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臍帯さいたい

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出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
母体ぼたいのなかの子宮しきゅう胎児たいじちゅう胎盤たいばん胎児たいじをつないでいるものが臍帯さいたいである。臍帯さいたいなかからあか臍帯さいたい動脈どうみゃくあお臍帯さいたい静脈じょうみゃく臍帯さいたい動脈血どうみゃくけつ臍帯さいたい静脈じょうみゃく臍帯さいたいである。臍帯さいたい採取さいしゅ出産しゅっさんあかちゃんと臍帯さいたいはなされてからおこな
胎盤たいばん拡大かくだい胎盤たいばん母体ぼたいがわ胎児たいじがわとの栄養えいよう酸素さんそ老廃ろうはいぶつ交換こうかんおこなわれるが、はは血液けつえき胎児たいじ直接ちょくせつじりうことはい。
出生しゅっしょう直後ちょくご新生児しんせいじ。まだ臍帯さいたいがつながっている。はん透明とうめいのひもじょうのものが臍帯さいたいで、なかでくろえているのが臍帯さいたいである。臍帯さいたいはクリップされた位置いちから母体ぼたいがわられる。臍帯さいたい採取さいしゅでは臍帯さいたいは2ヶ所かしょでクリップされ2つのクリップの中間ちゅうかんはなし、表面ひょうめん消毒しょうどく臍帯さいたい注射ちゅうしゃはりして採取さいしゅされる。クリップでめてはりして採取さいしゅするのは細菌さいきんなどの混入こんにゅうふせぐためである。

臍帯さいたい(さいたいけつ、英名えいめい:Umbilical cord blood)とは、胎児たいじ母体ぼたいつな胎児たいじがわ組織そしきであるへそいとぐち臍帯さいたい:さいたい)のなかふくまれる胎児たいじ。「ほぞ(さい・へそのお)」は常用漢字じょうようかんじではないため、さいたいとも表記ひょうきされる。1993ねん以降いこう白血病はっけつびょうなどの血液けつえき疾患しっかん患者かんじゃへの移植いしょく医療いりょうひろもちいられるようになっている。

概要がいよう

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胎児たいじ胎盤たいばんとおしてははがわから酸素さんそ栄養分えいようぶんり、老廃ろうはいぶつ母体ぼたいがわわたすが、胎児たいじ胎盤たいばんをつないでいるのが臍帯さいたいである。出生しゅっしょう臍帯さいたいふとさが2cm,ながさが50-60cmほどで、臍帯さいたいには2ほん臍帯さいたい動脈どうみゃくと1ほん臍帯さいたい静脈じょうみゃくながれているが、その血管けっかんない血液けつえき臍帯さいたい[1]40ml-100ml程度ていどりょうがある[2]移植いしょく使つかわれる臍帯さいたい出産しゅっさん胎盤たいばん臍帯さいたいないのこされた胎児たいじ採取さいしゅ保存ほぞんしたものである[3][4]以前いぜんには出産しゅっさん臍帯さいたい胎盤たいばんとともに破棄はきされるものだったが、1980年代ねんだい前半ぜんはん臍帯さいたいには造血ぞうけつみき細胞さいぼうふくまれることがわかり、1988ねん臍帯さいたい使つかった最初さいしょ移植いしょく医療いりょう(Gluckman博士はかせらによるFnconi貧血ひんけつへの移植いしょく)がおこなわれ、その各地かくち臍帯さいたいバンクが設立せつりつされ1993ねん以降いこうバンクをとおして白血病はっけつびょうなどの疾患しっかんへの移植いしょく医療いりょう各国かっこくおこなわれている[5][6]

出産しゅっさん臍帯さいたい新生児しんせいじからははなされ、胎盤たいばんもまもなく娩出(後産あとざん)される。そのため出産しゅっさん新生児しんせいじからはなされたのち臍帯さいたいから血液けつえき採取さいしゅしても、新生児しんせいじ母体ぼたいにはなんら影響えいきょうはない[7]

臍帯さいたいふくまれる造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょく骨髄こつづい移植いしょく末梢まっしょう血幹けっかん細胞さいぼう移植いしょくなら造血ぞうけつ細胞さいぼう移植いしょくじゅつであるが、臍帯さいたい骨髄こつづい動員どういん末梢まっしょう血幹けっかん細胞さいぼうくらべると造血ぞうけつみき細胞さいぼうかずすくなく、なまちゃくりつやく 85% とされ[8]HLA 適合てきごうひくいと造血ぞうけつ回復かいふくおそいデメリット(移植いしょく初期しょき失敗しっぱいおおい)はあるが、適切てきせつ保存ほぞんされた臍帯さいたい短期間たんきかん移植いしょく可能かのうで、造血ぞうけつみき細胞さいぼう一旦いったんなまちゃく安定あんていした造血ぞうけつはじまると骨髄こつづい動員どういん末梢まっしょう血幹けっかん細胞さいぼうによる造血ぞうけつよりも移植いしょくへんたい宿主しゅくしゅびょう(GVHD)がすくないメリットがある。移植いしょくへんたい宿主しゅくしゅびょう(GVHD)がすくないためにHLAが完全かんぜん一致いっちでなくても移植いしょく可能かのうでありよりすくないドナープールでドナーをつけられる。造血ぞうけつ細胞さいぼうすうすくないために、臍帯さいたい移植いしょくはじまった当初とうしょは、移植いしょくさき小児しょうにおおかったが、近年きんねんでは大人おとなへの移植いしょくおおおこなわれている[5]

