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文春の異端の編集者は政権幹部と何を話していたのか? 必読の日本政治経済裏面史!|今日のおすすめ|講談社BOOK倶楽部

今日きょうのおすすめ

文春の異端の編集者は政権幹部と何を話していたのか? 必読の日本政治経済裏面史!

文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう政権せいけん構想こうそう
ちょ鈴木すずき よう嗣)
2024.07.29
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自分じぶんメモ
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雑誌ざっし週刊文春しゅうかんぶんしゅん』『文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』の編集へんしゅうちょう歴任れきにんした著者ちょしゃ鈴木すずきは、政治せいじめんでも数々かずかずのスクープをものにしてきた。そのひとつが、とき政権せいけん幹部かんぶかたる「政権せいけん構想こうそう」の記事きじであり、著者ちょしゃはその内容ないようにも密接みっせつにかかわっていたという……そんな政治せいじ取材しゅざい内幕うちまく赤裸々せきららかしつつ、このやく30年間ねんかん次々つぎつぎと“発症はっしょう”した日本にっぽん政治せいじ経済けいざい問題もんだいてん仮借かしゃくなくかたりつくした刺激しげきてきいちさつである。

本書ほんしょは、これまで著者ちょしゃ永田町ながたちょう出会であった4にん印象いんしょうてき人物じんぶつ――安倍晋三あべしんぞうかんよしえら梶山かじやま静六せいろく細川ほそかわまもる熙――をげ、著者ちょしゃかれらの意外いがい関係かんけいせいとともに、それぞれの政治せいじてきビジョン、政治せいじとしての資質ししつかたられていく。けっしてどれもが美談びだんというわけではない。むしろいまめば、日本にっぽんというくに近年きんねんってきた生々なまなましい傷跡きずあと不首尾ふしゅびわったゆめのあとをたしかめるような感覚かんかくおちいるところもおおいだろう。最終さいしゅうしょうには「これからの経済けいざい政策せいさくプラン」として、日本にっぽんがどんな方向ほうこうすすんでいけばいいのか、著者ちょしゃ自身じしんの「構想こうそう」がかたられる。長年ながねん現場げんばたりにしてきただけあって、その言葉ことばするどく、リアルである。

1984ねん慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく卒業そつぎょう文藝春秋ぶんげいしゅんじゅうしゃ入社にゅうしゃした著者ちょしゃは、大手おおて新聞しんぶんメディアとはことなる雑誌ざっし記者きしゃという立場たちばで、独自どくじ取材しゅざいスタイルを確立かくりつしなければならなくなる。やがてかれ着目ちゃくもくしたのが「経済けいざい政策せいさく」だった。

永田町ながたちょうなが取材しゅざいしていてづいたことがある。大手おおてメディアの政治せいじ記者きしゃ政局せいきょくしか取材しゅざいしないことだ。かれらの関心事かんしんじは、だいいち人事じんじであり派閥はばつうごき、だい選挙せんきょさん番目ばんめ国会こっかい動向どうこう予算よさん中身なかみ、そして、外交がいこう政党せいとうあいだ離合りごう集散しゅうさんつづく。不思議ふしぎなことに、政治せいじ記者きしゃたちは政策せいさく、とくに経済けいざい金融きんゆう政策せいさくについてあまり興味きょうみっていない。そもそも取材しゅざい対象たいしょうになっていない。たまに経済けいざい政策せいさく意味いみつことがあっても、それは政権せいけん支持しじりつ浮揚ふようつながるか、選挙せんきょ争点そうてんになるかという視点してんとらえている。

経済けいざい政策せいさく国政こくせいにおけるさい重要じゅうよう課題かだいのひとつであり、その政権せいけんがどれだけ明確めいかくなビジョンをっているかという指標しひょうになりうるトピックである。だが、マスコミの注目ちゅうもくひくく、著者ちょしゃはその空白くうはくにこそ興味きょうみってすすんでいく。そして、ときには仕事しごと垣根かきねえて、その内容ないよう作成さくせいにもたずさわるようになる。いまや「悪名あくめいたかき」というかんむりとセットでかたられることのおおい、だい安倍晋三あべしんぞう政権せいけんんだ「アベノミクス」には、その弱点じゃくてん超克ちょうこくするだい段階だんかいとしての「ジャパノミクス」構想こうそうが、2014ねんごろに存在そんざいしていた……その策定さくていたずさわり、おもわぬよこやりに翻弄ほんろうされる著者ちょしゃ自身じしん証言しょうげんは、なんとも生々なまなましい。

