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くび

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
余分よぶん脂肪しぼう原因げんいんくびのしわ(ラテン語らてんご:monillas)または「つき」があらわれる。

くびくび, neck)とは頸部(けいぶ)、すなわち、人体じんたいにおいてあたま頭部とうぶ)と胴体どうたいをつなぐ部位ぶいである。 日本語にほんごではまた、頭部とうぶそのものを場合ばあいもある。

用字ようじ語釈ごしゃく

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首位しゅい」「首領しゅりょう」「党首とうしゅ」「船首せんしゅ」などというように、本来ほんらい漢語かんごにおける「くび」というはもっぱら、“トップ”、“かしら”、またそれらの原義げんぎとしての“あたま”、“頭部とうぶ”を意味いみする[ちゅう 1]。 これにたいして“頸部”を意味いみする本来ほんらい漢字かんじは「」であり、「頸部」「頸動みゃく」「ちょう頸竜」などのように熟語じゅくごにももちいられる。

ところが日本語にほんごでは、“頸部”・“頭部とうぶ”の双方そうほうを「くび」とぶ。 もともと日本語にほんご「くび」は“頸部”をかたりだったが、戦闘せんとう刑罰けいばつにおいて“頸をってあたまとす”斬首ざんしゅ馘首かくしゅ(かくしゅ)の慣習かんしゅう日本にっぽんにあったことから、やがて“とされた頭部とうぶ自体じたいをも「くび」とぶようになり、さらには(胴体どうたいはなれているかかにかかわらず)“頭部とうぶ一般いっぱん用法ようほうまれたものとされている。ただし、“頭部とうぶ”と"頸部"両方りょうほう意味いみする「くび」の用例ようれいと、斬首ざんしゅ習慣しゅうかんがいつごろから普及ふきゅうしたかを調しらべることが、ほんせつ証明しょうめい必要ひつようおもわれる。

またその結果けっかとして、やがて漢字かんじ混用こんようされ、一種いっしゅ国訓こっくんとして、本来ほんらいは“頭部とうぶ”の意味いみであった「くび」のを“頸部”の意味いみ俗用ぞくようすることが非常ひじょうおおくなった。 しかしながら学術がくじゅつ用語ようごふくかん熟語じゅくごるいにはこうした用法ようほう存在そんざいせず、また、日本にっぽん以外いがい漢字かんじ文化ぶんかけんでは一切いっさいられない用法ようほうでもあることには注意ちゅういされたい。

ほんこうでは「頸部」についておも解説かいせつするが、最初さいしょに、文化ぶんか日本語にほんごにまつわる事象じしょうについて、「“頸部”を意味いみする『くび』」「頭部とうぶ”を意味いみする『くび』」にけて、簡単かんたんにふれておく。

“頸部”を意味いみする「くび」

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上述じょうじゅつのとおりこの言葉ことば原義げんぎであり、また、いわゆる身体しんたいとして現代げんだい日本語にほんご基礎きそ語彙ごい構成こうせいする単語たんごうえのような経緯けいいから漢字かんじは「くび」をあてることがおおいが、文学ぶんがくてき表現ひょうげんなどでは「」をもちいることもある。 「手首てくび」「足首あしくび」「琵琶びわくび」「徳利とっくりくび」「あおくび大根だいこん」というように、比喩ひゆてきにもひろ使つかわれる。

慣用かんようには「くび」にまつわるものもおおいが、「くびながくする」「くびなわをつける」「くびあらってつ」といったいくつかは「くび」を“頭部とうぶ”とすると意味いみとおらず、“頸部”の意味いみでこの言葉ことばもちいているものとかんがえられる。

頭部とうぶ”を意味いみする「くび」

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前述ぜんじゅつのとおり日本語にほんごでは「くび」という言葉ことばが“とされた頭部とうぶ”を意味いみするようにもなり、「斬首ざんしゅ」「馘首かくしゅ」をはじめとする漢語かんご用例ようれいから「くび」のがあてられた。 のち語義ごぎは“頭部とうぶ全般ぜんぱん”を意味いみするものへとひろがった。 とはいえ現在げんざいではややすたれた用法ようほうであり、「くびむ」「くびぶ」といった慣用かんようもちいたり[ちゅう 2]、「乳首ちくび」( = 乳頭にゅうとう)、「生首なまくび」(なまくび = 斬首ざんしゅ事故じこなどによりからだからはなされたばかりの頭部とうぶ)、「首実検くびじっけん」( = かお犯人はんにんなどを見極みきわめること)などの成語せいご複合語ふくごうご化石かせきてき形態素けいたいそとしてられるほかは、あまりもちいられなくなっている。

首肯しゅこう」( = うなずくこと)というかん熟語じゅくごしめすように、「くび( = あたま)をたてる」ことは肯定こうてい意味いみし、また、「よこる」と否定ひてい意味いみになる。 こうした通念つうねん世界せかい一部いちぶのぞ[ちゅう 3]おおくの文化ぶんかけん共有きょうゆうされているものである。

頸部の解剖かいぼうがく

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ヒトの場合ばあい

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Gray's Anatomyくび頭部とうぶ 1194
実際じっさいじゅうだい男性だんせいの頸部

