Tag Archives: 津波つなみ

[…] 津波つなみの新あらたな浸水しんすい想定そうていは、２０１１年ねん１２月じゅうにがつに施行しこうされた「津波つなみ防災ぼうさい地域ちいきづくり法ほう」に基もとづく。兵庫ひょうごを含ふくむ４０都道府県とどうふけんで作つくる必要ひつようがあり、東京とうきょう都とを除のぞいて公表こうひょう済ずみだ。 　３県けんの新しん想定そうていは、数すう百ひゃく～千せん年ねんに１回かいと発生はっせい頻度ひんどは極きわめて低ひくいものの、防潮ぼうちょう堤つつみが壊こわれ、満潮まんちょう時じなどの悪条件あくじょうけんが重かさなった場合ばあいを前提ぜんていに、津波つなみの高たかさや浸水しんすい範囲はんいを試算しさんした。 　新しん想定そうていによると、浸水しんすい域いきの広ひろさは岩手いわて県けんで１００平方へいほうキロ、宮城みやぎ県けんで３９１平方へいほうキロ、福島ふくしま県けんで１３９平方へいほうキロに達たっする。３県けん合あわせた浸水しんすい域いきの面積めんせきは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい時じの約やく１・３倍ばいに上のぼる。各地かくちで市町村しちょうそんの庁舎ちょうしゃが浸水しんすいしたり避難ひなんタワーが使つかえなくなったりするが、ハード対策たいさくに多額たがくの追加ついか費用ひようを投とうじるのは困難こんなんな状況じょうきょうだ。 移転いてん先さきも浸水しんすいの恐おそれ 　広大こうだいな浸水しんすい域いきから命いのちをどう守まもるのか。復興ふっこうまちづくりが一段落いちだんらくした段階だんかいで新あらたな対応たいおうを迫せまられる被災ひさい地ちの人々ひとびとには割わり切きれない思おもいが強つよい。 　「行政ぎょうせいが安全あんぜん安心あんしんだという場所ばしょに自宅じたくを再建さいけんしたのに、今いまになって津波つなみが来くると言いわれても、どうすればいいのか」。津波つなみが襲おそい、約やく７５０人にんが犠牲ぎせいになった宮城みやぎ県けん名取なとり市しの閖上ゆりあげ（ゆりあげ）地区ちくで町内ちょうない会長かいちょうを務つとめる長沼ながぬま俊幸としゆきさん（６０）の疑問ぎもんは尽つきない。 　震災しんさい後ご、３メートルほどかさ上あげして整備せいびされた市街地しがいちは海岸かいがんから約やく１・５キロ離はなれている。一戸建いっこだてと復興ふっこう住宅じゅうたくなどが混在こんざいし、約やく３１０世帯せたいが暮くらす。当初とうしょの市しの浸水しんすい想定そうていは「１メートル未満みまん」で、近ちかくの公民館こうみんかんか小中こなか一貫いっかん校こうに逃にげれば大丈夫だいじょうぶと考かんがえていた。 しかし、県けんが示しめした新しん想定そうていでは「３メートル以上いじょう５メートル未満みまん」とされた。地区ちくで最もっとも高たかい６階かい建だての復興ふっこう住宅じゅうたくの屋上おくじょうへ「垂直すいちょく避難ひなん」を検討けんとうするが、冬季とうき夜間やかんの避難ひなんは寒さむさによる低てい体温たいおん症しょうのリスクが気きがかりだ。 　長沼ながぬまさんは「震災しんさいを経験けいけんしていない新しん住民じゅうみんも増ふえている。国くにや県けんは浸水しんすい想定そうていを公表こうひょうするだけでなく、避難ひなん可能かのうな屋内おくない施設しせつや訓練くんれんなどの対策たいさくも示しめしてほしい」と求もとめる。市しは住民じゅうみん説明せつめい会かいでハザードマップを見直みなおす方針ほうしんを示しめし「避難ひなんを優先ゆうせんし、命いのちを守まもる行動こうどうを」と繰くり返かえすばかりで、目立めだった進展しんてんはない。長沼ながぬまさんの脳裏のうりには１２年ねん前まえの悪夢あくむがよぎる。 