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ウマ後肢あとあしの蹄。
ノロジカの蹄。イノシシなどの偶蹄ぐうてい英語えいごばんには、接地せっちする蹄以がい部分ぶぶん人差ひとさゆび小指こゆび変形へんけいしたおおかみつめふく蹄(ふくてい)、はか蹄などとばれるストッパーとしての役割やくわりがある蹄をゆうする[1]
ウマの蹄の断面だんめん

(ひづめ、英語えいご: hoof, 複数ふくすうがた: hooves)は、哺乳ほにゅう動物どうぶつ四肢ししはし角質かくしつ器官きかんつめ一種いっしゅである。

つめとのちが[編集へんしゅう]

ひらたつめかぎつめくらべるとあつくておおきく、かたい。指先ゆびさき幅広はばひろこうむってまえしている。

ひらたつめ指先ゆびさき保護ほご器官きかんかぎつめがひっかけるための器官きかんであるのにたいし、蹄は歩行ほこう補助ほじょ、すなわちるための器官きかんとして使つかわれる。これをぐんでは、進化しんか傾向けいこうとして蹄のみが地面じめんについてからだささえ、のこりのゆびふく蹄)やかかとはたか地面じめんからはなれる。またゆびなどの簡略かんりゃくがすすみ、ほねすう指数しすう減少げんしょうこす。その結果けっかとして地面じめんはやはしることにすぐれるが、ゆび使つかったこまかい操作そうさなどはできなくなっている。

蹄を現生げんなま哺乳類ほにゅうるい以下いかとおり。

なお分類ぶんるいじょう概念がいねんとしてゆう蹄類というかたりもあるが、これには蹄をもたない動物どうぶつふくまれる。

ゆう蹄類は胎児たいじに蹄を使つかって地面じめんはしるための予行よこう演習えんしゅうのような動作どうさをするが、このさい母体ぼたい子宮しきゅうきずつけないため、ゆう蹄類の胎児たいじの蹄には「蹄餅」(ていぺい)とばれるもちじょう物体ぶったい付着ふちゃくしている。この蹄餅は、蹄の形成けいせい開始かいしとほぼ同時どうじ形成けいせい開始かいしし、出生しゅっしょう直後ちょくご脱落だつらくする。

ウマの蹄[編集へんしゅう]

ウマの蹄の側面そくめん
① 蹄冠(Coronet)
② 蹄壁(Wall)
③ 蹄尖(Toe)
④ 蹄側(Quarter)
⑤ 蹄踵(Heel)
⑥ 蹄球(Bulb)
つなぎ(Pastern)
ウマの蹄のうら
① 蹄踵(Heel)
② 蹄球(Bulb)
③ 蹄叉(Frog)
④ 蹄叉中溝なかみぞ(Central sulcus, Median furrow)
⑤ 蹄叉側溝そっこう(Collateral sulcus, Lateral furrow)
⑥ 蹄踵(Heel)
⑦ 蹄支(Bar)
⑧ 蹄支かく(Seat of corn)
⑨ 蹄壁(Wall)
⑩ 蹄負めん
白線はくせん(White line)
⑫ 蹄叉とんが(Apex, Point of frog)
⑬ 蹄底(Sole)
⑭ 蹄尖(Toe)
⑮ 蹄幅(How to measure hoof width)
⑯ 蹄側(Quarter)
⑰ 蹄長(How to measure hoof length)

蹄底がくさびかたちはいんでいるところを「蹄支」(ていし, Bar)といいその屈折くっせつを「蹄支かく」(ていしかく, Seat of corn)という。

「蹄壁」(ていへき, Wall)は「蹄尖」(ていせん, Toe)、「蹄側」(ていそく, Quarter)、「蹄踵」(ていしょう, Heel)のさん区分くぶんしている。

蹄壁の平均へいきんてきあつなりの蹄では前面ぜんめんの蹄尖やく10ミリメートルともっともあつく、蹄側、蹄踵のあつさの比率ひりつ前肢ぜんしの蹄で4 : 3 : 2、後肢あとあしで3 : 2.5 : 2である。たかは、前肢ぜんしで3 : 2 : 1、後肢あとあしで2 : 1.5 : 1で、蹄尖から蹄踵にかってしだいにひくくなっている。

かたは、蹄尖でもっともかたく、蹄側で中間ちゅうかん、蹄踵でやややわらかく、しなやかなかんじがする。蹄壁のしもえん地面じめんせっするところが、「蹄負めん」(ていふめん)である。

