(Translated by https://www.hiragana.jp/)
鳶職 - Wikipedia コンテンツにスキップ

鳶職とびしょく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
二人ふたり鳶職とびしょく特徴とくちょうてきニッカズボンかたすそひろがった作業さぎょうズボン。地下足袋じかたび着用ちゃくようする。
地下足袋じかたび

鳶職とびしょく(とびしょく)とは、一般いっぱんてき日本にっぽん建設けんせつぎょうにおいて、高所こうしょでの作業さぎょう専門せんもんとする職人しょくにんす。とんびとびものとんびこうともう。町場ちょうばでは基礎きそ工事こうじ簡単かんたんあいだ石積いしつみなど、ぎょうおこなう。このため「とんび土工どこう土方どかた)」といちくくりでばれる。とんび画数かくすうおおいことからしばしばりゃくされる。

作業さぎょう種類しゅるい職業しょくぎょうなどによって「足場あしばとんび」「重量じゅうりょうとんび」「鉄骨てっこつとんび」「橋梁きょうりょうとんび」「機械きかいとんび」など多岐たきわたりそれらを総合そうごうてきもしくはせんもんおこなものがいる。

建築けんちく現場げんばでは、高所こうしょ華麗かれいうごまわことから現場げんばはなともしょうされる。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

由来ゆらい

[編集へんしゅう]

棟上とうじょうときりょうからはり文字通もじどおんだのでとんびといわれる。道具どうぐとして代表だいひょうてきなものが鳶口とびぐちでありこのことからも町火消まちびけし延焼えんしょう家屋かおくたおすときに使つかう)、梯子乗はしごの梯子はしごささえるのに使つかう)、木遣きやをやりまわすのに必要ひつよう)とは不可分ふかぶんであるとえる。またこの鳶口とびぐちから鳶職とびしょくといわれる。

由来ゆらい上棟じょうとうしきの「曳綱ひきづな」を参照さんしょうかたしゅ由来ゆらい下記かき基礎きそ工事こうじぎょう参照さんしょう。または木遣きやかた木遣きやしゅなどもとびしょく別名べつめいであり、かた語源ごげんである。

歴史れきし

[編集へんしゅう]

飛鳥あすか時代ときよにはみぎかん左官さかん名称めいしょういま左官さかんぎょうとそれ以外いがい普請ふしんぎょうみぎかんといったせつ左官さかん大工だいくせつなどはっきりしないが、安土あづち桃山ももやま時代じだいしろ普請ふしん活躍かつやくした穴太あのうしゅ(あのうしゅう)の一部いちぶしろ普請ふしんくなってから転業てんぎょうしたという記録きろくのこっている。鳶職とびしょくばれるようになったのは江戸えど時代じだい以降いこうである。江戸えど時代じだい町奉行まちぶぎょう寺社じしゃ奉行ぶぎょうという行政ぎょうせいじょう自治じち管轄かんかつ名残なごりにより、寺社じしゃ大工だいく宮大工みやだいく)、まち大工だいく帳場ちょうば大工だいくというよう大工だいく呼称こしょうされるが、まちとんび帳場ちょうばとんびという呼称こしょうたい寺社じしゃとんびという表現ひょうげんはほとんどかれない。

本来ほんらい職域しょくいき

[編集へんしゅう]

おも木造もくぞうじくぐみ工法こうほう家屋かおく建築けんちくにな職人しょくにん作業さぎょう内容ないようぎょう地均じなら掘削くっさく)、基礎きそ工事こうじ足場あしば架設かせつ棟上とうじょうじくぐみて)。その建築けんちく解体かいたいくわしくは下記かき分類ぶんるい参照さんしょう)、木遣きやり(木材もくざい運搬うんぱん)。祭礼さいれい内容ないよう地鎮祭じちんさい上棟じょうとうしき竣工しゅんこうしき

役割やくわり

[編集へんしゅう]