避難ひなんルールの徹底てっていを 　東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいでは大だい津波つなみ警報けいほうの発令はつれい後ごも逃にげなかった人ひとがおり、被害ひがい拡大かくだいにつながった。同おなじ過あやまちを決けっして繰くり返かえしてはならない。一人ひとり一いち人にんが避難ひなんできる場所ばしょやそこへ向むかう手段しゅだんを平時へいじから確認かくにんしておきたい。 　注意ちゅういしなければならないのが、避難ひなん時じの車くるまの使用しようだ。国くには「徒歩とほ避難ひなんが原則げんそく」としている。だが南海なんかいトラフ地震じしんの津波つなみが予想よそうされる兵庫ひょうごなど西日本にしにほん各地かくちでも、車くるまでの避難ひなんを「必要ひつよう」と捉とらえる自治体じちたいは多おおい。一方いっぽう、避難ひなん計画けいかくで具体ぐたい的てきなルールを定さだめている自治体じちたいはごく一部いちぶとされる。 　東日本ひがしにっぽんでは道路どうろの被災ひさいや渋滞じゅうたいで逃にげ遅おくれた例れいもある。自治体じちたいは地形ちけいなど地域ちいきの特性とくせいも考慮こうりょして計画けいかくの実効じっこう性せいを担保たんぽし、住民じゅうみんの理解りかいを得えられるよう丁寧ていねいに説明せつめいすべきだ。高齢こうれい者しゃや障害しょうがい者しゃら支援しえんが必要ひつような人ひとの避難ひなん対策たいさくの強化きょうかも欠かかせない。 　「最悪さいあく」に備そなえ、犠牲ぎせい者しゃを一人ひとりでも減へらす。それにはやり残のこしたことがまだある。自治体じちたいの負担ふたんを軽減けいげんする国くにの財政ざいせい支援しえんや地域ちいき防災ぼうさい計画けいかくの抜本ばっぽん的てき見直みなおしも急いそがねばならない。 全文ぜんぶん

静岡しずおか県けんにある浜岡はまおか原子力げんしりょく発電はつでん所しょについて、中部電力ちゅうぶでんりょくが、巨大きょだい地震じしんによる津波つなみの高たかさが最大さいだいで２２.５メートルに達たっする可能かのう性せいがあるとの想定そうていをまとめたことがわかりました。これは、「防ぼう波は壁かべ」の高たかさを超こえる想定そうていとなっています。 […] 中部電力ちゅうぶでんりょくでは、マグニチュード９クラスの地震じしんでの津波つなみの発生はっせい事例じれいが少すくないため、不確ふたしかな部分ぶぶんが多おおく、より厳きびしい条件じょうけんで検討けんとうした結果けっかだと説明せつめいしています。浜岡原発はまおかげんぱつの前面ぜんめんには、津波つなみ対策たいさくとして高たかさ２２メートルの防ぼう波は壁かべが建設けんせつされましたが、新あらたな想定そうていでは最大さいだいの津波つなみの高たかさが壁かべの高たかさを上回うわまわることになります。これについて中部電力ちゅうぶでんりょくは「現時点げんじてんでは追加ついかの対策たいさくなどを検討けんとうする段階だんかいではない。まずは真摯しんしに審査しんさに対応たいおうし、基準きじゅん津波つなみの高たかさをきちんと策定さくていすることに全力ぜんりょくを尽つくしたい」とコメントしています。 全文ぜんぶん

[…] 武藤むとう元もと副ふく社長しゃちょうは業務ぎょうむ上じょう過失かしつ致死傷ちししょう罪ざいで強制きょうせい起訴きそされ、２０１９年ねん９月がつの一いち審しん判決はんけつで無罪むざいになった。公おおやけの場ばで証言しょうげんするのは、１８年ねん１０月がつの被告人ひこくにん質問しつもん以来いらい。 武藤むとう元もと副ふく社長しゃちょうによると、部下ぶかから０８年ねん６月がつ、国くにの地震じしん予測よそく「長期ちょうき評価ひょうか」に基もとづくと、従来じゅうらいの想定そうていの３倍ばい近ちかい高たかさの大だい津波つなみが原発げんぱつを襲おそうとの試算しさん結果けっかの報告ほうこくを受うけた。