Monthly Archives: January 2022

昨年さくねん4月がつ、政府せいふは東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの処理しょり水すいを海洋かいよう放出ほうしゅつする方針ほうしんを決きめた。増ふえ続つづける汚染おせん水すいは事故じこ直後ちょくごからの課題かだいだったが、政府せいふも東電とうでんも先送さきおくりを続つづけ、タンクの容量ようりょうが限界げんかいに近ちかづいた末すえの決着けっちゃくだった。政府せいふや東電とうでんは海洋かいよう放出ほうしゅつの安全あんぜん性せいを強調きょうちょうするが、風評ふうひょう被害ひがいなどに対たいする地元じもとの不安ふあんは高たかまったまだ。 放出ほうしゅつ始はじまってもなお難むずかしい見通みとおし 　東電とうでんは処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつに向むけ、今年ことし6月がつから本格ほんかく的てきな設備せつび工事こうじを始はじめる予定よていだ。海底かいていトンネルについては、地下鉄ちかてつ工事こうじなどに使つかう大型おおがた掘削くっさく機きで、原発げんぱつ沖おきの海底かいてい地盤じばんを掘ほり進すすめる。東電とうでんは「数カ月すうかげつでできる」とするが、硬かたい岩盤がんばんがあれば、その分ぶん時間じかんはかかる。 　また、政府せいふと東電とうでんは放出ほうしゅつ開始かいし1年ねん前まえとなる今春こんしゅんごろから、放出ほうしゅつ開始かいし後ごのデータと比較ひかくするため、海域かいいきの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつのモニタリングを強化きょうかする。 　国際こくさい原子力げんしりょく機関きかん（IAEA）は現地げんち調査ちょうさを経へて、今年中ことしじゅうに放出ほうしゅつの安全あんぜん性せいや人体じんたいや環境かんきょうへの影響えいきょうなどを評価ひょうかする報告ほうこく書しょをまとめる予定よていだ。IAEAは23年ねん春はるからの放出ほうしゅつ中ちゅう、放出ほうしゅつ完了かんりょう後ごも報告ほうこく書しょを策定さくていするという。 　ただ、放出ほうしゅつが始はじまっても、敷地しきち内ないのタンクをすぐに減へらせるわけではなさそうだ。東電とうでんによると、目標もくひょうとする「30～40年ねん後ごの廃はい炉ろ完了かんりょう」に合あわせて、この先さき30年ねんほど放出ほうしゅつを続つづけていく。具体ぐたい的てきな放出ほうしゅつ計画けいかくは、汚染おせん水すいの発生はっせい状じょう況きょうなどを踏ふまえて策定さくていし、毎年まいとし見直みなおしていくという。 　一方いっぽうで、雨水あまみずや地下水ちかすいの建屋たきのやへの流入りゅうにゅうは続つづく。昨年さくねんの汚染おせん水すい発生はっせい量りょうは1日にち平均へいきん150トン、年間ねんかんでは5万まんトン超ちょうだ。政府せいふと東電とうでんは発生はっせい量りょうを25年ねんまでに1日にち平均へいきん100トン以下いかに減へらすとしているが、その先さきの目標もくひょうは示しめせていない。（川村かわむら剛志たけし） （略りゃく） 分厚ぶあつい資料しりょうで一方いっぽう的てきに説明せつめい、漁師りょうしの指摘してきには黙だまった政府せいふ担当たんとう者しゃ 　決定けっていから9カ月かげつ余あまりが過すぎたが、地元じもとでは政府せいふ・東電とうでんへの批判ひはんが収おさまらない。 　