まちとんび町場ちょうばとんびともわれる。ふるくから日本にっぽん各地かくちでは相互そうご扶助ふじょ単位たんいとしてまちあるいは町場ちょうばという共同きょうどうたいがあり、江戸えど時代じだいまでは都市とし公的こうてき自治じち単位たんいとしておおくの権限けんげんゆうしていた。都市とし庶民しょみんのまつりごと(自治じち祭礼さいれい)は伝統でんとうてきにこの単位たんいおこなわれ、その慣行かんこういまでものこっているところもすくなくない。こうした自治じちまちとんび冠婚葬祭かんこんそうさい互助ごじょ活動かつどうなどや消火しょうか活動かつどう町火消まちびけし)、祭礼さいれい山車だし神輿しんよ作成さくせい)、はし井戸いど屋根やねつるべ上水道じょうすいどうます木管もっかん下水道げすいどうのどぶいたといった町内ちょうないインフラストラクチャーの作成さくせい保守ほしゅなどを、まち大工だいく大工だいく)と協力きょうりょくしてになってきた。現代げんだいえばインフラストラクチャー大工だいくつくイベント鳶職とびしょくおこなったといえる。普請ふしんにおいてそのまちものはその土地とち鳶職とびしょく使つかうのが不文ふぶんりつでありそれをたがえるときはそれなりの理由りゆう挨拶あいさつかせなかった。またこのようなことは鳶職とびしょくかぎったことではなくまちなかでおかね循環じゅんかんするという相互そうご扶助ふじょでもある。しかしまちなかでも商店しょうてん職人しょくにん積極せっきょくてき贔屓ひいきにするが、不文ふぶんりつ拘束こうそくよわく、まちとんびまち大工だいく町火消まちびけしなどの「まち」をかんする職方しょくかたには我々われわれまちの、というほこりをめたニュアンスがある。

とんび火消ひけ

[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだい消火しょうか延焼えんしょう方向ほうこう家屋かおく解体かいたいして延焼えんしょう防止ぼうしする破壊はかい消防しょうぼうだったため、民間みんかんじんのボランティアにより構成こうせいされる町火消まちびけしでは、本来ほんらい建築けんちく労働ろうどうしゃ家屋かおく構造こうぞう熟知じゅくちし、かつ掛矢かけや鳶口とびぐちなどの道具どうぐあつかいに習熟しゅうじゅくして素早すばや家屋かおく解体かいたい可能かのうだったとびもの火消ひけししゅ主力しゅりょくめた。以後いご火消ひけしはとんび同義どうぎになり、歌舞伎かぶきなど江戸えど文化ぶんか題材だいざいとされ、とんびあいだ独自どくじ火消ひけ文化ぶんか発達はったつした。

現在げんざいでも消防しょうぼう出初でぞめしきではとんび関係かんけいしゃにより梯子乗はしごのりの演技えんぎなどがおこなわれる。東京とうきょう場合ばあい梯子乗はしごのりは(しゃ)東京とうきょうとび工業こうぎょうかいべつ組織そしきである、火消ひけ文化ぶんか伝承でんしょう目的もくてきとする江戸えど消防しょうぼう記念きねんかい会員かいいんによりおこなわれる。

文化ぶんか芸能げいのう

[編集へんしゅう]

ほとんどの老舗しにせ鳶職とびしょく神社じんじゃ氏子うじこであり神託しんたくけるものとしてかみだいであるともいえる。

  • 芸能げいのう
    • 木遣きや(きやり)、わたまわはこぶ、うごかす)という意味いみ町火消まちびけしうたわれるうた作業さぎょううた)をうたうこと。
寺社じしゃいえなどを建築けんちくすること自体じたい慶事けいじであったことからおめでたいうたとしてうたわれるようになった。江戸えど中期ちゅうきごろには鳶職とびしょくじんあいださかんにうたわれていた、町火消まちびけし鳶職とびしょくじん中心ちゅうしん組織そしきされたため、木遣きやうた自然しぜん町火消まちびけしなかがれていった(木遣きやうたうた場合ばあいは、音頭おんどをとる木遣きやりと、受声を木遣きやり交互こうごうたう)。
いまでは神道しんとうしき結婚式けっこんしき地鎮祭じちんさい棟上とうじょう竣工しゅんこうしきによくうたわれ、無病むびょう息災そくさい家内かない安全あんぜん商売しょうばい繁盛はんじょうをもたらすちから神通力じんずうりき)があるといわれる。