その１カ月かげつ後ご、防潮ぼうちょう堤つつみ工事こうじなどの対策たいさくを取とらないまま、外部がいぶ機関きかんに試算しさん方法ほうほうの検討けんとうを依頼いらいするよう指示しじした。　武藤むとう元もと副ふく社長しゃちょうは長期ちょうき評価ひょうかについて、部下ぶかから「根拠こんきょがよく分わからず、試算しさん結果けっかも信頼しんらい性せいはない」と説明せつめいされたとも証言しょうげん。「担当たんとう者しゃがよく分わかっていなければ、何なにも決きめられない。社外しゃがいに意見いけんを求もとめるのは、適切てきせつでごくごく自然しぜんなやり方かただ」とよどみなく話はなした。　次回じかい７月がつ６日にちの口頭こうとう弁論べんろんでは、武藤むとう元もと副ふく社長しゃちょうのほか勝俣かつまた恒久つねひさ元もと会長かいちょう、武たけ黒くろ一郎いちろう元もと副ふく社長しゃちょう、清水しみず正ただし孝こう元もと社長しゃちょう、小森こもり明生あきお元もと常務じょうむの証人しょうにん尋問じんもんがある。（山田やまだ雄つよし之これ） 全文ぜんぶん

[…] 原発げんぱつ事故じこで避難ひなん指示しじが出だされた川俣かわまた町まち山木屋やまきや地区ちくに住すんでいた、およそ３００人にんは、避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされたり、住すみ慣なれたふるさとでの生活せいかつを奪うばわれたりしたことによる慰謝いしゃ料りょうなどとして、東京電力とうきょうでんりょくに１４７億おく円えんあまりの賠償ばいしょうを求もとめていました。９日にちの判決はんけつで、福島ふくしま地方裁判所ちほうさいばんしょいわき支部しぶの名島なじま亨とおる卓たく裁判さいばん長ちょうは、「原発げんぱつの敷地しきちの高たかさを超こえる津波つなみが到来とうらいする可能かのう性せいは示唆しさされていたが、直ただちに安全あんぜん評価ひょうかに取とり込こむべき知見ちけんになっていたとは言いえず、具体ぐたい的てきな対策たいさくを実施じっしすべき義務ぎむがあったとまでは認みとめられない」と指摘してきし、原発げんぱつ事故じこに対たいする東京電力とうきょうでんりょくの責任せきにんを否定ひていしました。また、「国くにの中なか間あいだ指針ししんには合理ごうり性せいが認みとめられる」として、避難ひなんを余儀よぎなくされたことに対たいする賠償ばいしょうの上積うわづみも認みとめませんでした。一方いっぽうで、「地域ちいきコミュニティーや地域ちいきの生活せいかつ環境かんきょうなどの生活せいかつ基盤きばんの中なかで、継続けいぞく的てきかつ安定あんてい的てきに生活せいかつする利益りえきは、人ひとが人ひととして健康けんこうで文化ぶんか的てきな生活せいかつを営いとなむための基礎きそとなるものだ」と指摘してきし、東京電力とうきょうでんりょくに対たいし、ふるさとの喪失そうしつに伴ともなう慰謝いしゃ料りょうとして、原告げんこく１人にんあたり２００万まん円えん、総額そうがく６億おく円えんあまりを支払しはらうよう命めいじました。原告げんこくは、原発げんぱつ事故じこに対たいする東京電力とうきょうでんりょくの責任せきにんが認みとめられず、賠償ばいしょう額がくも十分じゅうぶんではないとして、控訴こうそする方針ほうしんです。 全文ぜんぶん

内閣ないかく府ふの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎが公表こうひょうした日本にっぽん海溝かいこう・千島ちしま海溝かいこう沿ぞいの巨大きょだい地震じしんによる津波つなみ浸水しんすい想定そうていで、岩手いわて県けん沿岸えんがん分ぶんは非ひ公表こうひょうとされた。県けんや沿岸えんがん市町村しちょうそんが「住民じゅうみんの不安ふあんをあおる」と内閣ないかく府ふに求もとめた結果けっかだが、識者しきしゃからは「国くにも地元じもと自治体じちたいも無責任むせきにんだ」と批判ひはんの声こえが上あがる。　