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あめ細工ざいく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
浅草あさくさ あめ細工ざいく アメシン(Asakusa Amezaiku Ameshin) 手塚てづかしん(Shinri Tezuka)による、あめ細工ざいく金魚きんぎょ彩色さいしき完成かんせいひん
一般いっぱんてき製菓せいかにおけるあめ細工ざいくあめ技法ぎほうによるバラの装飾そうしょく

あめ細工ざいく(あめざいく)とは、製菓せいか技術ぎじゅつの1つであり、あめもちいて造形ぞうけいぶつつくすこと、およびその造形ぞうけいぶつをいう。その細工ざいく技術ぎじゅつ美術びじゅつてき観点かんてん製作せいさく過程かてい特徴とくちょうがあり、べることを目的もくてきとしない、鑑賞かんしょうするための展示てんじひんとして製作せいさくされる場合ばあいもある。

ほんこうでは「砂糖さとう細工ざいく」の範疇はんちゅうふくまれるものも歴史れきしてき出自しゅつじ同一どういつであるという理由りゆうからあわせて記述きじゅつする。

歴史れきし

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あめえが中国人ちゅうごくじん

西洋せいよう菓子かしあめ細工ざいく日本にっぽん伝統でんとうてきあめ細工ざいくは、この分野ぶんやでの交流こうりゅう資料しりょうとしてみとめられないものの、発祥はっしょうちがいこそあれ、製法せいほう技術ぎじゅつにあまり大差たいさがなく発展はってんしている。

11世紀せいきにはアッバースあさだい35だいカリフザーヒル命令めいれい砂糖さとう細工ざいくつくられたとされており[1]菓子かし技術ぎじゅつてき装飾そうしょくするというかんがかたがすでにあった。ただしこれはあくまでがためられた砂糖さとう菓子かしであり、あめじょうのものを加工かこうしたものではない。

日本にっぽんあめ細工ざいく歴史れきしは、のべれき15ねん796ねん)の東寺とうじ建立こんりゅうあめ細工ざいくがつくられ、供物くもつとしてささげられたという。16世紀せいき南蛮なんばん菓子かしとして成立せいりつした有平糖あるへいとうゆうたいら細工ざいくばれる高度こうど製菓せいか技術ぎじゅつほこった。

とおる元年がんねん1801ねん)には良質りょうしつ水飴みずあめ越後えちごつくられて関西かんさい方面ほうめんひろまった[2]ともといわれている。江戸えどではあめ職人しょくにん細工ざいくをしたあめまちあるき、細工ざいく技術ぎじゅつ種類しゅるいえた。

洋菓子ようがし世界せかいではパティシエがその技術ぎじゅつ芸術げいじゅつせい発揮はっきできる分野ぶんやである一方いっぽう和菓子わがしあめ細工ざいくゆうたいら細工ざいくのような例外れいがいのぞいて、もっぱら大道芸だいどうげい伝統でんとう工芸こうげいの1つとなされている。伝統でんとう工芸こうげいとしてのあめ細工ざいくは、あめ特性とくせいじょう製作せいさくおよび保存ほぞん過程かていにおけるあつかいがむずかしく量産りょうさんできないことや、衛生えいせいてきめん、さらに実物じつぶつにする機会きかいがあまりないうえ、その労力ろうりょくわりにはビジネスめんでの見返みかえりがすくないことなどから、派手はでさとは裏腹うらはらに、技術ぎじゅつ伝承でんしょうがされにくい側面そくめんがあった。これにたいして、洋菓子ようがしづくりが趣味しゅみとして一般いっぱんするにつれてその技法ぎほうの1つであるあめ細工ざいくひろ認知にんちされ、カルチャースクール洋菓子ようがしづくりのカリキュラムでげられるようにもなっている。

