「普通ふつうに戦たたかわない」という選択肢せんたくしがあることに気付きづいた

──「バーサス」を読よませていただきましたが、冒頭ぼうとうから引ひき込こまれるシーンの連続れんぞくでとても熱中ねっちゅうしました。この作品さくひんはそもそも、どのようなきっかけで生うまれたのでしょうか？

ONE　「バーサス」の原型げんけいになるネタは、もともと温あたためていたものだったんです。それはシリウスの編集へんしゅうさんからお声こえがけいただく前まえから考かんがえていたもので。近年きんねんで一大いちだいジャンルを築きずいた、いわゆる異い世界せかいもの、それを僕ぼくが作つくるとしたら……と考かんがえた時期じきがあって、その答こたえの出だし方かたはやはり正面しょうめんから描えがくものじゃないほうがいいだろうと思おもい、違ちがう角度かくどから異い世界せかいというアイデアを丁寧ていねいに扱あつかってみようと考かんがえました。その結果けっか、いくつかの異い世界せかいそのものが融合ゆうごうして複数ふくすうの頂点ちょうてん捕食ほしょく者しゃたちがなだれ込こんできたらどうなるか、という発想はっそうに辿たどり着つきました。

「バーサス」1巻かんより。

──それが「バーサス」の原型げんけいになったんですね。第だい1巻かんでは「天敵てんてき同士どうしを戦たたかわせる」という方向ほうこうに物語ものがたりが進すすんでいきますが、これもその時点じてんで決きまっていたんですか？

ONE　そうですね。まず、世界せかいに混乱こんらんが生しょうじたとき、人間にんげんがどう動うごくのか考かんがえたんです。そこで主人公しゅじんこうがチート能力のうりょくを持もっているとか、強大きょうだいな力ちからで戦たたかうとかではない新あたらしい方法ほうほうを考かんがえたとき、「普通ふつうには戦たたかわない」という選択肢せんたくしがあることに気付きづいたんですよね。そこから物語ものがたりを膨ふくらませていきました。

──その時点じてんではONEさんが作画さくがまで担当たんとうされる可能かのう性せいもあったんでしょうか。

ONE　いや、広ひろい世界せかい観かんを描えがくことになるので、僕ぼく一人ひとりの力ちからでは成立せいりつさせることができませんでした。原作げんさくという立場たちばで、誰だれかに作画さくがをお願ねがいすることも考かんがえてはいたんですが、無茶むちゃぶりともいえるボリュームを投なげて、膨大ぼうだいなデザインを用意よういしてもらう必要ひつようが生しょうじます。なので実現じつげんするのは難むずかしいアイデアだと考かんがえていたんですが、シリウスの編集へんしゅうさんからお声こえをかけていただいた際さいに、「こういうネタもありますよ」と雑談ざつだんレベルで話はなしたら気きに入いってもらえたんです。

すべて、ONEさんの頭あたまの中なかにある（あずま）

──シリウスでの連載れんさいについて動うごき出だしたのはいつ頃ごろだったんですか？

ONE　たぶん2、3年ねんくらい前まえですね。ただ、その時点じてんではストーリーも何なにもなかったので、作画さくが候補こうほの方ほうはまだ見みつけないようにお願ねがいしていました。まずは連載れんさいを具体ぐたい的てきなものにするために、内容ないようの掘ほり下さげや設定せっていの見直みなおしを行おこなっていきました。ただ、話はなしが進すすんでいくにつれて、もしかしたら僕ぼくがネームを切きることも厳きびしいかもしれない、と思おもい始はじめたんです。

