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行為こうい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

行為こうい(こうい)とは、ひと意志いし意思いし)にもとづいてすること。また、行動こうどうすること。

哲学てつがくじょう行為こうい

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日常にちじょう用語ようごはともかくとして、哲学てつがくではひと行為こうい行動こうどうとはきびしく区別くべつしなければならない。たとえば同一どういつ走行そうこうという行動こうどうを、逃走とうそう追跡ついせきというふたつの行為こうい区別くべつするのはその行動こうどうしゃ自覚じかくてき内的ないてき意図いとによる(今道いまみち友信とものぶ[よう出典しゅってん]

法律ほうりつじょう行為こうい

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刑法けいほうがくじょう行為こうい行為こういろん

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刑法けいほうがくにおいて、行為こうい犯罪はんざい評価ひょうか基底きていとなる重要じゅうよう要素ようそである。行為こういをどのように定義ていぎするかについては、古典こてん近代きんだい学派がくは双方そうほう諸説しょせつある。こうがくじょう実定法じっていほう(35じょう 、36じょう、37じょう、39じょう、41じょう、54じょう1こうなど)でも犯罪はんざい概念がいねん根本こんぽんとなる。刑法けいほうにおける行為こういすくなくとも外界がいかいあらわれた「身体しんたいてき動静どうせい」でなければならず、犯罪はんざい行為こういであるなら内心ないしん意思いしのみでは犯罪はんざい構成こうせいするとしてはならない。また、過失かしつはん作為さくいはん刑法けいほう処罰しょばつする以上いじょう行為こういろんはこれらを網羅もうらする必要ひつようがある。そのため、さまざまな議論ぎろんがなされてきた。行為こういろんには構成こうせい要件ようけんてき行為こういろん一般いっぱんてき行為こういそのものを問題もんだいとするはだか行為こういろんがある[1]

行為こういとは

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日本にっぽん刑法けいほうがくうえ用語ようごとしては、行為こういは「ひと意思いしもとづく身体しんたい動静どうせい」と定義ていぎするのが伝統でんとうてき通説つうせつである。周囲しゅうい事物じぶつ因果いんがながれに変動へんどうおよぼす行為こういたとえば、刑法けいほうでは、放置ほうちしておけばそのまま生存せいぞんつづけていたはずの被害ひがいしゃを、その頚部けいぶ圧迫あっぱくして窒息ちっそくさせること)を作為さくい(さくい)といい、みずからの意思いしもとづきえて周囲しゅうい事物じぶつ因果いんがながれに変動へんどうおよぼさない行為こういたとえば、あしすべらせてかわ転落てんらくした被害ひがいしゃを、えて救助きゅうじょせずにそのまま放置ほうちすること)を作為さくいという。行為こういがなければ犯罪はんざい成立せいりつしないという意味いみにおいて、刑法けいほうがくではともに行為こういである。また、刑法けいほう以外いがい法律ほうりつ用語ようごにおいてはある一定いってい法律ほうりつ行為こうい事実じじつ行為こういのことを「○○行為こうい」と形容けいようすることがある。以下いかでいくつかげる。刑法けいほうがくにおいて、「行為こうい」は2つの意味いみゆうする。一方いっぽうは、いわゆる「狭義きょうぎ行為こうい」(どく;Handlung)であり、それによってしょうじた作用さよう結果けっか捨象しゃしょうした概念がいねんであり、他方たほうの「広義こうぎ行為こうい」(「所為しょい」とも。どく;Tat)は、狭義きょうぎ行為こういによる作用さよう結果けっかふく概念がいねんである。犯罪はんざいとして評価ひょうかされるのは広義こうぎ行為こういであって、狭義きょうぎ行為こういはその構成こうせい要素ようそぎないことに注意ちゅういようする。以下いか狭義きょうぎ行為こういについて説明せつめいする。

実行じっこう行為こうい

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基本きほんてき構成こうせい要件ようけん該当がいとうする行為こうい実行じっこう行為こういという。かつては、形式けいしきてき客観きゃっかんてき見地けんちから実行じっこう行為こういにあたるかを確定かくていすることが重要じゅうようされていたが、共謀きょうぼう共同きょうどう正犯せいはん間接かんせつ正犯せいはん原因げんいんにおいて自由じゆう行為こうい未遂みすいはんにおける危険きけん概念がいねんなど、あたらしい理論りろん登場とうじょうしたため、犯罪はんざいろんにおける実行じっこう行為こうい概念がいねんはそれにおうじて変容へんようしつつある。