2006ねんには秋篠宮あきしののみや紀子のりこゆうじん親王しんのう出産しゅっさんしたさいに、ゆうじん親王しんのう臍帯さいたい公的こうてきバンクのひとつである東京とうきょう赤十字血液せきじゅうじけつえきセンターさいたいバンク(2012ねん現在げんざい日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ関東甲信越かんとうこうしんえつさいたいバンクの前身ぜんしん)に提供ていきょうしている[9][10]

性質せいしつ

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出生しゅっしょう臍帯さいたいのこされた胎児たいじ/新生児しんせいじである臍帯さいたいは、個体こたいおおきいものの平均へいきん成人せいじん末梢まっしょうくらべると赤血球せっけっきゅうがややおおきめで血液けつえきさはややである。白血球はっけっきゅう成人せいじん末梢まっしょうちゅう白血球はっけっきゅうよりおおく、成人せいじん末梢まっしょうではほとんどられない造血ぞうけつ細胞さいぼう臍帯さいたいではられる特徴とくちょうがある。

個体こたいがあるため検査けんさ施設しせつ報告ほうこくにより数字すうじはあるが、ひとつの信頼しんらいできるデータでは臍帯さいたい平均へいきんとして赤血球せっけっきゅうすう470まん/μみゅーl、ヘモグロビン(Hb)16.5g/dL、ヘマトクリット(Ht)51%、平均へいきん赤血球せっけっきゅう容積ようせき(MCV)108fL、白血球はっけっきゅうすう1.8まん/μみゅーl、こうちゅうだますう1.1まん/μみゅーl、リンパだますう5500/μみゅーlであり、体積たいせきあたりの赤血球せっけっきゅうかず成人せいじんとあまりわらないものの、赤血球せっけっきゅうひとひとつのおおきさが108fLであり、それは成人せいじんの90fLよりおおきい。そのために臍帯さいたいはヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)成人せいじん末梢まっしょうよりおおきく、つまり臍帯さいたい成人せいじん末梢まっしょうよりやや血液けつえきといえる。(ただし、それは正常せいじょう時期じき出産しゅっさんされた新生児しんせいじ数字すうじであり、早産そうざんでは赤血球せっけっきゅうおおきいが、かずすくなく貧血ひんけつ早産そうざんおおい)白血球はっけっきゅう成人せいじん基準きじゅん値上ねあげげんのおよそ2ばい程度ていどかずである。血小板けっしょうばんすう個人こじんおおきいものの成人せいじんおな範囲はんいないにおさまる。したがって、新生児しんせいじ多血たけつ気味ぎみおおく、のこされるはずの臍帯さいたいのこされずに新生児しんせいじながむとさらに多血たけつ気味ぎみになりうる[11][12]出生しゅっしょう臍帯さいたい赤血球せっけっきゅうちゅうのヘモグロビンの60-80%は胎児たいじがたヘモグロビンFであり、成人せいじんがたのヘモグロビンAはすくない[13]

新生児しんせいじ臍帯さいたいりょうは、個人こじんおおきいものの、体重たいじゅう3Kgの新生児しんせいじでおよそ100ml程度ていどである[14]

臍帯さいたいちゅうゆうかく細胞さいぼうすうは4-6おくもの一番いちばんおおやく3わり、6-8おくものやく3わり、8-10おくが3番目ばんめやく2わり、10おく以上いじょうのものが1わりきょうである[15]からだおおきい成人せいじんへの移植いしょくには8おく以上いじょう必要ひつようとされている[16]ゆうかく細胞さいぼうふくまれるCD34+細胞さいぼう造血ぞうけつみき細胞さいぼうふくわか造血ぞうけつ細胞さいぼう)は成人せいじん末梢まっしょうではほとんどられないが、臍帯さいたいでは0.2-0.5%の範囲はんいでふくまれるものがおお[15]

治療ちりょうへの活用かつよう

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白血病はっけつびょうなどの難治なんじせい血液けつえき疾患しっかん根本こんぽんてき治療ちりょうのひとつである造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくにおいて、造血ぞうけつみき細胞さいぼう供給きょうきゅうげんとして骨髄こつづいおよびみき細胞さいぼう動員どういん末梢まっしょうなどとおなじく移植いしょくソースのひとつとされる。臍帯さいたいは、細胞さいぼう提供ていきょうしゃ(ドナー)の負担ふたんがなく、HLA2不一致ふいっち[註 1]でも移植いしょく可能かのうなことなどから、造血ぞうけつみき細胞さいぼう有力ゆうりょく供給きょうきゅうげんかんがえられている[5][6]

問題もんだいてんとしては、臍帯さいたいふくまれる造血ぞうけつみき細胞さいぼうかず骨髄こつづい末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼうくらべてすくないために、なまちゃく不全ふぜん造血ぞうけつみき細胞さいぼう定着ていちゃくしないこと)のかくりつ骨髄こつづい末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼうくらべてたかいことや、造血ぞうけつ回復かいふくおそいことがあげられる。ふくまれる造血ぞうけつみき細胞さいぼうすう多寡たか移植いしょく成否せいひける重要じゅうよう要素ようそとなるため、採取さいしゅされた臍帯さいたいすべてが移植いしょく利用りようできるわけではないこと(採取さいしゅされた細胞さいぼうすうすくない場合ばあい移植いしょくにはもちいられない)、とく成人せいじん患者かんじゃへの適応てきおう症例しょうれいはまだおおくはなく、骨髄こつづい移植いしょくくら知見ちけんすくないことなどもあげられる[5][6]

