発電はつでんしょ

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英国えいこくダービーシャーにあるRatcliffe Power Plant(2006ねん3がつ

発電はつでんしょ(はつでんしょ)は発電はつでん設備せつびそなえ、発電はつでんおも目的もくてきおこな施設しせつである。

発電はつでんしょは、電力でんりょくつくるための発電はつでん装置そうちとこれに関連かんれんする設備せつび、および電気でんき消費しょうひがわ送出そうしゅつする送電そうでん設備せつび、そして運用うんよう管理かんりおこな人的じんてき組織そしきから構成こうせいされる。

電力でんりょく会社かいしゃのような企業きぎょうからだ公共こうきょう電力でんりょく供給きょうきゅうよう発電はつでんおこな施設しせつ場合ばあいおおいが、一部いちぶには製鉄せいてつしょショッピングセンターのような自家じか消費しょうひおも目的もくてきとする私的してき発電はつでん施設しせつ発電はつでんしょである。風力ふうりょく発電はつでんとう発電はつでんしょであるが、一般いっぱんには「風力ふうりょく発電はつでん風車かざぐるま」とばれることがおおく、発電はつでんしょとはばれない傾向けいこうがある。

考慮こうりょてん[編集へんしゅう]

立地りっち[編集へんしゅう]

発電はつでん方法ほうほうによって発電はつでんしょ立地りっち様々さまざまである。みず位置いちエネルギー使つか水力すいりょく発電はつでんだけでなく、火力かりょく発電はつでん原子力げんしりょく発電はつでんでも大量たいりょう冷却れいきゃくみず必要ひつようとすることから、河川かせんうみちかくにもうけられることがおおい。また、電力でんりょく消費しょうひちか電力でんりょく系統けいとうにも容易よういめることがもとめられる。居住きょじゅうしゃ自然しぜん生態せいたいけい保護ほごといった周辺しゅうへん環境かんきょうたいする配慮はいりょかせない。極端きょくたん奥地おくちでは建設けんせつ資材しざい設備せつび装置そうち搬入はんにゅう考慮こうりょされる。

冗長じょうちょうせい[編集へんしゅう]

停電ていでんなど電力でんりょく供給きょうきゅうのトラブルをけるための信頼しんらいせい設計せっけいとして、発電はつでん所内しょない設備せつび複数ふくすうそなえて冗長じょうちょうせいたせ、さらには送電そうでんもう全体ぜんたい信頼しんらいせい向上こうじょうさせるために、複数ふくすう発電はつでんしょからの電力でんりょく並列へいれつ電力でんりょくもう接続せつぞくし、需要じゅようたいして余裕よゆうって電力でんりょく供給きょうきゅうされる。発電はつでんしょ送電そうでんもう一部いちぶ不具合ふぐあい発生はっせいしても供給きょうきゅう電圧でんあつ影響えいきょうないよう、予備よび発電はつでん能力のうりょく送電そうでんせん許容きょよう容量ようりょう見極みきわめた危機きき管理かんり体制たいせいられている。

エネルギーげん[編集へんしゅう]

だい規模きぼ発電はつでん使用しようされているエネルギーみなもとには以下いかのようなものがある。

  1. 石油せきゆ石炭せきたん天然てんねんガスなどの化石かせき燃料ねんりょうのエネルギー
  2. ウランみなもととする放射ほうしゃせい物質ぶっしつかくエネルギー
  3. 河川かせんみずうみぬまなどの降水こうすいみなもととするみず位置いちエネルギー
  4. 太陽光たいようこう風力ふうりょくうしおつとむ地熱じねつバイオマス、そののエネルギー

