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構内こうないはほとんどが放射線ほうしゃせん管理かんり対象たいしょう区域くいき、人手ひとで不足ふそく解消かいしょうに新あたらしい在留ざいりゅう資格しかくを利用りよう青木あおき美希みき　朝日新聞あさひしんぶん社会しゃかい部ぶ記者きしゃ 「貧まずしいから出稼でかせぎに来きているのに、ここで働はたらいて持もって帰かえる金かねは、その後ごの治療ちりょう費ひにも満みたないだろう」 あるベトナム人じん男性だんせいはネットに書かき込こんだ。東京電力とうきょうでんりょくが福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの廃はい炉ろ作業さぎょうに特定とくてい技能ぎのうの外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃを受うけ入いれると決きめたことに対たいしてだ。ベトナム人じんらからは「使つかい捨すてにされる」との声こえが上あがっている。 （略りゃく） 外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃの受うけ入いれを拡大かくだいするため、政府せいふは技能ぎのう実習じっしゅう生せいから移行いこうできる新あらたな在留ざいりゅう資格しかく「特定とくてい技能ぎのう」を4月がつに始はじめた。外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃの廃はい炉ろ作業さぎょうは、2つの大おおきな問題もんだいをはらんでいる。 一ひとつは、技能ぎのう実習じっしゅう生せいが置おかれている最低さいてい賃金ちんぎん割われや不当ふとうな残業ざんぎょう、外出がいしゅつ制限せいげんなどの劣悪れつあくな環境かんきょうが、そのまま特定とくてい技能ぎのうに移行いこうして引ひき継つがれる恐おそれがあることだ。廃はい炉ろ作業さぎょうの現場げんばは、ゼネコンの多重たじゅう下請したうけによって下請したうけ作業さぎょう員いんが搾取さくしゅされる構図こうずにある。53％の業者ぎょうしゃが労働ろうどう関係かんけい法令ほうれいに違反いはんしているという調査ちょうさ結果けっかが出でている。もともと日本語にほんごで声こえを上あげづらい人ひとたちが、さらにつらい立場たちばにおかれかねない。 もう一ひとつは、廃はい炉ろ作業さぎょうの安全あんぜん性せいだ。1日にち約やく４千せん人にんが働はたらく現場げんばだが、全面ぜんめんマスクをつけた上うえでの高こう線量せんりょうの現場げんばがある。昨年さくねん9月がつの東電とうでんのアンケートでは1185人にんが「全面ぜんめんマスクで見みにくい、聞きこえにくい」と回答かいとうした。日本語にほんごが母国ぼこく語ごの人ひと同士どうしですら会話かいわが難むずかしいのに、言葉ことばが不十分ふじゅうぶんな外国がいこく人じんに的確てきかくな指示しじを伝つたえられるかどうか。4月24日にちには衆議院しゅうぎいんで「安全あんぜん管理かんり教育きょういくが多た言語げんご化か対応たいおうできていない」と指摘してきされた。帰国きこく後ごに被曝ひばくの影響えいきょうでがんを発症はっしょうしても、労災ろうさい申請しんせいのハードルは高たかい。医療いりょうが整ととのっていない国くにも多おおい。 ベトナムの20代だいの男性だんせいが「建設けんせつ機械きかい・解体かいたい・土木どぼく」を学まなぶために、盛岡もりおか市しの建設けんせつ会社かいしゃに技能ぎのう実習じっしゅう生せいとして来きたが、福島ふくしま県けん郡山こおりやま市しで除染じょせんと知しらずに作業さぎょうにつかされた。2015〜16年ねんのことだ。その後ご、川俣かわまた町まちや飯舘いいたて村むらなど住民じゅうみんが立たち入いれない線量せんりょうの高たかい現場げんばで解体かいたい工事こうじに従事じゅうじし、危険きけん手当てあて1日にち2千せん円えんが渡わたされるようになったという。「自分じぶんは危険きけんな仕事しごとをしているんですか」と尋たずねたところ、こう言いわれたという。「いやなら帰かえれ」 　男性だんせいら実習じっしゅう生せいを支援しえんしてきた労働ろうどう組合くみあい書記しょき長ちょうの佐々木ささき史朗しろうさんは「危険きけん手当てあては6600円えんあったが本人ほんにんには2千せん円えんしか渡わたらず、放射線ほうしゃせん管理かんり手帳てちょうも渡わたされていなかった。