソスという人物じんぶつであった。ヒッパソスは正方形せいほうけい研究けんきゅうをしているうち、そのあたり対角線たいかくせんながさの整数せいすうでも分数ぶんすうでもあらわせない未知みちかず、すなわち理数りすうであることを発見はっけんしたという。

かれ師匠ししょうのピタゴラスは、宇宙うちゅう万物ばんぶつかずからつこと、そして宇宙うちゅう構成こうせいするかずは、調和ちょうわしたたもっているとしんじていた。ピタゴラスと教団きょうだん教義きょうぎ反証はんしょうである無理むりすう存在そんざいする事実じじつ動揺どうようし、不都合ふつごう事実じじつかくすため、発見はっけんしゃのヒッパソスをしばりあげ、ふねからうみとして殺害さつがいしたという伝承でんしょうのこっている。

しかし、プラトンあらわれると、かれ著書ちょしょ『テアイテトス』のなか平方へいほうすうでないかず平方根へいほうこん有理数ゆうりすうでないことをろんじ、さらにおな論法ろんぽう立方根りっぽうこんにも適用てきようできるとべている。これらの数学すうがくてき蓄積ちくせきけて、エウクレイデスは『原論げんろん』のなか統一とういつしたかたち実数じっすうろん展開てんかいしている。

円周えんしゅうえん直径ちょっけいの3ばいよりすこおおきいことは古来こらいられていた。古代こだいインドやギリシアの数学すうがくしゃたちのあいだでは半径はんけい rえん面積めんせき円周えんしゅうりつ πぱい使つかって πぱいr2 であることもられ、アルキメデス半径はんけい rたま体積たいせき4/3πぱいr3 であることや、このたま表面積ひょうめんせきが 4πぱいr2 (そのたま大円だいえん面積めんせきの4ばい)であることをしめしていた。円周えんしゅうりつ πぱい無理むりすうであることはすでにアリストテレスによって予想よそうされていたが、実際じっさい証明しょうめいされたのはそれよりはるかに時代じだいのことである(ヨハン・ハインリヒ・ランベルト)。

自然しぜん対数たいすうそこであるネイピアすう e は、1618ねんジョン・ネイピア発表はっぴょうした対数たいすう研究けんきゅう付録ふろくひょうにその端緒たんしょがあるが、定性的ていせいてき研究けんきゅうしたのはレオンハルト・オイラーである。

1872ねんリヒャルト・デデキントは『連続れんぞくせい無理むりすう』を出版しゅっぱんし、デデキント切断せつだんもちいて無理むりすう定義ていぎした。

リーマンゼータ関数かんすう特殊とくしゅ ζぜーた(3) は、アペリーによって1979ねん無理むりすうであることが証明しょうめいされた(アペリーの定数ていすう)。πぱい + eπぱい は、ネステレンコ英語えいごばんによって無理むりすうであることが証明しょうめいされた。

解決かいけつ問題もんだい

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オイラーの定数ていすう(オイラー・マスケローニ定数ていすうγがんまπぱい+eeπぱい、その P (e, πぱい)かたちであらわされるかず(ここで P (x, y) は、x, y 双方そうほうについて次数じすうが 1 以上いじょう多項式たこうしきあらわす)はいずれも、有理数ゆうりすうであるか無理むりすうであるかられていない。

また、eeπぱいeπぱいπぱい、といったかずもやはり、有理数ゆうりすうであるか無理むりすうであるかられていない。ただし、上記じょうき #無理むりすうれいげたとおり、eπぱい無理むりすうであることがすでられている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 堀場ほりばかおるすう無理むりすう不思議ふしぎ講談社こうだんしゃ、1993ねん ISBN 978-4061329782
  2. ^ 吉田よしだたけしオイラー贈物おくりもの 人類じんるい至宝しほうeiπぱい=-1まなぶ』東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい、2010ねん ISBN 978-4486018636
  3. ^ 吉田よしだたけし虚数きょすう情緒じょうちょ 中学生ちゅうがくせいからのぜん方位ほうい独学どくがくほう東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい、2000ねん ISBN 978-4486014850
  4. ^ Niven 2005, p. 21.
  5. ^ ピーター・フランクル『ピーターフランクルの中学生ちゅうがくせいでもかる大学生だいがくせいにもけない数学すうがく問題もんだいしゅう1』日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、2001ねん、10ぺーじISBN 4-535-78262-8 
  6. ^ Irrationality Measure, https://mathworld.wolfram.com/IrrationalityMeasure.html 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 塩川しおかわ宇賢:『無理むりすう超越ちょうえつすう森北もりきた出版しゅっぱんISBN 978-4627060913、(1999ねん)。
  • デーデキントかずについて 連続れんぞくせいかず本質ほんしつ河野こうの伊三郎いさぶろうやく岩波書店いわなみしょてんISBN 4-00-339241-8、(1961ねん)。
  • W. M. Schmidt, "Diophantine Approximations", Lecture Notes in Math. 785, Springer-Verlag, 1980.
  • W. M. Schmidt, "Diophantine approximations and diophantine equations", Lecture Notes in Math. 1467. Springer-Verlag, 1991.
  • R. Apéry, "Irrationalité de ζぜーた(2) et ζぜーた(3)", Astérisque 61(1979), 11-13.
  • A. van der Poorten, "A Proof that Euler Missed... Apéry's Proof of the Irrationality of ζぜーた(3)", Math. Intel. 1 (1979), 196-203.
  • ジュリアン・ハヴィル、松浦まつうら俊輔しゅんすけわけ):「無理むりすうはなし √2の発見はっけんから超越ちょうえつすうなぞまで」青土おうづちしゃISBN 978-4791766758、(2012ねん10がつ24にち)。
  • 西岡にしおか久美子くみこ:「超越ちょうえつすうとはなにか 代数だいすう方程式ほうていしきかいにならないかずたちのはなし講談社こうだんしゃ(ブルーバックス)ISBN 978-4062579117(2015ねん4がつ21にち)。
  • I. Niven (2005). Irrational Numbers. The Mathematical Association of America. ISBN 0-88385-038-9 

関連かんれん文献ぶんけん

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  • 高木たかぎ貞治さだはる、1904「だいきゅうしょう 無理むりすう」『新式しんしき算術さんじゅつ講義こうぎ

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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