コメント

• この映画えいがはスクープだ。
  そして誤解ごかいを恐おそれず言いえば、痛切つうせつなるエンタメ作品さくひんだ。
  「執行しっこうされてしまったら取とり返かえしのつかないことになる」と思おもい、調しらべ始はじめた
  二村にむら真弘まさひろ監督かんとくの取材しゅざいの深ふかさはもちろん、撮影さつえい・構成こうせい・編集へんしゅうなどの表現ひょうげん力りょくも一いち級きゅう品ひん。
  同どう業者ぎょうしゃとして脱帽だつぼう、と同時どうじに嫉妬しっとした。

  大島おおしま 新しん
  （ドキュメンタリー監督かんとく）

• 衝撃しょうげき的てきな「映画えいが」だ。事件じけんの当事とうじ者しゃの人々ひとびとの、語かたる内容ないようはもちろん、その語かたり口くち、声こえ、身体しんたいは、こちらの安易あんいな予断よだんを悉ことごとく裏切うらぎっていく。家族かぞくの、親子おやこの、夫婦ふうふの、人間にんげんの計はかり知しれなさ。膨大ぼうだいな時間じかんの中なかの絶望ぜつぼうと、しかし、それに抗あらがう力ちからを感かんじた。

  押見おしみ修造しゅうぞう
  （漫画まんが家か）

• 多おおくの人ひとが「その話はなしはもうやめてくれ」と逃にげる。
  なぜ、逃にげるのか。なぜ、カメラの前まえで語かたらないのか。
  各人かくじんの後うしろめたさが渦うずとなり、問といかけてくる。

  武田たけだ砂鉄さてつ
  （ライター）

• 21世紀せいきもすでに4分ぶんの1が過すぎようとしているのに、人間にんげん社会しゃかいにはまだ決定的けっていてきな「殺あやめた証拠しょうこの判断はんだん基準きじゅん」も「殺あやめていないことの証明しょうめい方法ほうほう」も整ととのっていない。整ととのう見込みこみもない。恒久こうきゅう的てきな不完全ふかんぜんさを棚たなに上あげて、私わたしたちは何なにと傲慢ごうまんで高慢こうまんで身勝手みがってなことか。二村にむら真弘まさひろ監督かんとくの端正たんせいな狂気きょうきはそれを容赦ようしゃなく炙あぶりだしてゆく。

  松尾まつお潔きよし
  （音楽おんがくプロデューサー・作家さっか）

• マスコミが誰だれかの逮捕たいほの場面ばめんを撮影さつえいし報道ほうどうすると、視聴しちょう者しゃはこの人ひとが犯人はんにんと確信かくしんしてしまいます。
  警察けいさつと組くんだマスコミが推定すいてい無罪むざいの原則げんそくを無視むしすることが冤罪えんざいの出発しゅっぱつ点てんです。
  死刑しけい囚しゅうがわずかでも犯人はんにんではない可能かのう性せいがあったら、再審さいしん開始かいしすべきです。
  『マミー』という映画えいがが多おおくの国民こくみんを考かんがえさせ、より良よい司法しほう制度せいどに繋つながってほしい。

  西村にしむらカリン
  （仏ほとけ「リベラシオン」紙し／「ラジオ・フランス」特派とくは員いん）

• もしもあなたが、当時とうじの報道ほうどうをそのまま信しんじ込こんでカレー鍋なべにヒ素ひそを入いれたのは林はやし眞須美ますみ死刑しけい囚しゅうに決きまっていると思おもっているのなら、絶対ぜったいにこの映画えいがを観みて衝撃しょうげきを受うけるべきだ。
  その後ごに考かんがえてほしい。自分じぶんたちは何なにを間違まちがえたのか。なぜ思おもい込こんだのか。