「海洋かいよう放出ほうしゅつしても安全あんぜんというなら自分じぶんの家いえの庭にわにまいたり、東京とうきょう湾わんに注そそぐ川かわに流ながしたりしてはどうか」 （略りゃく） 小名浜おなはまなど八やっつの港みなとを抱かかえるいわき市しの内田うちだ広之ひろゆき市長しちょうは5日にちの会見かいけんで、「説明せつめい回数かいすうを重かさねたからといって地元じもと理解りかいが進すすんだことにはならない」と述のべた。昨年さくねん9月がつの市長しちょう選せんで初はつ当選とうせんして以来いらい、政府せいふの風評ふうひょう対策たいさくに対たいし、批判ひはんを強つよめる。 　複雑ふくざつなのは、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの立地りっち自治体じちたいだ。廃はい炉ろを進すすめるには、原発げんぱつ敷地しきち内ないにため続つづけてきた汚染おせん水すいの処理しょりは避さけて通とおれない。 　双葉ふたば町まちの伊沢いさわ史朗しろう町長ちょうちょうは、政府せいふ決定けってい後ご、梶山かじやま弘志ひろし・経けい産さん相しょう（当時とうじ）に対たいし、国民こくみんや漁業ぎょぎょう関係かんけい者しゃへの丁寧ていねいな説明せつめいを求もとめたうえで、「しっかりと進すすめて」と伝つたえた。その後ご、対外たいがい的てきな発言はつげんはしていない。 　町まちは、原発げんぱつ事故じこに伴ともなう全ぜん町まち避難ひなんがいまだに続つづく唯一ゆいいつの自治体じちたいだ。そのうえ、15年ねんには、「復興ふっこうを前まえに進すすめるため」（伊沢いさわ町長ちょうちょう）と、汚染おせん土どなどを保管ほかんする中なか間あいだ貯蔵ちょぞう施設しせつを受うけ入いれた。処理しょり水すいをめぐる問題もんだいは、みたびの負担ふたんを強しいるものだ。 　県内けんないのほかの自治体じちたいからは、放出ほうしゅつによる風評ふうひょう被害ひがいを懸念けねんし、「長期ちょうき保管ほかんすべきだ」との声こえも上あがる。こうした声こえに、町まち幹部かんぶは「それなら（保管ほかんするための）用地ようちの議論ぎろんもすべきだ」といら立だちを募つのらせる。（長屋ながや護まもる、福地ふくち慶太郎けいたろう） （略りゃく） 「義務ぎむ教育きょういくで情報じょうほう判断はんだんする力ちからを」 　「海洋かいよう放出ほうしゅつは日本にっぽんだけで決きめていいの？」「雨水あまみずを防ふせぐ屋根やねがしっかりしていたら汚染おせん水すいは増ふえないのでは」――。 　昨年さくねん12月がつ中旬ちゅうじゅん。福島ふくしま県けんいわき市しの福島ふくしま高だか専せんで、学生がくせい33人にんが四よっつのグループに分わかれて話はなし合あっていた。テーマは、昨年さくねん4月がつに政府せいふが海うみに流ながす方針ほうしんを決きめた東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの処理しょり水すいの処分しょぶん方法ほうほう。日本にっぽん原子力げんしりょく研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう（JAEA）の大場おおば恭子きょうこ・技術ぎじゅつ副ふく主幹しゅかんらが、未来みらいを担になう世代せだいの学生がくせいたちに主体しゅたい的てきに考かんがえてもらおうと企画きかくした。賛否さんぴの判断はんだんや合意ごういを目指めざすのではなく、地元じもとの漁師りょうしや風評ふうひょう被害ひがいに詳くわしい識者しきしゃらにも参加さんかを依頼いらいし、学生がくせいが質問しつもんできる場ばを設もうけた。 　ある学生がくせいは、ALPSでも取とり除のけないトリチウムについて、「影響えいきょうがよくわからない。