真平まっぴら王おう

真平まっぴら王おう
各種かくしゅ表記ひょうき
ハングル：	진평왕
漢字かんじ：	眞平まっぴら王おう
発音はつおん：	チンピョンワン
日本語にほんご読よみ：	しんぺいおう
ロろーマ字まじ：	Jinpyeong Wang

真平まっぴら王おう（しんぺいおう、生年せいねん不ふ詳しょう - 632年ねん）は、新しん羅らの第だい26代だいの王おう（在位ざいい:579年ねん - 632年ねん）であり、姓せいは金きむ、諱いみなは伯はく浄きよし。第だい24代だい真ま興きょう王おうの太子たいし金銅かなどう輪わの子こであり、母ははは立たて宗むね葛かずら文ぶん王おう金きむ仇かたき珍めずらしの娘むすめで真ま興きょう王おうの妹いもうとの万まん呼よび夫人ふじん（万まん内ない夫人ふじんとも記しるされる）。王妃おうひは葛かずら文ぶん王おう金きん福ぶく勝しょう（炤知麻あさ立りつ干ひの子この金山かなやま宗はじめの子こ）の娘むすめの摩耶まや夫人ふじん。先代せんだいの真智まち王おうが579年ねん7月がつ死去しきょしたことを受うけて即位そくいした。

治世ちせい

真ま興きょう王おう以来いらいの領域りょういきの拡大かくだいに合あわせるように、国内こくない統治とうちの精度せいどを高たかめるために中央ちゅうおう官制かんせいを整ととのえることに努つとめた。後代こうだいにまで続つづく主要しゅような官かん府ふとして、位い和かず府ふ（後ごの吏部。人事じんじ）、船ふな府ふ署しょ（航海こうかい）、調しらべ府ふ（貢みつぎ賦ふ）、乗じょう府ふ（王おうの行幸ぎょうこう）、礼れい部ぶ（儀礼ぎれい教育きょういく）、領りょう客きゃく府ふ（外交がいこう）などが真平まっぴら王おうの時代じだいに初はじめて設置せっちされたものである。また、宮廷きゅうてい内ない庶務しょむを司つかさどる三宮さんのみや（大宮おおみや、梁りょう宮みや、沙すな梁りょう宮みや）を設もうけてそれぞれに私わたし臣しんを配置はいちし、後のちには独ひとりで三さん宮みやを統括とうかつさせるように改あらためた。三宮さんのみやを統括とうかつする私わたし臣しんを内省ないせい私わたし臣しんと称しょうしたことが、のちの内省ないせい（宮廷きゅうてい庶務しょむ）の始はじまりとされる。

官制かんせいを整ととのえる間あいだにも智明ともあき・円光えんこう・曇くもり育そだてらの僧そうを陳ひねや隋ずいに派遣はけんして仏法ぶっぽうを修おさめさせるとともに、また度々どどの朝貢ちょうこうを行おこなって隋ずいに接近せっきんした。これにより、隋ずいからは594年ねんに＜上うえ開府かいふ・楽らく浪なみ郡こおり公こう・新しん羅ら王おう＞に冊さつ封ふうされている。

半島はんとう内ないでは防戦ぼうせん状態じょうたいが続つづいたが、602年ねん8月がつの百済くだらとの阿おもね莫城（全羅北道ぜんらほくどう南原なんばら市し）での会戦かいせんでは百ひゃく済すみを大敗たいはいさせ、603年ねん8月がつに高句麗こうくりが北きた漢かん山城やましろ（ソウル特別とくべつ市し）に侵入しんにゅうした際さいには、親おや征せいして高句麗こうくりを撃退げきたいした。しかし608年ねん2月がつ・8月がつには高句麗こうくりの侵入しんにゅうにより牛うし鳴山なるやま城じょう（江原えばら道みち安やす辺あたり郡ぐん瑞みず谷たに面めん）を陥落かんらくさせられてもいる。この前後ぜんごで隋ずいから帰国きこくした僧そうの円光えんこうに命めいじ、隋ずいに高句麗こうくり討伐とうばつを求もとめる上表じょうひょう文ぶんを書かかせ、611年ねんに提出ていしゅつしたことが伝つたえられている。『隋ずい書しょ』にはこの上表じょうひょうのことは記しるされてはいないが、上表じょうひょうの直後ちょくごの612年ねんには未曾有みぞうの大軍たいぐんによる隋ずいの高句麗こうくり遠征えんせいが引ひき起おこされることとなった。