  森もり達也たつや
  （映画えいが監督かんとく、作家さっか）

• あの人ひとが殺ころせ（や）ってるしかない――。作中さくちゅうの市民しみんの声こえは、多おおくの人々ひとびとの考かんがえであろう。
  事件じけんを一いちから洗あらい直なおした徹底てってい取材しゅざいが、私わたしたちの固定こてい概念がいねんを覆くつがえ（くつがえ）していく。
  誰だれがやったかではなく、やっていないのかを検証けんしょうした超絶ちょうぜつドキュメンタリー。

  角すみ岡おか伸彦のぶひこ
  （ノンフィクション・ライター）

• あの頃ころ9歳さいだった自分じぶんもまわりの大人おとなも、報道陣ほうどうじんに水みずを撒まく林はやし眞須美ますみさんの姿すがただけを見みて、彼女かのじょを“悪人あくにん”だと判断はんだんしていた。報道陣ほうどうじんが市井しせいの人ひとの私生活しせいかつを土足どそくで踏ふみ荒あらす異常いじょうさにも気付きづかずに。
  
  これは当時とうじ“魔女まじょ狩かり”に加担かたんしたすべての人ひとに向むけられた反証はんしょう。メディアが無責任むせきにんにも放棄ほうきしたその後ごの役割やくわりを、すべて背負しょわんとする覚悟かくごと執念しゅうねんが全編ぜんぺんに漲みなぎっていた。本年ほんねんの最さい重要じゅうよう作さく。

  ＩＳＯ
  （ライター）

• 不思議ふしぎな映画えいがだ。何なん重じゅうにも入いれ子こ構造こうぞうになったテーマが見みる者ものを惑まどわせる。
  冤罪えんざい告発こくはつ、息子むすこと母ははの関係かんけい、不可思議ふかしぎな家族かぞくに加くわえて、監督かんとく自身じしんが大おおきな存在そんざいとしてせり出だしている。一いち度ども画面がめんに登場とうじょうしない林はやし眞須美ますみが真しんの主役しゅやくかもしれない。一筋縄ひとすじなわではいかない本ほん作さくは、ドキュメンタリーのあり方かたを根底こんていから問といかける問題もんだい作さくとなるだろう。

  信田のぶたさよ子こ
  （公認こうにん心理しんり師し）

• 和歌山わかやまカレー事件じけんには被害ひがい者しゃ、加害かがい者しゃ、報道ほうどう、警察けいさつ、検察けんさつ……多おおくの関係かんけい者しゃがいる。それぞれの立場たちばから見みえ方かたが異ことなる事件じけんである。では、自分じぶんは当時とうじどう見みていたのか。今いまはどうなのか。本ほん作さくを鑑賞かんしょう後ごに見方みかたを修正しゅうせいする必要ひつようがあるのか、どうなのか。自問自答じもんじとうと決断けつだんを迫せまる作品さくひんだ。

  丸山まるやまゴンザレス
  （ジャーナリスト）

• 林はやし眞須美ますみの保険ほけん金きん詐欺さぎの「被害ひがい者しゃ」とされた夫おっとが語かたる真実しんじつが衝撃しょうげき。警察けいさつ、検察けんさつ、マスコミ、裁判官さいばんかんによるでっち上あげ。こんなひどい話はなしがあるだろうか？　ある。今いまの日本にっぽんは他たも全部ぜんぶ、こんな状況じょうきょうだ。取材しゅざいしていた監督かんとくが怒いかりのあまり一線いっせんを越こえてしまうほどに。

  町山まちやま智浩ともひろ
  （映画えいが評論ひょうろん家か）

スタッフメッセージ

• 私わたしは何なにかとんでもない思おもい違ちがいをしているのではないか。取材しゅざい中ちゅう、何なん度ども自問じもんした。
  林はやし眞須美ますみは手て練ねれの詐欺さぎ師しで、ふてぶてしい毒婦どくふで、夫おっとをも殺ころそうとした冷酷れいこくな人間にんげんであったはずなのに、取材しゅざいによって得えた事実じじつはそれとは全まったく違ちがう姿すがたを映うつし出だしていた。
  これで死刑しけい判決はんけつが下くだされたのか…。空恐そらおそろしさを感かんじた。

