翌朝、いつものように
一颯は
起きてきて、「パパ~」と
抱きついてくる。
その
姿が
可愛くて、
抱き
上げたまま
顔を
洗いに
行った。
そして
一緒に
朝食を
食べて、8
時過ぎたら
俺は
仕事に
行くことに・・・
今日、
一颯は
保育園だし、つくしは
休みだけど
家でケーキ
作りだと
言っていた。だから
昨日の
話は
保育園から
帰ってからゆっくりい
聞かせるとのこと。
「・・・じゃあ17
時ぐらいには
電話する。
一颯の
気持ちを1
番で
考えていいからな」
「うん、わかった。そっちも
光翔君が
嫌がったら
早めに
教えてね」
「・・・じゃあ
行ってくる」
「いってらっしゃい」
「パパ、いってらっしゃ~~~~い♪」
やっぱり
一颯は
昨日の
話など
覚えてない
様子・・・それも
仕方ねぇことだと、もどかしさを
顔に
出さないようにしてドアを
閉めた。
それから
宗家に
行って、いつものように
親父の
部屋でスケジュール
確認を
済ませ、
最後に
今夜のことを
聞くと・・・
「あぁ、
孝三郎も
光翔も
嬉しそうだったぞ?」
「
嬉しそうって・・・
本当にクリスマスパーティーなんてするのか?
今日は
稽古も
夜咄の
茶事もねぇけど・・・」
「いいんじゃないか?
料理長が
腕を
振るうって
張り
切ってたし」
「
俺達以外、みんなノリノリなのかよ!」
「・・・なにをそんなに
怒ってるんだ、
総二郎」
「怒ってねぇよ!」怒ってるんじゃない・・・ただ、こっちには
何も
知らない
一颯がいるってだけだ。
それなのに、
自分達が
落ち
着いたからって
勝手なことを!
・・・・・・と、
1人でモヤモヤしながら
母屋に
向かった。そして
通りすがりの
使用人に
光翔のことを
聞くと、
離れで
英語の
家庭教師待ちだとか。
まだその
時間までに30
分あると
言うので、
急いで
離れに
行くと、
丁度祐子が
出てきた。
「
総二郎様・・・おはようございます」
「
光翔は?」
「あ・・・お
部屋にいますよ?
私はお
茶の
用意をしに
厨房に
行くだけですけど・・・お
入りになりますか?」
「・・・
今日のことで
話したいんだけど、いいか?」
「クリスマスパーティーですね?はい、とても
楽しみにしているようなので、お
話しになってください。
一颯君のこと・・・
気になるんですよね?」
「・・・・・・まぁな」
少し
見ないうちに
母親っぽい
顔になっている
祐子・・・それに
俺に
対する
態度も
随分軟らかくなった。
以前はすげぇ
緊張していたのに、それもなくなったようで、
小さな
変化に
驚いたぐらいだ。
時間もないのですぐに
中に
入り、
光翔を
名前を
呼ぶと
子供部屋から
出てきて・・・
「あ、とう・・・そうおじちゃま!」
「おはよう、
光翔。
今日のことなんだけど・・・お
前、
一颯と
仲良く
出来るのか?その・・・
気にならないのか?」
「いっくんがとう・・・そうおじちゃまの
子どもってこと?
うん、ぼくは
平気だよ~?ぼく、あたらしい
父さまと
母さまがいるもん」
「・・・・・・
父様が・・・
俺が
一颯を
連れてきても、それで
嫌な
思いをしないか?」
「う~~~~~ん・・・たぶん、、
平気!
それよりもいっくんとプレゼントこうかんしたいし、いっしょにおもちゃで
遊びたいし~~」
「・・・・・・そうか。ケンカ・・・しないんだな?」
「しないよ~~?」
チラッと
見るとリビングのテーブルには
一颯に
渡すと
思われるプレゼントがある。なぜなら
包装紙の
上の
紙に、
光翔の
殴り
書きのような
文字で「いぶきくんへ」と
書いてあったから・・・
それを
見ると、
確かに
楽しみにしているんだろう・・・
逆に、
今度は
一颯の
事が
心配になってしまった。
**********************
今日のバイトは
休みをもらっていたので、
一颯を
保育園に
連れて
行ったらマンションでケーキ
作りをしていた。
西門に
行くならどうしようかとも
考えたけど・・・
「
西門だったら
一流のお
菓子職人さんがケーキを
作るよね・・・
その
時は
明日食べればいいかな?」
なんて
呟きながら
材料を
眺めた。
作るのはクリスマスリースのタルトと、ザッハトルテ
風のチョコケーキ。
アーモンドを
使った
生地のリースタルトは
専用の
型がなくてもタルト
台とセルクルで
作れるし、
甘い
物が
苦手な
総二郎のためのザッハトルテ。
どっちも15㎝ぐらいの
小さなものを
予定してたんだけど・・・
「もしも
西門に
持って
行くって
言ったらどうしよう・・・
取り
合えず20㎝ぐらいにしとく?」
私の
手作りなんて
西門に
持って
行けるはずもないのに、もしものことを
考えて
少し
大きめにすることにした。
午前中はザッハトルテを
作り、
自分のお
昼はおにぎりと
味噌汁。それをダイニングテーブルで
食べながらスマホを
見ると、
総二郎からLINEが
入ってた。
『光翔は一颯に会うのを楽しみにしてるようだ。
俺の子供だと理解してるみたいだし、それでも一緒にクリスマスパーティーをするって言ってる。
しかもプレゼントを用意してるし、一颯も行く気があるなら光翔へのプレゼントを用意してくれないか?