実習じっしゅう生せいたちからは『残業ざんぎょう代だい未払みはらい』『長時間ちょうじかん労働ろうどう』『休憩きゅうけいがとれない』『暴言ぼうげん暴力ぼうりょく』『労災ろうさい隠かくし』『強制きょうせい帰国きこくの脅おどかしにあった』という相談そうだんばかり。人権じんけんが守まもられていない」と訴うったえる。法務省ほうむしょうはこの業者ぎょうしゃを実習じっしゅう生せい受うけ入いれ停止ていし5年ねんの処分しょぶんとした。 ほかにも3社しゃが実習じっしゅう生せいに除染じょせん作業さぎょうをさせていたことが明あきらかになり、うち１社しゃを受うけ入いれ停止ていし3年ねんとした。鉄筋てっきん施工しこうや型かた枠わく施工しこうの名目めいもくで実習じっしゅう生せいを受うけ入いれながら除染じょせん地域ちいきの表土ひょうどのはぎ取とりなどをさせていたという。佐々木ささきさんは福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつについて、「一瞬いっしゅんで高こう線量せんりょうを被曝ひばくする可能かのう性せいがあり、除染じょせんよりさらに過酷かこくな現場げんばだと思おもう。被曝ひばく限度げんどは法ほうで決きめられ、いつまで働はたらけるかもわからない」と警鐘けいしょうを鳴ならす。 （略りゃく） 福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつでは18年ねん5月がつ、敷地しきち内ないの焼却しょうきゃく炉ろ工事こうじに実習じっしゅう生せい6人にんが従事じゅうじしていたと東電とうでんが明あきらかにした。放射線ほうしゃせん管理かんり対象たいしょう区域くいき外がいだったものの、確認かくにんが不十分ふじゅうぶんだったという。法務省ほうむしょうはこのとき、第だい一いち原発げんぱつ内ないで東電とうでんが発注はっちゅうする事業じぎょうについて「全ぜんて廃っぱい炉ろに関かんするもので、一般いっぱん的てきに海外かいがいで発生はっせいしうるものではない」とし、国際こくさい貢献こうけんを目的もくてきとする技能ぎのう実習じっしゅう生せいが従事じゅうじすることはできないと発表はっぴょうした。 　だが特定とくてい技能ぎのうについて東電とうでんが法務省ほうむしょうに問とい合あわせた結果けっか、「新しん資格しかくは受うけ入いれ可能かのう。日本人にっぽんじんが働はたらいている場所ばしょは分わけ隔へだてなく働はたらいてもらうことができる」（東電とうでん広報こうほう担当たんとう）と判断はんだんしたという。法務省ほうむしょうは「建設けんせつなど特定とくてい技能ぎのうの対象たいしょう職種しょくしゅ14種しゅに該当がいとうすれば問題もんだいない」としている。構内こうないは現在げんざい、ほとんどが放射線ほうしゃせん管理かんり対象たいしょう区域くいきだ。 （略りゃく） 4月がつ14日にち、安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつを約やく5年ねん半はんぶりに視察しさつした。記者きしゃ団だんに対たいし「現場げんばの皆みなさんの大変たいへんな御ご努力どりょくによって廃はい炉ろ作業さぎょうが一歩一歩いっぽいっぽ着実ちゃくじつに進すすんでいます」と語かたった。「スーツ姿すがたでマスク無なし」の姿すがたがテレビや新聞しんぶん写真しゃしんに登場とうじょうし、「初はじめて防護ぼうご服ふくやマスクを着つけずに視察しさつ」「廃はい炉ろに向むけた作業さぎょうが進すすんでいることを国内外こくないがいにアピール」と報ほうじられた。 　しかし東電とうでんによると、首相しゅしょうがマスク無なしでいたのは、見学けんがくや移動いどうの際さいにマスクを不要ふようとした一部いちぶ地域ちいき。構内こうないの大だい部分ぶぶんは使つかい捨すて防塵ぼうじんマスク以上いじょうの装備そうびが必要ひつようで、作業さぎょうが多おおい建屋たきのや内ないや建屋たきのや周辺しゅうへんの高こう線量せんりょうの現場げんばは半面はんめんマスクや全面ぜんめんマスクとなっている。 