県けんによると、３月さんがつ３０日にちに内閣ないかく府ふから市町村しちょうそんに対たいする事前じぜんの説明せつめい会かいが盛岡もりおか市しで開ひらかれた。担当たんとう者しゃからは不安ふあんが独ひとり歩あるきすることを懸念けねんする声こえが続出ぞくしゅつした。　県けんは市町村しちょうそんの意見いけんをくみ「防潮ぼうちょう堤つつみや水門すいもんの建設けんせつ途上とじょうであり、丁寧ていねいな説明せつめいが必要ひつよう。心配しんぱいが払拭ふっしょく（ふっしょく）されない中なかで公表こうひょうは控ひかえてほしい」と内閣ないかく府ふに要請ようせいしてきた。　対象たいしょうエリアで最大さいだいの２９．７メートルの津波つなみが想定そうていされた宮古みやふる市し。山本やまもと正徳まさのり市長しちょうは「津波つなみの到達とうたつ時間じかんと高たかさは市内しないでも地区ちくによって異ことなり、防潮ぼうちょう堤つつみ整備せいびが進すすむ中なかでいたずらに不安ふあんをあおりたくない。住民じゅうみんに説明せつめいできないようなデータは素直すなおに受うけ取とれない」と強調きょうちょうする。　そもそも防潮ぼうちょう堤つつみは、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい級きゅうや今回こんかい想定そうていされたような巨きょ大津おおつ波は（Ｌ２津波つなみ）では越こし流ながしたり破壊はかいされたりすることを前提ぜんていに造つくられている。原則げんそくとして、頻度ひんどは多おおく高たかさは低ひくい津波つなみ（Ｌ１津波つなみ）に合あわせた設計せっけいだ。　これを踏ふまえて県けんと市町村しちょうそんは、住民じゅうみんの理解りかいを得えた上うえで避難ひなんを基本きほんとする多重たじゅう防御ぼうぎょのまちづくりを展開てんかいしている。斎藤さいとう徳美とくみ岩手大いわてだい名誉めいよ教授きょうじゅ（地域ちいき防災ぼうさい学がく）は「避難ひなんの認識にんしきをより深ふかめるため、浸水しんすい想定そうていは大切たいせつな目安めやす」と指摘してきする。　非ひ公表こうひょうの判断はんだんについて斎藤さいとう氏しは「シミュレーションした国くに自身じしんが自治体じちたいに判断はんだんを丸まる投なげする責任せきにん転嫁てんかはおかしい。住民じゅうみんに必要ひつような情報じょうほうを公表こうひょうさせない自治体じちたい側がわの主張しゅちょうも大おおいに疑問ぎもんがある」と批判ひはんする。 […] 全文ぜんぶん

東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこの避難ひなん者しゃらが国くにと東電とうでんに慰謝いしゃ料りょうなどを求もとめた集団しゅうだん訴訟そしょうは、これまでに１０地裁ちさいで一いち審しん判決はんけつが出だされ、国くにの責任せきにんをめぐって判断はんだんが分わかれた。年内ねんないには、初はじめての控訴こうそ審しん判決はんけつが仙台せんだい高裁こうさいでい渡いわたされる予定よていで、一貫いっかんして事故じこの責任せきにんを否定ひていする国くにの姿勢しせいが、高裁こうさいレベルでどう評価ひょうかされるか注目ちゅうもくされる。 福島ふくしま原発げんぱつ集団しゅうだん訴訟そしょうが結審けっしん　国くに被告ひこくの控訴こうそ審しんで初はつ―仙台せんだい高裁こうさい 　原発げんぱつ事故じこについては、電力でんりょく会社かいしゃが過失かしつの有無うむにかかわらず賠償ばいしょう責任せきにんを負おう原子力げんしりょく損害そんがい賠償ばいしょう法ほうの規定きていがあるため、東電とうでんの支払しはらい義務ぎむは全すべての判決はんけつで認みとめられている。 一方いっぽう、国くにの賠償ばいしょう責任せきにんは６件けんで認みとめられ、４件けんで否定ひていされた。