菊きくと刀かたな

菊きくと刀かたな The Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture
著者ちょしゃ	ルース・ベネディクト
発行はっこう日び	1946年ねん
発行はっこう元もと	ホートン・ミフリン
ジャンル	歴史れきし/人類じんるい学がく
国くに	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
言語げんご	英語えいご
形態けいたい	上うえ製本せいほん
ページ数すう	324ページ（初版しょはん）
コード	ISBN 0-395-50075-3
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『菊きくと刀かたな』（きくとかたな、原題げんだい：The Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture）は、米国べいこくの文化ぶんか人類じんるい学者がくしゃルース・ベネディクトによる、日本にっぽんの文化ぶんかを説明せつめいした文化ぶんか人類じんるい学がくの著作ちょさくである。

概要がいよう

『菊きくと刀かたな』は、ベネディクトの戦時せんじ中なかの調査ちょうさ研究けんきゅうをもとに1946年ねんに出版しゅっぱんされた。ベネディクトは、フランツ・ボアズより教おそわった急進きゅうしん的てきな文化ぶんか相対そうたい主義しゅぎの概念がいねんを日本にっぽん文化ぶんかに適用てきようするべく、恩おんや義理ぎりなどといった日本にっぽん文化ぶんか『固有こゆう』の規範きはんを分析ぶんせきした。本書ほんしょは戦争せんそう情報じょうほう局きょくの日本にっぽん班はんチーフだったベネディクトがまとめた5章しょうから成なる報告ほうこく書しょ「Japanese Behavior Patterns　(日本人にっぽんじんの行動こうどうパターン)」を基もとに執筆しっぴつされた。日本にっぽん国内こくないでは1948年ねん12月28日にち、長谷川はせがわ松治まつじ訳わけが社会しゃかい思想しそう研究けんきゅう会かい出版しゅっぱん部ぶから出版しゅっぱんされた。

倉くら智さとし恒夫つねおによれば、『菊きくと刀かたな』の認識にんしきパターンは、フランス人ひとのルイ・カザミヤンによるイギリス論ろん『イギリス魂たましい-その歴史れきし的てき風貌ふうぼう』（1927年ねん、訳書やくしょは現代げんだい教養きょうよう文庫ぶんこ）と共通きょうつうするものがあるという。

ベネディクトは、日本にっぽんを訪おとずれたことはなかったが、日本にっぽんに関かんする文献ぶんけんの熟読じゅくどくと日系にっけい移民いみんとの交流こうりゅうを通つうじて、日本にっぽん文化ぶんかの解明かいめいを試こころみた。『菊きくと刀かたな』はアメリカ文化ぶんか人類じんるい学がく史上しじょう最初さいしょの日本にっぽん文化ぶんか論ろんである。

『菊きくと刀かたな』は日本にっぽん文化ぶんかの行動こうどう規範きはんの独自どくじ性せいを強調きょうちょうする。しかし、懐疑かいぎする傾向けいこうも見みられる。すなわち日本にっぽん文化ぶんかが西洋せいよう文化ぶんかとは対極たいきょくの位置いちに置おかれていることに、批判ひはんの目めが向むけられている。また、日本にっぽんの文化ぶんかを他者たしゃとの相対そうたい的てきな空気くうきを意識いしきする「恥はじの文化ぶんか」と指摘してきし、欧米おうべいの文化ぶんかを自律じりつ的てきな良心りょうしんを意識いしきする「罪つみの文化ぶんか」と定義ていぎ、倫理りんり的てきに後者こうしゃが優すぐれているとの主張しゅちょうを展開てんかいし、そのことへの批判ひはんもある。

評価ひょうか

作家さっかのポリー・プラットは、著書ちょしょ「フランス人じん　この奇妙きみょうな人ひとたち」の日本語にほんご版ばんへの序文じょぶんで、「菊きくと刀かたな」により日本にっぽんの文化ぶんかのすばらしさを知しったと述のべている。ハリー・スタック・サリヴァンも出版しゅっぱん後ご早期そうきに書評しょひょうを書かいている。

左派さは的てき活動かつどうでも知しられる日本にっぽん文化ぶんか研究けんきゅう家か、ダグラス・ラミスは著書ちょしょ『内うちなる外国がいこく』で、『菊きくと刀かたな』には、未開みかい民族みんぞくを見みるようなまなざしがあるとして批判ひはんしている。また、高野たかの陽太郎ようたろうは「日本人にっぽんじんは集団しゅうだん主義しゅぎである」という誤あやまった通説つうせつが広ひろまったきっかけであるとしている。加藤かとう恭子きょうこは著書ちょしょで、戦時せんじ中ちゅうに書かかれたものゆえ、罪つみの文化ぶんかのほうが恥はじの文化ぶんかより優すぐれているという視点してんから書かかれており、日本人にっぽんじんは非ひ道徳どうとくな国民こくみんという印象いんしょう付づけがなされたとしている。