「'あめ細工ざいく小松こまつひとし一流いちりゅうあめ細工ざいくは、しろあめ動物どうぶつ植物しょくぶつなどのかたちつく細工ざいく菓子がし一種いっしゅはまぐりと、そのなかよこたわるねこをかたどったあめ細工ざいくあり。「小松こまつひとし一流いちりゅう写實しゃじつてきあめ細工ざいく達人たつじん也」と朱書しゅしょあり。『わたり風俗ふうぞく圖會ずえ』では、「細工ざいくあめ」とだいしてあめりの姿すがたえがかれ、「明治めいじ34ねんごろるもの也」という記載きさいがある。 — 清水しみずはれふうちょ東京とうきょう名物めいぶつひゃくにんいちしゅ明治めいじ40ねん8がつあめ細工ざいく小松こまつひとし一流いちりゅう」より抜粋ばっすい[3]

各国かっこくあめ細工ざいく

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日本にっぽんあめ細工ざいくは、さらあめ原料げんりょうとし、食紅しょくべになどで彩色さいしきほどこした、ぼうつきのものが一般いっぱんしたしまれている。これにたいしてゆうたいら細工ざいくのように水飴みずあめをくわえた砂糖さとうねっしてまし造形ぞうけいおこなうものもあり、類例るいれいとしてくもたいら細工ざいくしんこな(しんこ)細工ざいくなどがある。有平糖あるへいとうから派生はせいした金華きんかとうたいなどの縁起物えんぎものをかたどった砂糖さとう菓子かし駄菓子だがしとしてもしたしまれた。

中国ちゅうごくにはねっしたあめいて動物どうぶつとりかたちつくったりたいうえにたらして文字もじなどをえがいたりするあめ細工ざいくがある。

フランスでは工芸こうげい菓子かしとしての砂糖さとう菓子かし一般いっぱん言葉ことばとしてシュクルダール(Sucre D'Art)があり、あめ細工ざいくもこのなかふくまれる。デコレーションケーキとして立体りったいてきげる菓子かし(ピエスモンテ, Pièce montée)にもしばしばあめ細工ざいく技法ぎほうもちいられる。19世紀せいき成立せいりつしたパスティヤージュ(シュガークラフト)という技法ぎほうでは、建物たてものをかたどったピエスモンテもつくられた。

ポルトガルアゾレス諸島しょとうには有平糖あるへいとう語源ごげんともされ、製法せいほう共通きょうつうしたアルフェニンがある。とりしし建物たてものなどをかたどったしろ砂糖さとう菓子かしまつりのさいには教会きょうかいけんじられる[4]スペインラテンアメリカスペインけんにはアーモンドオイルでった砂糖さとうつくられるアルフェニーケES)という砂糖さとう細工ざいくがあり、メキシコでは死者ししゃのための髑髏しゃれこうべをかたどったオブジェなどをこれでつく[5]

イギリスには日本にっぽんくみあめ金太郎飴きんたろうあめ千歳飴ちとせあめ)に類似るいじしたRock (あめ)英語えいごばんというあめがある。リゾート販売はんばいされたものはその地名ちめいかんしてBlackpool rock[6]、Brighton rock[7]ブライトン・ロック)ともばれる。

製法せいほう技法ぎほう

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あめあつかかたべつによる製法せいほうつぎとおりである。[8] あめあめながあめ技術ぎじゅつ洋菓子ようがしおよびゆうたいら細工ざいく共通きょうつうである。いずれも80℃ほどにねっしたあめあつかうため、洋菓子ようがしではたいてい手袋てぶくろ使用しようしてやけどをふせぐ。

あめ
シュクル・ティレ。あめばすことにより空気くうきふくませる技術ぎじゅつ空気くうき含有がんゆうりょうによってあめいろ変化へんかし、きらきらとした光沢こうたくをもつようになる。はなびらやリボン、かごなどのパーツとなる。
あめ
シュクル・スフレ。ふくらしあめともばれる。いきいたりポンプを使つかったりして空気くうきあめ内部ないぶおくむことにより、まる立体りったいてきかたち成形せいけいする技術ぎじゅつ果物くだもの動物どうぶつなどをつくさいにしばしばもちいられる。
ながあめ
シュクル・クーレ。型紙かたがみもちいてかたつくり、たいうえでそのかたあめなが技術ぎじゅつ平面へいめんてきいたじょうのパーツをつくり、それらをんでケーキなどをのせるだいにする。
いとあめ
シュクル・フィレ。ヴェールあめともばれる。かした砂糖さとう素早すばや左右さゆううごかしながらいとのように非常ひじょうほそあめつく技術ぎじゅつ。ケーキのかざりなどにもちいる。
いわあめ
シュクル・ロシェ。あめ煮立にたてて泡立あわだて、その気泡きほうごとかためる技術ぎじゅつあなのたくさんあいたいわのような素材そざいになる。ピエスモンテをつくさい材料ざいりょうとして使つかわれる。

