脂肪しぼう族ぞくポリケトン

ポリケトン

密度みつど	1240 kg/m³
ヤング率りつ (E)	1500 M Pa
強度きょうど (σしぐま_t)	55 M Pa
破断はだん伸しん度たび	350 %
シャルピー衝撃しょうげき値ち	20 kJ/m²
ガラス転移てんい点てん	15°C
融点ゆうてん	220°C
ビカット軟化なんか点てん^[1]	205
熱ねつ伝達でんたつ率りつ (λらむだ)	0.27 W/(m·K)
線せん膨張ぼうちょう係数けいすう (αあるふぁ)	11 10⁻⁵/K
熱容量ねつようりょう (c)	1.8 kJ/(kg·K)
吸水きゅうすい率りつ (ASTM)	0.5
価格かかく	3-5 €/kg

脂肪しぼう族ぞくポリケトン（あるいは単たんにポリケトン）は高こう強度きょうど、高こう耐たい熱ねつ、低てい吸水きゅうすい性せいが特徴とくちょう^[2]の熱ねつ可塑かそ性せいポリマー。ポリマーの主しゅ鎖くさりにケトン基もとを有ゆうするため、ポリマー鎖くさり同士どうしの結合けつごう力りょくが強つよく、高こう融点ゆうてんとなる。例たとえばケトン-エチレンコポリマーで255℃、ケトン-エチレン-プロピレンターポリマーで220℃である。また、耐たい溶剤ようざい性せいも高たかく、高こう強度きょうどである。他たのエンジニアリングプラスチックと比くらべると、原料げんりょうのモノマーが安価あんかである。パラジウム(II) 触媒しょくばいを使つかい、エチレンと一酸化いっさんか炭素たんそから作つくられる。融点ゆうてんを下さげるために少量しょうりょうのプロピレンを混まぜることも多おおい。

ポリケトン系けい樹脂じゅしは、脂肪しぼう族ぞくポリケトンの他ほか、芳香ほうこう族ぞくポリエーテルケトンなど、主しゅ鎖くさりにケトン基もとを含ふくむポリマー全般ぜんぱんを指さす。ただし単たんにポリケトンと言いえば、脂肪しぼう族ぞくポリケトンを意味いみする場合ばあいが多おおい。この記事きじでも、以下いかではポリケトンを脂肪しぼう族ぞくポリケトンの意味いみで説明せつめいする。

シェルケミカルは1996年ねん、ポリケトンを世界せかいで初はじめて商品しょうひん化かし、「カリロン」の名なで販売はんばいを始はじめたが^[3]、2000年ねんには販売はんばい中止ちゅうしし^[4]、SRIインターナショナルに製造せいぞう権けんを譲ゆずっている^[5]。シェルの他ほか、2013年ねんに韓国かんこくのヒョースン社しゃが独自どくじにポリケトン樹脂じゅしを開発かいはつしている^[6]。

工業こうぎょう生産せいさん

エチレンと一酸化いっさんか炭素たんそから作つくるのが最もっとも一般いっぱん的てきである。工業こうぎょう的てきには、メタノール中ちゅうでの懸かか濁にご重合じゅうごう、あるいは固定こてい化か触媒しょくばいを使つかった気き相しょう重合じゅうごうなどで合成ごうせいされる^[7]^[8]。

重合じゅうごう反応はんのうの進すすみ方かた

この重合じゅうごうは、パラジウム(II) - フェナントロリン触媒しょくばい（下したの図ずの[Pd]）を使つかうことで、連鎖れんさ的てきに反応はんのうすると言いわれている。この説せつは、ノースカロライナ大学だいがくチャペルヒル校こう教授きょうじゅのモーリス・ブルックハート（英語えいご版ばん）^[9]が唱となえたものである。

この反応はんのうでできるポリケトンは、非常ひじょうに欠陥けっかん（不規則ふきそく性せい）が少すくないことで知しられる。つまり、エチレンとカルボニル基もとが交互こうごに付加ふかする場合ばあいがほとんどであり、エチレン同士どうしあるいはカルボニル基もと同士どうしが繋つながること（下図したずの赤あかい部分ぶぶん）はほとんどない。特とくに、カルボニル基もと同士どうしが繋つながることは活性かっせい化か障壁しょうへきが高たかいため、まず起おこらない^[10]。

