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岡田おかだ 広行ひろゆき […] メディアから取材しゅざいを受うけた事実じじつやその内容ないようを、福島ふくしま県けんの職員しょくいんが東電とうでんに伝つたえていたのである。それだけならばまだしも、福島ふくしま県けんはさらに重大じゅうだいな不正ふせいをしていた。情報じょうほう公開こうかい制度せいどに詳くわしいNPO法人ほうじん情報じょうほう公開こうかいクリアリングハウスの三木みき由希子ゆきこ理事りじ長ちょうによれば、「福島ふくしま県けんが情報じょうほう公開こうかい請求せいきゅう手続てつづきをしたフリージャーナリストの氏名しめいを東電とうでんに知しらせたことは、福島ふくしま県けん個人こじん情報じょうほう保護ほご条例じょうれい違反いはんに該当がいとうする可能かのう性せいが高たかい」という。 そのうえで三木みき氏しは、「同どう条例じょうれいでは、氏名しめいなどの個人こじん情報じょうほうの利用りよう目的もくてき外がいでの第三者だいさんしゃ提供ていきょうを原則げんそく禁止きんしとする旨むね規定きていされており、例外れいがい的てきに認みとめられる場合ばあいに該当がいとうせず提供ていきょうするのは、個人こじん情報じょうほうの漏ろうえいに当あたる」と指摘してきする。 いったいなぜこうしたことが行おこなわれたのか。それは、Jヴィレッジという施設しせつをめぐる東電とうでんと福島ふくしま県けんの関係かんけいの特殊とくしゅ性せいを抜ぬきにして考かんがえられない。 Jヴィレッジは東電とうでんが建設けんせつした後のちに、福島ふくしま県けんが所管しょかんする財団ざいだんに寄贈きぞうされて1997年ねんに開業かいぎょうした。当時とうじ、東電とうでんには福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ7、8号機ごうきの増設ぞうせつやプルサーマル（ウラン・プルトニウム混合こんごう燃料ねんりょうによる発電はつでん）の計画けいかくがあり、福島ふくしま県けんや立地りっち自治体じちたいの同意どういを得える必要ひつようがあった。こうした経緯けいいもあり、Jヴィレッジの寄贈きぞうは、新あらたな原発げんぱつの建設けんせつを認みとめることなどと引ひき換かえにした地元じもとへの見返みかえりではないかとも指摘してきされていた。 […] 敷地しきち内ないでは原発げんぱつ構内こうないの作業さぎょうで汚染おせんされた車両しゃりょうの洗浄せんじょうも行おこなわれていた。そして、2016年ねん4月がつから2018年ねん6月がつまでの約やく2年ねんを費ついやして、東電とうでんが敷地しきち内ないの放射線ほうしゃせん量りょう低減ていげんを含ふくむ原状げんじょう回復かいふく工事こうじを実施じっし。再ふたたび福島ふくしま県けん側がわに返還へんかんされた後のち、2018年ねん7月がつに業務ぎょうむを再開さいかいした。 […] グリーンピースの調査ちょうさで高こう放射線ほうしゃせん量りょうが判明はんめい 東電とうでんの広報こうほう担当たんとう者しゃは3月がつ23日にちの定例ていれい記者きしゃ会見かいけんで、Jヴィレッジの復旧ふっきゅうに際さいして、除染じょせん業務ぎょうむに必要ひつようとされる国くにの法令ほうれいに基もとづく作業さぎょう員いんの被ひばく線量せんりょう管理かんりを行おこなっていなかったことを認みとめた。「当社とうしゃが実施じっししたのは除染じょせんではなく、原状げんじょう回復かいふく工事こうじ。ただし、除染じょせんの効果こうかがある」（広報こうほう担当たんとう者しゃ）。その質疑しつぎ内容ないようをとらえて共同通信きょうどうつうしんが「除染じょせんせずに返還へんかん」と報道ほうどう。東洋とうよう経済けいざいオンラインは4日にち後ごの3月がつ27日にちに問題もんだいの経緯けいいを報ほうじた。 […] そしてグリーンピースの要請ようせいを踏ふまえて実施じっしされた環境省かんきょうしょうの測定そくていにより、地上ちじょうからの高たかさ1メートルでの空間くうかん放射線ほうしゃせん量りょうが毎時まいじ1.79マイクロシーベルトに達たっしていたことが判明はんめい。12月上旬じょうじゅんに東電とうでんが最大さいだい値ちで1キログラム当あたり、103万まんベクレルに達たっする高こうレベルの汚染おせん土壌どじょうを除去じょきょした。 