3と4はわせて「再生さいせい可能かのうエネルギー」とばれる。「自然しぜんエネルギー」という用語ようごは、核分裂かくぶんれつ反応はんのう燃焼ねんしょうなどの化学かがく反応はんのうともなわず、そのまま利用りようできるものだけをしめ場合ばあいと、自然しぜんかい存在そんざいするエネルギーという意味いみで1から4までのすべてをふく場合ばあいがある。1は20世紀せいきまつから現在げんざいも、ちか未来みらい枯渇こかつすることが世界せかいてき問題もんだいとなっており、4にぞくするあらたな自然しぜんエネルギーや2の核分裂かくぶんれつエネルギーの安全あんぜん利用りようが21世紀せいき初頭しょとう現在げんざいもとめられており、長期ちょうきてきには4にちかかく融合ゆうごうエネルギー技術ぎじゅつ開発かいはつ模索もさくされている。1の化石かせき燃料ねんりょうによるガスタービン発電はつでんのぞけば、1と2による発電はつでんおおくがボイラー高温こうおんだかあつ蒸気じょうきつくってタービンまわす、「汽力発電はつでん」である。ガスタービン発電はつでんディーゼル発電はつでん内燃ないねん機関きかんであり、「内燃ないねんりょく発電はつでん」とばれる。汽力発電はつでんうちでも1の化石かせき燃料ねんりょうやすものと、やはり化石かせき燃料ねんりょうやすすべての内燃ないねんりょく発電はつでんは、わせて「火力かりょく発電はつでん」とばれる。2のウランやウランからまれるプルトニウム核分裂かくぶんれつしょうじるかくエネルギーを使つかうものは、原子力げんしりょく発電はつでんばれ、化石かせき燃料ねんりょうやすものとはべつの汽力発電はつでんである。1から4までふくめてほとんどが、放射ほうしゃせい物質ぶっしつ核分裂かくぶんれつエネルギーまたは太陽たいようかく融合ゆうごうエネルギー由来ゆらいであり、かくエネルギーと無縁むえんなのは天体てんたい公転こうてん自転じてんエネルギーが由来ゆらいしおりょく発電はつでんくらいしかない。現在げんざい放射能ほうしゃのう問題もんだいになるのは原子力げんしりょく発電はつでんのみだが、将来しょうらいてきには、たとえ再生さいせい可能かのうエネルギーであっても宇宙うちゅう空間くうかんでの太陽光たいようこう発電はつでんなどでは放射線ほうしゃせん問題もんだいになる。

4の分類ぶんるいには幾分いくぶん雑多ざったなものがふくまれており、これらはほとんどが太陽たいよう地球ちきゅうとの関係かんけいうえしょうじているエネルギーである。いずれも存在そんざい総量そうりょうおおきいがエネルギー密度みつどひくいため、あつめるのに工夫くふうもとめられる。4のなかでも実用じつようすすんでいる太陽光たいようこう発電はつでん風力ふうりょく発電はつでんはそれぞれソーラーパネル(太陽たいよう電池でんち)と風車かざぐるまというかたちで、一般いっぱんにもにする機会きかいがあるが、海洋かいようエネルギーを発電はつでん利用りようする海流かいりゅう潮流ちょうりゅう発電はつでんしおりょく潮汐ちょうせき発電はつでんなみりょく発電はつでん海洋かいよう温度おんど発電はつでんは、なみりょく航路こうろ標識ひょうしきブイの電力でんりょくよう発電はつでん利用りようする程度ていどでまだまだ実験じっけんいきないでいる。地熱じねつ発電はつでんも、日本にっぽんではそれほどだい規模きぼおこなえずにいるが、アイスランドではそう電力でんりょく発電はつでんりょうの15%を地熱じねつ発電はつでんからている。

4にふくまれるものとして、どう植物しょくぶつからられる燃料ねんりょう発電はつでんおこなバイオマスバイオ燃料ねんりょう発電はつでんが20世紀せいきまつから研究けんきゅう開発かいはつすすめられているが、自動車じどうしゃよう燃料ねんりょう一部いちぶ実用じつようされてはいるだけで、発電はつでんしょでの本格ほんかくてき利用りよう未定みていである。バイオマス・エネルギーの利用りようは、地球ちきゅう温暖おんだん防止ぼうしカーボンニュートラル対応たいおうするためにも、今後こんご研究けんきゅう進展しんてんのぞまれている。

1から4のすべてが、「いちエネルギー」とばれ、ガソリン都市としガス蒸気じょうきのようにいちエネルギーを使つかいやすく加工かこう変化へんかさせたものが「エネルギー」とばれるものである。

1から4のいちエネルギーのうちでも、3と4の再生さいせい可能かのうエネルギーは、別名べつめい、「循環じゅんかんエネルギー」ともばれ、化石かせき燃料ねんりょうのように1使用しようすれば2使つかえないいちエネルギーは「循環じゅんかんエネルギー」とばれる[1]