このほか、立体りったいてきかたもちいるシュクル・マッセ、ねながら成形せいけいするシュクル・トゥルネなどがある。

和菓子わがし洋菓子ようがしあめ細工ざいくちが

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ロバート・フレデリック・ブルーム飴屋あめや」1893ねん

日本にっぽんではあめ職人しょくにんいち人前にんまえとされる基準きじゅんとして、いちにちいちかんかんぶん水飴みずあめ加工かこうしてものにしなければならず、その重労働じゅうろうどうができなくなると、あめ造形ぞうけいする技術ぎじゅつみがき、げをかせいだといわれている[9]。これを紙芝居かみしばいキセル修理しゅうりなどのほかの商売しょうばい客寄きゃくよせとしておこなうこともあれば、職人しょくにんげい見世物みせものとして独立どくりつさせ、のようにそのきゃく要望ようぼうによってつくっていくことにより、動物どうぶつはななどをまえ仕上しあげ、たのしませる商売しょうばいとなった。 江戸えど時代じだいはじまったあめ細工ざいくは「あめとり」ともばれた。とりおもつくったからだといわれる[10]

日本にっぽんあめ細工ざいくでは手袋てぶくろ使つか伝統でんとうがほとんどられず、豆炭まめたんねっせられたあついままのあめ素手すで加工かこうしていくので、火傷かしょう危険きけんとはとなわせの技術ぎじゅつ習得しゅうとくとなる(そのため、日本にっぽん伝統でんとうあめ細工ざいくはボロボロであった)。基本きほんてきなものは透明とうめいかんのこしたあめることで空気くうきふくませて徐々じょじょしろくし、基本きほんてき彩色さいしき食紅しょくべにほどこしたうえでゴルフボールだいまるめ、つつじょうのものをす。目的もくてきおうじて、いきふくらませ、にぎりばさみでつまみ、ばし、れることで成形せいけいしていく。ぼうさきについたまま提供ていきょうされる。大道芸だいどうげいとしてのしたしみやすさから動物どうぶつ鳥類ちょうるいをモチーフにしたものがおもで、仕上しあげのれいとしては最終さいしゅうてき成形せいけいニワトリ鶏冠けいかん食紅しょくべにあかいろどられる。屋外おくがい作業さぎょう想定そうていした技術ぎじゅつのため、道具どうぐはさみふでなど最小限さいしょうげんとなる。

洋菓子ようがし場合ばあい屋内おくないでの作業さぎょうとなるので、専用せんよう洋菓子ようがしづくよう道具どうぐるいがそのまま使つかわれる。ることで空気くうきむというよりはばしたり、もともとの素材そざい光沢こうたくしやすくしたりといった手法しゅほうもとられる。総合そうごうてき洋菓子ようがし作品さくひんという目的もくてきつくられることがおもなので、日本にっぽんあめ細工ざいくのように一品いっぴん完結かんけつするのではなく、こまかいパーツもわせたうえで「あめによるフルーツのわせ」や「ドレスをまとった少女しょうじょ」などの総合そうごうてきなモチーフのものになる。だい規模きぼ作品さくひんとなることもすくなくない。単体たんたいでは植物しょくぶつ果物くだものつくることがおおい。日本にっぽんあめ細工ざいく比較ひかくして着色ちゃくしょくよりもガラスのような光沢こうたくやツヤを強調きょうちょうする傾向けいこうがある。