目めに見みえないから不安ふあんになる人ひともいる」。これに対たいし、「トリチウムを流ながしている他ほかの原発げんぱつ周辺しゅうへんで影響えいきょうを調しらべたら」「数値すうちを測はかって、目めに見みえる数字すうじで示しめしたら」などの意見いけんが出でた。 　「大気たいきの方ほうが、海洋かいよう放出ほうしゅつよりも拡散かくさんし、濃度のうどが低ひくくなるのではないか」と学生がくせいが質問しつもんすると、東電とうでんの担当たんとう者しゃは「海うみの方ほうが空そらよりも、拡散かくさんした後のちの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの監視かんしがしやすいメリットがある」と答こたえた。 　風評ふうひょう被害ひがいへの対策たいさくについても議論ぎろんした。「時間じかんはかかるが、義務ぎむ教育きょういくで正まさしく情報じょうほうを判断はんだんする力ちからを教おしえたらいいのでは」と提案ていあんする学生がくせいもいた。いわき市しの漁師りょうし、新妻にいづま竹彦たけひこさん（60）は、政府せいふ・東電とうでんが福島ふくしま県けん漁いざり連れんに対たいし、「関係かんけい者しゃの理解りかいなしにいかなる処分しょぶんもしない」と約束やくそくしていたことを挙あげ、「国くににも東電とうでんにも裏切うらぎられた」と訴うったえた。 　参加さんかした今野こんの涼太りょうたさん（18）は、以前いぜん友達ともだちが「お父とうさんが仕事しごとで処理しょり水すいに関かかわっている」と打うち明あけてきたことが気きになっているという。「『そうなんだ』と返かえしたが、やはり話はなしにくい雰囲気ふんいきがあると感かんじる」と話はなした。（藤波ふじなみ優ゆう） 全文ぜんぶんは原発げんぱつ処理しょり水すい「話はなしにくい雰囲気ふんいき」　安全あんぜん強調きょうちょうの政府せいふと地元じもとの温度おんど差さ

米国べいこくの企業きぎょうによる次世代じせだいの原発げんぱつ「高速こうそく炉ろ」の開発かいはつ計画けいかくに、文部もんぶ科学かがく省しょうが所管しょかんする日本にっぽん原子力げんしりょく研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうや三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうなどが技術ぎじゅつ的てきに協力きょうりょくすることになった。原子力げんしりょく機構きこうなど4者しゃは26日にち、協力きょうりょくに向むけた覚書おぼえがきを交かわした。米国べいこくで2028年ねんの運転うんてん開始かいしを目指めざすが、日本にっぽんやフランスでは開発かいはつが行いき詰づまっており、実用じつよう化かは不透明ふとうめいだ。 　高速こうそく炉ろの実用じつよう化かを目指めざしているのは、マイクロソフトの創業そうぎょう者しゃビル・ゲイツ氏しらが設立せつりつしたベンチャー企業きぎょう「テラパワー」（ワシントン州しゅう）。テラパワーは24年ねん、米国べいこく西部せいぶのワイオミング州しゅうで高速こうそく炉ろ（出力しゅつりょく34万まん5000キロワット）の建設けんせつを始はじめる計画けいかくを立たてている。 　既存きそんの原発げんぱつでは核かく燃料ねんりょうに中性子ちゅうせいしという粒子りゅうしを当あて、核分裂かくぶんれつを連鎖れんさ的てきに起おこして熱ねつを得える。高速こうそく炉ろではさらに速はやく中性子ちゅうせいしを当あてるので、より効率こうりつ的てきな核分裂かくぶんれつ反応はんのうが起おきる。既存きそんの原発げんぱつでは原子げんし炉ろを冷ひやすのに水みずを使つかうが、テラパワーの原子げんし炉ろでは中性子ちゅうせいしを減速げんそくさせにくい液体えきたいのナトリウムを使用しよう。