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放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされた土壌どじょうが国民こくみんの知しらぬまま利用りよう可能かのうとなる危険きけん 大島おおしま堅一けんいち　龍谷大りゅうこくだい学がく政策せいさく学部がくぶ教授きょうじゅ　原子力げんしりょく市民しみん委員いいん会かい座長ざちょう […] 「除去じょきょ土壌どじょう」も紛まぎらわしい言葉ことばである。 　「除去じょきょ土壌どじょう」とは、福島ふくしま県けんで実施じっしした除染じょせん作業さぎょうで剥はぎ取とったもので、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされている土どのことである。新聞しんぶんやテレビでは、「除染じょせん土ど」または「汚染おせん土ど」と言いわれることもある。 　今回こんかいの食用しょくよう作物さくもつの栽培さいばいは、「除去じょきょ土壌どじょう」の「再生さいせい利用りよう」の一環いっかんである。今いままで、環境省かんきょうしょうは、「除去じょきょ土壌どじょう」の再生さいせい利用りようを、食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばいを覆土ふくど無なしで実際じっさいに進すすめると公おおやけの場ばで詳くわしく説明せつめいしたことはなかった。 　環境省かんきょうしょうが進すすめる「除去じょきょ土壌どじょう」の「再生さいせい利用りよう」とは一体いったい何なにか。 　東電とうでん福島ふくしま原発げんぱつ事故じこによって広ひろい地域ちいきで放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつによる汚染おせんが広ひろがった。放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで土地とちが汚染おせんされると、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつだけを土地とちから取とり除のぞくことはできない。そこで、土壌どじょうから汚染おせんされた土壌どじょうを剥はぎ取とり、運はこび出だす作業さぎょうが国くにによって進すすめられた。 　これが除染じょせんである。 　土壌どじょうを剥はぎ取とるのだから、当然とうぜん、大量たいりょうの「除去じょきょ土壌どじょう」が発生はっせいする。「除去じょきょ土壌どじょう」の量りょうは、福島ふくしま県内けんないで1400万まん立方りっぽうメートルに及およぶ。これを全すべて最終さいしゅう処分しょぶんしなければならないとすれば、量りょうが多おおすぎる、と国くには考かんがえた。 　そこで、これをできるだけ少すくなくしようというのが「再生さいせい利用りよう」の目的もくてきである。 　最終さいしゅう処分しょぶんする量りょうを減へらすために、「再生さいせい利用りよう」を増ふやす。わかりやすく言いうと、「放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされた土壌どじょう」（除去じょきょ土壌どじょう）をできるだけ「利用りよう」しようというのが今いまの環境省かんきょうしょうの方針ほうしんである。 　気きをつけなければならないことは、「除去じょきょ土壌どじょう」を「再生さいせい」するといっても、土どから放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを取とり除のぞくわけではないということである。「再生さいせい」とは、「土壌どじょうの分別ふんべつ、濃度のうど確認かくにん、品質ひんしつ調整ちょうせい」を行おこなうこと、つまり、放射線ほうしゃせん量りょうを計測けいそくしたりゴミや石いしを取とり除のぞいたりして利用りようしやすくするのである。 　そして、「除去じょきょ土壌どじょう」は、「再生さいせい」されると「再生さいせい資材しざい」に名前なまえが変かわる。 　つまり、「再生さいせい資材しざい」は、規格きかく化かされた「放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされている土壌どじょう」である。「再生さいせい資材しざい」は、低ていレベルとはいえ放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされており、土壌どじょう1キログラムあたり8000ベクレル（ベクレルは放射能ほうしゃのうの量りょうを示しめす単位たんい）以下いかとされる。 　従来じゅうらい、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつは原子げんし炉ろ等とう規制きせい法ほうの枠わく内ないで管理かんりされてきた。この枠わく内ないでは、安全あんぜんに再さい利用りようしたり処分しょぶんでしたりできる基準きじゅんを1キログラムあたり100ベクレル以下いかと定さだめている。これに照てらせば、「除去じょきょ土壌どじょう」や「再生さいせい資材しざい」は低ていレベル放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつ相当そうとうである。今いまも、「除去じょきょ土壌どじょう」や「再生さいせい資材しざい」と同等どうとうの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが「再生さいせい利用りよう」されるようなことは通常つうじょうない。 　にもかかわらず、原発げんぱつ事故じこで汚染おせんされた土壌どじょうが「再生さいせい」されて「再生さいせい資材しざい」になれば、従来じゅうらいのような厳きびしい審査しんさも管理かんりも不要ふようとなる。繰くり返かえすが、「再生さいせい資材しざい」と名前なまえが付つき、見みた目めは利用りようしやすい土どに見みえても、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつで汚染おせんされていることに変かわりはない。 […] 秘密裏ひみつりに進すすめた覆土ふくど無なし食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばい 　行政ぎょうせい文書ぶんしょ開示かいじ請求せいきゅうをして約やく2ヶ月かげつ半はん、ようやく7月がつ29日にちに文書ぶんしょが筆者ひっしゃ宛あてに送おくられてきた。