補足ほそく

[編集へんしゅう]
  • 大相撲おおずもう歌舞伎かぶき落語らくご協会きょうかい花柳かりゅうかいおな伝統でんとう芸能げいのうになものとしてのつながりもつよく、襲名しゅうめいときはなえるためによくまねかれる。
  • 祭礼さいれい縁起物えんぎもの互助ごじょ活動かつどう手間てまたいする対価たいか謝意しゃいであり、祝儀しゅうぎ不祝儀ぶしゅうぎであり代金だいきんではない。
  • 本業ほんぎょう以外いがいでの文化ぶんかてき価値かち多能たのうこう色々いろいろ職能しょくのうつ)であることからまちとんびまち大工だいくならしょうされた。

分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

現代げんだいではおもに以下いかのように分類ぶんるいされる。ただし、会社かいしゃ職人しょくにんによっては複数ふくすうしょくをこなせる場合ばあいがある。

まちとんび町場ちょうばとんび)にたいして帳場ちょうばとんびという(丁場ちょうばともいう、造成ぞうせい埋立うめたてなどまち形成けいせいされるまえ場所ばしょまちという単位たんいからはずれる、またはえる規模きぼ仕事しごと場所ばしょ検地けんち帳簿ちょうぼない)の出来できていない土地とちす)。

足場あしばとんび

[編集へんしゅう]

建築けんちく現場げんば必要ひつよう足場あしば設置せっちする職人しょくにんたん高所こうしょ作業さぎょうおこなうだけでなく、設置せっち場所ばしょ状態じょうたい作業さぎょうせい足場あしば解体かいたい効率こうりつなど、そのおうじて的確てきかく判断はんだんしててることがもとめられる。会社かいしゃ組織そしきとして、建築けんちく現場げんば仮設かせつ足場あしばのレンタル・据付すえつけ解体かいたい一体いったいとなってっている場合ばあいおおい。

鉄骨てっこつとんび

[編集へんしゅう]

鉄骨てっこつ構造こうぞう建築けんちくぶつにおいて、鉄工てっこうしょ、FABなどで製作せいさくされたはしらはりになる鋼材こうざいをクレーンなどでげててる(かたみともばれる)とんび

重量じゅうりょうとんび

[編集へんしゅう]

土木どぼくでは橋梁きょうりょう現場げんばしゅけた架設かせつおこなう。また、建物たてもの内部ないぶ重量じゅうりょうぶつ大型おおがた機械きかいなど)の据付すえつけ設置せっち)をおこなうのも重量じゅうりょうとんびである。足場あしば鉄骨てっこつとんびくらべて専門せんもんせいたかく、プラント空調くうちょう給排水きゅうはいすい設備せつび電気でんき設備せつび工事こうじ一部いちぶ重量じゅうりょうとんび仕事しごとする場合ばあいおおい。

送電そうでんとんび

[編集へんしゅう]
送電そうでんせんじょう作業さぎょうちゅう送電そうでんとんび

正式せいしき名称めいしょう送電そうでんせん架線かせんこう。ラインマン(Lineman)ともばれる。特別とくべつだかあつ架空かくう電線でんせん敷設ふせつ保守ほしゅ作業さぎょうなどをおこなう。作業さぎょうには電気でんき工事こうじ資格しかく必要ひつようなため就業しゅうぎょうしゃ工業こうぎょう高校こうこう高等こうとう専門せんもん学校がっこう電気でんき卒業そつぎょうしたもの中心ちゅうしん近年きんねんになすくないため、送電そうでんせん架線かせんこう会社かいしゃ人員じんいん確保かくほ困窮こんきゅうしている。

その

[編集へんしゅう]

基礎きそ工事こうじぎょう

[編集へんしゅう]

おも町場ちょうば住宅じゅうたく基礎きそ工事こうじ専門せんもんとする。まちとんびから分業ぶんぎょうまたは兼業けんぎょう基礎きそ工事こうじ準備じゅんび段階だんかいとしてくいぬきベンチマークとなるがこいをつくるこれを「かた」といい、鳶職とびしょく別名べつめいになった。また「やりかた」の語源ごげんともわれる。

ぎょう

[編集へんしゅう]