蹄冠のうしろにある左右さゆう球状きゅうじょう隆起りゅうきを「蹄球」(ていきゅう, Bulb)といい、くさびがた角質かくしつを「蹄叉」(ていさ, Frog)、蹄叉の中央ちゅうおうみぞを「蹄叉中溝なかみぞ」(ていさちゅうこう, Central sulcus, Median furrow)、蹄叉と蹄支とのあいだふかみぞを「蹄叉側溝そっこう」(ていさそっこう, Collateral sulcus, Lateral furrow)という。

蹄の下面かめんで、蹄叉の両面りょうめんめるややへこんだところが「蹄底」(ていてい, Sole)である。蹄底はおわんをひっくりかえしたようにいくらかへこんでいる。そのため、たいらでかた道路どうろあるくときにパカパカというおとる。蹄を裏返うらがえして蹄底をてみると、蹄のそとべりから8-10ミリメートル程度ていど内側うちがわはいったところ(ここまでを蹄負めんという)で、蹄底の周囲しゅうい一周いっしゅうする2ミリメートル程度ていど黄白こうはくしょくせんがみえる。これが知覚ちかく知覚ちかくとを結合けつごうしている「白線はくせん」(はくせん, White line)である。この部分ぶぶんより内側うちがわくぎんだりするとつよいたみをともなう。

蹄の疾病しっぺい保護ほご[編集へんしゅう]

病気びょうき(蹄病)
  • 蹄叉腐爛ふらん(ていさふらん) - 蹄のあいだ汚物おぶつはさまり蹄底が腐乱ふらんした状態じょうたい厩舎きゅうしゃととのえることで予防よぼうされる[2]
  • 蹄葉えん
  • 馬蹄ばていしゅ
  • つめ(ドイツ:Zwanghuf)
  • 白線はくせんきれ - 白線はくせんくさって空洞くうどうになる症状しょうじょう
  • しろたいびょう
  • ありほら - 蹄壁が剥離はくりした状態じょうたい[3]
  • 蹄癌 - がん
  • くじけ跖(ざせき)、蹄血まだら(ていけっぱん) - いしんでしまったなどできる蹄底の炎症えんしょう内出血ないしゅっけつ[4][3]
  • きれ蹄 - 蹄壁に亀裂きれつはいった状態じょうたい乾燥かんそうするふゆおおいため、蹄油で保護ほごおこな[5]
まもる蹄(蹄の保護ほご
うしひつじなどの家畜かちく運動うんどうりょうすくなくつめけずれずびすぎてれたり、蹄病にもかかりやすくなるためそぎ蹄師(さくていし)がけずととのえる[6]うま荷役にやくうしなどは運動うんどうりょうおおいため、そう蹄師蹄鉄ていてつほどこして摩耗まもうから保護ほごする。荷役にやくうしなどは偶蹄ぐうていであるため、うまのようなUのではなく、蹄鉄ていてつ必要ひつようになる。
厩舎きゅうしゃや蹄の清掃せいそう清掃せいそう直後ちょくごの蹄へのぬりで蹄病の予防よぼうができる[3]
蹄をまも保護ほごとしてベルブーツ英語えいごばんや、蹄のうらまでまもフーフブーツ英語えいごばんがある。
蹄鉄ていてつ導入どうにゅうされる以前いぜん日本にっぽんでは、うまようのわらじうまくつ(うまぐつ)で保護ほごおこなわれた[7]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 国立こくりつ国会こっかい図書館としょかん. “動物どうぶつ偶蹄ぐうていについて調しらべている。なぜ「中指なかゆび人差指ひとさしゆび」でなく「中指なかゆび薬指くすりゆび以外いがいゆび退化たいかしたのか、理由りゆう...”. レファレンス協同きょうどうデータベース. 2022ねん10がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ 蹄叉腐爛ふらんとは - わかりやすく解説かいせつ Weblio辞書じしょ”. www.weblio.jp. 2022ねん10がつ15にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c 6.育成いくせい牧場ぼくじょうにおけるまもる管理かんり指針ししん JRA
  4. ^ うま病気びょうき、ケガ、能力のうりょくをそこなうものなど 一覧いちらん表示ひょうじ競馬けいば用語ようご辞典じてん”. www.jra.go.jp. JRA. 2022ねん10がつ15にち閲覧えつらん
  5. ^ きれ蹄とは - わかりやすく解説かいせつ Weblio辞書じしょ”. www.weblio.jp. 2022ねん10がつ15にち閲覧えつらん
  6. ^ うしつめけずそぎ蹄師 「ただのつまにはなるな」と親方おやかたわれて:朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル (2021ねん12月5にち). 2022ねん10がつ15にち閲覧えつらん
  7. ^ 国立こくりつ国会こっかい図書館としょかん. “江戸えど時代じだい末期まっきまでもちいられたうまくつうま草鞋わらじ)についてりたい。”. レファレンス協同きょうどうデータベース. 2023ねん12月6にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]