主おもな争点そうてんは▽事故じこ原因げんいんとなった津波つなみを国くにが予見よけんをできたか▽対策たいさくを取とって事故じこを回避かいひできたか―の２点てん。原告げんこく側がわは、２００２年ねんに示しめされた政府せいふ機関きかんの地震じしん予測よそく「長期ちょうき評価ひょうか」に基もとづき、国くにが規制きせい権限けんげんを行使こうしして東電とうでんに対策たいさくを取とらせれば事故じこは防ふせげたと主張しゅちょうしてきた。　前橋まえばしなど６地裁ちさいは長期ちょうき評価ひょうかの信頼しんらい性せいを認みとめ、「津波つなみ対策たいさくとして考慮こうりょすべきだった」と指摘してき。国くにが電源でんげん設備せつびの高所こうしょ移設いせつといった対策たいさくを東電とうでんに命めいじなかったのは違法いほうとして、国くにの責任せきにんを認定にんていした。一方いっぽう、千葉ちば地裁ちさいは津波つなみ被害ひがいの甚大じんだいさなどから「対策たいさくしたとしても事故じこを回避かいひできなかった可能かのう性せいがある」として、１、２陣じんの訴訟そしょういずれも国くにの責任せきにんを否定ひていした。 ただ、同様どうように責任せきにんを否定ひていした名古屋なごや、山形やまがた両りょう地裁ちさいを含ふくめ、「国くにが津波つなみを予見よけんできた」ことは全すべての判決はんけつが認みとめた。原告げんこく数すうが最もっとも多おおい福島ふくしま訴訟そしょうの代理人だいりにん、馬うま奈木厳いむ太郎たろう弁護士べんごしは「事故じこが起おこれば、地域ちいき住民じゅうみんの生命せいめいが脅おびやかされる。『何なにとしても原発げんぱつを守まもる』という前提ぜんていに立たてば、津波つなみを予見よけんした時点じてんで国くにが規制きせい権限けんげんを行使こうしすべきだ」と指摘してきする。 […] 全文ぜんぶん

[…] この点てんに関かんして、津波つなみの規模きぼが「予見よけん可能かのうだったか、想定そうてい外がいだったか」という議論ぎろんがなされてきた。しかし双方そうほうとも「津波つなみが事故じこ原因げんいん」という点てんでは一致いっちし、多おおくの国民こくみんもそう理解りかいしている。 　ところが、「津波つなみが原因げんいん」ではなかったのだ。 　福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつは、津波つなみの襲来しゅうらい前まえに、地震動じしんどうで壊こわれたのであって、事故じこ原因げんいんは「津波つなみ」ではなく「地震じしん」だった――“執念しゅうねん”とも言いえる莫大ばくだいな労力ろうりょくを費ついやして、そのことを明あきらかにしたのは、元もと東電とうでん「炉心ろしん専門せんもん家か」の木村きむら俊雄としお氏し（55）だ。 […] 東電とうでん社内しゃないでも数少かずすくない炉心ろしんのエキスパートだった木村きむら氏しは、東電とうでんに未み公開こうかいだった「炉心ろしん流量りゅうりょう（炉心ろしん内ないの水みずの流ながれ）」に関かんするデータの開示かいじを求もとめ、膨大ぼうだいな関連かんれんデータや資料しりょうを読よみ込こみ、事故じこ原因げんいんは「津波つなみ」ではなく「地震じしん」だったことを突つき止とめた。 「事故じこを受うけて、『国会こっかい事故じこ調ちょう』『政府せいふ事故じこ調ちょう』『民間みんかん事故じこ調ちょう』『東電とうでん事故じこ調ちょう』と4つもの事故じこ調査ちょうさ委員いいん会かいが設置せっちされ、それぞれ報告ほうこく書しょを出だしましたが、いずれも『事故じこ原因げんいんの究明きゅうめい』として不十分ふじゅうぶんなものでした。メルトダウンのような事故じこを検証けんしょうするには、『炉心ろしんの状態じょうたい』を示しめすデータが不可欠ふかけつとなるのに、4つの事故じこ調ちょうは、いずれもこうしたデータにもとづいた検証けんしょうを行おこなっていないのです。 