実行じっこう行為こうい概念がいねんについては、形式けいしきてき客観きゃっかんせつ実質じっしつてき客観きゃっかんせつ対立たいりつがあるが、実質じっしつてき客観きゃっかんせつ有力ゆうりょくであり、これによれば

犯罪はんざい実現じつげん現実げんじつてき危険きけんせいゆうする行為こうい

構成こうせい要件ようけんてき結果けっか発生はっせい現実げんじつてき危険きけんせいゆうする行為こうい

法益ほうえき侵害しんがい現実げんじつてき危険きけんせいゆうする行為こうい」などといわれる。

この3つの表現ひょうげんちがいは用語ようごちがいにすぎず、意味いみするところはほぼおなじといえる。

正犯せいはんかんする有力ゆうりょく学説がくせつである制限せいげんてき正犯せいはん概念がいねん-形式けいしきてき客観きゃっかんせつ規範きはんてき正犯せいはん概念がいねん)によると、「実行じっこう行為こういみずから(みずからので)おこなもの」を正犯せいはんという。

実行じっこう行為こうい危険きけんせい有無うむ
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実行じっこう行為こういは「危険きけんせい」をゆうするものでなければならず、危険きけんせい有無うむによって実行じっこう行為こうい不能ふのうはんかが区別くべつされる。危険きけんせい有無うむ判断はんだん基準きじゅんについては、一般いっぱん通常つうじょうじん判断はんだんによって判断はんだんするという危険きけんせつ有力ゆうりょくである。(たとえば、手近てぢかにあったピストルをったが、じつ水鉄砲みずでっぽうであったという場合ばあい

とくに「行為こういにおいて、一般人いっぱんじん認識にんしき事情じじょうと、行為こういしゃ認識にんしきしていた事情じじょう基礎きそとして、(一般いっぱん通常つうじょうじん判断はんだんによって)判断はんだんする」という具体ぐたいてき危険きけんせつ有力ゆうりょくである。

実行じっこう行為こうい開始かいし時期じき着手ちゃくしゅ有無うむ
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危険きけんせいが「現実げんじつてき」かかによって、実行じっこう行為こうい有無うむ着手ちゃくしゅ有無うむ)がけっせられる。

たとえば、みせ包丁ほうちょう購入こうにゅうしただけでは危険きけん現実げんじつてきとはいえず、実行じっこう行為こうい実行じっこう着手ちゃくしゅ)はみとめられないため殺人さつじんざいとはなりえず、予備よび行為こういとして殺人さつじん予備よびざい成立せいりつしうるにとどまる。

殺人さつじんざいでは、一般いっぱんに「包丁ほうちょうっておそいかかったとき」「ピストルのがねいたとき」に実行じっこう着手ちゃくしゅがあるとされる。

窃盗せっとうざいでは、原則げんそくとして「物色ぶっしょく行為こうい」があるときに実行じっこう着手ちゃくしゅがあるとされる。

実行じっこう行為こうい終了しゅうりょう時期じき
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中止ちゅうしはんにおける着手ちゃくしゅ中止ちゅうしでは、実行じっこう行為こうい終了しゅうりょうまえ中止ちゅうしがあったことが必要ひつようである。また、共同きょうどう正犯せいはん従犯じゅうはんでは、原則げんそくとして実行じっこう行為こういこうすることが要件ようけんとされる。また、あるしゅ犯罪はんざいでは実行じっこう行為こうい終了しゅうりょうすることではじめて既遂きすいざいとなる。そこで、実行じっこう行為こうい終了しゅうりょう時期じき問題もんだいとなる。

これについては、「行為こういしゃ意図いと行為こうい外形がいけいてき形態けいたい結果けっか重大じゅうだいせい)とを総合そうごうてき判断はんだんしてけっする」という折衷せっちゅうせつ多数たすうせつといえる。

実行じっこう行為こういかんするしょ問題もんだい
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実行じっこう行為こういかんしては、作為さくいはん真正しんせい作為さくいはん)、間接かんせつ正犯せいはん原因げんいんにおいて自由じゆう行為こうい心神耗弱しんしんこうじゃく利用りようする行為こうい問題もんだいとなる。

実行じっこう行為こういかず
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たとえば、かぶとおつねらってピストルを1はつったところ、おつへいたりおつ負傷ふしょうへい死亡しぼうしたとき、判例はんれいおよゆう力説りきせつへいたいする実行じっこう行為こういおつたいする実行じっこう行為こうい成立せいりつするとする。(この場合ばあい錯誤さくごろん故意こいかず問題もんだいとなる)