保存ほぞん

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ねつ湿気しっけ遮断しゃだんしなければならないため、長時間ちょうじかんライトがたるような展示てんじには不向ふむきであるが、ケースに密封みっぷう乾燥かんそうざいれる、食用しょくようニスを塗布とふするなどの方法ほうほうがある。また食用しょくようとせずあめ素材そざいにした装飾そうしょくひんとする場合ばあいは、食用しょくようてきさない素材そざい使用しよう可能かのうである。

比喩ひゆ表現ひょうげん

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あめ細工ざいくのような」もしくは「あめ細工ざいくのように」という形容詞けいようしとして、「かけは華美かびだが中身なかみともなわないもの」「かたちにはているがまったちがうもの」または「高熱こうねつによって変形へんけいしてしまったもの」という意味合いみあいで比喩ひゆ表現ひょうげんとして使つか場合ばあいがある。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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  1. ^ 川北かわきたみのる世界せかい砂糖さとう (9):砂糖さとうはなぜしろいのか デコレーションとしての砂糖さとうのう畜産ちくさんぎょう振興しんこう機構きこう、2005ねん12月
  2. ^ あめ細工ざいく歴史れきし」『大道芸だいどうげいじん世界せかい
  3. ^ 清水しみずはるふうちょ東京とうきょう名物めいぶつひゃくにんいちしゅ明治めいじ40ねん8がつあめ細工ざいく小松こまつひとし一流いちりゅう国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん蔵書ぞうしょ、2018ねん2がつ9にち閲覧えつらん
  4. ^ 荒尾あらお美代みよ「アルヘイトウ」『南蛮なんばんスペイン・ポルトガル料理りょうりのふしぎ探検たんけん日本にほんテレビ、1992ねん、pp. 48-51. ISBN 482039214X cf. 荒尾あらお美代みよ南蛮なんばん菓子かし砂糖さとう関係かんけいのう畜産ちくさんぎょう振興しんこう機構きこう、2005ねん12月
  5. ^ ローラン・ビルー、アラン・エスコフィエ(加藤かとう康子やすこやく)『基礎きそフランス菓子かし教本きょうほんだい3かん フール・セック チョコレート細工ざいく アイスクリームるい製法せいほう あめ細工ざいく柴田しばた書店しょてん、1990ねん、p. 165. ISBN 4388010731
  6. ^ Mountford, Emma (2016ねん9がつ13にち). “Things you only know if you went to Blackpool as a kid” (英語えいご). Manchester Evening News. 2021ねん10がつ30にち閲覧えつらん
  7. ^ Sattaur, Omar (1983-08-25). “But how do they get the name in the middle?” (英語えいご). New Scientist (ロンドン) 99 (1372): 574. ISSN 0262-4079. https://books.google.co.jp/books?id=qBZ7KsofK60C&pg=PA574#v=onepage&q&f=false. 
  8. ^ にちふつ料理りょうり協会きょうかいへん『フランス しょく事典じてん白水しろみずしゃ、2000ねん、pp. 20-21. ISBN 456003995X
  9. ^ 水木みずき貴広たかひろあめ細工ざいく歴史れきし」『むかしなつかしいあめ細工ざいく
  10. ^ 『サライ1993ねんだい15ごう小学館しょうがくかん、1993ねん、42ぺーじ 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 吉田よしだ菊次郎きくじろう『あめ細工ざいく柴田しばた書店しょてん、1976ねん ISBN 4-388-05611-1
  • イヴ・チュリエ(せんせき玲子れいこ千石せんごく禎子さだこやく)『フランス菓子かし百科ひゃっか III あたらしい菓子かしいわ菓子がし・アメ細工ざいく白水しろみずしゃ、1983ねん
  • 梅島うめじま孝一こういち工芸こうげい菓子かし」、小林こばやし彰夫あきお村田むらた忠彦ただひこへん菓子かし事典じてん朝倉書店あさくらしょてん、2000ねん、pp. 330-333. ISBN 4254430639

関連かんれん項目こうもく

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