隋ずいの高句麗こうくり遠征えんせいが止やんだ後のちは、百済くだらとは椵岑城じょう（忠清ただきよ北道ほくどう槐さいかち山さん郡ぐん）・母はは山城やましろ（忠清ただきよ北道ほくどう鎮川郡ぐん）付近ふきんで激はげしく戦たたかって幾いくつもの城しろを失うしない、また城主じょうしゅを戦死せんしさせられるなど敗戦はいせんが続つづいた。唐とうへ働はたらきかけてこうした劣勢れっせいを巻まき返かえそうとする努力どりょくを続つづけ、624年ねんには唐とうより＜柱はしら国こく・楽らく浪なみ郡こおり公こう・新しん羅ら王おう＞に冊さつ封ふうされ、625年ねんには高句麗こうくりの無道むどうを訴うったえ出でた。しかしながら唐とうからは高句麗こうくりとの和解わかいを勧すすめられるばかりであって、積極せっきょく的てきな支援しえんを得えられたわけではなかった。626年ねんには高句麗こうくりと百済くだらとが和解わかいしてともに新しん羅らに当あたる状況じょうきょうとなり、三さん国こく間あいだでの新しん羅らの劣勢れっせいはいよいよ深刻しんこくなものとなった。629年ねんには高句麗こうくりと娘むすめ臂ひじ城じょう（忠清ただきよ北道ほくどう清州きよす市し）で戦たたかい、初陣ういじんとなる副将ふくしょう金きむ庾信（『三さん国史こくし記き』金きむ庾信列伝れつでんによると、金きむ庾信は中国ちゅうごく黄き帝みかどの子この少しょう昊ひろしの子孫しそんである）の活躍かつやくで同どう城しろを陥落かんらくさせる勝利しょうりを得えて、この後のち637年ねんまでは三さん国こく間あいだに大おおきな戦たたかいはなく過すごされることとなった。しかし国内こくないでは631年ねん5月、伊い飡の柒宿と阿おもね飡の石いし品ひんとが反逆はんぎゃくを起おこしており、新しん羅ら国内こくないの情勢じょうせいは穏当おんとうとはいえない状況じょうきょうにあった。

こうした不穏当ふおんとうな状況じょうきょう下か、632年ねん1月がつに死去しきょした。真平まっぴら王おうと諡おくりなされ、漢かん祇（比定ひてい地ち未み詳しょう）に埋葬まいそうされた。唐とうの太ふとし宗むねからは＜左ひだり光こう禄ろく大夫たいふ＞を追贈ついぞうされ、香典こうでんとして布ぬの2百ひゃく反たんを賜たまわった。