稼働かどう中ちゅうに発生はっせいした熱ねつを蓄たくわえる装置そうちも付つけ、電気でんきの出力しゅつりょくを細こまかく調整ちょうせいすることができるようにする。 　一方いっぽう、日本にっぽんにはトラブル続つづきで現在げんざいは廃はい炉ろ作業さぎょう中ちゅうの「もんじゅ」（福井ふくい県けん）や、07年ねん5月がつから止とまったままの実験じっけん段階だんかいの炉ろ「常陽じょうよう」（茨城いばらき県けん）というナトリウムを使つかった高速こうそく炉ろがあり、原子力げんしりょく機構きこうにはこれらの運転うんてん実績じっせきがある。三菱重工みつびしじゅうこうは、常陽じょうようともんじゅの開発かいはつや建設けんせつなどに携たずさわった。さらに茨城いばらき県けんには、ナトリウムを使つかう機器ききを試験しけんする原子力げんしりょく機構きこうの施設しせつもある。 （略りゃく） 　その中なかで同省どうしょうは20年ねん10月がつ、先進せんしん的てきな原子げんし炉ろの建設けんせつ費用ひようを補助ほじょする「先進せんしん的てき原子げんし炉ろ設計せっけいの実証じっしょうプログラム」として、テラパワーの高速こうそく炉ろ開発かいはつなどを支援しえんすることを発表はっぴょうした。テラパワーの高速こうそく炉ろの建設けんせつ費ひは約やく40億おくドル（約やく4600億おく円えん）とみられ、このプログラムなどより15億おくドル（約やく1700億おく円えん）以上いじょうを支援しえんする方針ほうしんだ。 　今回こんかいの覚書おぼえがきに携たずさわる日本にっぽん側がわの関係かんけい者しゃは「テラパワーにとって、米べい政府せいふが補助ほじょしてくれるのは大おおきい。これで利益りえきが見込みこめると判断はんだんしたのでは」と話はなす。「（原子力げんしりょく分野ぶんやで中国ちゅうごくやロシアが台頭たいとうする中なか）このプログラムは、米国べいこくが世界せかいのリーダーとして復権ふっけんすることを、強つよく意識いしきしたものだ」と見みているという。 米国べいこく側がわからの協力きょうりょくの打診だしんに、日本にっぽん側がわでは期待きたい感かんが高たかまる。テラパワーの高速こうそく炉ろは、もんじゅよりも実用じつよう的てきなタイプの炉ろになる。「開発かいはつがうまくいけば先進せんしん的てきなデータを得えられることが期待きたいでき、人材じんざい育成いくせいの観点かんてんからも大おおきい」。日本にっぽん側がわの関係かんけい者しゃはそう解説かいせつする。 　一方いっぽう、三菱重工みつびしじゅうこうは70年代ねんだいから常陽じょうよう、もんじゅの開発かいはつや製作せいさく、建設けんせつなどの国家こっかプロジェクトに参画さんかくしてきた。07年ねんに高速こうそく炉ろの研究けんきゅう開発かいはつなどを専せん門もんに手てがける「三菱みつびしFBRシステムズ」（東京とうきょう都と）を設立せつりつし、21世紀せいき半なかばの運転うんてん開始かいしを目指めざして国内こくない実証じっしょう炉ろの開発かいはつを進すすめている。 （略りゃく） 三菱重工みつびしじゅうこうは今回こんかいの日米にちべい協力きょうりょくを「国内こくない実証じっしょう炉ろの開発かいはつに資しする開発かいはつ・設計せっけいの場ば」と位置付いちづける。具体ぐたい的てきな協力きょうりょく項目こうもくは、高速こうそく炉ろに特有とくゆうの炉心ろしん・燃料ねんりょう、制御せいぎょ棒ぼうなどの炉ろ内ない機器きき、原子げんし炉ろ容器ようきなどを念頭ねんとうに今後こんご検討けんとうする。