俺は全然思いつかないから、つくしに任せる』「えっ?!それって
行かないって
選択はないんじゃないの?!
それにプレゼントって・・・
西門の
子供に
何をあげたらいいのよ!」
実はこっそり
一颯に
用意していたクリスマスのプレゼント・・・
それは
総二郎が
選んだ
乗用玩具の
電動乗用カーで、しかもベンツだ。
それは
明日ここで
渡すとして、
今日は
光翔君にだけ
買えば
良いの?おもちゃ?
文具?お
洋服・・・まったく
好みを
知らないのに、どうすればいいのよ~~~!
急に
忙しくなった
私はランチを
切り
上げ、
保育園に1
時間早くお
迎えに
行くことを
連絡。
すぐにクリスマスリースのタルトに
取りかかり、それが
完成したのが14
時45
分・・・エプロンをソファーに
放り
投げて
一颯を
迎えに
行き、ドタバタでマンションに
戻ってきたのは15
時20
分だ。
「ママ、
今日はおしごと
早くおわったの~~?」
「う、うん、まぁね・・」
「そうなんだぁ~~、よかったね~~」
「・・・うん、それは
良いんだけど・・・いっくん、ちょっとママの
前に
座ってくれる?」
「は~~~い」
冷静に・・・
気持ちを
落ち
着けて・・・・・・
ここで
深呼吸して、
一颯に
昨日の
話を
繰り
返した。
光翔君が
総二郎の
子供として
育ったこと、でも
本当のお
父さんは
別の
人だということ。
私もそうだったけど、
総二郎にも
家が
決めた
奥さんがいて、もうお
別れしたこと。
光翔君はそのまま
西門の
家に
住むことになって、
総二郎の
弟である
孝三郎さんがお
父さんになったこと・・・
一颯は
真面目に
聞いてたけど、
特に
困った
様子はなく・・・
「きのうも
聞いたおはなしだよね?」
「えっ!
覚えてるの?」
「う~~~~ん・・・よくわかんないけどぉ~、ひ~くんのパパがぼくのパパからあのお
兄ちゃんになったんでしょ?」
「そ、そうだね・・・そんな
感じ」
「ぼくのパパをとらないなら、べつにおこったりしないよ?
ひ~くんにもパパが
出来たんなら、それでよくない?」
「・・・・・・・・・え、そんな
簡単なの?」
「そんなことより、おやつは?」
「・・・・・・・・・・・・」
難しく
考えるのは
大人だけ・・・
子供は
純粋に
相手が
好きかどうかってことだけが
重要なのだろうか。
そのうち
詳しい
事を
知るのかもだけど、その
時には
愛情を
注いでくれる
人が
沢山いて、
悲しかったり
苦しかったりはしないのかも・・・
今の
西門家でそんな
想いを
抱えたら、
誰かが
助けてくれるのかもしれない。
それなら・・・
飛び
込んでみる?
「いっくん・・・
光翔君のクリスマスプレゼント、
買いに
行こうか?おやつも
買ってあげる!」
「ほんと?!じゃあすぐに
行こうよ、ママ♪」
「そうだね!
今日の
夜はみんなでパーティーだもんね!」
「やったぁ🧡」
私は17
時を
待たずして、
総二郎にLINEを
送った。
『一颯も行く気満々だって。
総二郎さえ自分のところにいるんなら、問題ないって言ってるよ♪
だから今から光翔君のクリスマスプレゼント、買いに行きます。
往復するのは大変だろうけど、迎えに来てね~♪』
すぐに
既読は
着いたけど
返事はなかった。
でもきっと・・・
今のメッセージを
見てニヤニヤしてるんだろう。
にほんブログ村応援、よろしくお
願いいたします♡
- 関連記事
-