が、造血ぞうけつみき細胞さいぼうすうすくない臍帯さいたいも、みき細胞さいぼう増殖ぞうしょくさせたうえ移植いしょくしたり、複数ふくすうじん臍帯さいたい一緒いっしょ移植いしょくする「カクテル移植いしょく」がこころみられるなど、問題もんだい克服こくふくする努力どりょくおこなわれている[17][18]

近年きんねん造血ぞうけつみき細胞さいぼう以外いがいからだせいみき細胞さいぼうであるあいだけいみき細胞さいぼう臍帯さいたいちゅうから見出みいだされた。これまであいだけいみき細胞さいぼう骨髄こつづいなか存在そんざいすることが報告ほうこくされていたが、骨髄こつづいだけでなく臍帯さいたいあいだけいみき細胞さいぼう供給きょうきゅうげんとして、ほね軟骨なんこつ組織そしき工学こうがくてき修復しゅうふくあるいは再生さいせい医療いりょうへの臨床りんしょう応用おうよう適用てきようできる可能かのうせいしめされた。さらに、神経しんけい細胞さいぼうかん細胞さいぼう上皮じょうひ細胞さいぼうなど、より広範こうはん組織そしきへの分化ぶんかのうゆうする前駆ぜんく細胞さいぼう存在そんざい示唆しさされており、世界せかい各国かっこく熱心ねっしん研究けんきゅうすすめられている[19][20][21][22][23]

臍帯さいたい移植いしょく対象たいしょうとなる疾患しっかん

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急性きゅうせいリンパせい白血病はっけつびょう急性きゅうせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょう慢性まんせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょう若年じゃくねんせい骨髄こつづいたんたませい白血病はっけつびょう骨髄こつづい形成けいせい症候群しょうこうぐん悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅ多発たはつせい骨髄腫こつづいしゅ副腎ふくじん皮質ひしつジストロフィー・骨髄こつづいきょかくだま造血ぞうけつ不全ふぜんせい血小板けっしょうばん減少げんしょうしょう先天せんてんせいあかだま癆・Fanconi貧血ひんけつ遺伝いでんせいニューロパチー・Hurlerびょう・Hunterびょう再生さいせい不良ふりょうせい貧血ひんけつ重症じゅうしょう先天せんてんせいこうちゅうだま減少げんしょうしょうサラセミア・X連鎖れんさリンパ増殖ぞうしょく症候群しょうこうぐんなど[24]

早期そうき移植いしょく必要ひつよう場合ばあい臍帯さいたい積極せっきょくてき検討けんとうする(骨髄こつづい移植いしょくはドナーの選定せんてい調整ちょうせい時間じかんようする)。ただし、感染かんせんリスクのたか患者かんじゃこうHLA抗体こうたい存在そんざいする場合ばあいみき細胞さいぼうなまちゃくわる疾患しっかん再生さいせい不良ふりょうせい貧血ひんけつなど)、骨髄こつづい移植いしょく成績せいせきげている疾患しっかん慢性まんせい骨髄こつづいせい白血病はっけつびょうなど)などでは臍帯さいたいより骨髄こつづい移植いしょく優先ゆうせんする[24]

造血ぞうけつみき細胞さいぼうソースとしてかくドナーソースとの比較ひかく

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血液けつえきもとになる造血ぞうけつみき細胞さいぼう成人せいじんでは骨髄こつづいなか存在そんざいし、1960年代ねんだいから白血病はっけつびょうなどの治療ちりょううしなわれた造血ぞうけつ機能きのう再建さいけん骨髄こつづい移植いしょくおこなわれてきた。その研究けんきゅうすすみ、2012ねん現在げんざい造血ぞうけつみき細胞さいぼうのソースとしては骨髄こつづいほかに、末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう臍帯さいたいがある。

臍帯さいたい移植いしょく骨髄こつづい移植いしょく末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう移植いしょくくらべると初期しょき治療ちりょう関連かんれんおおいが、再発さいはつりつ移植いしょくへんたい宿主しゅくしゅびょう(GVHD)の発症はっしょう頻度ひんどひくく、全体ぜんたいとしては無病むびょう生存せいぞんりつはほぼおなじである[25]

  • 末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう移植いしょく 成人せいじん顆粒かりゅうだまコロニー刺激しげき因子いんし(G-CSF)を投与とうよするとドナーの造血ぞうけつみき細胞さいぼう刺激しげきされて、血液けつえき末梢まっしょう)に大量たいりょう造血ぞうけつみき細胞さいぼう出現しゅつげんする。その大量たいりょう造血ぞうけつみき細胞さいぼう出現しゅつげんしているドナーの血液けつえき採取さいしゅ造血ぞうけつみき細胞さいぼうふく成分せいぶんのみをし、のこりの赤血球せっけっきゅう血漿けっしょうはドナーにもどす。末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう移植いしょくでは骨髄こつづいからよりもさらにおおくの造血ぞうけつ細胞さいぼう造血ぞうけつ回復かいふくはやいというメリットがあるが、ドナーにG-CSFの副作用ふくさようおそれがあることと、患者かんじゃ慢性まんせいGVHDがつよ傾向けいこうがあるというデメリットもある。G-CSF投与とうよ採取さいしゅされたみき細胞さいぼう分化ぶんかした傾向けいこうものおおく、一生いっしょうにわたるちょう長期ちょうきてき造血ぞうけつ維持いじ出来できるかについては疑問ぎもんがもたれている[26][27][28][29]