政権せいけん中枢ちゅうすうにもみながら、一方いっぽうでジャーナリストとしての著者ちょしゃ熱情ねつじょうかんじさせる箇所かしょおおいにませる。2020ねん8がつ安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうからり、かんよしえら総裁そうさいせんつというタイミングで、かんとは旧知きゅうちなかである著者ちょしゃ議員ぎいん会館かいかんけつける場面ばめんとくにドラマチックだ。

かんはむしろ「るのがおそいじゃないか」というかおをしていた。しびれる展開てんかいつづいていく。
中略ちゅうりゃく
その時間じかん議員ぎいん会館かいかん部屋へやまえには官房かんぼう長官ちょうかんばん記者きしゃせていた。
「それで、政権せいけん構想こうそうはどういったかたちになるのでしょうか」
インタビュー時間じかんにしながら、わたしはすがたずねた。
政権せいけん構想こうそうは……ないんだよね」
この瞬間しゅんかん、わたしは椅子いすからころちそうになった。しかし同時どうじに、かんさんらしいなともおもった。そもそもかん政権せいけん構想こうそうといっただい風呂敷ふろしきひろげるタイプではない。

そのかんよしえらあおいだ梶山かじやま静六せいろくは、1998ねん自民党じみんとう総裁そうさいせんつにあたり、著者ちょしゃに「文春ぶんしゅん社長しゃちょうたのむから、さんねん総理そうり補佐ほさかんをやってくれ」とたのんだ。この瞬間しゅんかんいたるまでのエピソードのかさねもまた劇的げきてきだが、そんなおもばなしだけが本書ほんしょ主眼しゅがんではない。著者ちょしゃは、梶山かじやまがいかにすぐれた経済けいざい政策せいさくセンスのぬしであったか、そして日本にっぽん経済けいざいがやがてむかえる危機ききするど見通みとおしていたかを、その著書ちょしょ破壊はかい創造そうぞう』から引用いんようしながらあきらかにしていく。以下いかはその一節いっせつである。

現在げんざいいたるまで、政治せいじ官僚かんりょう経済けいざいじんによる『無責任むせきにんのキャッチボール』は、完全かんぜんられることなくつづいている。わたしのいうハードランディングのしん意味いみは、この悪循環あくじゅんかんわりにしようということにほかならない」

過去かこまなぶことでしか、人類じんるい進化しんかしない。いま、この世界せかい全体ぜんたいおお問題もんだいのほとんどが「過去かこまなばない」ことからていることをおもえば、失敗しっぱいわった政策せいさくかえることも無駄むだではない。細川ほそかわまもる熙元首相しゅしょう本書ほんしょみずから「不十分ふじゅうぶんだった」とかた政治せいじ改革かいかく、そのかさねられた政治せいじ不信ふしん軌跡きせきは、むしろいまこそ検証けんしょう改善かいぜんすべきだろう。

現場げんばひとつで記者きしゃとして、世論せろんうごかす編集へんしゅうしゃとして、日本にっぽん政治せいじ栄枯盛衰えいこせいすいつめてきた著者ちょしゃだからこそ、かたれることがある。いくつかの政権せいけん構想こうそうにおいては「当事とうじしゃ」でもあったかれ提言ていげんを、いまこそ永田町ながたちょう真摯しんしめるべきではないだろうか。

ならば、戦略せんりゃくをもつ政治せいじえらんでほしい。そうした人物じんぶつ政権せいけんになってもらいたい。そのためのサポートとして、官邸かんていに「経済けいざい戦略せんりゃくセンター」といった組織そしきをつくり、しかるべき報酬ほうしゅうはらって優秀ゆうしゅう人材じんざいあつめて戦略せんりゃくるべきではないか。政権せいけん交代こうたいするたびに、場当ばあたりてき経済けいざい政策せいさくてくるのは不幸ふこう連鎖れんさである。

