『二人 と愉快 な仲間 たち ~愛 のエッグプラント~』
敏也 と悠 真 が遅 れて畑 に到着 すると、早朝 から収穫 に来 ていた農作 班 の魔 獣 たちが喜 々として敏也 を呼 び寄 せる。
悠 真 はその様子 を見 て妬 いたのか、少 しムッとして口元 をへの字 に歪 める。
「敏也 、敏也 ~~。これを見 て、見 て。すごい実 ができた!」
「赤 い新種 の実 !」
「この前 のアラクネの接 ぎ木 から、面白 い実 がなったんだよ~~」
魔 獣 たちが誇 らしげにエッグプラント(ナス)に似 た楕円 の赤 い実 を敏也 に差 し出 す。
(なんか実 からモヤモヤとオーラみたいなものが出 てる……)
どう見 ても毒々 しい。しかも、得 てして品種 改良 をしたのではなく、全 くの偶然 の産物 だ。
先日 、カマキリ魔 獣 のカマキリスに畑 周辺 の草刈 りを頼 んだところ、たまたまその近 くの茂 みに潜 んでいた毒 蜘蛛 魔 獣 アラクネの一 匹 の首 を誤 って草 と一緒 にはねてしまった。
アラクネといえば、敏也 が異 世界 に来 て直 ぐに仲間 になった魔 獣 の一 つで、大人 の嗜好 品 ”愛 の密 薬 ”の素 となる粘液 を分泌 する、取 り扱 いに注意 のいるやや厄介 な魔 獣 だ。
その一大事 を見 た魔 獣 たちが仲間 思 いに、こぞってない知恵 を振 り絞 って、アラクネを助 けようとした。
その結果 、アラクネの胴体 の上 にその日 に植 えようと思 っていたエッグプラントをのせ、それを固定 するためにスライムが巻 き付 き三 、四日 。見事 な接 ぎ木 作物 、もとい新種 の複 合 魔 獣 に進化 を遂 げたのだ。
もちろん、敏也 のステイタスも即座 に反応 を示 し、新 たに珍 魔 獣 としてテイムし直 された。
その珍 魔 獣 ”アラスラナス”が、今朝 になってこの毒々 しい赤 い実 をたわわにつけたようだ。
「うん、すごいね。で、これをどうしたら良 いの? 農作物 として市場 に持 っていけば良 いの?」
そうはいうものの、これを食 して大丈夫 なものだろうか。なんせ三 分 の二 は魔 獣 でできた作物 から産出 されたものだ。
しかも、そのうちの一体 はアラクネ。果実 からフェロモンみたいな、得体 のしれないオーラがモヤモヤと出 ているのも気掛 かりだ。
「まずは敏也 に食 べてもらいたい」
「うんうん、折角 俺 たちが作 ったんだもん。食 べてもらいたい」
「食 べて、食 べて」
仲間 を救 った誉 れもあれば、懸命 に世話 した誇 りもある。口々 にせがむ。
何 より当 のアラスラナスが敏也 に食 べてほしそうな顔 をしている。
「うっ……」
これを食 べて、とてもタダでは済 まないような気 がする。
そうでなくともアラクネの分泌 液 にまみれて、体 の芯 が熱 くなり、湧 き上 がってくるどうしようもない劣 /情 に身 を持 て余 した経験 のある敏也 だ。あの強烈 な出来事 を思 えば、腹下 しや得体 のしれぬものを口 にする心配 以上 に躊躇 われる。
「いや、でも……」
「食 べて、褒 めて、敏也 ~~!!」
「うっ……」
無垢 な表情 で敏也 を見 つめる魔 獣 たちに押 し負 けて、赤 い実 を手 にする。
すると、悠 真 がそれをすごい勢 いで横 からかっさらった。
「敏也 、そんな得体 のしれないものを、安易 に口 にするな」
「う、うん……。だけど…………」
「そりゃ、俺 もコイツらの気持 ちが分 からないことはない。だから、コイツらがどうしても食 べてみて欲 しいというなら、まずは俺 が毒味 してみる!」
「えぇっ、悠 真 がっ!!」
それこそ悠 真 の身 に何 かあってからでは大変 だ。敏也 はギョッとして悠 真 の手 から実 を奪 い取 ろうとする。
けれども、敏也 よりも長身 の悠 真 に手 を高 くまで上 げられたら敵 わない。躍起 になってピョンピョンと飛 び跳 ねる。
「ダメだ、ダメ!悠 真 こそ、絶対 にダメだ」
「敏也 、心配 するな。俺 には魔 獣 だった時 の耐 性 が残 っている。今 も身体 は頑丈 なんだから、まずは俺 が試 すのが正解 だろ? 危険 な橋 は渡 るな」