  二村にむら真弘まさひろ
  （監督かんとく）

• この企画きかくは、いくつかのテレビ局てれびきょくに持もち込こんだが「死刑しけい判決はんけつが確定かくていしている事件じけんを扱あつかうのは難むずかしい」と言いわれ実みのらなかった。それなら映画えいがにしようと監督かんとくが撮影さつえいに入はいると、取材しゅざい先さきで度々たびたび新聞しんぶんやテレビの記者きしゃに出でくわした。しかし、彼かれらは冤罪えんざいの可能かのう性せいについて取材しゅざいしていても、大々的だいだいてきに報ほうじることはなかった。死刑しけい判決はんけつにこれだけ疑義ぎぎがあることがわかっていて、なぜ。監督かんとくの疑問ぎもんと憤いきどおりが、今回こんかいの映画えいがの原動力げんどうりょくになっている。

  石川いしかわ朋子ともこ
  （プロデューサー）

プロフィール

• 監督かんとく：二村にむら真弘まさひろ
  （にむら・まさひろ）

  1978年ねん愛知あいち県けん生うまれ。日本にっぽん映画えいが学校がっこう（現げん・日本にっぽん映画えいが大学だいがく）で学まなび、2001年ねんよりドキュメンタリージャパンに参加さんか、11年ねんからフリーランスとしてテレビ番組ばんぐみの制作せいさくを手掛てがける。統合とうごう失調しっちょう症しょうからの回復かいふくを引ひき出だす日本にっぽん独自どくじの手法しゅほうを描えがいた「見みる当事とうじ者しゃ研究けんきゅう」（15／DVD作品さくひん）、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい者しゃたちが身内みうちにだけ語かたってきた“笑わらえる話はなし”をき取きとった「千原ちはらジュニアがゆく 聞きいてけろ おもしぇ～話ばなし」（17／NHK総合そうごう）、ネジ一本いっぽんから手作てづくりする独立どくりつ時計とけい師しを1年ねん以上いじょう追おった「情熱じょうねつ大陸たいりく／菊野きくの昌宏まさひろ」（19／MBS）、講談こうだん師し・神田かんだ松まつ之の丞すすむの真打しんうち昇進しょうしん、6代目だいめ神田かんだ伯はく山やま襲名しゅうめいまでの半年はんとしを追おった「情熱じょうねつ大陸たいりく／松まつ之の丞すすむ改あらため神田かんだ伯はく山さん」（20／MBS）、我わが子こが不ふ登校とうこうになったことをきっかけに学校がっこうのあり方かた、家族かぞくのあり方かたを描えがいたセルフドキュメンタリー「不ふ登校とうこうがやってきた」シリーズ（21～／NHK BS1）など。本ほん作さく『マミー』は初はつ映画えいが監督かんとく作品さくひん。

• プロデューサー：石川いしかわ朋子ともこ
  （いしかわ・ともこ）

  1991年ねんにドキュメンタリージャパンに参加さんかしディレクターとして番組ばんぐみを制作せいさく。2007年ねんからプロデューサーとして活動かつどう。「ドキュメンタリーWAVE」「BS1スペシャル」（NHK BS1）などを制作せいさく。二村にむら監督かんとくとは、自身じしんの子供こどもの不ふ登校とうこうの生活せいかつを描えがいた「不ふ登校とうこうがやってきた」シリーズ（21〜／NHK BS1）を制作せいさく。
  プロデュースした主おもな映画えいが作品さくひんに、バレエダンサー首藤しゅどう康之やすゆきのドキュメンタリー映画えいが『今日きょうと明日あしたの間あいだで』（11／小林こばやし潤子じゅんこ監督かんとく）、コメディアンのウーマンラッシュアワー・村本むらもと大輔だいすけを追おった『アイアム・ア・コメディアン』（22／日向ひなた史し有ゆう監督かんとく）が24年ねん7月がつ6日にちより劇場げきじょう公開こうかい。現在げんざいはフリーランス。