75さい以上いじょう高齢こうれいしゃ運転うんてんによる死亡しぼう事故じこは、内閣ないかくのデータによると、ハンドルやブレーキなどの操作そうさミスが28%とたか割合わりあいめます。そのため日本にっぽんでは、報道ほうどうなどでも特集とくしゅうされることがおお高齢こうれいドライバーの事故じこ予防よぼうとして、運転うんてん不安ふあんかんじるひと自主じしゅてき運転うんてん免許めんきょしょう返納へんのうする「自主じしゅ返納へんのう」の制度せいどびかけています。しかし免許めんきょ返納へんのうをすることなくくるま運転うんてんつづけ、かなしい事故じここしてしまうこともすくなくありません。

そんなかなしい事故じこのひとつとして、免許めんきょ返納へんのう家族かぞくからうながされつつも、かたくなに返納へんのう拒否きょひした結果けっか交通こうつう事故じここしてしまった90さい男性だんせいについて、その家族かぞくからはなしうかがいました。

かれ家族かぞく構成こうせいは、65さい息子むすことそのつま(63さい)の3にんらしで、かれ認知にんちしょう症状しょうじょうはじめていたことから、息子むすこ夫婦ふうふからなん免許めんきょ返納へんのうするよううながされていました。しかしかれむかしながらの頑固がんこ性格せいかくからくびたてらず、息子むすこ夫婦ふうふこまてていたそうです。そのかれ交通こうつう事故じここしてしまうまでのくわしい状況じょうきょう息子むすこさんにおしえていただきました。

――お父様とうさまはどれくらい運転うんてんあぶない状態じょうたいだったのでしょうか。

90だい父親ちちおやむかしながらの強気つよき性格せいかくひとで、「おれ大丈夫だいじょうぶ」とってかたくなに免許めんきょ返納へんのうこばんでいました。けれど実際じっさい物覚ものおぼえがわるくなり足腰あしこしよわくなっていて、運転うんてんしている様子ようすはとてもていられないくらいあぶなっかしい様子ようすだったのです。あまりにも危険きけんだったのでわたしくるまかぎあずかって運転うんてんさせないようにしていました。

――普段ふだん運転うんてんさせないようにしていたのに、なぜ交通こうつう事故じこきてしまったのですか。

あるわたし外出がいしゅつちゅうくるま運転うんてんしたことが原因げんいんです。くるまかぎわたしつま寝室しんしつ貴重きちょうひんれにかくしていたのですが、さがされてしまいました。いまとなっておもうのは、外出がいしゅつでもくるまかぎあるくべきでした…。

――事故じこ事実じじつったのはいつでしたか?

警察けいさつからの電話でんわりました。「ひとをひいたのでてほしい。さけんでいるようだ」とわれました。あわてて現場げんばくと、へらへらとわらいながら警察官けいさつかんはなちち姿すがたと、ミラーがくなったくるまがありました。

――本人ほんにんはご無事ぶじだったのですね。どのような事故じこだったのでしょうか?

歩道ほどうのない道路どうろで、歩行ほこうしゃある部分ぶぶん走行そうこうしてしまい、対向たいこうしてあるいてくる歩行ほこうしゃ身体しんたいにぶつかってしまったようです。酒気しゅきびていましたがちちは「おれはスピードをしていない。こうがってきた。さけすこんだだけ」といいわけばかりでわるびれない様子ようすに、心底しんそこはらがたって怒鳴どなってしまいました。

ドライブレコーダーをると、あきらかにちち歩行ほこうしゃりではしっていて、スピードは60キロくらいているようでした。ドライブレコーダーをてもちちは「おれわるくない」とみとめません。そのため認知にんちしょううたがわれましたが、数値すうちとしてはわるくなく、結果けっかとして相手方あいてがた左腕さわん骨折こっせつ長期ちょうき入院にゅういんちちは100まんえん罰金ばっきんめいじられました。

――かぎ管理かんりなど対策たいさくをしていても、人身じんしん事故じこ発生はっせいけられなかったのですね。

相手方あいてがたわたし息子むすこ所属しょぞくする野球やきゅうチームの関係かんけいしゃだと判明はんめいし、謝罪しゃざいうかがったさいにはひどくしかられました。また、息子むすこもチームにづらくなり移籍いせきすることになり、免許めんきょ返納へんのうしなかったために、息子むすこにも迷惑めいわくがかかってしまいました。

――最終さいしゅうてきには、どのような解決かいけつとなりましたか?

この事故じこ免許めんきょ返納へんのうさせ、くるまって罰金ばっきん支払しはらわせました。わたしなん警察けいさつしょ検察庁けんさつちょう相手方あいてがたのお見舞みまいなどに会社かいしゃやすんだため、みなのるところになり、社内しゃないでも居心地いごこちわるくなりました。この事故じこをきっかけにちちよわり、きゅう年老としおいて完全かんぜんあるけなくなりました。正直しょうじきなところ、迷惑めいわくをかけておいてきゅう介護かいご必要ひつようとなっても、わたしつまになれないのが本音ほんねです。

――免許めんきょ返納へんのうはないは、なんさいごろからなんかい程度ていどされましたか?

ちちが65さいになったころからわたしちちわりに運転うんてんするようにしていました。しかしちちが70さいのころにはは他界たかいし、さびしくなったのかふたたしゃかけるようになったのです。

80さいえたころから認知にんちしょうはじめ、それをきっかけに返納へんのうについてなんはなすようになりましたが、そのはなしをするといかすのではないにもなりませんでした。なんはなしたので回数かいすうはわからないほどです。

――事故じこ免許めんきょ返納へんのうについて、本人ほんにん納得なっとくされましたか?

最後さいごまで納得なっとくしていませんでした。くるまりましたので、ものがなければっていても仕方しかたないと観念かんねんしただけでした。

免許めんきょ返納へんのう本人ほんにん納得なっとくしない場合ばあい解決かいけつ困難こんなん問題もんだいです。また、免許めんきょ返納へんのう落胆らくたんによる認知にんちしょうや、うつびょう対策たいさくにも配慮はいりょする必要ひつようがあります。しかし人身じんしん事故じこ発展はってんする可能かのうせいもあるため、くるま売却ばいきゃくなど強制きょうせいてき運転うんてんできない状況じょうきょうつくこと選択肢せんたくしになるといえるでしょう。

(まいどなニュース特約とくやく長澤ながさわ 芳子よしこ