  • 電子でんしあり
『文藝春秋と政権構想』書影
ちょ鈴木すずき よう

文春ぶんしゅん名物めいぶつ編集へんしゅうしゃは、政治せいじあらしれるとき、政権せいけん幹部かんぶ密室みっしつなにはなっていたのか?
政界せいかい官界かんかいのキーマンが実名じつめいでぞくぞく登場とうじょう
ぜんビジネスパーソン必読ひつどくの、あせにぎる「政治せいじ経済けいざい裏面りめん」。

週刊文春しゅうかんぶんしゅん月刊げっかん文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう編集へんしゅうちょう歴任れきにんし、数々かずかずのスクープをものにした著者ちょしゃによる「政治せいじ取材しゅざいぜん記録きろく」。
じつ著者ちょしゃ鈴木すずきは、とき政権せいけんの「政権せいけん構想こうそうづくり」にふかくかかわっていた。
本書ほんしょげられるのは、4つの政権せいけん政治せいじ)。
だいいちしょう 安倍晋三あべしんぞう
だいしょう かんよしえら
だいさんしょう 梶山かじやま静六せいろく
だいよんしょう 細川ほそかわまもる
いずれも日本にっぽんのターニングポイントとなった時代じだいである。
政治せいじよるうごく。雑誌ざっしジャーナリズムが政治せいじ報道ほうどうにおいてたした役割やくわりとは。
このくに経済けいざい政策せいさく失敗しっぱいつづける理由りゆうも、本書ほんしょめばえてくる。

本書ほんしょ内容ないよう
だいいちしょう 安倍晋三あべしんぞう
物入ものいりではじまった経済けいざい政策せいさく「アベノミクス」。
その策定さくていにひそかにかかわった筆者ひっしゃは、次第しだい疑問ぎもんいだくようになる。
制限せいげん金融きんゆう緩和かんわ、ゼロ金利きんり継続けいぞく本当ほんとうただしかったのか?

だいしょう かんよしえら
リアリストにしてプラグマティスト。
新型しんがたコロナにまわされて政権せいけん短命たんめいわったが、「携帯けいたい電話でんわ料金りょうきんごううでげさせた」など、実績じっせきさい評価ひょうかされる政治せいじかん本質ほんしつとは。

だいさんしょう 梶山かじやま静六せいろく
銀行ぎんこう不良ふりょう債権さいけんを「ハードランディング」で処理しょりすべきと主張しゅちょうし、総裁そうさいせんやぶれて派閥はばつに。
日本にっぽん政官せいかんざいが「無責任むせきにんのキャッチボールをつづけている」と喝破かっぱした、信念しんねんのひとだった。

だいよんしょう 細川ほそかわまもる
筆者ひっしゃ背中せなかされ、月刊げっかん文藝春秋ぶんげいしゅんじゅうで「新党しんとう結党けっとう宣言せんげん」をして、自民じみん連立れんりつ政権せいけん総理そうりに。
戦後せんご政治せいじのターニングポイントとばれる細川ほそかわ政権せいけんについて、本人ほんにんはいまなにかたるのか。

だいしょう これからの経済けいざい政策せいさくプラン
在野ざいや政治せいじ経済けいざい記者きしゃとして取材しゅざいつづけてきた筆者ひっしゃによる、「うしなわれた30ねんんだ経済けいざい政策せいさく」の俯瞰ふかんによる検証けんしょうと、日本にっぽんのこるための「これからの経済けいざい政策せいさく」の提言ていげん

レビュアー

岡本おかもと敦史あつし

ライター、ときどき編集へんしゅう。1980ねん東京とうきょうまれ。雑誌ざっし書籍しょせきのほか、映画えいがのパンフレット、映像えいぞうソフトのブックレットなどにも多数たすう参加さんか電車でんしゃとバスがき。

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