──そこでboseさんの参加さんかが決きまった？

ONE　その頃ころちょうどあずま先生せんせいの名前なまえが編集へんしゅう部ぶから提案ていあんされていたんです。作画さくが候補こうほの先生せんせいには声こえを掛かけないでと言いったのに……。あずま先生せんせいがネームまで担当たんとうするということも可能かのうだとは思おもったんですが、それだとシナリオをもとに作画さくがまでというとてつもない作業さぎょう量りょうを強しいることになります。それはあずま先生せんせいの作業さぎょう量りょうを考かんがえると厳きびしい。そこで、僕ぼくの知しり合あいで、ネームがうまいことも知しっていたboseさんにお声こえがけしました。

bose　ONEさんとは以前いぜんから交流こうりゅうがあったんですが、一緒いっしょに作品さくひん作づくりをしたことは一いち度どもなかったんですよね。前々まえまえから一緒いっしょにマンガを作つくりたい気持きもちがあったので、お誘さそいいただいたときはとてもうれしかったですし、「僕ぼくでよければ描えがきますよ」と即決そっけつしました。

「バーサス」1巻かんより。

──ONEさんからboseさんに渡わたる原作げんさくというのは、文字もじで書かかれたいわゆるシナリオのようなものですよね。

bose　そうですね。僕ぼくは以前いぜんにも文章ぶんしょう原作げんさくをネームにする仕事しごとをやったことがあったので、その点てんに関かんしては自然しぜんにお請うけすることができました。それに、ONEさんの作品さくひんは昔むかしから読よんでいますし、自分じぶんが描えがきたいものと似にているところも感かんじていたんですよ。なので、大変たいへんさもなく、とてもやりやすいですね。

ONE　最初さいしょはプロットだけとか数すう行ぎょうだけ書かいて、boseさんに話はなしを膨ふくらませてもらおうと考かんがえていたんです。でも、（物語ものがたりの）最初さいしょはセリフまで書かかないと伝つたわらないと思おもい、今いまのところは細こまかい台詞せりふや演出えんしゅつ部分ぶぶんまで、伝つたわりやすい形かたちを目指めざして慎重しんちょうに書かいています。

──その後ご、あずまさんに正式せいしきに作画さくがの依頼いらいが行おこなったわけですね。あずまさんは最初さいしょにお話はなしを伺うかがった際さい、どのように感かんじられましたか？

あずま京太郎きょうたろう　編集へんしゅうさんと別件べっけんの打うち合あわせをしていたときに、「こういう原作げんさくがあるんですけど……」とお話はなしを伺うかがっていたんです。ざっとした内容ないようだけ聞きいたんですが、とても面白おもしろそうだなと感かんじました。そのときに興味きょうみを持もって、すぐに「やります」と答こたえたことを覚おぼえています。

「バーサス」1巻かんより。

ONE　あずまさんの名前なまえを編集へんしゅうさんから伺うかがったとき、とても上手じょうずな方ほうですから引ひく手てあまたでしょうし、まだ設定せっていが固かたまっていないときにお声こえがけするのは失礼しつれいではないかと思おもっていたんですよ。でも、あずまさんはそこから1年間ねんかん待まってくださって。

あずま　「バーサス」が動うごき出だすまで、月刊げっかん少年しょうねんシリウスでは「THE KING OF FIGHTERS 外伝がいでん ―炎ほのおの起源きげん― 真ま吾われ、タイムスリップ! 行おこなっきまーす!」を連載れんさいしていました。

──3人にんが最初さいしょに顔合かおあわせをされた際さいには、「バーサス」の構想こうそうについて話はなされたりしたのでしょうか。

ONE　どういったゴールにするのかはお伝つたえしました。ただ、どこに分岐ぶんき点てんがあるのかは適時てきじお教おしえしているので、おふたりは物語ものがたりの結末けつまつまで知しらないかもしれないです。

あずま　そうですね。世界せかい観かん設定せっていについて話はなし合あった際さいの議事ぎじ録ろくはいただいているんですけど、設定せっていはまとまっていないんです。すべて、ONEさんの頭あたまの中なかにある。なので、毎回まいかいネームをいただいてから驚おどろくばかりです。

bose　僕ぼくも細こまかいところは逐一ちくいち、ONEさんに質問しつもんしていますね。