うえ事例じれいおつたらずへいにだけたりへい死亡しぼうしたとき、判例はんれいへいたいする実行じっこう行為こういだけが成立せいりつするとするが、有力ゆうりょくせつへいたいする実行じっこう行為こういおつたいする実行じっこう行為こうい成立せいりつするとする。

実行じっこう行為こういとは事実じじつではなく法的ほうてき評価ひょうかであって、ピストルをつという1つの事実じじつたいして、法的ほうてき評価ひょうかをした結果けっか実行じっこう行為こういであり、1つの事実じじつ複数ふくすう法的ほうてき評価ひょうか成立せいりつしうることに問題もんだいはないとするせつ有力ゆうりょくである。(ただし、故意こいかず場合ばあいはこのてん議論ぎろんされることがおおいが、実行じっこう行為こういかず場合ばあい刑法けいほうがくとしては議論ぎろんされないことがおおい))

立証りっしょうについて
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公判こうはんにおいて検察官けんさつかん被告人ひこくにん実行じっこう行為こうい、その結果けっかないし危険きけん発生はっせい法益ほうえき侵害しんがい)、行為こうい結果けっかとの因果いんが関係かんけい行為こういしゃ主観しゅかんめん故意こい過失かしつ目的もくてきなど)をそれぞれ立証りっしょうしなければならない。

被疑ひぎしゃ被告人ひこくにん)が犯罪はんざい事実じじつ自白じはくした場合ばあい補強ほきょう証拠しょうこがなければ、裁判所さいばんしょ自白じはくのみで有罪ゆうざいえない(補強ほきょう法則ほうそく日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい38じょう3こう刑事けいじ訴訟そしょうほうだい319じょうだい2こう)。

補強ほきょう必要ひつようとする範囲はんいについては、判例はんれいかんがかたによると、補強ほきょう法則ほうそく自白じはくのみだと架空かくう犯罪はんざいによる処罰しょばつという誤判ごはんおそれがあるからこれをふせ趣旨しゅしであるので、自白じはく内容ないよう真実しんじつせい担保たんぽとして、(だれかの)実行じっこう行為こうい法益ほうえき侵害しんがい因果いんが関係かんけい証拠しょうこがあればよいという。

民法みんぽうがくじょう行為こうい

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  • 処分しょぶん行為こうい管理かんり行為こうい
    • 処分しょぶん行為こうい
      財産ざいさんについて、たんなる管理かんりいきえて権利けんり売却ばいきゃくして法律ほうりつてき変動へんどうさせたり、その目的もくてきぶつ現状げんじょう性質せいしつ変更へんこうする行為こうい
    • 管理かんり行為こうい
      保存ほぞん行為こういおよ財産ざいさん性質せいしつえない範囲はんいでの利用りようまた改良かいりょう目的もくてきとする行為こうい民法みんぽう103じょう
      法律ほうりつ行為こういのことも、事実じじつ行為こういのこともある。
      • 保存ほぞん行為こうい
        管理かんり行為こういのひとつで、財産ざいさん現状げんじょう維持いじする行為こういのこと。
        家屋かおく修繕しゅうぜん腐敗ふはいしやすいもの売却ばいきゃく期限きげん債務さいむ弁済べんさい消滅しょうめつ時効じこう中断ちゅうだん登記とうき不動産ふどうさん登記とうきひとしがある。
      • 利用りよう行為こうい
        もの変更へんこうしない範囲はんい収益しゅうえきはか行為こうい
      • 改良かいりょう行為こうい
        使用しよう価値かち交換こうかん価値かち増加ぞうかはか行為こうい

行政ぎょうせいほうじょう行為こうい

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行政ぎょうせい主体しゅたいのおこなう行為こうい行政ぎょうせい行為こういという。

作為さくい作為さくい

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  • 作為さくい積極せっきょくてき動作どうさ
  • 代替だいたいてき作為さくい
  • 作為さくい:やるべき行為こういおこなわないこと。
    行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさほうにおける定義ていぎ
    行政ぎょうせいちょう法令ほうれいもとづく申請しんせいたいし、相当そうとう期間きかんないになんらかの処分しょぶんその公権力こうけんりょく行使こうしたる行為こういをすべきにかかわらず、これをしないことをいう。

訴訟そしょうじょう行為こうい

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当事とうじしゃ訴訟そしょううえ効果こうか取得しゅとくするためにおこなう行為こうい訴訟そしょう行為こういという。

出典しゅってん

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  1. ^ 川端かわばたひろし 刑法けいほう総論そうろん講義こうぎ P.91

関連かんれん項目こうもく

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