ただ、それもそのはず。そもそも東電とうでんが調査ちょうさ委員いいん会かいに、そうしたデータを開示かいじしていなかったからです。そこで私わたしは東電とうでんにデータの開示かいじを求もとめました。これを分析ぶんせきして、驚おどろきました。実じつは『津波つなみ』が来くる前まえからすでに、『地震動じしんどう』により福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの原子げんし炉ろは危機きき的てき状況じょうきょうに陥おちいっていたことが分わかったのです」 　7基きもの原発げんぱつが稼働かどう中ちゅうの現在げんざい、このことは重大じゅうだいな意味いみをもつ。「津波つなみが原因げんいん」なら、「津波つなみ対策たいさくを施ほどこせば、安全あんぜんに再さい稼働かどうできる」ことになるが、そうではないのだ。 　木村きむら俊雄としお氏しが事故じこ原因げんいんを徹底てってい究明きゅうめいした「福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつは津波つなみの前まえに壊こわれた」の全文ぜんぶんは、「文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう」9月がつ号ごうに掲載けいさいされている。 全文ぜんぶん

　東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこの影響えいきょうで福島ふくしま県けんから神奈川かながわ県けんへ避難ひなんした住民じゅうみんらが、国くにと東電とうでんに総額そうがく約やく５３億おく９千せん万まん円えんの損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめた訴訟そしょうの判決はんけつが２０日にち、横浜よこはま地裁ちさい（中平なかひら健けん裁判さいばん長ちょう）でい渡いわたされる。津波つなみの襲来しゅうらいを予見よけんし、適切てきせつな対策たいさくを講こうじておく義務ぎむが国くにと東電とうでんにあったのかが最大さいだいの争点そうてん。[…] 原告げんこく側がわは、政府せいふの地震じしん調査ちょうさ研究けんきゅう推進すいしん本部ほんぶが２００２年ねんにまとめた長期ちょうき評価ひょうかに基もとづき、東電とうでんは原発げんぱつの敷地しきちの高たかさを越こえる津波つなみの到来とうらいを予見よけんし、速すみやかに必要ひつような対策たいさくを講こうじるべきだったと主張しゅちょう。国くにの責任せきにんについても、「規制きせい権限けんげんを有ゆうしていながら、東電とうでんに具体ぐたい的てきな対策たいさく工事こうじを何一なにひとつ行おこなわせることができなかった」として追及ついきゅうしている。 また国くにが示しめした基準きじゅんに基もとづき東電とうでんがこれまで支払しはらってきた賠償ばいしょうは不十分ふじゅうぶんとも指摘してき。低てい線量せんりょう被ひばくの危険きけん性せいにさらされるなど避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされている原告げんこくらに適切てきせつな賠償ばいしょうを行おこなうことを求もとめている。 東電とうでん側がわは「事故じこ原因げんいんになった津波つなみと同どう程度ていどの津波つなみを予測よそくする知見ちけんは当時とうじ存在そんざいせず、予見よけんは不可能ふかのうだった」と反論はんろん。賠償ばいしょうについてもすでに十分じゅうぶんな額がくを支払しはらっているとした。国くには東電とうでんに対たいする規制きせい権限けんげんを有ゆうしていなかったとして事故じこ責任せきにんを否定ひていし、津波つなみの予見よけんもできなかったと主張しゅちょうしている。 […] 全文ぜんぶん