鉈

鉈の例れい

鉈（なた）は、林業りんぎょうや狩猟しゅりょうなどの山林さんりんで働はたらく人々ひとびとの用途ようとに適てきした刃物はものの類るいである。枝打えだうち、木きを削けずる、雑草ざっそうを切きり払はらう、動物どうぶつを解体かいたいするなどの目的もくてきで使つかわれる。

日本にっぽんでは斧おの、包丁ほうちょう、鎌かま、刀剣とうけん以外いがいの大型おおがた刃物はものを総称そうしょうして鉈という場合ばあいが多おおいが、海外かいがいでは一般いっぱん的てきに鎌かま（Billhook）に分類ぶんるいされている。日本にっぽん独特どくとくなマタギ刀がたななどの山刀やまがたなやナイフ、剣けん鉈など断たち切きり用よう、あるいは大型おおがた狩猟しゅりょう獣じゅうに対たいする護身ごしん・解体かいたい用ようの刀剣とうけんといった、形状けいじょう・用途ようとともに鉈との境界きょうかいが曖昧あいまいな刃物はものもある。

特徴とくちょう

各種かくしゅ形状けいじょうの鉈

地域ちいきや業種ぎょうしゅによって刃はや握にぎ把わの形状けいじょうにバリエーションがあるが、基本きほん的てきには

• 片かた手持てもちに適てきする
• 刀身とうしんが厚あつく丈夫じょうぶである
• 刃渡はわたりは15cmから60cm以上いじょう程度ていど

のものを指さす。

構造こうぞう

通常つうじょう、柄えは刃は側がわに対たいして内側うちがわにやや傾かたむけて取とり付つけられる。重量じゅうりょうと刃はの厚あつみを利用りようして、薪たきぎや竹たけを割わることもできる。

多おおくは先端せんたんが矩形くけいになっている（角かく鉈）。その他たに、刃先はさきと切きっ先さきがついた「剣けん鉈」（つるぎなた、けんなた）というものもある。剣けん鉈のなかには、銃じゅうの信頼しんらい性せいが低ひくい時代じだいに半はん矢やとなって逆襲ぎゃくしゅうしてくる大型おおがた獣じゅうに対抗たいこうするため、マタギ狩猟しゅりょう者しゃ集団しゅうだんが槍やりの穂先ほさきとしての転用てんようを前提ぜんていとし、共きょう柄えの部分ぶぶんを袋ふくろ状じょうの構造こうぞうとした、「フクロナガサ」、「フクロヌイバ」というものがある。この場合ばあい、刃はと柄えの角度かくどはほぼ直線ちょくせん状じょうに配置はいちされる。

刃はの横断おうだん面めんは、片刃かたは、両刃りょうば共どもに見みられるが、片刃かたはの場合ばあい、き手きてによる方向ほうこう性せいがある。両刃りょうばの場合ばあい、叩はたき切ぎりや割わる用途ようとに適てきした耐たい衝撃しょうげき性せいに強つよい、蛤はまぐり（はまぐり）刃はという刃は付づけが見みられる。

地域ちいきによって形状けいじょうが異ことなり、木き柄がらを付つけるものもあれば刃はと一体いったいになった共きょう柄えの物ものもある。さらに木き柄がらにも、木きの棒ぼうに切きれ込こみを入いれそこに本体ほんたいを差込さしこみ目釘めくぎで固定こていするものや、斧おのや鍬くわのように峰みねに穴あな（ヒツ）を設もうけそこに木きの棒ぼうを差さし込こむものがある。刃はの形状けいじょうも様々さまざまで、斧おのに似にたものや鎌かまに似にたものなどがある。刃はの先端せんたん部分ぶぶんに突起とっき（「石突いしづき」「鼻はな」「とび」などと呼よばれる）を設もうける物ものも多おおい。この突起とっきについては、実用じつよう新案しんあんが出だされ（実じつ公昭きみあき04-000634）、登録とうろくされている（登録とうろく番号ばんごう128275号ごう）。

