複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ

「複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ」（ふくせいぎじゅつじだいのげいじゅつ、ドイツ語ご: Das Kunstwerk im Zeitalter seiner technischen Reproduzierbarkeit^[1]）は、ドイツの文化ぶんか評論ひょうろん家かヴァルター・ベンヤミンが1936年ねんに著あらわした評論ひょうろんである。この評論ひょうろんはカルチュラル・スタディーズやメディア論ろんの領域りょういきに大おおきな影響えいきょうを及およぼした。「芸術げいじゅつの政治せいじ学がくにおける革命かくめい的てきな要求ようきゅうの定式ていしき化かに有用ゆうような」芸術げいじゅつ理論りろんを説明せつめいするために生うみ出だされたものだとベンヤミンは書かいている。ベンヤミンの評論ひょうろんの中なかで最もっとも頻繁ひんぱんに引用いんようされるものである。

概要がいよう

ベンヤミンは優すぐれた芸術げいじゅつ作品さくひんを前まえにして人ひとが経験けいけんするであろう畏怖いふや崇敬すうけいの感覚かんかくを指さして「アウラ」という語かたりを用もちいた。従したがってアウラは原始げんし的てき・封建ほうけん的てき・ブルジョワ的てきな権力けんりょく構造こうぞうや、さらには魔術まじゅつや（宗教しゅうきょう的てきまたは世俗せぞく的てきな）儀式ぎしきと芸術げいじゅつとの伝統でんとう的てきな結むすび付つきを示しめすものである^{[要よう出典しゅってん]}。「世界せかい史しにおいて初はじめて、機械きかい的てきな複製ふくせいは芸術げいじゅつ作品さくひんを儀式ぎしきへの寄生きせい的てきな依存いぞんから解とき放はなった」とベンヤミンは書かいた。

さらに、「芸術げいじゅつのための芸術げいじゅつ」を反はんファシズムの観点かんてんから批判ひはんし、未来みらい派はを引ひき合あいに出だして、この標語ひょうごはファシズムにおいて「完遂かんすいされた」と明言めいげんした。

影響えいきょう

芸術げいじゅつの政治せいじ学がく

他たのフランクフルト学派がくはの著述ちょじゅつ家かたち、とりわけベンヤミンの友人ゆうじんテオドール・アドルノは、結果けっかとしてもたらされる大衆たいしゅう消費しょうひに典型てんけい的てきな「散漫さんまんな」芸術げいじゅつとの関係かんけいを心配しんぱいし、アウラの喪失そうしつによって、革新かくしん的てきな省察せいさつや創造そうぞうたり得えるものの余地よちまでもが失うしなわれるのではないかと論ろんじた。対照たいしょう的てきに、ベンヤミンはアウラの喪失そうしつはもっと複雑ふくざつな歴史れきし的てき展開てんかいであり、文化ぶんか的てき事物じぶつとの接触せっしょくと、それらへの批判ひはん的てき態度たいどの双方そうほうを民主みんしゅ化かする可能かのう性せいを持もった曖昧あいまいな力ちからであると論ろんじた。「儀式ぎしきに基もとづく代かわりに、（芸術げいじゅつは）別べつの実践じっせんに基もとづこうとし始はじめている――政治せいじである。」ベンヤミンにとって、社会しゃかいのコントロールのために政治せいじを美化びかするファシズムとは対照たいしょう的てきに、芸術げいじゅつの政治せいじ化かが共産きょうさん主義しゅぎの目的もくてきでなければならなかった。

翻訳ほんやく

『複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ』（川村かわむら二郎じろう・高木たかぎ久雄ひさお・高原たかはら宏ひろし平たいら・野村のむら修おさむ訳やく、佐々木ささき基一きいち解説かいせつ）
晶文社しょうぶんしゃ「著作ちょさく集しゅう2」、1970年ねん。新版しんぱん・晶文社しょうぶんしゃクラシックス、1999年ねん
- 旧版きゅうばん『複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ』（紀伊国屋きのくにや書店しょてん、1965年ねん）
『ボードレール他た五ご篇へんベンヤミンの仕事しごと2』（野村のむら修おさむ編へん訳やく、岩波いわなみ文庫ぶんこ、1994年ねん）
『近代きんだいの意味いみベンヤミン・コレクション1』（浅井あさい健二郎けんじろう編へん訳やく・久保くぼ哲司てつしほか訳やく、ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ、1995年ねん）
『ベンヤミン・アンソロジー』（山口やまぐち裕之ひろゆき編へん訳やく、河出かわで文庫ぶんこ、2011年ねん）。訳わけ題だいは「技術ぎじゅつ的てき複製ふくせい可能かのう性せいの時代じだいの芸術げいじゅつ作品さくひん」

作品さくひん論ろん

多た木き浩二こうじ『ベンヤミン「複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ作品さくひん」精読せいどく』（岩波いわなみ現代げんだい文庫ぶんこ、2000年ねん）
遠藤えんどう薫かおる『廃墟はいきょで歌うたう天使てんしベンヤミン『複製ふくせい技術ぎじゅつ時代じだいの芸術げいじゅつ作品さくひん』を読よみ直なおす』（現代書館げんだいしょかん「いま読よむ！名著めいちょ」、2013年ねん）

脚注きゃくちゅう

^ 『社会しゃかい研究けんきゅう時報じほう』に初出しょしゅつ。

外部がいぶリンク

http://www.marxists.org/reference/subject/philosophy/works/ge/benjamin.htm Complete text of the essay, translated] （英語えいご）
http://www.suhrkamp.de/special_studienbibliothek/leseproben/27001_Leseprobe.pdf Partial text of the essay], with commentary by Detlev Schöttker （ドイツ語ご）
Complete text in German （ドイツ語ご）

[1] 『社会しゃかい研究けんきゅう時報じほう』に初出しょしゅつ。

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