「悪あくは存在そんざいしない」と「GIFT」はまったく違ちがう体験たいけん、石橋いしばし英子えいこが語かたる濱口はまぐち竜介りゅうすけとの共同きょうどう作業さぎょう

第だい17回かいアジア・フィルム・アワード（AFA）で作品さくひん賞しょうを含ふくむ最多さいた6部門ぶもんにノミネートされている「悪あくは存在そんざいしない」が3月9日にち、香港ほんこんの映画えいが館かん・PREMIERE ELEMENTSで上映じょうえい。企画きかく・音楽おんがくを担になった石橋いしばし英子えいこが上映じょうえい後ごのトークに登壇とうだんし、監督かんとく・濱口はまぐち竜介りゅうすけとの共同きょうどう作業さぎょうの裏側うらがわを語かたった。

第だい80回かいヴェネツィア国際こくさい映画えいが祭さいで銀ぎん獅子しし賞しょう（審査しんさ員いん大賞たいしょう）を受賞じゅしょうした本ほん作さくは、長野ながの県けんのある町まちに暮くらす巧たくみと娘むすめの花はなを軸じくにした物語ものがたり。ある日ひ彼かれらの家いえの近ちかくで、芸能げいのう事務所じむしょによるグランピング場じょうの建設けんせつ計画けいかくが浮上ふじょうする。しかし、このプロジェクトは町まちの水源すいげんに悪影響あくえいきょうを及およぼす、ずさんなものだった。その余波よはは、父ちち娘むすめの生活せいかつにも及および始はじめる。大だい美賀みか均ひとしが巧たくみ、西川にしかわ玲れいが花はなを演えんじたほか、小坂こさか竜りゅう士し、渋谷しぶや采さい郁いくがキャストに名なを連つらねた。

石橋いしばしが自身じしんのライブに用もちいる映像えいぞうの制作せいさくを濱口はまぐちに依頼いらいしたことから生うまれた「悪あくは存在そんざいしない」。石橋いしばしの発案はつあんから2年ねんほどメールでやり取とりを重かさねたのち、濱口はまぐちがリサーチやテスト撮影さつえい、脚本きゃくほんの執筆しっぴつという具体ぐたい的てきな制作せいさくの準備じゅんびを進すすめていった。石橋いしばしは「当初とうしょはサイレントのライブ映像えいぞうを作つくる予定よていだったんですが、撮とられた役者やくしゃの演技えんぎ、声こえが素晴すばらしかった。撮影さつえいが終おわって編集へんしゅうをしている段階だんかいで濱口はまぐちさんから映画えいがの話はなしをいただきました」と振ふり返かえる。

濱口はまぐちの提案ていあんによりライブ映像えいぞうのために撮とられた素材そざいを用もちいて、まず劇映画げきえいがの「悪あくは存在そんざいしない」を完成かんせいさせることに。石橋いしばしは「私わたしはすごくうれしくて、いったん自分じぶんのライブパフォーマンスも忘わすれて、まずは映画えいがのための音楽おんがくを作つくることに集中しゅうちゅうしました」と述懐じゅっかい。その後ご、ライブ用ようのサイレント映画えいが「GIFT（ギフト）」の編集へんしゅうが進すすめられたが、石橋いしばしは「私わたしは映画えいが版ばんが完成かんせいして満足まんぞくしちゃった部分ぶぶんがありました」と笑わらいつつ、「でも山崎やまざき（梓あずさ）さんが新あらたに編集へんしゅうしてくださったものがすごく面白おもしろくて、『悪あくは存在そんざいしない』とまったく違ちがう体験たいけんになることがわかった。そこで改あらためて『GIFT』のための音楽おんがくも考かんがえ始はじめました」と制作せいさくの経緯けいいを明あかした。

「ドライブ・マイ・カー」に続つづいて濱口はまぐちと仕事しごとをともにした石橋いしばしは、前作ぜんさくとの違ちがいを聞きかれると、上記じょうきのような特殊とくしゅな経緯けいいを踏ふまえ「暗闇くらやみの中なかを歩あるくように、濱口はまぐちさんと何なにを作つくるのかわからないまま時間じかんが過すぎていきました。それを一緒いっしょに歩あゆむことができたのが大おおきな違ちがい。それは面白おもしろいし、楽たのしかった」と答こたえる。さらに今回こんかいの制作せいさく体制たいせいの魅力みりょくを「時間じかんをかけて作つくると、ちゃんと工夫くふうができるし、監督かんとくと対話たいわを重かさねられる。無駄むだに思おもえるような話はなしでも、そういうものが積つみ重かさなって奥行おくゆきがある作品さくひんになると信しんじてます」と話はなす。