造血ぞうけつみき細胞さいぼう胎児たいじ血液けつえき(末梢まっしょう)ちゅうにも存在そんざいするが、1980年代ねんだいには臍帯さいたい(へその)および胎盤たいばん胎児たいじがわ血管けっかんのなかの血液けつえきちゅうにも造血ぞうけつみき細胞さいぼうふくまれることがあきらかになった。臍帯さいたいふくまれる造血ぞうけつみき細胞さいぼう成人せいじん骨髄こつづいちゅう造血ぞうけつみき細胞さいぼうより未熟みじゅくで、つまりよりわか細胞さいぼうであることが確認かくにんされている。そのため一旦いったんなまちゃくして血球けっきゅう回復かいふく軌道きどうれば成人せいじんから造血ぞうけつみき細胞さいぼうよりもたか造血ぞうけつ能力のうりょくがあるとかんがえられている。また、臍帯さいたいちゅうのTリンパだまはより未熟みじゅく移植いしょく患者かんじゃ異物いぶつ認識にんしきして増殖ぞうしょくするちからよわく、そのためにHLAがた完全かんぜん一致いっちしていなくとも(成人せいじんから移植いしょくソースにくらべ)移植いしょくへんたい宿主しゅくしゅびょう(GVHD)が重症じゅうしょうしにくいとかんがえられている[27]。ただし、骨髄こつづい末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼうくらべると細胞さいぼうすうすくないためにみき細胞さいぼうなまちゃく不全ふぜんのリスクがあること、造血ぞうけつ回復かいふくおそいことが不利ふりてんとしてあげられている[30]

細胞さいぼうすう造血ぞうけつ回復かいふくはやさ・なまちゃくりつでは、末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう骨髄こつづい臍帯さいたい細胞さいぼうわかさでは、臍帯さいたい骨髄こつづい末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼうとなる。慢性まんせいGVHDのリスクのおおきさも末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう骨髄こつづい臍帯さいたいとなる[26]<[27][28][29]

骨髄こつづい移植いしょくくらべて臍帯さいたい移植いしょく利点りてん不利ふりてん
利点りてん 不利ふりてん
HLA不一致ふいっちでも移植いしょく可能かのう
ドナー探索たんさく必要ひつよう時間じかんみじか短期間たんきかん移植いしょく可能かのう
GVHDのリスクがすくない
ドナー(新生児しんせいじ母体ぼたい)への負担ふたん
ドナー由来ゆらい感染かんせんしょうのリスクがすくない
なまちゃく不全ふぜん可能かのうせい
移植いしょく経験けいけん知見ちけん観察かんさつ期間きかんすくない
造血ぞうけつ回復かいふくおそ
どういちドナーからのさい移植いしょく・ドナーリンパだま輸注が不可能ふかのう
ドナーに遺伝いでんてき疾患しっかんがあった場合ばあい伝播でんぱ可能かのうせい
-(浅野あさのほか(2006), p. 834)およ神田かんだ よししん 編集へんしゅう『みんなに役立やくだ造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょく基礎きそ臨床りんしょう上巻じょうかん、p.255[30]改変かいへん

臍帯さいたいからの採取さいしゅ

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臍帯さいたい採取さいしゅは、出産しゅっさん直後ちょくご新生児しんせいじ臍帯さいたいはなしたのちにおこなわれる。新生児しんせいじ出産しゅっさんほどなくして胎盤たいばん母体ぼたいからてくるが(後産あとざんおおくの場合ばあいでは後産あとざんまえ採取さいしゅされる。具体ぐたいてき採取さいしゅ方法ほうほう施設しせつによって多少たしょうことなるが、出産しゅっさん新生児しんせいじちか部分ぶぶん臍帯さいたいはなされる。新生児しんせいじからはなされた臍帯さいたい表面ひょうめん消毒しょうどくし、チューブで採取さいしゅようぶくろにつながれた採取さいしゅようはり臍帯さいたい血管けっかん重力じゅうりょく自然しぜん臍帯さいたいながてくるのを採取さいしゅようバッグに採取さいしゅする[31]一滴いってきでもおお採取さいしゅするため、臍帯さいたい出来できるだけ新生児しんせいじがわり、最後さいごはチューブをしごいてすべて採取さいしゅするようにする[32][33]臍帯さいたい移植いしょくでは、ゆうかく細胞さいぼうすう多寡たか重要じゅうようゆうかく細胞さいぼうすうすくない臍帯さいたい使用しようされない傾向けいこうにあるので、臍帯さいたいは1てきでもおお採取さいしゅすることが肝要かんよう[32]最低さいていでもゆうかく細胞さいぼうすう8おく 臍帯さいたいりょうにして60ml(2007ねん以降いこう)が最低さいてい採取さいしゅりょうであり[註 2][16]、これ以下いか移植いしょくには使つかわれず研究けんきゅうようとなる。臍帯さいたい採取さいしゅとも母体ぼたいからも検査けんさよう血液けつえき採取さいしゅ臍帯さいたいとともに臍帯さいたいバンクにおくられる[32]