近年きんねんでは地域ちいき毎ごとに存在そんざいする鍛冶屋かじやが激減げきげんしたうえ、刃物はものの生産せいさん地ちが限かぎられるようになり地域ちいき毎ごとのバリエーションは減少げんしょうしつつある。

使用しよう法ほう

通常つうじょう、皮革ひかくや木製もくせいの鞘さやにいれて腰こしから下さげて携帯けいたいする。小しょう枝えだを払はらうような用途ようとでは切断せつだん力りょくは、刀身とうしんの重おもさとその鋭するどさを利用りようして切きることによって発揮はっきされる。また、定期ていき的てきに研とぐことによって切きれ味あじを維持いじする必要ひつようがある。

軍ぐん用品ようひん

第だい一いち次じインドシナ戦争せんそうではフランス軍ぐんに対たいし、ベトミンが鉈を持もって突貫とっかんすることが度々たびたびあった。

手斧ちょうなと鉈

手斧ちょうなやマキ割わりの小しょう斧おのを「ナタ」と呼よぶ場合ばあいがある。「言げん海うみ」は鉈を「刃はが厚あつくて幅はばが広ひろく、やや弓形きゅうけいをした刀かたなで、短みじかい柄えがある」とする。

相撲すもう用語ようごの鉈

相撲すもうに「鉈」と呼よばれる攻せめ技わざがある。

片腕かたうでの肘ひじを相手あいての喉のどに押おし付つけ、もう一方いっぽうの腕うでで相手あいての片腕かたうでを外側そとがわから抱かかえ込こみ、片かた閂かんぬき（かたかんぬき）に決きめる技わざ。肘ひじで喉のどを攻せめる様ようが鉈を振ふるうさまによく似にていることから命名めいめいされた。

上半身じょうはんしんの力ちからが必要ひつようで、現代げんだいの大相撲おおずもうではめったに見みられない。

フィクション作品さくひんでの鉈

ホラー映画えいが『13日にちの金曜日きんようび』シリーズに登場とうじょうする猟奇りょうき殺人鬼さつじんき・ジェイソン・ボーヒーズが得物えものとして最もっとも多おおく使用しようした。また、それよりも若干じゃっかん前まえに公開こうかいされた『ゾンビ』ではゾンビ相手あいてに人間にんげんが鉈で戦たたかうシーンが登場とうじょうする。

これは以降いこうの作品さくひんに大おおきな影響えいきょうを与あたえて、鉈を凶器きょうきとする、もしくは護身ごしん用ようで使つかう人物じんぶつが登場とうじょうするホラー作品さくひんがしばしば現あらわれている。これらは実際じっさいには中南米ちゅうなんべいの現地げんち人じんが使つかう山刀やまがたなのマチェテであることが多おおいが、日本にっぽんでは上記じょうきのように「鉈」と翻訳ほんやく・認識にんしきされることが多おおい。

関連かんれん項目こうもく

• スクラマサクス - 古代こだいヨーロッパで使用しようされた鉈に近ちかい刃物はもの。
• マチェテ - 中南米ちゅうなんべいで使用しようされる鉈に近ちかい刃物はもの。
• ククリ - インド・ネパールで使用しようされる鉈に近ちかい刃物はもの。
• コラ (刀かたな) - 同上どうじょう。
• 斧おの
• 鋸のこ
• TP-82 - ソビエト連邦れんぽうの有人ゆうじん宇宙船うちゅうせんに備そなえ付つけられていたピストル。予定よてい外がいの原野げんやや森林しんりんに着陸ちゃくりくした場合ばあいに、乗組のりくみ員いんが救出きゅうしゅつされるまでのサバイバルで用もちいる。三さん連れん銃身じゅうしんに異ことなる弾たま種しゅを装填そうてんできたほか、銃床じゅうしょう部ぶに鉈が内蔵ないぞうされている。

外部がいぶリンク

• 鉈(ナタ)とは - コトバンク
• 鉈とは - Weblio辞書じしょ