また、ブルックハート教授きょうじゅの研究けんきゅうによれば、エチレン同士どうしが繋つながるために必要ひつようとなる、アルキルエチレン-パラジウム複ふく合体がったいも、どの条件じょうけんでもほとんど発生はっせいしない。その上うえ、アルキル基もとに一酸化いっさんか炭素たんそが付加ふかするギブスエネルギーは、アルキル基もとにエチレンが付加ふかするギブスエネルギーよりも約やく 3 kcal/mol 低ひくい。

結果けっかとして、ポリケトンの欠陥けっかん率りつは非常ひじょうに低ひくく、約やく1ppm（100万まん分ぶんの1）ほどである^[9]。[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン（英語えいご版ばん）]パラジウム(II)触媒しょくばいを使つかった場合ばあいについても研究けんきゅう例れいがある^[11]。

二に座ざ配はい位い子この重要じゅうよう性せい

単座たんざホスフィン配はい位い子こに配はい位いされたパラジウム (II) プレ触媒しょくばいをメタノールに入いれると、副ふく生成せいせい物ぶつとして比較的ひかくてき多量たりょうのプロピオン酸さんメチルが生成せいせいする。これと比較ひかくして、二に座ざ配はい位い子こであるジホスフィンを使つかえば、副ふく生成せいせい物ぶつは生しょうじない。

一方いっぽう、二に座ざホスフィン配はい位い子こを使つかうと、錯体さくたいがシス-トランス異性いせい体たいの平衡へいこうとなり（下図したず参照さんしょう）、この反応はんのうに適てきしたトランス異性いせい体たいを得えることができる。それに対たいして三さん座ざホスフィン配はい位い子こを使つかうと、トランス体たいしかできず、転移てんい挿入そうにゅう（英語えいご版ばん）が起おこらないために反応はんのうが進すすまない^[10]。

応おう用例ようれい

旭化成あさひかせいせんい（旭化成あさひかせいのグループ会社かいしゃ）が2001年ねんからポリケトン繊維せんいの開発かいはつに着手ちゃくしゅし^[12]『サイバロン』の名なで販売はんばいを開始かいし、2006年ねんにパイロットプラントを作つくっている^[13]。

代表だいひょう的てきな商品しょうひん

Carilon: シェル社しゃ
Karilon: ヒョースン社しゃ
Akrotek: AKRO-PLASTIC GmbH

参考さんこう文献ぶんけん

^ 10 kN ニードルロードを使つかった場合ばあいの破壊はかい温度おんど / A K van der Vegt; L E Govaert (2003). Polymeren : van keten tot kunststof. VSSD. ISBN 90-407-2388-5
^ 日笠ひかさ茂樹しげきら. “ポリケトン/ポリアミド系けいポリマーアロイの開発かいはつ”. 2013年ねん12月30日にち閲覧えつらん。
^ Shell Chemical Company announces The U.S. commercial launch of CARILON Polymers
^ MatWeb-Shell Carilon® DP P1000 Polyketone (discontinued **)
^ Carilon Thermoplastic Polymer - Next-Generation Plastics from SRI International
^ “暁星ぎょうせい、ナイロンを上回うわまわる新しん素材そざいを世界せかいで初はじめて開発かいはつ”. 中央日報ちゅうおうにっぽう. (2013年ねん11月5日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。
^ Drent, E.; Mul, W. P.; Smaardijk, A. A. (2001). "Polyketones". Encyclopedia Of Polymer Science and Technology. doi:10.1002/0471440264.pst273。
^ Bianchini, C (2002). “Alternating copolymerization of carbon monoxide and olefins by single-site metal catalysis”. Coord. Chem. Rev. 225: 35–66. doi:10.1016/S0010-8545(01)00405-2.
^ ^a ^b Rix, Francis C.; Brookhart, Maurice; White, Peter S. (1996). “Mechanistic Studies of the Palladium(II)-Catalyzed Copolymerization of Ethylene with Carbon Monoxide”. J. Am. Chem. Soc. 118 (20): 4746–4764. doi:10.1021/ja953276t.
^ ^a ^b Drent, Eite; Budzelaar, Peter H. M. (1996). “Palladium-Catalyzed Alternating Copolymerization of Alkenes and Carbon Monoxide”. Chem. Rev. 96 (2): 663–682. doi:10.1021/cr940282j. PMID 11848769.
^ Shultz, C. Scott; Ledford, John; Desimone, Joseph M.; Brookhart, Maurice (2000). “Kinetic Studies of Migratory Insertion Reactions at the (1,3-Bis(diphenylphosphino)propane)Pd(II) Center and Their Relationship to the Alternating Copolymerization of Ethylene and Carbon Monoxide”. J. Am. Chem. Soc. 122 (27): 6351–6356. doi:10.1021/ja994251n.
^ “合繊ごうせん／半はん歩ふ先さきより三さん歩ほ先さき次世代じせだいに向むけた開発かいはつ加速かそく”. 繊維せんいニュース. (2005年ねん4月がつ21日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。
^ “ニュー・テクノロジー／旭化成あさひかせいせんい・福田ふくだ康男やすおポリケトン事業じぎょう推進すいしん室長しつちょうに聞きく”. 繊維せんいニュース. (2006年ねん2月がつ9日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク

Macrogalleria

[vegt-1] 10 kN ニードルロードを使つかった場合ばあいの破壊はかい温度おんど / A K van der Vegt; L E Govaert (2003). Polymeren : van keten tot kunststof. VSSD. ISBN 90-407-2388-5

[oka3417-2] 日笠ひかさ茂樹しげきら. “ポリケトン/ポリアミド系けいポリマーアロイの開発かいはつ”. 2013年ねん12月30日にち閲覧えつらん。

[r18810751-3] Shell Chemical Company announces The U.S. commercial launch of CARILON Polymers

[matweb-4] MatWeb-Shell Carilon® DP P1000 Polyketone (discontinued **)

[sri-5] Carilon Thermoplastic Polymer - Next-Generation Plastics from SRI International

[joins-6] “暁星ぎょうせい、ナイロンを上回うわまわる新しん素材そざいを世界せかいで初はじめて開発かいはつ”. 中央日報ちゅうおうにっぽう. (2013年ねん11月5日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。

[encyclopedia-7] Drent, E.; Mul, W. P.; Smaardijk, A. A. (2001). "Polyketones". Encyclopedia Of Polymer Science and Technology. doi:10.1002/0471440264.pst273。

[bianchini-8] Bianchini, C (2002). “Alternating copolymerization of carbon monoxide and olefins by single-site metal catalysis”. Coord. Chem. Rev. 225: 35–66. doi:10.1016/S0010-8545(01)00405-2.

[brookhart1-9] Rix, Francis C.; Brookhart, Maurice; White, Peter S. (1996). “Mechanistic Studies of the Palladium(II)-Catalyzed Copolymerization of Ethylene with Carbon Monoxide”. J. Am. Chem. Soc. 118 (20): 4746–4764. doi:10.1021/ja953276t.

[drent-10] Drent, Eite; Budzelaar, Peter H. M. (1996). “Palladium-Catalyzed Alternating Copolymerization of Alkenes and Carbon Monoxide”. Chem. Rev. 96 (2): 663–682. doi:10.1021/cr940282j. PMID 11848769.

[jacs99425-11] Shultz, C. Scott; Ledford, John; Desimone, Joseph M.; Brookhart, Maurice (2000). “Kinetic Studies of Migratory Insertion Reactions at the (1,3-Bis(diphenylphosphino)propane)Pd(II) Center and Their Relationship to the Alternating Copolymerization of Ethylene and Carbon Monoxide”. J. Am. Chem. Soc. 122 (27): 6351–6356. doi:10.1021/ja994251n.

[seni76623-12] “合繊ごうせん／半はん歩ふ先さきより三さん歩ほ先さき次世代じせだいに向むけた開発かいはつ加速かそく”. 繊維せんいニュース. (2005年ねん4月がつ21日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。

[seni86626-13] “ニュー・テクノロジー／旭化成あさひかせいせんい・福田ふくだ康男やすおポリケトン事業じぎょう推進すいしん室長しつちょうに聞きく”. 繊維せんいニュース. (2006年ねん2月がつ9日にち) 2014年ねん1月がつ13日にち閲覧えつらん。

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