ヒトふく哺乳類ほにゅうるい脊柱せきちゅうの頸部は7つのうずたかこつ構成こうせいされる。これらを頸椎という。頸椎は、典型てんけいてきに C-1 (CI) から C-7 (CVII) で参照さんしょうされ、各々おのおのうずたかからだあいだにはばんじょう軟骨なんこつせい椎間板ついかんばんがある。くびあたま重量じゅうりょうささえ、のうからくだってからだいた神経しんけいたば保護ほごする。さらに、くび高度こうど柔軟じゅうなんであり、頭部とうぶまわし、あらゆるきにげることができる。脊柱せきちゅうは、頂上ちょうじょうから底部ていぶまで、前方ぜんぽうかってとつなかたちでゆるやかに(Sじょうに)湾曲わんきょくする。その湾曲わんきょく脊柱せきちゅうのあらゆる曲線きょくせんのなかでもっとも目立めだたないものである。

やわらせい組織そしき解剖かいぼうがく

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あごした正中せいちゅうせんじょうしたこつからだ、その直下ちょっかには「のどぼとけ」とばれる女性じょせいよりも男性だんせい顕著けんちょ甲状こうじょう軟骨なんこつ突起とっきかんじることができる。さらにしたには容易ようい輪状りんじょう軟骨なんこつを、それと頸切こんのあいだには気管きかん甲状腺こうじょうせん峡部きべ形作かたちづくられていることをかんじとれるだろう。胸骨きょうこつ甲状こうじょうすじ外縁がいえんはもっとも目立めだ特徴とくちょうである。それはぜんさんかくこうさんかく分割ぶんかつする。前者ぜんしゃ上部じょうぶあごせんふくみ、あごせんあごにある後者こうしゃ本体ほんたい半分はんぶん真下ましたよこたわる。そう頸動みゃくおよびそと頸動みゃくむねくさり関節かんせつからしもあごかくかってびる。

だいXI脳神経のうしんけいあるいは脊髄せきずいふく神経しんけいえがくラインは、しもあごかくちちさま突起とっき中点ちゅうてんから胸骨きょうこつ甲状こうじょうすじこうえん中央ちゅうおうまで、そしてそれゆえこうさんかく横断おうだんしてそうぼうすじ深層しんそうめんいたる。そと静脈じょうみゃくはふつうに皮膚ひふとおしてることができる。それはあごすみから鎖骨さこつ中央ちゅうおうへとかれる一本いっぽんせんうえはしる。そのちかくにはいくつかのちいさなリンパ腺りんぱせんがある。ぜん静脈じょうみゃくは、よりちいさく、くび正中せいちゅうせんから1センチはんほどしたはしる。鎖骨さこつくび下限かげんし、くびからかたへのよこ方向ほうこう外見がいけんじょう勾配こうばいそうぼうすじ起因きいんする。

くびは、そのなかうえこう大動脈だいどうみゃく血管けっかん)、気道きどう食道しょくどう神経しんけい頸椎ほね)がかよっている。

その脊椎動物せきついどうぶつ場合ばあい

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くび頭部とうぶかたあいだ脊椎せきついこつ範囲はんいす。これを魚類ぎょるいると、この部位ぶいえらぶたおおわれた部位ぶいである。魚類ぎょるいではこの部分ぶぶんとくほそくはなく、その可動かどうせい限定げんていてきである。つまり両生類りょうせいるい段階だんかいえらうしなわれたことでくびしょうじ、その部分ぶぶん可動かどうせいおおきくなったとかんがえられる。ただし両生類りょうせいるいではくびたてることしかできない。爬虫類はちゅうるいではこの可動かどうせいはよりおおきくなり、恐竜きょうりゅうではかみなりりゅう化石かせき爬虫類はちゅうるいでは首長しゅちょうりゅうのような多数たすうの頸骨を細長ほそながくびれいもある。

鳥類ちょうるいおおくはながくびつ。これはこのるいでは胴体どうたいがコンパクトにまとめられ、脊椎せきついこつなどにたがいに癒合ゆごうがあり、可動かどうせいすくないことをおぎなうものとかんがえられ、逆説ぎゃくせつてき飛行ひこうへの適応てきおうかんがえられる。つまり飛行ひこう運動うんどうのために胴体どうたいがまとまった一体いったいであることをもとめられることから、それによる前足まえあしうしあし運動うんどうせい犠牲ぎせいになることから、これをおぎなうためにあたま様々さまざま方向ほうこううごける必要ひつようがあり、それがくびながくする方向ほうこう進化しんかうながしたとられる。

なお、首長しゅちょうりゅうなどでは頚骨けいこつ多数たすうであったからくびはよくがったとかんがえられているが、哺乳類ほにゅうるいであるキリンでは頚骨けいこつ哺乳類ほにゅうるいおなじ7つであり、くびはくねるようにはがらない。