運転うんてん自由じゆう[編集へんしゅう]

今後こんご、ある程度ていどひろがりが期待きたいできるあらたな発電はつでんシステムでも、たとえば、太陽光たいようこう発電はつでんではくもりやあめあいだ発電はつでんりょう低下ていかし、風力ふうりょく発電はつでんでも発電はつでんりょう文字通もじどおふう次第しだいであるため、安定あんていてき発電はつでんのぞときだけうごかす自由じゆう期待きたいできない。日本にっぽん原子力げんしりょく発電はつでんでは、その発電はつでんりょう定常ていじょう出力しゅつりょくからあま変更へんこうしないという運用うんよう特性とくせいによって、夜間やかん余剰よじょうとなる電力でんりょくみずをダムの上位じょういげておき、昼間ひるま落差らくさによる水力すいりょく発電はつでんおこな揚水ようすい発電はつでんおこなわれている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

うわ発電はつでんしょ京都きょうと左京さきょう

1891ねん明治めいじ24ねん)に京都きょうと一般いっぱん供給きょうきゅうようとしては日本にっぽん最初さいしょうわ発電はつでんしょ送電そうでん開始かいしした。このじょう(けあげ)発電はつでんしょ琵琶湖びわこ疏水そすいによる水力すいりょく発電はつでんによって、80 kWの直流ちょくりゅう発電はつでんと1,300とうぶん交流こうりゅう発電はつでんより構成こうせいされていた。1907ねん明治めいじ40ねん)には東京とうきょう電燈でんとう会社かいしゃ山梨やまなしけん桂川かつらがわ駒橋こまはし発電はつでんしょ建設けんせつし、15,000 kW (= 15 MW)の発電はつでん電力でんりょくを55 kVで東京とうきょう送電そうでんした。1914ねんには、猪苗代いなわしろ水力すいりょく電気でんき会社かいしゃ猪苗代いなわしろだいいち発電はつでんしょ建設けんせつし、37,500 kW (= 37.5 MW)の発電はつでん電力でんりょくを115 kVで東京とうきょう送電そうでんした。

その、1961ねんごろまでは、単機たんきで30 - 40まん kW (= 300 - 400 MW)の発電はつでん能力のうりょく水力すいりょく発電はつでんしょ日本にっぽん発電はつでん主力しゅりょくになっていたが、1962ねんさかいに、高度こうど経済けいざい成長せいちょうによる旺盛おうせい電力でんりょく需要じゅよう対応たいおうするだけの水力すいりょく発電はつでんしょ建設けんせつ適地てきちかぎられ、また、建設けんせつ期間きかん水力すいりょく発電はつでんしょ長期ちょうきするために、単機たんきでの発電はつでん能力のうりょくが60 - 100まん kw (ギガワット <GW>クラス)の火力かりょく発電はつでんしょ電力でんりょく消費しょうひである都市とし周辺しゅうへん多数たすう建設けんせつされるようになった。

1970年代ねんだい以降いこう原子力げんしりょく発電はつでんしょ本格ほんかくてき登場とうじょうによって、従来じゅうらいがた水力すいりょく発電はつでんしょではなく、原子力げんしりょく発電はつでんしょ夜間やかん余剰よじょう電力でんりょく有効ゆうこう利用りようするための単機たんき能力のうりょく30まん kW (= 300 MW)きゅう揚水ようすい発電はつでんしょ日本にっぽん各地かくち建設けんせつされるようになった。

1995ねんには電気でんき事業じぎょうほう改正かいせいされ、これによって段階だんかいてき大口おおぐち電力でんりょく需要じゅようけの電気でんき供給きょうきゅう販売はんばい自由じゆうされた。21世紀せいきはいってからは、風力ふうりょく発電はつでんのような再生さいせい可能かのうエネルギーにもとづくあたらしい形式けいしき発電はつでん電力でんりょくは、電力でんりょく会社かいしゃによってられる制度せいど限定げんていてきながら導入どうにゅうされている[1]

運用うんよう体制たいせい変遷へんせん[編集へんしゅう]

1950年代ねんだい以前いぜんは、機械きかいしき制御せいぎょシステムがおお使つかわれていたため運用うんよう保守ほしゅ非常ひじょう煩雑はんざつおおくの人手ひとでがかかっていた。