同社どうしゃは「米国べいこくは93年ねんに実験じっけん炉ろを閉鎖へいさして以降いこう、高速こうそく炉ろの設計せっけいや建設けんせつの経験けいけんがなく知見ちけんが乏とぼしいと推定すいていされ、当社とうしゃの実績じっせきや知見ちけんが期待きたいされている」としている。 見通みとおせない「日本にっぽんへの見返みかえり」 　液体えきたいナトリウムを利用りようしたテラパワーの高速こうそく炉ろは、28年ねんの完成かんせいを目指めざしている。日本にっぽんでは、同おなじナトリウムを使つかった「もんじゅ」の開発かいはつに1兆ちょう円えん超ちょうの税金ぜいきんを投とうじながら頓挫とんざしている。実用じつよう化かに向むけたハードルは相当そうとう高たかい。 　ナトリウムは空気くうき中ちゅうの酸素さんそや水みずに触ふれると発火はっかしたり爆発ばくはつしたりする性質せいしつがあり、取とり扱あつかいが難むずかしい。もんじゅは1995年ねん、初はじめて発電はつでんに成功せいこうしたが、その後ごはナトリウム漏もれ事故じこなどトラブルが相次あいついだ。わずか250日にちの稼働かどう実績じっせきしか残のこせないまま、16年ねんに廃はい炉ろが決きまった。フランスでも、原子力げんしりょく・代替だいたいエネルギえねるぎー庁ちょうが費用ひよう対たい効果こうかが見込みこめないことなどから、日本にっぽんが共同きょうどう開発かいはつを模索もさくしていた高速こうそく炉ろの建設けんせつを断念だんねんすることを明あきらかにした。 　それでも日本にっぽん政府せいふは、高速こうそく炉ろの研究けんきゅう開発かいはつで諸しょ外国がいこくと連携れんけい、協力きょうりょくする方針ほうしんを打うち出だしている。「米国べいこくやフランスなどと国際こくさい協力きょうりょくを進すすめつつ、研究けんきゅう開発かいはつに取とり組くむ」「もんじゅで培つちかわれた知見ちけん、技術ぎじゅつは、将来しょうらいの研究けんきゅう開発かいはつで最大限さいだいげん有効ゆうこうに活用かつようする」。21年ねん10月がつに公表こうひょうしたエネルギー基本きほん計画けいかくでは、そううたっている。 （略りゃく） 鈴木すずき教授きょうじゅは「今回こんかいの日本にっぽん側がわの協力きょうりょくが技術ぎじゅつ的てきな観点かんてんから価値かちのあるものになるかは、実際じっさいに設計せっけいや建設けんせつにどこまで深ふかく携たずさわれるかにかかっている」と指摘してきした。 　明治大めいじだいの勝田かつた忠広ただひろ教授きょうじゅ（原子力げんしりょく政策せいさく）は「米国べいこくと日本にっぽんでは予算よさんや研究けんきゅうの規模きぼが全まったく違ちがう。協力きょうりょくすることで、研究けんきゅうレベルで多少たしょうの知見ちけんは得えられるだろう。ただ、発電はつでんコストや地理ちり的てき条件じょうけんなどを考かんがえると、今回こんかいの協力きょうりょくがすぐに日本にっぽんの高速こうそく炉ろ開発かいはつの促進そくしんにつながるとは思おもえない」と話はなした。【岡田おかだ英すぐる、吉田よしだ卓たく矢や、井川いかわ諒りょう太郞たろう】 全文ぜんぶんは米べい高速こうそく炉ろに協力きょうりょく　破やぶれた「もんじゅ」の夢ゆめ託たくす日本にっぽん　実用じつよう化かに高たかい壁かべ

