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ノワール その32 | それからの成均館
ノワール その32 | それからのなりひとしかん

それからのなりひとしかん

なりひとしかんスキャンダル』の小説しょうせつです。ブログぬしはコロ応援おうえんたい隊員たいいんですので多少たしょう贔屓ひいきはご容赦ようしゃくださいませ。

なりひとしかんスキャンダルの登場とうじょう人物じんぶつによる創作そうさくです。

  ご注意ちゅういください。

 

 

 けがにん時折ときおりいたみとねつ不快ふかいかんにうなされるこえだけがひびく診察しんさつしつで、ジェシンはぼうっと天井てんじょう見上みあげていた。がくかれたタオルのなどわからねえな、とおもっていたが、いたみのためにからだあたまをどうしてもうごかしてしまうせいでタオルなどすぐにすべちる。そのたびかるみずひたしてえてやることで、一応いちおう看病かんびょうたいにはなっていただろう。

 

 ヒロポンがいていたとき、このけがにんはへらへらと機嫌きげんよくうえばなしべていた。出稼でかせぎにている、かねかせぐんだ、と意気軒昂いきけんこうだった。ちいさな山村さんそんで、わずかなはたけしかたないから、力仕事ちからしごと出稼でかせぎにることで現金げんきんかせいで家族かぞくやしなっている。戦争せんそう無料むりょう奉仕ほうしみたいな仕事しごとばかりか、近隣きんりんはらいのすくない仕事しごとしかなかったが、ソウルでの仕事しごと賃金ちんぎんたかいといて、なんねんかせぐつもりで家族かぞくいてきた。実際じっさいかせかねいままでとはけたちがいで、仕事しごとえらばずにやすみもせずはたらいているおかげで、すうげついちはまとまったかねおくることが出来できている。もうすこ頑張がんばっておきたいんだ、あしがなくならなくてよかった。そんなことをペラペラとしゃべったおかげで、このおとこかせぎを家族かぞくというのが、年老としおいた両親りょうしんと、おとこつま男女だんじょにんずつのども、という構成こうせいなのもってしまった。いま芋虫いもむしのようにからだまるめて高熱こうねつ傷口きずぐちいたみにえている。どう一人物いちじんぶつとはおもえないわりだ。

 

 そりゃ、あんな覚醒かくせい効果こうかのあるくすりならしがるひとおおいだろうな、といえにいるははおもった。もしはは長男ちょうなん戦争せんそうくしたのちよわっていたときにこのくすりってしまっていたら、きっと依存いぞんすることになっていただろう。気鬱きうつになりつつある家族かぞくているのは、まわりのものもつらいものだ。なにをしてやったらいいのかわからないからだ。そのれるくすりがあるなら、どうか処方しょほうしてやってほしい、とねがっただろう。

 

 けれど、同時どうじに、そのくすりれたらどうなるか。その見本みほんこんジェシンのまえころがっている。ここの医師いしえらい、とおもう。依存いぞんがあるものは極力きょくりょくおさえる、ということで、いたみの緩和かんわ局所きょくしょ鎮痛ちんつうにとどめ、化膿かのうさせないためのペニシリンと鎮痛ちんつうざい以外いがい継続けいぞく使用しよう見合みあわせたのだ。使つかったほうがよほどらくだろう。本人ほんにんも、医師いしも、そして看病かんびょうするまわりの人間にんげんも。だが、その一時いちじらくくすりへの依存いぞんつよまってはならないと判断はんだんしたのか、患者かんじゃ自己じこ回復かいふくりょくがあるとんだのか、ヒロポンのかい使用しようはしなかった。

 

 時折ときおりよる世界せかいくちのぞくことがあったジェシンには、あの、気分きぶんかるくさせるくすり必要ひつようひとがいるだろうとなんとなくわかるのだ。仕方しかたがなく、おや借金しゃっきんのため、おやうしなったため、素行そこうわるさから世間せけんれられなかったきつくさきだったため、というひとおおい。をそむけたくなるようないま自分じぶん過去かこ自分じぶんわすれて、あかるく、しあわせな気分きぶんになれるのなら、とおもうのだろう。いたはなしでは、売春ばいしゅん商売しょうばいにいる男女だんじょは、きゃくおんなへ、おんなきゃくへそういうくすりすすめて気分きぶんげることもあるのだという。下世話げせわはなしだけど、とおしえてくれるわる大人おとな何人なんにんもいた。大人おとなになりれない10代じゅうだい少年しょうねんをからかうったのだろう。おかげさまで知識ちしきだけはなか々に耳年増みみどしまになっているのは自覚じかくがある。

 

 またおとこうなった。いてえよな、あんなにしゅったんだ。治療ちりょうにいたからこそ、このけがにん同情どうじょうする気持きもちは本物ほんものだった。ちょっとられたけれど仕方しかたがない。いまいたみにうめく姿すがたがあるのだから。

 

 そうおもいながらタオルをひろい、ちゃぷちゃぷとすいにくぐらせた。なんぬのをくぐらせたからかさっている。あせあらとしてるだろう、とみずえてやることにした。がくにタオルをせてやり、洗面せんめんって裏口うらぐちのあるちいさな台所だいどころのような部屋へやかった。ジェシンがかるみずじょうはそこしかない。自分じぶんいえではないのだから。かちゃり、ととびらけ、診察しんさつしつからあわだけでタンクからみずれようとしたそのとき、ガチャガチャ、と裏口うらぐちのドアがれた。

 

 

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