1960年代ねんだいより、電気でんきしき制御せいぎょシステムにえがすすみ保守ほしゅ省力しょうりょくおこなわれた。日本にっぽんでは、このころから小規模しょうきぼ水力すいりょく発電はつでん集中しゅうちゅう制御せいぎょ無人むじんすすんだ。

1990年代ねんだいより、デジタル制御せいぎょ進歩しんぽにより遠隔えんかく監視かんし操作そうさ自動じどう運転うんてんされるものがえている。水力すいりょく発電はつでんくわえて内燃ないねんりょく発電はつでん小規模しょうきぼなものは自動じどう運転うんてんによる無人むじん巡回じゅんかい保守ほしゅ中規模ちゅうきぼ火力かりょく発電はつでんでも通常つうじょう運転うんてん自動じどうされ勤務きんむ体制たいせいが4ちょく3交代こうたいせいから日勤にっきん仮眠かみん待機たいき宿直しゅくちょく変更へんこうされるようになった。

構成こうせい[編集へんしゅう]

設備せつび[編集へんしゅう]

  • 発電はつでん設備せつび
  • 変電へんでん送電そうでん設備せつび昇圧しょうあつ変圧へんあつ遮断しゃだんおよ電線でんせんなどで構成こうせいされる。
  • 通信つうしん設備せつび運転うんてん操作そうさ遠隔えんかく監視かんしといった関係かんけい各所かくしょとの通信つうしんおこなう。
  • 常用じょうよう電源でんげん
    • 常用じょうよう発電はつでん: 外部がいぶ電源でんげんしゅ発電はつでん双方そうほう停止ていしした場合ばあい使用しようする。
    • 常用じょうよう電池でんち
  • 保安ほあん装置そうちるい
  • 環境かんきょう対策たいさく装置そうちるい

発電はつでん電力でんりょく送電そうでんもう送出そうしゅつするまでに位相いそう同期どうきさせておく必要ひつようがある。送電そうでんもう接続せつぞくされたのち常時じょうじ発電はつでんしょおく電圧でんあつつね系統けいとう電圧でんあつわせる必要ひつようがある。同期どうき発電はつでん励磁れいじ電流でんりゅう調整ちょうせいすることでその役割やくわりになうのが「自動じどう電圧でんあつ調整ちょうせい装置そうち」(Automatic voltage regulator, AVR)である[2]発電はつでん設備せつび始動しどう外部がいぶ電源でんげん必要ひつようとするものもおおく、所内しょない予備よび電源でんげんち、また発電はつでんしょからの供給きょうきゅうけられるように電力でんりょくもう双方向そうほうこう連結れんけつされたりしている。

運転うんてん要員よういん[編集へんしゅう]

施設しせつにより、通常つうじょう自動じどう制御せいぎょのみで無人むじん運転うんてんされるものもある。たとえば、離島りとう僻地へきちなどで利用りようされるようなちいさなものでは、発電はつでん送電そうでん設備せつびのみで、運用うんようしゃ整備せいび技能ぎのうもの適時てきじ保守ほしゅ管理かんりしている施設しせつもある。

発電はつでん方法ほうほう[編集へんしゅう]

補足ほそく[編集へんしゅう]

未来みらいはなしとしては、宇宙うちゅう発電はつでんしてマイクロ光線こうせん送電そうでんしようというあん(→マイクロ送電そうでんなど)も研究けんきゅうされており、この場合ばあい無線むせん電力でんりょく送出そうしゅつする(→宇宙うちゅう太陽光たいようこう発電はつでん)。

8がつ6にち太陽熱たいようねつ発電はつでんである。サンシャイン計画けいかく参照さんしょう

出典しゅってん注記ちゅうき[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 道上みちがみつとむちょ 電気でんき学界がっかい発電はつでん変電へんでん』 2000ねん6がつ30にち2はん1さつ発行はっこう ISBN 4886862233
  2. ^ 西嶋にしじま喜代人きよとすえひろしじゅん也著 『電気でんきエネルギー工学こうがく概論がいろん』 朝倉書店あさくらしょてん 2008ねん8がつ25にち初版しょはんだい1さつ発行はっこう ISBN 9784254229080

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]