臍帯さいたい保存ほぞん移植いしょく

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採取さいしゅされた臍帯さいたい臍帯さいたいバンクにおくられる。臍帯さいたいバンクでは検査けんさ細胞さいぼう処理しょりうえ臍帯さいたい液体えきたい窒素ちっそ冷凍れいとう保存ほぞんし、移植いしょくのときを[34]

採取さいしゅされた臍帯さいたいには、造血ぞうけつみき細胞さいぼうばかりでなく、赤血球せっけっきゅう白血球はっけっきゅう血小板けっしょうばん血漿けっしょうなどがふくまれる。赤血球せっけっきゅう血小板けっしょうばん血漿けっしょう移植いしょくには不要ふようなものであり、また移植いしょく時点じてんではことがたである赤血球せっけっきゅう移植いしょくける患者かんじゃにはむしろ有害ゆうがいである。また、液体えきたい窒素ちっそタンクのかぎられたスペースを有効ゆうこう利用りようするため不要ふよう成分せいぶんのぞ必要ひつようもある[34][35]

そのため採取さいしゅ病院びょういんからとどけられた臍帯さいたいバンクでは細胞さいぼう処理しょりおこなったうえで凍結とうけつ保存ほぞんする[34]

臍帯さいたいはまずは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)をくわえて赤血球せっけっきゅう凝集ぎょうしゅうさせて遠心えんしん分離ぶんり、あるいは特殊とくしゅなバックをもちいて遠心えんしん分離ぶんりして余分よぶん赤血球せっけっきゅう血漿けっしょうのぞ[34][35]検査けんさようのサンプルをとり、凍害とうがい保護ほございくわえて凍結とうけつバックにうつしたのち凍結とうけつ保存ほぞんされる。凍害とうがい保護ほござい添加てんか必要ひつようなのは臍帯さいたいをそのまま凍結とうけつするとこおりあきら脱水だっすいによって造血ぞうけつみき細胞さいぼう破壊はかいされるためである。凍結とうけつ保存ほぞんされた臍帯さいたい使用しようするさいは、液体えきたい窒素ちっそこおらせたまま、移植いしょく施設しせつはこび、移植いしょく直前ちょくぜんに37℃の温水おんすい解凍かいとうする。そのさい凍害とうがい保護ほござい患者かんじゃ悪影響あくえいきょうあたえることがあるので(とくからだちいさい小児しょうにでは)解凍かいとうした臍帯さいたい洗浄せんじょうしてから移植いしょくもちいることもおお[34]臍帯さいたい移植いしょく移植いしょくっても実際じっさいには静脈じょうみゃく点滴てんてきするだけである。血液けつえき循環じゅんかん体内たいないめぐり、骨髄こつづいにたどりいて造血ぞうけつみき細胞さいぼうはそこに定着ていちゃくする[36][37]

副作用ふくさよう

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細菌さいきん感染かんせんしょうや、ヒトヘルペスウイルス6がた(HHV-6)脳炎のうえんが、「骨髄こつづい」「末梢まっしょう移植いしょく比較ひかくおおいと指摘してきされている[38]

活用かつよう体制たいせい

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1992ねん New York Blood Centerのルビンシュタイン博士はかせらによって世界せかいはつ臍帯さいたいバンク(New York Cord Blood Bank)が設立せつりつされ、その臍帯さいたいバンクはデュッセルドルフパリミラノなどに設置せっちされ、さらに世界せかい各地かくちひろまっていった[39]

2012ねん現在げんざい世界せかいてき骨髄こつづいドナー検索けんさくシステム(Bone Marrow Donors Worldwide :BMDW)が構築こうちくされ、骨髄こつづいかんしては48カ国かこく66の骨髄こつづいバンクが参加さんかしているが、臍帯さいたいでも29カ国かこくから43の臍帯さいたいバンクがBMDWに参加さんかし、登録とうろくされた臍帯さいたいのストックは51まんほんになっている[40]。BMDWで検索けんさくされた骨髄こつづい臍帯さいたい提供ていきょう品質ひんしつ管理かんりなどで国際こくさいあいだ協力きょうりょくする組織そしきとしてはThe World Marrow Donor Association (WMDA)がある[41]

日本にっぽん国内こくないでは1995ねんから私的してきかたち神奈川かながわ臍帯さいたいバンクついで近畿きんき臍帯さいたいバンクが設立せつりつされ、2000ねん以降いこう厚生省こうせいしょうによる整備せいびによって2004ねんまでに11の公的こうてきさいたいバンクが、善意ぜんい提供ていきょうけた臍帯さいたい保存ほぞんするという体制たいせいととのえられており、造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくではこれらの臍帯さいたいでまかなわれている[42]。ただし、3バンクはその事業じぎょう停止ていしバンクに移管いかんしたので2012ねんでは実質じっしつは8バンクである。2012ねん現在げんざい2まん8せんほんあまりの臍帯さいたいのストックがあり、2011ねんでは1年間ねんかんにおよそ1100けん臍帯さいたい移植いしょくおこなわれている[43][44]