厚生こうせい労働省ろうどうしょうの「除染じょせん電離でんり則そく」は、楢葉ならは町まちなど国くにが定さだめた「除染じょせん特別とくべつ地域ちいき」などにおいて除染じょせんを業務ぎょうむとして実施じっしする場合ばあいに、作業さぎょう員いんへの放射線ほうしゃせん教育きょういくや被ひばく線量せんりょうの測定そくてい、記録きろくの管理かんりを義務ぎむづけている。もしもそれを実施じっししていない場合ばあい、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほうに抵触ていしょくすることととなり、行政ぎょうせい指導しどうや罰則ばっそくの対象たいしょうとなる。 「法令ほうれい違反いはんではないか」との会見かいけんでの指摘してきを踏ふまえ、東電とうでんは「Jヴィレッジで実施じっしした原状げんじょう回復かいふく工事こうじに除染じょせん電離でんり則そくでいう除染じょせん業務ぎょうむの規定きていが適用てきようされるか否ひかについて、現在げんざい、富岡とみおか労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょに確認かくにん中ちゅう」だとしている。 高こう濃度のうどの廃棄はいき物ぶつを極秘ごくひ保管ほかん 東電とうでんは5月18日にちの会見かいけんで、Jヴィレッジの原状げんじょう回復かいふく工事こうじを通つうじて5万まん2818立方りっぽうメートルの廃棄はいき物ぶつや汚染おせん土壌どじょうが発生はっせいしたこと、その中なかに1キログラム当あたり8000ベクレルを上回うわまわる高こう濃度のうどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつに汚染おせんされた廃棄はいき物ぶつ（118立方りっぽうメートル）が含ふくまれていること、そして適正てきせいな処分しょぶんに必要ひつような指定してい廃棄はいき物ぶつの指定してい申請しんせい手続てつづきが未み完了かんりょうであることも公表こうひょうした。 […] 国こくの除染じょせん作業さぎょうで発生はっせいした汚染おせん土壌どじょうはそのすべてを福島ふくしま県けん大熊おおくま町まちおよび双葉ふたば町まちに建設けんせつされた中なか間あいだ貯蔵ちょぞう施設しせつに運はこび込こみ、30年ねんにわたって暫定ざんてい保管ほかんするルールになっている。現時点げんじてんでは、汚染おせん土壌どじょうの再さい利用りようは実証じっしょう事業じぎょうの場合ばあいを除のぞき、認みとめられていない。これに対たいして東電とうでんは、「国くにとは適用てきようされるルールが異ことなる」として、汚染おせん土壌どじょうを密ひそかに再さい利用りようしていたのである。 そして今回こんかい、東洋とうよう経済けいざいが入手にゅうしゅした東電とうでん社内しゃないの記録きろくにより、1キログラム当あたり8000ベクレル超ちょうの廃棄はいき物ぶつがJヴィレッジの敷地しきち内ないで保管ほかんされていることや、保管ほかん場所ばしょについて公表こうひょうしないように東電とうでんが福島ふくしま県けんから「口止くちどめ」されていた事実じじつも明あきらかになった。 […] このような経緯けいいを踏ふまえ、5月18日にちの記者きしゃ会見かいけんで原状げんじょう回復かいふく工事こうじの概要がいようについて説明せつめいする一方いっぽう、1キログラム当あたり8000ベクレルを超こえる高こう濃度のうどの廃棄はいき物ぶつのありかについては明あきらかにせず、秘密ひみつにし続つづけることが福島ふくしま県けんと東電とうでんの間あいだで合意ごういされていたのである。 メディア対策たいさくの一端いったんも判明はんめい 東電とうでんは、Jヴィレッジの問題もんだいをできるだけ福島ふくしまの地元じもとメディアに知しられないようにする努力どりょくも続つづけていた。その“工作こうさく”の内容ないようは、東洋とうよう経済けいざいが入手にゅうしゅした東電とうでん・原子力げんしりょく・立地りっち本部ほんぶ広報こうほうグループの記録きろくで裏付うらづけられている。そこには次つぎのような記述きじゅつがある。 