「ドライブ・マイ・カー」のときから共同きょうどう作業さぎょうの方法ほうほうは共通きょうつうしており、まず石橋いしばしが特とくにシーンを想定そうていせずにデモとなる音楽おんがくを作つくり、それを濱口はまぐちが求もとめる方向ほうこう性せいに調整ちょうせいしていく流ながれ。そして完成かんせいした音楽おんがくを使つかうシーンについて、石橋いしばしは関与かんよせず、濱口はまぐちが決きめるそう。「最終さいしゅう的てきに、どこにどんな音楽おんがくをどのように使つかうかは濱口はまぐちさん次第しだい。私わたしは、その決きめ方かたがよかったと思おもってます。作つくっているときは基本きほん的てきに苦くるしい。編集へんしゅうが終おわって濱口はまぐちさんが音楽おんがくを映像えいぞうに当あてる。その当あて方かたを見みて『本当ほんとうに作つくってよかった』と思おもう。それが喜よろこびです」と明あかす。普段ふだんの音楽おんがくと映画えいが音楽おんがくの制作せいさくの違ちがいを聞きかれ「一番いちばん違ちがうのは最終さいしゅう的てきなジャッジを監督かんとくがすること。音楽おんがくを作つくるときの姿勢しせいとしてはあまり変かわらないです」と語かたる場面ばめんもあった。

映画えいが音楽おんがくを作つくる際さいのこだわりや気きを付つけていることを問とわれると、石橋いしばしは「音楽おんがくはお客きゃくさんの感情かんじょうをコントロールしてしまう危険きけん性せいがあるもの。作品さくひんはお客きゃくさんが家いえに持もって帰かえって何なん日にちも考かんがえ続つづけるものになってほしいので、感情かんじょうを簡単かんたんにコントロールする音楽おんがくは作つくりたくない。実際じっさいに物語ものがたりの中なかで鳴なっているわけではない場合ばあいを除のぞいて、私わたしは基本きほん的てきに映画えいがに音楽おんがくは入いれなくていいと思おもってます。でも、そこにあえて音楽おんがくをつける。だとしたら、どういう音楽おんがくがいいのか。そこは常つねに厳きびしく考かんがえているところではあります」と強調きょうちょうした。

詳細しょうさいな内容ないようは伏ふせるが、観客かんきゃくからは映画えいがのエンディングについて石橋いしばしの感想かんそうを尋たずねる質問しつもんも。石橋いしばしは「私わたしも理屈りくつでは何なにが起おきているかわからない。とても感覚かんかく的てきに捉とらえていて、初はじめて観みたときはガッツポーズをしました（笑）。論理ろんり的てきに何なにが起おきているかは説明せつめいできないけど、腑ふに落おちる。すごく自然しぜんなことが起おきていると私わたしは捉とらえました」と実感じっかんを述のべつつ、「お客きゃくさんそれぞれが考かんがえることが一番いちばん面白おもしろいし、皆みなさんがどう捉とらえているのか聞ききたいです」と呼よびかけた。

第だい17回かいアジア・フィルム・アワードの授賞じゅしょう式しきは、香港ほんこんの西にし九きゅう龍りゅう文化ぶんか地区ちくにある戯曲ぎきょくセンターで本日ほんじつ3月がつ10日とおかに開催かいさい。「悪あくは存在そんざいしない」は、4月がつ26日にちより東京とうきょうのBunkamuraル・シネマ 渋谷しぶや宮下みやげ、シモキタ - エキマエ - シネマ「K2」ほか全国ぜんこくで順次じゅんじ公開こうかいされ、ライブ公演こうえん「GIFT」は3月がつ19日にちに東京とうきょう・PARCO劇場げきじょうで上演じょうえんされる。なお「GIFT」は香港ほんこんでも3月がつ30日にちに第だい48回かい香港ほんこん国際こくさい映画えいが祭さいで上演じょうえん。

映画えいが「悪あくは存在そんざいしない」予告編よこくへん