欠点けってん克服こくふく研究けんきゅう

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臍帯さいたい移植いしょく方法ほうほう骨髄こつづい移植いしょく末梢まっしょう動員どういんみき細胞さいぼう移植いしょく)にくらべて欠点けってんひとつは細胞さいぼうすうすくないためになまちゃくりつわるいことである。なまちゃくりつわるさをカバーするためにいくつかの方法ほうほう研究けんきゅうされている。臍帯さいたい通常つうじょう静脈じょうみゃくから輸注(点滴てんてき)でれられ体内たいないめぐるが、造血ぞうけつみき細胞さいぼう骨髄こつづいとどくまでにはいなどの組織そしきつかまる細胞さいぼうおおいとかんがえられている。そのために骨髄こつづいない直接ちょくせつ臍帯さいたいれる方法ほうほうためされているが、2011ねん現在げんざいのところまではなまちゃくりつ向上こうじょうったメリットははっきりしていない。また、臍帯さいたいを2ユニット(2人ふたり臍帯さいたい)の移植いしょくおこな方法ほうほうためされている。2つの臍帯さいたい同時どうじ移植いしょくされるが移植いしょく100にちまでには移植いしょくされた2ユニットの細胞さいぼうのどちらかが優位ゆういになる(なまちゃくりつわるさをカバーする目的もくてきなので2ユニットの臍帯さいたい造血ぞうけつみき細胞さいぼうのどちらか一方いっぽうのこってくれればい)。複数ふくすう臍帯さいたい移植いしょくではなまちゃくりつく、再発さいはつりつひく傾向けいこうにあるが、急性きゅうせいGVHDおお傾向けいこうにある[25]

日本にっぽんにおける臍帯さいたい移植いしょく

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日本にっぽん臍帯さいたい移植いしょく件数けんすう世界せかい最多さいたであり[45][46][47]、2007ねんまでのデータでは3546けん血縁けつえんしゃあいだ臍帯さいたい移植いしょく公的こうてきバンク)がおこなわれ、これは世界せかいの4わりめる[48]日本にっぽんでは2011ねんには1100けん臍帯さいたい移植いしょくおこなわれ[44]、2012ねん5がつでは日本にっぽんでの臍帯さいたい移植いしょくそう件数けんすうは8400けんえ、2012ねんまでの累計るいけいでも日本にっぽんでの臍帯さいたい移植いしょく世界せかいそう臍帯さいたい移植いしょく件数けんすうやく1/3をめている[49]。アメリカやヨーロッパの人口じんこう(それぞれ3おくにん以上いじょう)と日本にっぽん人口じんこう(1おくにんきょう)を考慮こうりょすると、日本にっぽんでは臍帯さいたい移植いしょく非常ひじょうおおおこなわれているといえる。(欧米おうべいでは血縁けつえんしゃあいだでのみき細胞さいぼう動員どういん末梢まっしょう移植いしょく(PBSCT)がおおい。日本にっぽんではなが血縁けつえんしゃあいだでのPBSCTはみとめられておらず、2010ねんから日本にっぽんでも血縁けつえんしゃあいだでのPBSCTはみとめられるようになったが、欧米おうべいでの実績じっせきくらべるとゼロにひとしい)。2015ねんにおいても世界せかい臍帯さいたい移植いしょく累計るいけいやく1/3が日本にっぽんおこなわれている。2015ねん日本にっぽんでは臍帯さいたい移植いしょく年間ねんかんやく1200けんおこなわれ、累計るいけいでは12853けんとなっている。日本にっぽん臍帯さいたい移植いしょくおお理由りゆうとしては保険ほけん制度せいど欧米おうべいより費用ひようやすむことと、日本人にっぽんじん体格たいかく一般いっぱん欧米おうべいじんよりちいさいので細胞さいぼうすうすくない臍帯さいたいでも移植いしょく可能かのうなどの理由りゆうがあげられている[47][註 3]日本にっぽんでは臍帯さいたいバンクは2018ねん現在げんざい6バンク[註 4]である。臍帯さいたい採取さいしゅには医療いりょうスタッフすう充実じゅうじつ設備せつび一定いってい基準きじゅん達成たっせいや、スタッフの技術ぎじゅつ必要ひつようなのでどの病院びょういんでも採取さいしゅできるわけではない。2012ねん5がつ現在げんざいでは臍帯さいたい採取さいしゅ病院びょういんは98ある。2018ねん現在げんざい採取さいしゅされた臍帯さいたい調製ちょうせい保存ほぞんする臍帯さいたいバンクは以下いかとおりである[4][50][51]

血縁けつえんしゃあいだ臍帯さいたい移植いしょく方針ほうしんれい、(いち(2013))より引用いんよう
  1. レシピエントのHLA抗体こうたいのスクリーニングをおこない、抗体こうたい保有ほゆう判明はんめいした場合ばあいには、その標的ひょうてきとなるHLAを発現はつげんしないさいたいユニットを優先ゆうせんてき選択せんたくする。
  2. 15さい以下いか症例しょうれいたいしては、一定いっていゆうかく細胞さいぼうすう確保かくほされていればHLA適合てきごうたかいさいたい優先ゆうせんてき選択せんたくする。
  3. 16さい以上いじょう症例しょうれいたいしては、HLA適合てきごうにかかわらずゆうかく細胞さいぼうすうおおいさいたい優先ゆうせんてき選択せんたくする。

2018ねん5がつ現在げんざい臍帯さいたいれをしている臍帯さいたいバンク

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  • 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ北海道ほっかいどうさいたいバンク
  • 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ関東甲信越かんとうこうしんえつさいたいバンク[註 5]
  • 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 中部ちゅうぶさいたいバンク[註 6]
  • 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ近畿きんきさいたいバンク
  • 特定とくてい営利えいり活動かつどう法人ほうじん 兵庫ひょうごさいたいバンク
  • 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ九州きゅうしゅうさいたいバンク[50][註 7]