家族かぞく

• 父ちち：銅どう輪わ太子たいし
• 母はは：萬まん呼よび太ふとし后きさき
• 叔父おじ：真智まち王おう 第だい25代だい国王こくおう。父ちちの弟おとうと。
• 王妃おうひ：摩耶まや夫人ふじん 金きん氏し
  • 長女ちょうじょ/次女じじょ：徳とく曼公主ぬし 第だい27代だい国王こくおう。
  • 次女じじょ/長女ちょうじょ：天明てんめい公主こうしゅ(従兄弟いとこ(真智まち王おうの子こ)である金龍きんりゅう春はるの夫人ふじん。)
    • 孫まご：武たけ烈れつ王おう 第だい29代だい国王こくおう。(天明てんめい公主こうしゅの息子むすこ)
  • 三さん女じょ：善ぜん花はな公主こうしゅ(第だい30代だい百済くだら王おう 武たけ王おうの王妃おうひ。) 三さん国こく遺のこ事ことに記載きさいされている。実在じつざいではない可能かのう性せいもあり。
    • 孫まご：義ぎ慈王(第だい31代だい百済くだら王おう。善ぜん花はな公主こうしゅの息子むすこ。)
  • 四よん女じょ：天花てんげ公主こうしゅ(金龍きんりゅう春はるの夫人ふじん。息子むすこをもうけたが夭逝ようせい。後のちに離縁りえんし、白龍はくりゅう公こうに嫁とついだ。) 花はな郎ろう世よ記きに記載きさいされている。実在じつざいではない可能かのう性せいもあり。
• 王妃おうひ：僧そう満まん夫人ふじん 孫まご氏し
  • 息子むすこ(夭逝ようせい)
• 後宮こうきゅう：宝たから明あきら宮みや主ぬし(立たて宗むね葛かずら文ぶん王おう仇かたき珍ちんと只ただ召太后きさきの娘むすめ。第だい24代だい国王こくおう真ま興きょう王おう、萬まん呼よび太ふとし后きさきの姉妹しまい。叔母おばに当あたる。)
  • 娘むすめ：良明よしあき公主こうしゅ（美び室しつの子こ・宝たから宗はじめの正室せいしつ）
    • 孫まご：宝たから良りょう宮みや主ぬし 薛氏（側室そくしつでもある。）
    • 孫まご：宝たから羅ら宮みや主しゅ 薛氏(武たけ烈れつ王おうの最初さいしょの妻つま。)
    • 孫まご：長明ちょうめい公こう（父ちちは第だい17代だい風月ふうげつ主ぬし 廉かど長ちょう。）
    • 孫まご：良りょう図ず公こう（第だい22代だい風月ふうげつ主ぬし。父ちちは第だい11代だい風月ふうげつ主ぬし 夏なつ宗はじめの息子むすこ、毛もう宗はじめ。）
• 後宮こうきゅう：美び室しつ(美び室しつ宮みや主ぬしとも)
  • 娘むすめ：宝たから華はな公主こうしゅ
    • 孫まご：善ぜん品ひん（第だい21代だい風月ふうげつ主ぬし。第だい30代だい国王こくおう文武ぶんぶ王おうの王妃おうひ、慈儀王おう后きさきの父ちち。）
• 後宮こうきゅう：宝たから良りょう宮みや主ぬし 薛氏(美び室しつの子こ・宝たから宗はじめと良明よしあき公主こうしゅの娘むすめ。外孫そとまご娘むすめでもある。姉妹しまいに武たけ烈れつ王おうの妃ひ・宝たから羅ら宮みや主ぬし。僧そう満まん王妃おうひの嫉妬しっとにより、宮中きゅうちゅうを追おわれた。)
  • 息子むすこ：宝たから路ろ殿どの君くん(金きむ庾信の娘むすめ酌しゃく光こうと結婚けっこん。)
• 後宮こうきゅう：太陽たいよう公主こうしゅ(真ま興きょう王おうと思おもえ道どう王おう后きさき朴ぼく氏しの娘むすめ。叔母おばに当あたる。)
  • 息子むすこ：太たい元もと
  • 息子むすこ：好こう元もと
• 後宮こうきゅう：蘭らん若わか公主こうしゅ(真ま興きょう王おうと美び室しつの娘むすめ。叔母おばに当あたる。)
  • 娘むすめ：雨あめ若わか公主こうしゅ
    • 孫まご：呉ご起おこり（第だい28代だい風月ふうげつ主ぬし。父ちちは第だい20代だい風月ふうげつ主ぬし 礼れい元もと。）
• 後宮こうきゅう：昔むかし明あかり公主こうしゅ(真智まち王おうと宝たから明あきら宮みや主ぬしの娘むすめ。従姉妹いとこに当あたる。)
• 後宮こうきゅう：龍りゅう明あきら公主こうしゅ(真ま興きょう王おうと智さとし道どう皇后こうごうの娘むすめ。叔母おばに当あたる。)
• 後宮こうきゅう：花はな明あかり娘むすめ主ぬし(第だい4代だい風月ふうげつ主ぬし 二に花はな郎ろうと叔明公主こうしゅ(萬まん呼よび太ふとし后きさきの姉妹しまい)の娘むすめ。)
• 後宮こうきゅう：玉たま明あかり娘むすめ主ぬし(第だい4代だい風月ふうげつ主ぬし 二に花はな郎ろうと叔明公主こうしゅ(萬まん呼よび太ふとし后きさきの姉妹しまい)の娘むすめ。)

登場とうじょう作品さくひん

テレビドラマ

• 善徳ぜんとく女王じょおう - 演えんじ：チョ・ミンギ
• 薯いも童謠どうよう - 演えんじ：チェ・ドンジュン
• 大王だいおうの夢ゆめ - 演えんじ：キム・ハギュン

参考さんこう文献ぶんけん

• 『三さん国史こくし記き』第だい1巻かん 金富かなとみ軾撰せん 井上いのうえ秀雄ひでお訳注やくちゅう、平凡社へいぼんしゃ〈東洋文庫とうようぶんこ372〉、1980 ISBN 4-582-80372-5
• 『三さん国史こくし記き』第だい3巻かん 金富かなとみ軾撰 井上いのうえ秀雄ひでお訳注やくちゅう、平凡社へいぼんしゃ〈東洋文庫とうようぶんこ454〉、1986 ISBN 4-582-80454-3
• 『三さん国こく遺のこ事こと』坪井つぼい九きゅう馬ば三さん・日下くさか寛ひろし校訂こうてい＜文科ぶんか大学だいがく史し誌し叢書そうしょ＞東京とうきょう、1904（国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん　近代きんだいデジタルライブラリー）
• 武田たけだ幸男ゆきお 編へん『朝鮮ちょうせん史し』山川やまかわ出版しゅっぱん社しゃ〈世界せかい各国かっこく史し〉、2000年ねん8月がつ。ISBN 978-4634413207。