建築けんちくぶつ基礎きそから分離ぶんり上物じょうもの解体かいたい分解ぶんかいせずそのままのかたち移動いどう移設いせつする職業しょくぎょう歴史れきしてきふる鳶職とびしょく職能しょくのう一部いちぶだったが、最近さいきん高度こうど工業こうぎょうされたコンピューター制御せいぎょのジャッキアップシステムを駆使くしする専門せんもん業者ぎょうしゃおおい。

解体かいたいぎょう

[編集へんしゅう]

建築けんちくぶつ解体かいたいおこな職業しょくぎょう煙突えんとつ解体かいたいぎょうという専門せんもんしょくもある)。足場あしば構も必須ひっすである。鳶職とびしょくから分業ぶんぎょうまたは兼業けんぎょう。また町火消まちびけし消火しょうか活動かつどう自体じたいが、延焼えんしょう家屋かおくやその周辺しゅうへん家屋かおく素早すばやだおし(解体かいたいこわす)防火ぼうかたいつくるというあらっぽい作業さぎょうであったが、その緊急きんきゅう危険きけん場所ばしょでの技術ぎじゅつ解体かいたいぎょういしずえになったことはいなめない。

煙突えんとつ掃除そうじぎょう

[編集へんしゅう]

おも銭湯せんとう煙突えんとつ掃除そうじおこなう。銭湯せんとうがボイラーしつつようになり、法律ほうりつによって煙突えんとつ設置せっちたかさがさだめられた。そのことにより掃除そうじ点検てんけんをする専門せんもんしょくとしておもまちとんびから分業ぶんぎょうしたが、現在げんざい銭湯せんとう自体じたい激減げきげん都心としんでもすうにんしかいないといわれている。

資格しかく

[編集へんしゅう]

足場あしば組立くみたとう作業さぎょう主任しゅにんしゃなどを所持しょじすることがおおい。技能ぎのう検定けんていなかに「とび技能ぎのう」のいちきゅう技能ぎのうきゅう技能ぎのうさんきゅう技能ぎのう技能ぎのう検定けんてい試験しけんがある。現実げんじつとしては資格しかく請負うけおい派遣はけん社員しゃいん作業さぎょうしている業者ぎょうしゃおおい。

技能ぎのう試験しけん内容ないよう

[編集へんしゅう]

1きゅう かかげる作業さぎょう試験しけんおこなう。

  1. 丸太まるたまた鋼管こうかん使用しようしてしんづか小屋こやぐみ作業さぎょうおこなう。
  2. そり(こした)にのせた重量じゅうりょうぶつ運搬うんぱん作業さぎょうおこなう。
  3. 3種類しゅるい重量じゅうりょうぶつ目測もくそく作業さぎょうおこなう。
  • 試験しけん時間じかん丸太まるた場合ばあい…2あいだ15ふん鋼管こうかん場合ばあい…2あいだ5ふん

2きゅう かかげる作業さぎょう試験しけんおこなう。

  1. 丸太まるたまた鋼管こうかん使用しようして片流かたなが小屋こやぐみ作業さぎょうおこなう。
  2. 3種類しゅるい重量じゅうりょうぶつ目測もくそく作業さぎょうおこなう。
  • 試験しけん時間じかん丸太まるた場合ばあい…2あいだ5ふん鋼管こうかん場合ばあい…1あいだ55ふん

職業しょくぎょう訓練くんれん施設しせつ

[編集へんしゅう]

公共こうきょう職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ施設しせつ職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつこう事業主じぎょうぬしとうによる認定にんてい職業しょくぎょう訓練くんれんによる職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつこう訓練くんれんとして、とびなどが設置せっちされている。たとえば、東京とうきょうとび高等こうとう職業しょくぎょう訓練くんれんこう金子架設工業かねこかせつこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ職業しょくぎょう訓練くんれんこう株式会社かぶしきがいしゃ鈴木すずきぐみ運営うんえいする鈴木すずき職業しょくぎょう訓練くんれんしょなどがある。

装束しょうぞく

[編集へんしゅう]

作業さぎょうふくなかでもとんびふくという分類ぶんるいがある。ななふんばれる、ニッカズボンかたすそひろがった作業さぎょうズボンなど、独特どくとく作業さぎょうふく着用ちゃくようしていることがおおい。地下足袋じかたびや、手甲てっこう(てっこう)脚絆きゃはん(きゃはん)などを着用ちゃくようすることもある。

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]