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はいじょう理論りろん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

はいじょう理論りろん(はいいしばりろん、えい: ligand field theory)とは、金属きんぞく錯体さくたいd軌道きどう分裂ぶんれつを、「金属きんぞくのd軌道きどうはい軌道きどうとのあいだ相互そうご作用さよう」によって説明せつめいする理論りろんである[1]

結晶けっしょうじょう理論りろん問題もんだいてん

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結晶けっしょうじょう理論りろんにおいてはd軌道きどう縮退しゅくたいける原因げんいんはいまけ電荷でんかつくせい電場でんじょうもとめており、その結果けっかおなすうかげイオンであれば、おな分裂ぶんれつおおきさになるという結論けつろんになる。しかし、実際じっさいには分裂ぶんれつおおきさはおなあたいすうであってもはい種類しゅるい依存いぞんし、IBrClF のようになることがられている(分光ぶんこう化学かがく系列けいれつ)。また、一酸化いっさんか炭素たんそはいとする錯体さくたいでd軌道きどう分裂ぶんれつおおきくなることも説明せつめいできない。

このように、定量ていりょうてきにd軌道きどう分裂ぶんれつおおきさをしめすには問題もんだいがあった。

はいじょう理論りろん

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はいじょう理論りろんにおいては金属きんぞくのd軌道きどうはい軌道きどう相互そうご作用さようすることにより、エネルギーのひく軌道きどうたか軌道きどう分裂ぶんれつするためにd軌道きどう分裂ぶんれつこるとする。これによって分裂ぶんれつおおきさの定量ていりょうてき評価ひょうか可能かのうとなった。

はいじょうという言葉ことば結晶けっしょうじょうという言葉ことばたいしてもちいられたものである。結晶けっしょうじょうはいたんなる電荷でんかとして場合ばあいせい電場でんじょうであるから、クーロン反発はんぱつしか考慮こうりょしていない。それにたいしてはいじょうはい原子核げんしかく電子でんし分子ぶんし軌道きどうほうしたがって考慮こうりょしているから、はいとの電子でんし共有きょうゆうによる軌道きどう安定あんてい考慮こうりょしたせい電場でんじょうとなっている。

分子ぶんし軌道きどうほうにおいて2つの軌道きどう相互そうご作用さようするのはそれらの軌道きどうてんぐんおな対称たいしょうしゅぞくする場合ばあいかぎられる。

そこで、はいじょう理論りろんにおいては複数ふくすうはい分子ぶんし軌道きどう線形せんけい結合けつごうかんがえ、その対称たいしょうせいによって分類ぶんるいして、金属きんぞく錯体さくたいのd軌道きどうとの相互そうご作用さようかんがえる。この対称たいしょうせいによって分類ぶんるいしたはい軌道きどうはいぐん軌道きどうという。

はち面体めんてい錯体さくたいれい

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はいじょうによる d 軌道きどう分裂ぶんれつ

たとえば、せいはち面体めんていがたの6はい金属きんぞく錯体さくたいについてかんがえる。座標ざひょう原点げんてん金属きんぞくイオンを配置はいちし、 x じくy じくz じくじょうに6はいせいはち面体めんていがた配置はいちする。金属きんぞくつ5つの d 軌道きどうは、dz2dx2y2 の2つの eg 対称たいしょうしゅ、および dxydyzdxz の3つの t2g 対称たいしょうしゅにわけられる。はいぐん軌道きどうとして金属きんぞくσしぐま結合けつごうするような結合けつごうだけをかんがえる。すると、 a1g 対称たいしょうしゅ軌道きどうt1u 対称たいしょうしゅ軌道きどうeg 対称たいしょうしゅ軌道きどうができる。そのため、eg 対称たいしょうしゅぞくする2つの d 軌道きどうおな対称たいしょうしゅはいぐん軌道きどう相互そうご作用さようして2つのはん結合けつごうせい eg 軌道きどうになる。一方いっぽうt2g 対称たいしょうしゅぞくする3つの d 軌道きどう相互そうご作用さようできるはいぐん軌道きどう存在そんざいしないので、もとのエネルギーのまま3つの結合けつごうせい t2g 軌道きどうになる。このようにして、d 軌道きどう縮退しゅくたいける。

πぱい結合けつごう

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一方いっぽうはいぐん軌道きどうとして金属きんぞくπぱい 結合けつごうするような結合けつごうかんがえる。すると、 t1g 対称たいしょうしゅ軌道きどうt1u 対称たいしょうしゅ軌道きどうt2g 対称たいしょうしゅ軌道きどうt2u 対称たいしょうしゅ軌道きどうができる。この場合ばあいには、t2g 対称たいしょうしゅぞくする3つの d 軌道きどうおな対称たいしょうしゅはいぐん軌道きどう相互そうご作用さようできる。

もし、相互そうご作用さようしたはいぐん軌道きどう電子でんしすではいっている場合ばあいには、これらの電子でんしあらたに生成せいせいした結合けつごうせい軌道きどう占有せんゆうするので、金属きんぞくのd電子でんしあたらしく生成せいせいしたはん結合けつごうせい t2g 軌道きどうはいらざるをない。そのため、はいとの相互そうご作用さようかった場合ばあいくらべて d 軌道きどう分裂ぶんれつはばちいさくなる。

ぎゃくに、相互そうご作用さようしたはいぐん軌道きどう電子でんしはいっていない場合ばあいには、金属きんぞくd 電子でんしあたらしく生成せいせいした結合けつごうせい t2g 軌道きどうはいることができる。そのため、はいとの相互そうご作用さようかった場合ばあいくらべて d 軌道きどう分裂ぶんれつはばおおきくなる。一酸化いっさんか炭素たんそシアン化物ばけものイオンは、電子でんしはいっている πぱい 軌道きどうよりも、電子でんしはいっていない πぱい* 軌道きどうほう金属きんぞく錯体さくたいd 軌道きどうつよ相互そうご作用さようするので、d 軌道きどう分裂ぶんれつおおきくなる。この現象げんしょうはい電子でんし金属きんぞく供与きょうよされてはい結合けつごう形成けいせいされるのとはぎゃくに、金属きんぞくd 電子でんしはい供与きょうよされているのでぎゃく供与きょうよばれる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Advanced Inorganic Chemistry (6 ed.). Wiley-Interscience. (1999/4/13) 

関連かんれん項目こうもく

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