「〈Jヴィレッジの原状げんじょう回復かいふく工事こうじに関かんする情報じょうほうの〉公表こうひょう日びについて、社内しゃない関係かんけい者しゃのご意見いけんもうかがったところ、福島ふくしま地元じもとメディアへの波及はきゅうリスクに鑑かんがみ、5月18日にち〈の〉本社ほんしゃ会見かいけんを2部ぶ構成こうせいとする形かたちで公表こうひょうを行おこなう方向ほうこうで準備じゅんびを進すすめている」 実際じっさい、5月18日にちの記者きしゃ会見かいけんはそのような形かたちで進すすめられた。東電とうでん本社ほんしゃおよび都内とないの会議かいぎ室しつをつないで開催かいさいされたテレビ会議かいぎ形式けいしきの定例ていれい会見かいけんでは、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの廃はい炉ろ作業さぎょうに関かんする質疑しつぎ応答おうとうが終おわるとともに映像えいぞうがいったんカットされ、その直後ちょくごに新あらたにJヴィレッジに関かんする会見かいけんが始はじまった。東電とうでんのホームページからテレビ会議かいぎ映像えいぞうを視聴しちょうしていた福島ふくしまの地元じもとメディアの記者きしゃに、Jヴィレッジに関かんする情報じょうほうができる限かぎり伝つたわりにくくするように工夫くふうされていたのである。 […] おしどりマコ氏しは当時とうじ、Jヴィレッジの原状げんじょう復旧ふっきゅう工事こうじの詳細しょうさいに関かんする情報じょうほう公開こうかい請求せいきゅうを実施じっし。その後ご、約やく600枚まいの資料しりょうを入手にゅうしゅしたうえで、6月18日にち付づけで記事きじを公開こうかいしている。 それにしても、なぜ福島ふくしま県けんと東電とうでんの間あいだで、なれ合あいとも言いえるこのようなやり取とりが延々えんえんと続つづけられてきたのだろうか。 東電とうでんは原発げんぱつ事故じこを起おこした加害かがい者しゃであり、福島ふくしま県けんは全域ぜんいきを放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされるなど、被害ひがい者しゃの立場たちばにある。ピーク時じには16万まん人にんもの県民けんみんが避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされた。今いまも、数すう万まん人にんが避難ひなんを続つづけている。 […] ないがしろにされた情報じょうほう公開こうかい 他方たほう、復興ふっこうに関かんして言いえば、東電とうでんは福島ふくしま県けんを支援しえんする立場たちばであり、福島ふくしま県けんは復興ふっこう事業じぎょうを通つうじて利益りえきを得える立場たちばにある。 Jヴィレッジの復旧ふっきゅう・再さい整備せいびについて話はなし合あわれた会議かいぎでも、東電とうでんの石崎いしざき芳行よしゆき副ふく社長しゃちょう（2015年ねん当時とうじ）は「Jヴィレッジをきれいに直なおしてお返かえしするのは当然とうぜんであるが、プラスアルファの部分ぶぶんをどのように加くわえていくか今後こんご検討けんとうしたい」「昨年さくねん、『応援おうえん企業きぎょうネットワーク』を立たち上あげた。加入かにゅうする30万まん人にんの関係かんけい者しゃと、その家族かぞくを含ふくめれば100万まん人にんの方ほうがJヴィレッジを活用かつようできるようなことを考かんがえたい」などと語かたっている（2015年ねん1月がつ29日にちの第だい3回かいJヴィレッジ復興ふっこうプロジェクト委員いいん会議かいぎ事ごと録ろく）。 だが、高こう濃度のうどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされた廃棄はいき物ぶつをJヴィレッジ敷地しきち内ないで保管ほかんしていながら、「風評ふうひょう被害ひがいのおそれ」を口実こうじつにその事実じじつを伏ふせたままにして客きゃくを誘致ゆうちしていた。その姿勢しせいは、福島ふくしま県けんがうたう「積極せっきょく的てきな情報じょうほう公開こうかい」の理念りねんとはほど遠とおい。 東電とうでんは、原状げんじょう回復かいふく工事こうじで発生はっせいした汚染おせん土壌どじょうを、どこでどのように再さい利用りようしたのかについても明あきらかにする責務せきむがある。徹底てっていした情報じょうほう公開こうかいなしに、原発げんぱつ事故じこからの信頼しんらい回復かいふくはありえない。東電とうでんと福島ふくしま県けんはそのことを肝きもに銘めいじるべきだ。 全文ぜんぶん