開示かいじされた文書ぶんしょは11件けん。第だい一いち文書ぶんしょの1ページ目めを読よんだ筆者ひっしゃは、のっけから予想よそうもつかない内容ないようであることに気きづいた。 　環境省かんきょうしょうの担当たんとう職員しょくいん（文書ぶんしょには名前なまえが記録きろくされている）は、非公開ひこうかいの会合かいごうの冒頭ぼうとうで、「地元じもとではいろいろな食用しょくよう作物さくもつの要望ようぼうがあるので、手引てびきとは異ことなる覆土ふくどのないパターンも実施じっしし、覆土ふくどが無なくても問題もんだいないことを証明しょうめいしておきたい」と述のべていた。対たいする専門せんもん家かは、「作物さくもつ別べつに一いち度ど試験しけんを行おこなっただけで安全あんぜん性せいを謳うたうのは危険きけん性せいが高たかい」「一ひとつの試験しけんをして実施じっしすることでそれで安全あんぜんとは言いえない」など、当然とうぜんの発言はつげんを行おこなっている。 　開示かいじされた行政ぎょうせい文書ぶんしょは、食用しょくよう作物さくもつの栽培さいばい、さらには覆土ふくど無なしでの食用しょくよう作物さくもつの栽培さいばいを、試験しけん栽培さいばいとはいえ、非公開ひこうかいの会合かいごうで、環境省かんきょうしょう主導しゅどうで決きめようとしていたことを示しめすものだった。（開示かいじ文書ぶんしょⅠ開示かいじ文書ぶんしょⅡ） 　開示かいじ文書ぶんしょによれば、環境省かんきょうしょうは、2020年ねん1月がつ15日にちの時点じてんですでに国立こくりつ研究けんきゅう開発かいはつ法人ほうじん 農業のうぎょう・食品しょくひん産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうの職員しょくいんらと非公開ひこうかいの準備じゅんび会合かいごうを開ひらき、覆土ふくど無なしの野菜やさい栽培さいばいについて持もちかけていた。年末年始ねんまつねんしの休暇きゅうか期間きかんを考慮こうりょすると、2019年ねんには、覆土ふくど無なしを含ふくむ食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばいの実証じっしょう事業じぎょうを進すすめることにしていたのではないかと思おもわれる。 　開示かいじ文書ぶんしょでは、次つぎに2020年ねん2月がつ10日とおかに「除去じょきょ土壌どじょう等とうの再生さいせい利用りように係かかる放射線ほうしゃせん影響えいきょうに関かんする安全あんぜん性せい評価ひょうか検討けんとうワーキンググループ」が開ひらかれていたことが分わかった。このワーキンググループは「除去じょきょ土壌どじょう」の「再生さいせい利用りよう」について実質じっしつ的てきな検討けんとうを行おこなっており、2019年ねん11月15日にちの第だい10回かい会合かいごうを最後さいごに、この会合かいごうの議事ぎじ録ろくや資料しりょうは、行政ぎょうせい文書ぶんしょ開示かいじ後ごも環境省かんきょうしょうホームページ上じょうでは一切いっさい公開こうかいされていない。一般いっぱん国民こくみんには、開催かいさいされているかどうかすらわからない状態じょうたいである。 　筆者ひっしゃも、開示かいじ文書ぶんしょでワーキンググループの会合かいごうが2月がつにも開ひらかれていたことをはじめて知しった。開示かいじ文書ぶんしょによると、2月がつ10日とおかの非公開ひこうかいワーキンググループでは、1月がつ15日にちに環境省かんきょうしょう職員しょくいんが示しめした食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばい、覆土ふくど無なし栽培さいばいが、「計画けいかく」として報告ほうこくされていた。資料しりょうを見みていくと、このワーキンググループでの議論ぎろんで一定いっていのお墨付すみつきを得えた形かたちとなり、その後ご、実証じっしょう事業じぎょうが進すすめられていくのが分わかる。 　全すべてを秘密ひみつにし、「実証じっしょう事業じぎょう」の名なの下もとで、これまでの方針ほうしんにないことを環境省かんきょうしょうが進すすめていたと言いって何なんら差さし支つかえない。しかも、覆土ふくど無なし栽培さいばいはすでに行いってしまったという。まさに、なし崩くずし的てきな既成きせい事実じじつ化かである。 […] 　筆者ひっしゃが開示かいじ請求せいきゅうしたものは食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばいに関かんする文書ぶんしょであったので、議事ぎじ録ろくの公開こうかい部分ぶぶんは一部いちぶに過すぎない。そのため、全すべての議論ぎろんについては把握はあくできていない。だが、公開こうかい文書ぶんしょから推測すいそくすると、農業のうぎょう従事じゅうじ者しゃの放射線ほうしゃせん被ひばくに関かんすることも議論ぎろんされているようである。例たとえば、2月がつ10日とおかの非公開ひこうかいのワーキンググループで環境省かんきょうしょう職員しょくいんは次つぎのような発言はつげんをしている。 　「10haぐらいの農地のうち造成ぞうせい地ちに再生さいせい資材しざいを4.5m埋うめたときの線量せんりょうがちょうど5000Bq/kgで1mSv/y相当そうとう、被ひばく時間じかん1000時じ間あいだという評価ひょうかをしています。これに比くらべると、ごく一部いちぶの露出ろしゅつ面積めんせきですから、ここに包含ほうがんされるだろうと考かんがえています」 　これは農業のうぎょう従事じゅうじ者しゃの被ひばく管理かんりに関かんする非常ひじょうに重要じゅうような事項じこうである。にもかかわらず、開示かいじ文書ぶんしょからは、非公開ひこうかいのワーキンググループでのごく簡単かんたんな報告ほうこくにとどまっているように見みえる。 　全すべてを非公開ひこうかいのまま進すすめる事業じぎょうに正当せいとう性せいは果はたしてあるのだろうか。 […] 全文ぜんぶんは　環境省かんきょうしょうが秘密裏ひみつりに進すすめる「汚染おせん土どで野菜やさい栽培さいばい」 大島おおしま教授きょうじゅが開示かいじ請求せいきゅうし入手にゅうしゅした行政ぎょうせい文書ぶんしょ集しゅう： 200809覆土ふくど無なし除染じょせん土どでの食用しょくよう作物さくもつ栽培さいばい実証じっしょう実験じっけん; 200812 省令しょうれい改正かいせい見送みおくりの理由りゆう