書名しょめい

ベネディクトが最初さいしょに考かんがえていたタイトルは“We and the Japanese”だったが、執筆しっぴつ中ちゅうに“Japanese Character”に変更へんこう、I章しょうを読よんだ段階だんかいで出版しゅっぱん社しゃは、第だいI章しょうにつけられた“Assignment: Japan”がよいとした。ベネディクトは同意どういしたものの、初期しょきの自身じしんの代表だいひょう作さくである"Patterns of Culture"を使つかった“Patterns of Culture: Japan”への変更へんこうを希望きぼう、容いれられない場合ばあいは、日本にっぽんに行いったことがないので“Assignment: Japan”ではなく“Assignment: The Japanese”にしてほしいと要望ようぼうした。その後ご出版しゅっぱん社しゃは“Patterns of Japanese Culture”を提案ていあんするも、編集へんしゅう会議かいぎで“The Curving Blade”、“The Porcelain Rod”、“The Lotus and the Sword”の3案あんが浮上ふじょうしたことを告つげ、とくに“The Lotus and the Sword”を推おしてきたため、ベネディクトはLotus（蓮はちす）を菊きくに変かえることを希望きぼうし現げん題だいに決定けっていした。

主おもな訳書やくしょ

• 『菊きくと刀かたな―日本にっぽん文化ぶんかの型かた』長谷川はせがわ松治まつじ訳わけ、講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2005年ねん
• 『菊きくと刀かたな』角田つのだ安正やすまさ訳わけ、光文社こうぶんしゃ古典こてん新訳しんやく文庫ぶんこ、2008年ねん
• 『菊きくと刀かたな―日本にっぽん文化ぶんかの型かた』越智おち敏之としゆき・越智おち道雄みちお訳わけ、平凡社へいぼんしゃライブラリー、2013年ねん

参考さんこう文献ぶんけん

• マーガレット・ミード編著へんちょ 『人類じんるい学者がくしゃルース・ベネディクト その肖像しょうぞうと作品さくひん』 松園まつぞの万よろず亀雄かめお訳わけ 社会しゃかい思想しそう社しゃ 1977
• 西にし義之よしゆき 『新しん・「菊きくと刀かたな」の読よみ方かた 戦後せんご日本にっぽんと日本人にっぽんじんの変容へんようの歴史れきしを再さい点検てんけんする』 PHP研究所けんきゅうじょ 1983
• マーガレット・M.カフリー 福井ふくい七子ななこ,上田うえだ誉ほまれ志美しび訳やく『さまよえる人ひとルース・ベネディクト』 関西大学かんさいだいがく出版しゅっぱん部ぶ 1993
• 副田そえだ義也よしや『日本にっぽん文化ぶんか試論しろん ベネディクト『菊きくと刀かたな』を読よむ』 新しん曜社 1993
  • 『副田そえだ義也よしや社会しゃかい学がく作品さくひん集しゅう　第だい6巻かん　『菊きくと刀かたな』ふたたび』東あずま信しん堂どう 2019
• ポーリン・ケント『『菊きくと刀かたな』のうら話ばなし』 国際こくさい日本にっぽん文化ぶんか研究けんきゅうセンター 1998
• 森もり貞彦さだひこ『『菊きくと刀かたな』再さい発見はっけん』 東京とうきょう図書としょ出版しゅっぱん会かい 2002
• ヒラリー・ラプスリー 『マーガレット・ミードとルース・ベネディクト』 伊藤いとう悟さとる訳わけ 明石書店あかししょてん 2002
• 森もり貞彦さだひこ『みなしご「菊きくと刀かたな」の嘆なげき 学界がっかいの巨頭きょとうたちが犯おかした大過たいか』 東京とうきょう図書としょ出版しゅっぱん会かい 2003
• 長野ながの晃子あきこ『「恥はじの文化ぶんか」という神話しんわ』 草くさ思おもえ社しゃ 2009
• 森もり貞彦さだひこ『「菊きくと刀かたな」注解ちゅうかい』　オンブック（上うえ・下した） 増ぞう訂てい版ばん2010
• 森もり貞彦さだひこ『「菊きくと刀かたな」の読よみ方かた　未来みらいの文明ぶんめいのために』 東京とうきょう図書としょ出版しゅっぱん 2015
• 森もり貞彦さだひこ『「菊きくと刀かたな」から見渡みわたせば　理性りせいを超こえた地平ちへいの風景ふうけい』 風ふう詠えい社しゃ 2016

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽん学がく
• 文化ぶんか人類じんるい学がく
• 日本人にっぽんじん論ろん
• 本音ほんねと建前たてまえ
• 場ばの空気くうき