日本にっぽん臍帯さいたいバンクの問題もんだい

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日本にっぽん臍帯さいたい移植いしょく世界せかい最多さいたほこるが、その臍帯さいたい移植いしょくささえる公的こうてき臍帯さいたいバンクがかかえる問題もんだい資金しきんなんである[45][16]日本にっぽんには公的こうてきバンクは11あったが、そのうち3つのバンクは活動かつどう中止ちゅうしし、公的こうてきバンクに業務ぎょうむ移管いかんしている。関係かんけい各位かくいからは臍帯さいたい保険ほけん点数てんすうげがもとめられていた[45]。2012ねん臍帯さいたい移植いしょくへの診療しんりょう報酬ほうしゅう骨髄こつづい移植いしょく同額どうがくげられ、臍帯さいたいバンクへの配分はいぶんも 2012ねん3がつまでは17,400てん(1てん10えん)だったのが[46]、40,800てんげられた[49]

民間みんかん臍帯さいたいバンク(私的してき保存ほぞん

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一方いっぽう臍帯さいたい将来しょうらい再生さいせい医療いりょうでの利用りよう期待きたいして、自身じしん臍帯さいたい子供こども本人ほんにんのために保存ほぞんしておくというビジネス(民間みんかん臍帯さいたいバンク)が米国べいこく中心ちゅうしん拡大かくだいしている。日本にっぽんでも自己じこ臍帯さいたい私的してき保管ほかん事業じぎょうおこなっている会社かいしゃ数社すうしゃ存在そんざいする[52][53]。ただし、民間みんかん臍帯さいたいバンクによる私的してき保存ほぞんについては利用りようできる細胞さいぼうすうについての懸念けねん自己じこさいたい移植いしょくについてのデータがすくないことなどが表明ひょうめいされている[54]自己じこ臍帯さいたいではGVHDいというメリットがあるかわりに、GVL効果こうか移植いしょくへんたい白血病はっけつびょうリンパ腫りんぱしゅ骨髄腫こつづいしゅ効果こうか)がないので白血病はっけつびょうリンパ腫りんぱしゅ再発さいはつりつたかいというデメリットがあり、細胞さいぼうすう保障ほしょうされないてん決定的けっていてき不利ふり条件じょうけんである。また、臍帯さいたい採取さいしゅれていない医師いしによって採取さいしゅされた臍帯さいたいには細菌さいきん混入こんにゅうしている可能かのうせいもある。成人せいじんへの移植いしょくにはゆうかく細胞さいぼう8おく目安めやすだが、ゆうかく細胞さいぼうが8おく以上いじょう臍帯さいたいは3わり程度ていどであり、有料ゆうりょう保存ほぞんしておいた自己じこ臍帯さいたいがいざとうときには細胞さいぼうすう不足ふそくで、結局けっきょく使つかえないというケースがおおいことが予想よそうされる。みき細胞さいぼうやす技術ぎじゅつ確実かくじつなものでは[54]。 また、日本にっぽんでは私的してき保存ほぞんおこなっている民間みんかん臍帯さいたいバンクのひとつが2009ねん12月に倒産とうさんし、倒産とうさんした臍帯さいたいバンクの社長しゃちょう同業どうぎょう民間みんかん臍帯さいたいバンクへの移管いかんは「引受ひきうけさきにきちんとした保管ほかん技術ぎじゅつ施設しせつがあるかどうかからず、どうあつかわれるか心配しんぱいだ」とはなしているとのことである[55]

新生児しんせいじ自己じこ輸血ゆけつソースとしての臍帯さいたい

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臍帯さいたい新生児しんせいじ自身じしん血液けつえきであるので、れいすくないものの新生児しんせいじ輸血ゆけつ必要ひつようになったさい臍帯さいたい新生児しんせいじ自身じしん輸血ゆけつすることがある。自己じこ輸血ゆけつなので副作用ふくさようすくない利点りてんがある。

新生児しんせいじ外科げか疾患しっかんでは、エコー検査けんさなどの出産しゅっさんぜん検査けんさ進歩しんぽによって出産しゅっさんまえに「出産しゅっさん早期そうき手術しゅじゅつ必要ひつよう」と判明はんめいするケースがある。そのようなケースで出生しゅっしょう2週間しゅうかん以内いない手術しゅじゅつすると見込みこまれるさいには、出産しゅっさん臍帯さいたい採取さいしゅ保存ほぞんして手術しゅじゅつ輸血ゆけつ必要ひつようになったら保存ほぞんしていた自己じこ臍帯さいたい輸血ゆけつすることがある。自己じこなので副作用ふくさようすくないメリットがある。臍帯さいたい自己じこ輸血ゆけつ積極せっきょくてき病院びょういんれいでは、出生しゅっしょう2週間しゅうかん以内いない外科げか手術しゅじゅつしたケースの89%で輸血ゆけつ必要ひつようになり、その63%では自己じこ臍帯さいたいだけで輸血ゆけつよう血液けつえきりた。しかしながら新生児しんせいじ手術しゅじゅつため自己じこ臍帯さいたい採取さいしゅ保存ほぞんすることはかぎられた施設しせつでしかおこなわれていない。輸血ゆけつため臍帯さいたい採取さいしゅ保存ほぞんするには人手ひとで設備せつび技術ぎじゅつ十分じゅうぶんいとむずかしい。産科さんか医院いいんではスタッフ不足ふそくなやんでいるところがおおく、また臍帯さいたい採取さいしゅ保存ほぞん設備せつび不足ふそくしている病院びょういんおおいためである[14]