2014年ねんから15年ねんまで下請したうけ作業さぎょう員いんとして廃はい炉ろ作業さぎょうに従事じゅうじし、「福島ふくしま原発げんぱつ作業さぎょう員いんの記き」の著書ちょしょがある池田いけだ実みのるさん（66）は「いろいろ心配しんぱいです」と話はなす。最初さいしょは建屋たきのやの中なかのごみを集あつめる作業さぎょうだった。そのあと消火しょうか器きの解体かいたいやごみを小ちいさくする作業さぎょうと次々つぎつぎにかわった。その都度つど、紙かみで説明せつめいがあった。「装備そうびが作業さぎょうのたびに変かわる。エプロンをつけたり、化学かがく防護ぼうご手袋てぶくろをつけたり。紙かみの説明せつめいを理解りかいできるか、ですよね」 雇用こよう条件じょうけんについても心配しんぱいだという。池田いけださんはハローワークから申もうし込こんだ。求人きゅうじん票ひょうには「健康けんこう保険ほけん、厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅう」とあったが、社長しゃちょうに「社会しゃかい保険ほけんはどうなっていますか」とおそるおそる尋たずねると「給料きゅうりょうが多おおい方ほうがいいでしょう」と加入かにゅうしないことを告つげられた。それまでは除染じょせん作業さぎょうの二に次じ下請したうけで1日にち1万まん7千せん円えん（危険きけん手当てあて1万まん円えん）を得えていた。第だい一いち原発げんぱつでは三さん次じ下請したうけで、1日にち1万まん4千せん円えん（危険きけん手当てあて4千せん円えん）と少すくなかった。池田いけださんは「どうしてより線量せんりょうの高たかい現場げんばで危険きけん手当てあてが減へるんだろう」と疑問ぎもんに思おもった。上うえの会社かいしゃの人ひとに給料きゅうりょうを言いうと驚おどろかれ、「よほど中ちゅう抜ぬきされているんだと思おもった」。 被曝ひばくによるがんの労災ろうさい基準きじゅんは、白血病はっけつびょうで年とし5mSv（ミリシーベルト）以上いじょうとなっている。池田いけださんは7mSv以上いじょうを浴あびた。仕事しごとをやめてからも健康けんこうが心配しんぱいだ。東京電力とうきょうでんりょくは昨年さくねん9月がつ、福島ふくしま第だい1原発げんぱつの作業さぎょう員いん約やく5千せん人にんにアンケートを実施じっし。42％が第だい1原発げんぱつで働はたらくことに「不安ふあんを感かんじている」と回答かいとうした。健康けんこうへの影響えいきょうや収入しゅうにゅうの不安定ふあんていさを挙あげた人ひとが多おおい。福島ふくしま労働ろうどう局きょくが昨年さくねん、廃はい炉ろ作業さぎょうをする290業者ぎょうしゃを調しらべたところ、賃金ちんぎんの支払しはらいや労働ろうどう条件じょうけんの明示めいじなどの違反いはんが53％にあった。被曝ひばく量りょうを遅滞ちたいなく知しらせていなかった違反いはんもあった。 2018年度ねんどに第だい一いち原発げんぱつで放射線ほうしゃせん業務ぎょうむに従事じゅうじした作業さぎょう者しゃは1万まん1306人にん。この期間きかんに876人にんが10～20mSv、939人にんが5～10mSvの被曝ひばくをしている。1年ねんの平均へいきん線量せんりょうは東電とうでん社員しゃいんが1.04mSvなのに対たいし、下請したうけを含ふくむ協力きょうりょく企業きぎょうは2.64mSvと2.5倍ばい多おおく被曝ひばくしていた。原発げんぱつ労働ろうどう者しゃの被曝ひばく限度げんどは「5年ねんで100mSvかつ年間ねんかん50mSv」と法令ほうれいで定さだめられている。これまで第だい一いち原発げんぱつで働はたらいた作業さぎょう員いん6人にんが被曝ひばくによるがんで労災ろうさい認定にんていされた。昨年さくねんは肺はいがんで死亡しぼうした男性だんせいが労災ろうさい認定にんていされている。 外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃが帰国きこく後ごに発症はっしょうして亡なくなった場合ばあい、遺族いぞくが日本語にほんごをまったくわからなくても労災ろうさい申請しんせいができるのか。政府せいふは被曝ひばくによる労災ろうさいについて伝つたえるリーフレットを日本語にほんご版ばんしか作成さくせいしていない。 全文ぜんぶんは福島ふくしま原発げんぱつ廃はい炉ろに外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃ、「使つかい捨すて」の声こえ