確 かに悠 真 は今 も魔 獣 だった時 の能力 と体質 を残 している。それでも食 べて悠 真 の身 に何 かあったら大変 だ。
それに、もし敏也 の身 に何 かが起 こった時 には悠 真 がいる。アラクネの粘液 を被 った時 のように解毒 してもらうこともできれば、まだ真昼間 だけど悠 真 自身 に身体 を楽 にしてもらうことだってできる。
そう思 って二人 ですったもんだと実 を奪 い合 いをしていると、ふいにこの場 にのっそりと現 れたオークの名無 し001が背後 からその実 をピュッと掴 み取 った。そのまま止 める間 もなくパクリと口 に入 れてしまった。
「ああ、喉 が渇 いた~~、むしゃ、むしゃ、むしゃ。これ、変 わった味 するけど、旨 い~~~」
「…って、あ―――――――っっ!!!」
余程 美味 しかったのか、名無 し001は更 に収穫 籠 からも五 、六 個 摘 まみ上 げ、大口 でパクリと食 べてしまった。
いくら体 が大 きいからといっても、この実 にアラクネの毒 があった場合 、それだけ食 べたら確 かな摂取 量 になるだろう。
案 の定 、普段 からも半分 上向 きのような名無 し001の雄 (アレ)が、すさまじい勢 いで天 に向 かってニョキリと仰 いだ。
完全 に変 なスウィッチが入 ったようだ。名無 し001が敏也 めがけて突進 してきた。
その暴走 を止 めようと、悠 真 が絶妙 なタイミングで足 をかける。
すると、名無 し001は派手 にすっ転 んで、痛 みに足 を抱 かえて悶絶 する。
けれども、よほど赤 い実 の媚 /薬 効果 が強 いのか、足 を抱 えながらも敏也 の方 へと巨体 をズリズリと這 わして迫 ってくる。
「ひぇ―――――っっ。名無 し001、落 ち着 いて~~~~! お願 いだから、止 まって―――!」
魔 獣 村 全域 に響 き渡 る声 で絶叫 する。
けれども、すんでで魔 獣 たちに取 り押 さえられた名無 し001は、すかさず悠 真 によって解毒 され、みんなからやんやと怒 られている。あの大 きな身 も小石 のように縮 めて。
「だけど、あの実 、やっぱり食 べてみなくて……、良 かった…………」
一 件 落着 !
こうして効果 のほどもバッチリと分 かった赤 い実 は、少 しの摂取 でも媚 /薬 効果 があるとして、”愛 のエッグプラント”の名 で魔 獣 村 きっての新 特産 物 となった。
”愛 のエッグプラント”は瞬 く間 に大人気 となり、セレブたちの間 で高値 で売買 され、沢山 の食 い扶持 を抱 えている魔 獣 村 も左団扇 で暮 らせるほどの収入 がどっどと舞 い込 んできた。
とはいえ、笑 いが止 まらないということはなく、名無 し001みたいに誤 って食 してしまうものはいないかと、日々 新 たな心配 にビクビクと怯 えている。
今日 も街 で収穫 物 などを売 って戻 ってきた敏也 と悠 真 は、食事 班 のみんなが腕 を振 るってくれた料理 が並 んだ食卓 につく。
「今日 の夕飯 は何 かな? あれ、新 しいメニューだね。トマトスープかな? なんかトマトスープにしては毒々 しい赤色 だけど」
「そうだな。酸味 のある匂 いはしないけど、何 だろうな?」
「悠 真 、お腹 もすいたことだし、魔 獣 たちが作 ってくれたことだし、冷 めないうちに味 わわせてもらおうか!」
「ああ」
END
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「う、うん……。だけど…………」
「そりゃ、
「えぇっ、
それこそ
けれども、
「ダメだ、ダメ!
「
それに、もし
そう
「ああ、
「…って、あ―――――――っっ!!!」
いくら
その
すると、
けれども、よほど
「ひぇ―――――っっ。
けれども、すんでで
「だけど、あの
こうして
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とはいえ、
「
「そうだな。
「
「ああ」
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