フランスの劇げき作家さっか・ジャン・ジロドゥの劇げき『オンディーヌの呪のろい』というのがある。
この主人公しゅじんこうとなるオンディーヌは、美うつくしい妖精ようせいのこと。

オンディーヌは、水みずの世界せかいに住すむ妖精ようせいだが、
垣間見かいまみる人間にんげん世界せかいでハンスという青年せいねんに恋こいしてしまう。
足あし繁しげく通かようようになり、ハンスも妖精ようせいのオンディーヌに思おもいを寄よせるようになる。
オンディーヌは、水みずの神かみから人間にんげん世界せかいに住すむこと、そしてハンスとの結婚けっこんを許ゆるされるが、
一ひとつだけ条件じょうけんを言いわれる。
相手あいてが裏切うらぎったときには、相手あいてを殺ころすようにと宣せん託たくを受うけていた。
仲なか睦むつまじかったのも束つかの間ま、ハンスは、意思いし疎通そつうの難むずかしいオンディーヌを裏切うらぎってゆく。
オンディーヌは悩なやみ、水みずの神かみに「先さきに私わたしが裏切うらぎった」とハンスを擁護ようごしたが、
認みとめられず、オンディーヌは、宣せん託たくのごとく、ハンスを殺あやめなければならない。
殺ころすには忍しのびなく、オンディーヌはハンスに「眠ねむると死しぬ」という魔法まほうをかける。
ハンスは、それを知しり、眠ねむることができず、起おき続つづけることを運命うんめいづけられる。
恋こいと裏切うらぎりという悲恋ひれんの物語ものがたり。

その物語ものがたりから生うまれた言葉ことばなのか、眠ねむっている間あいだに死しんでしまう「睡眠すいみん時じ 無む呼吸こきゅう症候群しょうこうぐん」
と呼よばれる病気びょうきを別名べつめい「オンディーヌの呪のろい」と呼よばれている。

漸ようやく梅雨つゆ明あけとなり、いよいよ本格ほんかく的てきな夏なつの到来とうらいとなった。
海うみに、山やまにと出掛でかけたい気分きぶんになるが、思おもわぬほどの高温こうおんの日ひが続つづいている。
まだ梅雨つゆ空そらが覗のぞく湿潤しつじゅんな中なかでの気温きおん上昇じょうしょうで、夜よるになっても温度おんどが下さがらない。
眠ねむったかと思おもえば、暑あつさのせいで目めが覚さめる。

この不快ふかいな夜よる。
ひょっとして、オンディーヌの呪のろいか？

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