脊椎動物せきついどうぶつ場合ばあい

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上記じょうきのような定義ていぎからすれば、くび脊椎動物せきついどうぶつには存在そんざいしない。しかし、実際じっさいには頭部とうぶどうとつなぐ部分ぶぶん比喩ひゆてきくびばれるれいがある。また、この部分ぶぶん頭部とうぶ運動うんどうせいめるため、とくにくびれていたり細長ほそながくなっているれいがあり、それぞれの動物どうぶつ特徴とくちょうとなる。そのため、くびをそのれいがあり、以下いかのようなものがある。

  • 昆虫こんちゅう:クビナガムシ・クビボソゴミムシ・ツルクビオトシブミ
  • 甲殻こうかくるい:ナガクビムシ

頸部の可動かどうせい

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くびあたま自由じゆう方向ほうこううごかせるためにおおきな可動かどう範囲はんいつが、たとえばヒトは真後まうしろをくことはできない。しかし、たとえばフクロウるいはその可動かどうせいがさらにひろくて、顔面がんめん真後まうしろにけることも、かお上下じょうげさかさまにちか位置いちげることもできる。

このようなうごきは、それができればらくなことがおおいから、日常にちじょうてき無理むりくびげようとして苦心くしんすることがおおい。ぎゃくに、それが可能かのうになったのをることは、それが異常いじょうなことであるのがわかりやすいために恐怖きょうふ嫌悪けんおかんじさせる。映画えいがエクソシスト』では悪魔あくま憑き少女しょうじょくび真後まうしろをき、日本にっぽんでは妖怪ようかいろくろくびがある。なお、哺乳類ほにゅうるい頚骨けいこつかずでは、くびはくねれないから、ろくろくび実在じつざいすれば哺乳類ほにゅうるいとはみなしがたい。

弱点じゃくてんとしての頸部

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くびいのちとつながってかんがえられる理由りゆうは、個体こたいいのちあたまにぎっているためである。個体こたい生命せいめいはそれを構成こうせいする細胞さいぼう生命せいめいもとづくが、高等こうとう動物どうぶつではそれを統括とうかつする役割やくわり神経しんけいけい内分泌ないぶんぴつけい、およびその役割やくわり中枢ちゅうすうとしてののうたしているめんおおきい。しかし、実際じっさいにそのからだやしなっているのは消化しょうかけい循環じゅんかんけいなどであり、それはほぼ胴体どうたいになっている。そのため、頭部とうぶどうはなせば個体こたい生命せいめい維持いじできない。つまり、それらをつなぐ部分ぶぶんであるくびはなすことは、確実かくじつ個体こたい生命せいめいうしなわせる行為こういである。

頸部には、頭部とうぶからは

が、また胴体どうたいからは

が、せまくなった部分ぶぶんふくまれる。したがって、くび強度きょうどてきには部分ぶぶんよりおとった弱点じゃくてんである。たとえばくびまわりをけることは、呼吸こきゅうめたり血行けっこうめたりすることでたやすく相手あいて制圧せいあつすることができる。このためにひもをくびくようなくびめるというのは、きわめて有効ゆうこう手段しゅだんであるが、あまりにも致命ちめいてきであるために格闘技かくとうぎにおいてはきんしゅである場合ばあいおおい。また、自殺じさつする場合ばあいにもこれは有効ゆうこうであり、みずからの体重たいじゅうくびにかかるよう、なかくびれ、ひもでぶらがることでみずからのくびめて自殺じさつすることを首吊くびつ自殺じさつという。格闘技かくとうぎなどにおいてはくび強化きょうか重要じゅうようなものである。柔道じゅうどうわざは、血行けっこうめることで相手あいて昏倒こんとうさせることを目的もくてきとする。

より確実かくじつころ方法ほうほうとしてはくびとすのがきわめて有効ゆうこうである。「くびる」は「いのちうばう」とほぼどう意義いぎあつかわれる。世界せかい各地かくちでも死刑しけい方法ほうほうとしてくびれいおおい。ギロチンはそのための専用せんよう機器ききである。日本にっぽん武士ぶし伝統でんとうてき自殺じさつほうである切腹せっぷくも、実際じっさいには介錯かいしゃくしょうしてくび介添かいぞやくがついて、実質じっしつてきにはこちらが有効ゆうこうだった。はらりだけで介錯かいしゃくのみがおこなわれた事例じれいおおいという。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 頭部とうぶ”から“トップ”“首長しゅちょう”への意味いみ変化へんかおおくの言語げんごられるもので、たとえば英語えいごの captain や chief も元来がんらいは“頭部とうぶ”を意味いみしたかたりからている。日本語にほんごの「かしら」も、本義ほんぎは“頭部とうぶ”のことである。
  2. ^ なお、「くびにする/なる」(※「打首うちくびにする/なる」より)「くびる」「くびつながる」など、“頸部”をすのか“頭部とうぶ”をすのか判然はんぜんとしないような慣用かんようもある。こうした成句せいく元来がんらい斬首ざんしゅ馘首かくしゅ慣習かんしゅう起源きげんをもつものにおおく、こうした場面ばめん使つかわれるさい語義ごぎ曖昧あいまいさが原因げんいんで、結果けっかてき語義ごぎ変化へんか混乱こんらんむこととなった。
  3. ^ インドブルガリアなどではことなるという。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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