また、早産そうざんでは貧血ひんけつのケースがおおく、貧血ひんけつ改善かいぜんするために、出生しゅっしょう臍帯さいたいおくんでやることがある。新生児しんせいじ臍帯さいたい結紮けっさつするのをおくらせたり、臍帯さいたいをしごいたりして臍帯さいたいない血液けつえき新生児しんせいじおく[56]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 臍帯さいたい移植いしょくはHLA2不一致ふいっちでも移植いしょく可能かのうなとはいってもあくまでもHLA一致いっちドナーがつからないさい緊急きんきゅう避難ひなんてき移植いしょくであり、けっして積極せっきょくてきおこなわれるべきではないとされる(はらひろし(2006), p. 2-3)
  2. ^ 臍帯さいたい最低さいてい採取さいしゅりょう初期しょきにはゆうかく細胞さいぼうすう3おく以上いじょうでこれは体重たいじゅうが15kgまでの小児しょうににしか移植いしょくできなかったが、2003ねんには6おく以上いじょうとなり体重たいじゅうが30kgまでの小児しょうに移植いしょく可能かのうで、2007ねん以降いこうは8おく以上いじょうとなり、これは成人せいじんにも移植いしょく可能かのうである。-出典しゅってん 中村なかむら正雄まさお臍帯さいたいバンク」『しゅうさん医学いがく』Vol.41 No.9、東京とうきょう医学いがくしゃ、2011ねん、pp.1183-1187 もっとも、これはバンクに保存ほぞんされる最低さいていりょうであって、2007ねん以前いぜんにも十分じゅうぶんりょう臍帯さいたい確保かくほされており、日本にっぽんでは早期そうきから成人せいじんへの臍帯さいたい移植いしょくおこなわれている。
  3. ^ 2006-2008ねんの3年間ねんかん累計るいけいでは世界せかいやく3まんけん血縁けつえんしゃあいだ造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくおこなわれたが、そのうち54%が末梢まっしょう血幹けっかん細胞さいぼう移植いしょく、27%が骨髄こつづい移植いしょく臍帯さいたい移植いしょくは19%にぎないが、日本にっぽんでは骨髄こつづい移植いしょくが3001けん57%、末梢まっしょう血幹けっかん細胞さいぼう移植いしょくは5けん0.1%、臍帯さいたい移植いしょくは2262けん43%と欧米おうべい日本にっぽんでは移植いしょく様相ようそうことなる(内田うちだ直之なおゆき(2016))
  4. ^ 日本にっぽん臍帯さいたいバンクは11あったが、神奈川かながわ臍帯さいたいバンクと宮城みやぎさいたいバンク、中国ちゅうごく四国しこく臍帯さいたいバンク、東京とうきょう臍帯さいたいバンク、東海大学とうかいだいがくさいたいバンクは事業じぎょう継続けいぞくむずかしいため、のバンクに移管いかん事業じぎょう中止ちゅうししたため、現在げんざいは6バンクである。
  5. ^ 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ関東甲信越かんとうこうしんえつさいたいバンクはきゅう 東京とうきょう赤十字血液せきじゅうじけつえきセンター臍帯さいたいバンク)神奈川かながわ臍帯さいたいバンク採取さいしゅ施設しせつぶん調製ちょうせい保存ほぞん日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ関東甲信越かんとうこうしんえつさいたいバンクがおこなっている。-出典しゅってん日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ関東甲信越かんとうこうしんえつさいたいバンク・設立せつりつ沿革えんかく[リンク] 2012ねん5がつ29にち閲覧えつらん
  6. ^ 2012ねん8がつ東海とうかい臍帯さいたいバンクから一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 中部ちゅうぶさいたいバンクに名称めいしょう変更へんこう。ー出典しゅってん 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 中部ちゅうぶさいたいバンク 設立せつりつ沿革えんかく 2018ねん5がつ6にち閲覧えつらん
  7. ^ かく臍帯さいたいバンクと提携ていけいしている産科さんか医院いいんについては日本にっぽんさいたいバンクネットワーク・さいたい提供ていきょうしたい > 提携ていけい産科さんか施設しせつ参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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  2. ^ 臍帯さいたいバンク 日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃ
  3. ^ 兵庫ひょうごさいたいバンク・さいたいってなに? 2012ねん5がつ2にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 日本にっぽんさいたいバンクネットワーク・さいたいってなあに?(2012ねん5がつ27にち時点じてんアーカイブ) 2012ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c d 浅野あさのほか(2006), p. 833.
  6. ^ a b c 神田かんだ よししん 編集へんしゅう『みんなに役立やくだ造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょく基礎きそ臨床りんしょう上巻じょうかん医薬いやくジャーナル、2008ねんISBN 978-4-7532-2324-4、pp.255-263
  7. ^ 日本にっぽんさいたいバンクネットワーク・さいたい提供ていきょうしたい > さいたい採取さいしゅ方法ほうほう 2016ねん10がつ3にち閲覧えつらん
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  16. ^ a b c 中村なかむら正雄まさお臍帯さいたいバンク」『しゅうさん医学いがく』Vol.41 No.9、東京とうきょう医学いがくしゃ、2011ねん、pp.1183-1187
  17. ^ 浅野あさのほか(2006), p. 838.
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参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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