東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい1原子力げんしりょく発電はつでん所しょの事故じこから3月がつ11日にちで11年ねんを迎むかえる。放射線ほうしゃせんの拡散かくさんを抑おさえる当初とうしょの対応たいおうから、本格ほんかく的てきな廃はい炉ろ作業さぎょうに向むけた準備じゅんびへと作業さぎょうは移うつった。その結果けっか、原子げんし炉ろ建屋たきのやのがれきなどの同どう原発げんぱつの廃棄はいき物ぶつは2021年ねん11月時点じてんで約やく48万まん立方りっぽうメートル。廃棄はいき物ぶつの計画けいかく的てきな管理かんりを始はじめた6年ねん前まえと比くらべ7割わり増ふえた。ただ敷地しきち内ないの廃棄はいき物ぶつが増ふえ続つづければ、廃はい炉ろ作業さぎょうに支障ししょうが出でかねない。 1月19日にち、福島ふくしま原発げんぱつを訪おとずれた。高台たかだいから見渡みわたすと汚染おせん水すいを処理しょりしてためた約やく1000基きのタンクが所ところ狭せましと並ならび、東側ひがしがわでは新あらたなタンク23基きの組くみ立たて作業さぎょうが進すすめられていた。放射能ほうしゃのうで汚染おせんされたがれきを入いれたコンテナも山積やまづみされていた。 21年ねんに訪おとずれた際さいはがれきが無造作むぞうさに点在てんざいしていたが、空あき地ちにだいぶ運はこび込こまれた。22年ねん3月がつに焼却しょうきゃく処分しょぶん場じょうの稼働かどうを始はじめるためだ。 ただ、放射線ほうしゃせんが高たかい主おもな廃棄はいき物ぶつとなる金属きんぞくやコンクリートなどは燃もやせず、あくまで仮かり置おきしているにすぎない。将来しょうらいは最終さいしゅう処分しょぶん場じょうに移うつす考かんがえだが場所ばしょは未定みていだ。廃はい炉ろがさらに進展しんてんした場合ばあいには、仮かりの置おき場ばも不足ふそくする可能かのう性せいがある。 東電とうでんや国くには今後こんご、廃はい炉ろ作業さぎょうと並行へいこうして処理しょり水すい、がれき、汚染おせん土どなどの廃棄はいき物ぶつの管理かんりや処分しょぶんを進すすめる必要ひつよう性せいに迫せまられている。これらの廃棄はいき物ぶつは福島ふくしま県内けんないで発生はっせいしたものだ。東電とうでんは「国くにと東電とうでん、福島ふくしま県けんなどが協議きょうぎして決きめることになる。議論ぎろんにはまだ着手ちゃくしゅできていない」と話はなす。 廃棄はいき物ぶつを巡めぐっては、東電とうでんは32年ねんごろまでに約やく79万まん立方りっぽうメートルにまで増ふえると試算しさんしている。メルトダウンを起おこした原子げんし炉ろ建屋たきのやや、その周辺しゅうへんのがれきなども含ふくまれる。損傷そんしょうが激はげしい1号機ごうきでは、がれき撤去てっきょのための足場あしば作づくりが急きゅうピッチで進すすめられており、こうした廃棄はいき物ぶつが増ふえる。 21年ねん3月がつには原発げんぱつ敷地しきち内ないで高たかい放射線ほうしゃせんを出だす塊かたまりが見みつかった。がれきを保管ほかんしていたコンテナ1個いっこが腐食ふしょくし、廃棄はいき物ぶつが漏ろうえいした。こうしたトラブルを防ふせぐため、一時いちじ的てきな保管ほかん施設しせつが敷地しきち北側きたがわの空あき地ちに次々つぎつぎと建設けんせつされている。 22年ねんには原子げんし炉ろ内ないで核かく燃料ねんりょうが溶とけて固かたまった溶融ようゆう燃料ねんりょう（デブリ）の取とり出だしも始はじまる。英えい企業きぎょうなどが開発かいはつしたロボットアームを使つかい2号機ごうきから着手ちゃくしゅする。東電とうでんなどによると今回こんかい取とり出だすのはわずか数すうグラム程度ていど。1～3号機ごうき全体ぜんたいで溶融ようゆう燃料ねんりょうは推計すいけい880トンある。 今回こんかいは取とり出だしの「入いり口くち」にすぎないが、これも処分しょぶん場じょうが決きまっていない。デブリは放射線ほうしゃせんが極きわめて高たかいだけに、処分しょぶんのあり方かたは極きわめて重要じゅうようになるにもかかわらずだ。 […] 全文ぜんぶん